天空の花嫁の姉って?   作:ざいざる嬢

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デボラメインの薄い本が欲しいと思ってた。
一冊しか知らない……。



カボチ村と化け物

 

 

 カボチ村に辿り着いた私たちはまずあの農民と村長に会おう、ということになったのだが……。

 

「んじゃ、やはりポートセルミの酒場にたむろする連中に助っ人を頼むつもりだな?」

 

「んだ。あすこには中々ウデの立つ戦士が出入りしますけん」

 

「オラ反対だ!村のことを何処の馬の骨かも知れねえ余所者に頼むなんて! 大方騙されて礼金だけ持ってかれるのがオチだべ」

 

 そう言った村の若者が立ち上がり仕事に戻ると告げてこちらに向かってきた。

 

「なんだ?あんたは?」

 

「あんたが言ってた何処の馬の骨かも知れない余所者よ」

 

「なっ!?」

 

「ちょっと、デボラさん!?」

 

「アベル、黙ってなさい」

 

 アベルは善性の塊みたいな男だが、その分侮られることもあるだろう。現にポートセルミでもさんぞくウルフに優男とナメられていた節があった。

 でも、この手の依頼を受けたのは私たちであって、れっきとした仕事だ。私なんかは知名度もそこそこあるし令嬢だからとナメられることもある。

 だからこそ、強気でいかないといけない。ナメられたらお終いだから。

 

「で?その馬の骨が礼金を持ち逃げせず来てやったわけなんだけど、詳しい話が聞きたいのよね」

 

 一歩威圧感を振り撒きながら踏み出せば、若者は頬を赤らめながら一歩下がる。

 

「退ける?」

 

「は、はいぃ〜!」

 

 若者はそのまま横へとズレて道を開けた。

 確か原作だと逆に「どいてけろ!」って退かされる流れだったかしら?

 どっちでもいいか。

 

「ほら、いくわよアベル」

 

「え、ええ」

 

 居間で卓を囲む3人のもとへと向かう。その内1人は例の農民だ。

 その中の一番偉そうな人物が口を開いた。彼が村長だろう。

 

「ほう、あんたらが酒場に通う助っ人の先生だべか。 こんたびはどんもオラたちの頼みを引き受けてくれたそんで……。 まことにすまんこってすだ」

 

「いえ、お気になさらず」

 

「とりあえず村長さん、依頼にあった化け物について聞かせてもらいたいんだけど?」

 

「お、おお、すまんこって。 退治してもらう化け物のことじゃけど……。 これがまんずオオカミのようなトラのようなおっとろしい化け物でしてな? どこに住んどるかは分からねえんです。ただ西の方からやってくるちゅうことだけは皆知ってますだよ」

 

「オオカミのようなトラのような、ね」

 

「先生、ご存知なんですかい?」

 

「多分それは【キラーパンサー】ね。 少し先に行ったルラフェンって町の近くにも現れる魔物よ。 地獄の狩人とも呼ばれているわ」

 

「そ、そんなおっかない魔物がこの村に!?」

 

「それは……一刻も早く倒さなければなりませんね」

 

「お、お願えだ。お前さんたちは強いんだろ? どうか西から来る化け物の巣を見つけて退治してきてくんろ!」

 

「は?何言ってるの?迎え撃つわよ」

 

 アベルが事の深刻さを理解したようだけど、そんなに身構えなくてもいい。このイベントは原作通りにするつもりはないのだから。

 

「む、迎え撃つ!?何言っとるだべ!?」

 

「夜になったら勝手に向こうから来るんでしょう? なら待ち構えて追い返して、巣に逃げ帰るのを追いかけた方が効率がいいわ」

 

 確かこのイベントは【ベビーパンサー】との再会がメインだけど、カボチ村の住民にその一部始終を目撃されてグルだと思われる後味の悪さがある。

 でも、感動の再会の後の後味の悪さは私がどうとでも出来る。

 だからこそこの策だ。

 

「し、しかし……」

 

「私とアベルを信用出来ないの? ならいいわ。礼金も返すし私たちは帰るわ」

 

「え?デボラさんあの……」

 

「そ、それは困るだ! わがった!アンタらに任せるだよ!」

 

「最初からそう言えばいいのよ。 じゃあ夜まで休むわよ」

 

 アベルに有無を言わせずに首根っこを掴んで村長の家を後にする。

 

「デボラさん、その……」

 

「いいアベル? これは忠告よ。こうした頼み事を善意で受けるのはあなたの勝手だけど、ちょっとしたすれ違いで善意が悪意に変わってしまうってことは覚えておきなさい」

 

「え?」

 

「さ、私は宿で少し休むわ。 アベルも休める時に休んでおきなさい」

 

 呆然とするアベルを置き去りに私は宿へと入って行った。

 このイベントは後味が悪いとはいえ、人と魔物との関係性についてある意味考えさせられるものでもある。

 ただ、何でもかんでも教えるだけでは成長しない。彼なりに考えて行動することが大切だ。

 それに、本来なら私はこの場にいないはずだしね。

 

 

 

 

 そうして夜になった。

 村は静けさに包まれ、この夜動いているのは私とアベルたちだけだ。

 

「皆配置についた?」

 

「ええ、問題ありませんよ!」

 

「いつでも大丈夫だぁ!」

 

 うーん、夜になるとスミスの怖さが倍増する。何も知らずに夜に出会ったらせいけんづきを叩き込む自信がある。

 

「……! デボラさん、来たみたいです!」

 

 アベルが指差した方向には【キラーパンサー】らしきシルエットが見えた。

 

「私が相手をするわ。 逃げられた時に追跡出来るようにメタリンを出しておきなさい」

 

「了解!」

 

 さて、うっかり倒してしまわないように『てつのつめ』を装備して、接近戦で多少手加減しながら追い込む戦法を取ることにした。

 原作では倒せない様な仕様になっていたらしいけど、そんな仕様がこの世界にあるかも分からないから、これが最善。

 この時点でアベルたちに相手をさせないのは万が一ここでこの【キラーパンサー】がかつての仲間の【ベビーパンサー】だと気づかせないためだ。

 ここでそれに気づかれると面倒なことになるのは間違いない。

 だから私が相手をする。

 

「ガルルルルーッ!!」

 

「可愛い猫さん、遊んであげるわ」

 

 そこからは何度か私が攻撃を当てるものの【キラーパンサー】にこちらを傷つける意図は無いようで、攻撃がやたら消極的なのを確認し……。

 

「『ほのおのつめ』」

 

 持っていた『ほのおのつめ』を道具として使いあえて攻撃を外すことで威嚇として使う。

 すると【キラーパンサー】も不利を悟ったのか逃げ出した。

 

「ここまでは計画通り……アベル!」

 

「メタリンを先行させてる! 彼はこの夜でもメタルボディが月光を反射して目立つから十分追える!」

 

「なら急ぐわよ!」

 

 私も馬車に乗り込みアベルたちと共に【キラーパンサー】のすみかへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





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