魔女だし、幻想だし。 作:覚め
何も進展せず。何処かふんわりとしたまま里を出る。あのまま白蓮と戦っても良かった。でも、それだと止めが入る。だから、里を出た。命蓮が死んでから何年だろうか。もはや命蓮の魂はどこにもないだろう。転生を信じるなら、何度転生したのか。
「あの…大丈夫ですか?顔色が…」
「え?ええ、全然駄目ね。」
「あの、里で何か買ってきましょうか?」
「いえ、良いわ。」
目の前には、霊を浮かばせた妖怪。白髪で、刀を二振り。聞けば冥界の人間だとか。奇遇、と言うべきか。神がいるのなら、そいつはきっと私を嘲笑い罵り見せつけるためにこの妖怪を私の元にやって来させたのだろう。だからこそ、こんなにも腹が立つ。私のこの気持ちは、私のもの。分身にだって渡さないくらいには大事。
「まるで、見透かされてるみたいね」
「?」
「いや、こっちの話よ。何せ、恋の宿敵と出会ってね。少なくとも私は負けた身、顔を見て負けた時のことを思い出しただけ」
「は、はあ。」
「それじゃあ、またどこかで」
「ええ。と言っても、人里か神社ですが」
そう言って別れる。しばらくは、郷に顔を出さないでおきたい。宗教勧誘があるのなら、私は雨が降った日にしか来れないのだから。問い詰めていた時の、白蓮の顔。忌々しかった。そこまで思われてるなんて、とか思ってそうで。あの時の私がどんな感情だったかも知らないのに、忌々しい
「あぁ、忌々しい」
何もかもか。こういう時の、落ち着く魔法だ。自分で頭に触れ、直に魔法を使う。あんな女に構う必要はない。そう。落ち着いて。
「…ふう」
「苦しそうね」
「あら、誰だったかしら」
「博麗の巫女よ。里から通報受けたの。『僧侶様と魔法使いが言い争っている』って。違う?」
「一言一句違わないわ。あの女に教えを説く口がある事以外は」
「そう。じゃあ、当人をここに呼び出して、当人同士で…って、どこ行くの?」
「あの子、寺の僧侶でしょ?私の記憶だと、確か…モノノベって子に何回か燃やされかけてるはずでね。犯人の代わりをしてくれそうな子がいて、尚且つ傷つく。やらない手はないわ」
「犯行予告を聞いてはいそうですかってなるほど利口じゃないのよ」
背後から弾幕。弾幕か…並の妖怪が触れれば確かにダメージにはなる。なんなら、私でも無傷は無理だろう。なら、避け続ける意外に道はない。全く、酷いことだ。八雲紫からの警告、博麗の巫女から犯罪の阻止。相手が裁定を下す側であれば私には非しかない。困ったなぁ
「…私も、幼稚なのね」
「魔理沙と聖から聞いたわよ。分身体に木偶の坊って呼ばれてたんでしょ?人と関わらないから幼稚なのよ。分身も、本体も」
「少なくとも分身よりは人に近いと思ってるわよ」
「…そう」
「で、さっきから私の弾幕がアンタの背後で消えてる理由は?」
「魔法。永遠を付与して、操って、一瞬で無限の時間を過ごさせてるの」
「ふーん…似たような奴、私知ってるわよ」
「知ってても言わなくて良いわ。それじゃ」
「…ええ。そうね」
この会話の時間、彼女はどれくらいに感じたのかは知らない。が、外からすれば止まったと思えば巫女がさっさと消えたという風に映る。最も外に人などはいないが。魔法の応用だ。素晴らしい魔法。私は永遠にも感じる程度にしか操れなかったが、今であれば時を止めたかのような時間の流れを作り出せる。
「…一体。私は何をしてるのかしらね」
「そうだなぁ。君の欲を聞いて、私の意見に合わせてみるのは、どうかな?」
「人里の周りにいるから、かしら。まずは人里から離れましょうか」
「その必要はない。君と聖が言い争いをしている…いや、君が聖に怒鳴り、最終的には縋るように聖の肩を掴んでいたことが気になってね。」
「性格が悪いならそう言って。それ用の対応をするから」
「む、そうか…」
「それで?私にそんな口実を作ってまで会いたい理由は?」
「…君の恋心に興味が」
「消え失せろ」
「やはり、ダメかな?」
「欲が聞こえるなら聞けば良いじゃない。聞き取った後も立っている自信があるなら、ね」
「っ!?」
聖への憎しみを永遠に、さらにその永遠を重ねる。どうやら彼女には毒だったらしく、神子という人物は倒れた。やはり、こういうのは量を多くするに限る。このまま放置して、また巫女に何かを言われるのは嫌だ。どうするわけでもないが、里にも醜い男はいる。
「…結局、動けないのね」
分身の影響か。少し私も優しくなったのか。少なくとも男に好きかってされるのは、私は嫌だ。それに、この神子という人物も嫌だろう…だが。私の心を聞いた罪は消えない。私の天敵として、巫女の言う私と似た者、八雲紫、悟妖怪、そしてこの神子という女が追加された。白蓮?あんなもの、感情面での天敵でしかない。
「はぁ…宗教なんて、意思統一と迫害しか生まないのに、なんで作りたがるのかしらね」
心底理解出来ない。以前、魔女として西洋にいた友人は、宗教によって死んだ。宗教が出来るまでは医者のように生きていたのに。もっとも、魔女狩りならぬ奇怪な術師狩りによって西洋の人間はウン万人死んだという話だが。それに、この神子という人物も。白蓮と争うかもしれないのに。
「‥ことごとく理解できないわ。」
「いいや?むしろ我々は協力体制すらとっているよ。勧誘も隣に立ってやっているくらいにはね」
「あら、二つの宗教を一つにまとめたらダメじゃない?」
神子「協力!」聖「協力!」
物部「えぇ…?」