魔女だし、幻想だし。 作:覚め
「わざわざ私の家までありがとう、とは言っておくわ」
「お招きいただきありがとうございます」
「考えていることがわかるんじゃなくて、欲がわかるだけだからな。あまり私に期待せず、両名共に自分の頭で理解することだ」
「だ、そうです」
「使えないわね」
「そう言う余計な一言が、聖の弟君に振られた原因では?」
「…っ!」
気持ちを抑える。私だって、恋する乙女になれば、それ相応には気を使う。ただ、目の前にいる奴らがクソ以下で、私にとってはそこら辺にいる妖精の方が価値のある生き物であるだけ。それに、白蓮にだって、命蓮がいた頃はまだ良い態度だった。白蓮の所為だと言うのは、そんなにもダメなのか。
「憎しみ。それと、恋慕かな。弟君のことを思い出してるのかな?」
「…その件は、申し訳ありません」
「っ何がしたいの?私を、私にどうして欲しいの?」
「出来れば、私と貴女で、友好関係を」
「ふざけないで。私は、私だって、命蓮の事がなければ、貴女とだって仲良くできた。それに、出来てたでしょ。それを捨てて、あまつさえ私に甘えた。その代価よ。今の関係なんて」
「愛憎。憎みきれていない…いや、憎めない?」
「私も、です。それを捨てて貴女に甘えた。ですが…命蓮は」
「黄泉に置き去りにされて、可哀想よ。私も一度行ったことあるけど…彼からすれば。あんな殺風景で、あんな何もない世界で」
貴女を待っていたはずなのに。何故貴女は、最愛の弟を、あんな何もない場所に置き去りにできたのか。今もあの場所にいる訳じゃない。誰かに連れて行かれたか、弱い身体で、自ら足を進めたのか。どちらにしろ、貴女に向けられた感情は喜ばしいものではない。憎み、呆れ、見捨てたはずだ。
「同情。」
「…命蓮は、最期に…病で倒れ、苦しそうにしていた時。あの子は…」
『生まれ変わった時、姉さんはいるでしょうか』
『次の身体は、病に負けるのでしょうか』
『今更、後悔が。』
『姉さん、どうか、そばにいてください』
『どうか、聞いてください』
『まだ生きたいです」
『そしてまた、あの魔法使いに会いたい。会って、私の知らない話を聞きたかった』
…だから、何だと言うのか。私にとってその言葉は嬉しい。最期に頭に浮かんだのが私で、嬉しい。だが、治せた病ではあった。後天的なもので、初めは弱い病。その時に駆け込むべきは、仏ではない。薬師如来ではない。山を駆けてでも薬草を持っていくべきだったのだ。
「後悔。」
「…最期は、貴女がいないことを残念に思っていました」
「だから何」
「今だから言うのではありません。命蓮は貴女を好いていました」
「っ」
「驚愕。それと、強い後悔」
「それじゃあ、何故?私に甘えに来た時に何故言わなかったの?」
「…躊躇ったのです。伝えるべきものなのか、伝えず、恥を知らない人間として来た方が良いのかと。」
「結果、伝えなかったと?」
「はい。でも、今、貴女を見て後悔しています。あの時に言っていれば、まだ…」
何故今更。その口を縫い付け、弟と同じ場所に行けるかもわからない、閻魔の判断を仰がせてやろうか。閻魔の言い分を呑むしかない有様にしてやりたい。私は、ただ好きな人に幸せになってほしかった。だと言うのに。貴女が死ねば、確かに命蓮は幸せだったのに。
「貴女と話していると、私が私を嫌いになりそうで嫌ね」
「言葉通り、自己嫌悪」
「帰ってくださる?神子さん。この気持ちはやっぱり、白蓮に押し付けなきゃ気が済まないの」
「…本音、だね。わかった、私はこれまでだ」
「分かりました。どんな気持ちでも」
「何言ってるのよ。貴女と私で殺し合いをする訳じゃないわ。罵り合いも。
「…!」
外に出る。神子が審判をするらしい。弾幕ごっこなんて、初めてやる。私の手元には、歪なスペルカード。八雲紫から聞かされた時に、興味だけで作ったスペルカード。何もかもを捨て、恋心だけの私が作った、スペルカード。これで勝てば、負ければ、どちらにしろ心に風が吹くだろう。
「…初め!」
「魔法『紫雲のオーメン』」
「秋風『心の隙間』」
風に乗る弾幕。ゆらゆらと不規則に揺れ、聖を囲む。それに対し、聖のものは、自身を中心にいくつかの弾幕が螺旋構造のように溢れ出ている。回り、回り、そうして私の弾幕を消しつつ私に迫る。避け、避ける。永遠で阻むことはしない。互いにカードの効果が切れたと見れば、次のカードを出す。
「魔法『魔界蝶の妖香』」
「山空『乾きの湿地』」
聖の背後に蝶のようなものが現れ、それぞれの先から弾幕が放たれる。さらに聖本人からレーザー。避ける。私の弾幕は、私と聖の間に長方形の弾幕を出し、それが徐々に中心へ圧縮され、周りに放出するもの。時間はかかるが、火力は一番高いと言える。
「あらっ」
「あだっ」
「互いに被弾は一回だ」
「…最後ね」
「わかりました」
「断絶『影の先』」
「超人『聖白蓮』」
聖が高速移動をする。しながらも、弾幕を放ってくる。嫌なスペルカードだ。スペルカードの名だけの、身体強化。命蓮の死から、聖が強化の魔法を追っていたことは知っていた。だから、貴女はそこまで来た。対する私のスペルカードは、地面から弾幕が湧き上がる。湧き上がった弾幕は、聖の動きにはついていかず、私の動きについていく。右手を伸ばし、聖の方へ向ける。すると、地面から高速に打ち上げられた弾幕が出現、聖を襲う。
「さあ、終わり」
「…!」
次回、和解