魔女だし、幻想だし。 作:覚め
そっちも勝てるかどうかわからない?
毒殺で。
毒が効かない?
すり潰しなさい。
あれから数日。私は今紅魔館に来ている。というよりもパチュリーの持つ大図書館。この中に、死者と会うような魔法はないのか。いや、ないだろう。魔法使い共通の認識として、死者を甦らせること、それに類するものは禁忌と言うことがある。全く、変な話だ。寿命を取っ払うことは禁忌ではないのか。
「…ないでしょう?」
「なかったわ。」
「それにしても意外ね。貴女が、かの有名な大魔法使い、エナなんて」
「旧名よ。今の私はロータス。男っぽいとか、女っぽいとかはやめてね」
「良いわよ。私達に性別なんてあってないようなものだし」
変なことを言う。私が決めた名前は、蓮の名前がついている花だ。というか、蓮だ。命蓮から命がなくなった名前だ。その為に白蓮に似た名前とも取れるのが嫌だが。私としてはその点が嫌だが、死んだ命蓮を名前として扱うなら、命がないんだからこれで良しと思っている。
「…何?」
「ラメ、これ読んで!」
「フランドール…これは魔導書だから、読み聞かせるものじゃないと思うけど」
「読んでー!」
「…わかったわよ」
「あら、そんな面倒見が良いとは思わなかったわ」
「普通はしないわよ。でも、この子は強いから」
「強いからって贔屓しないほうがいいわよ」
強いからだけが理由じゃない。情緒が安定していない子供に、魔法で落ち着かせることなんて。分身体の私はかなりの未熟だったらしい。子供の無尽蔵に湧いてくる、特にあの子の持つ狂気なんてものは、魔法なんてもので騙せるほど容易くはない。冷たくあしらえば、私はまず無事ではない。
「これをこうすれば…いえ、違うわね。効率の悪いこと。この二つの魔法陣なんて、一つにまとめられるわ」
「すごーい!」
「えっ」
「なんなら、これとこれも…後、これも」
「な、何言ってるのよ!魔法陣なんていじくり回したら…!」
「魔法の使い方のコツは、知って使って理解すること。知らない魔法でも、一度使えばある程度の使い方はわかる。そしたらまた、知ることから始めるのよ」
「…はぁ?」
「最も、私程度になれば見ただけである程度はわかるけどね」
私程度になれば。みるだけである程度の理解は進む。その上で、ある程度の応用が出来る。応用は簡略だったり増強だったりとするが、私は簡略の方が得意だ。何度も使えばその分理解は進み、いずれは魔法陣なんて無粋なもの無しに放てるようになる。それこそが、魔法使いの楽しみ。
「…私だって、長生きするだけじゃダメなのよ。それに、考える時間なら永遠にある」
「その考える時間で死人でも蘇らせる魔法を作ればよかったんじゃない?」
「そんなもの、使えてもね。」
「へぇ。理性はあるのね」
「…ちっ」
「あら、ムカついた?なら丁度いい。私と貴女、強いのはどちらか。知りたいわ」
…フランドールの前で、刺激的なことを言う。どうやらパチュリーはその気らしい。精一杯な魔法使いだ。そうなれば私も本気で対抗しなくてはならない。聞いた話の通りであれば、彼女は体内に擬似的な賢者の石を作り出したらしく、魔力は無尽蔵。
「…っ…!」
「貴女の力が無尽蔵でも、質で言えば私よりも下」
「重苦しくて…嫌になるわね」
「失礼ね。眠りそうなくらい心地の良い魔力でしょう?」
話していたら強烈な魔力砲。止める?いいや。分身の私は止めることしか出来なかったが、大魔法使いの私としては、消すほうが良い。永遠に閉じ込め、消えるまでの永遠を一纏めにする。そのまま消して、私の番。単純な魔力砲では芸がない。永遠に閉じ込めて、そのまま━
「っ!?」
何かしら?
「ラメすごーい!私も混ざる!」
「フラン!?」
「フランドール…悪いけど、貴女はお呼びじゃないの。まだ死にたくないの」
フランドールを全力で閉じ込める。動けないんじゃダメ、見えない、聞こえない。それくらいには閉じ込めないと、私はフランドールに殺される。私だって、白蓮に対する蟠りが消えてない段階で死にたくない。
「━!─…」
「貴女、次会うときに殺されるわよ」
「殺される?違うわ…全然違う。あの子の玩具に成り下がるのよ。彼女の力は概念にも通じる。永遠を破壊されたら、私は丸裸よ」
「…やっぱり、意味がわからないわ」
「そう」
それじゃあ、と別れを告げる。ある程度離れてから魔法を解く。そのまま逃げるように移動する。紅魔館と争うのならまだしも、フランドールなんかと戦うなんて。私もまだ死にたくはない。私の魔法について理解が進めば、その分私の魔法を壊せるようになる。そうなれば、私は。
「…あぁ、嫌だ嫌だ。」
「やや!いつぞやの!」
「あら、多々良」
「久しぶり。何か、変わった?」
「変わってはないわね。貴女は?人里の外で会うなんて初めてだけど」
「わちきはねぇ…驚かす相手探してるの」
「ああ、困ってるのね」
「うん。驚かせないと私のお腹は満ちないし…」
「そうねぇ…」
私は何処か、この子に甘い。多分、分身がいなくてもこの子にはこんな対応だろう。それに、この子には恩があるし。驚くだけの分身を出して、少しだけお腹を満たしてあげる。そのまま、そそくさと立ち去る。私としても、この子は何処か…そう、命蓮を見たときのような感覚になる。
「良いことをしたあとは気持ちがいいのね」
「でしょう?」
「あら、神子さん」
「私もいますよ」
「白蓮もいるのね」
次回、神子の手助けコミュニケーション