魔女だし、幻想だし。 作:覚め
「不思議な話だとは思ったけど、案外簡単な話かもしれないわね」
「…」
「だって、子と親を考えてみればそれは明白。私はそう思うの。」
「…ぁ」
「!」
本体が動いた?…?何故?少しだけだが声が聞こえた。肺の中の空気が出て音が出るのはあり得ない。今の私ですら触れることすらできないのに。…であれば。何があった?何が原因?先程の話?人という字が成り立つには二人必要、という話?聞いてるかもわからない話で反応されるのは、期待してないわよ
「貴女は」
「っ、私?」
「貴女は、私の中でも特に重要な部分」
「は、今更?それにしても、喋れるのね。あれだけ動かなかったら、普通は喋れないのよ?」
「それは、心」
「分身体が、何よ。今の私なら、本体である貴女にだって勝てる」
「だから、戻させてもらうわ」
「感情もない人形なんか、生きてる意味はないわよ」
魔法で動きを止める。破られる。は?今度は私が止められる。距離を永遠にしてるわけでも、その場に留まる時間を永遠にしているわけでもない。なんだ、これは。有り得ない、私がこの家にいなかった間に魔法の開発?そんな、それこそあり得ない。だが、詠唱も魔法陣もない魔法で私の動きを止めている。私の記憶には、ないはず!
「…っ!」
「さ、帰ってきて」
「残念、私だって本体と言えるのよ」
無理矢理にでも腕を切り落とす。その後に私の周りを永遠で囲む。魔法の応用が効けば、私の魔法で対処はできる範囲かもしれない。外に出て、そのまま自由落下。そうしなきゃ、私は消えるかもしれない。
「…そうね」
「ええ。私なんだから、わかるわね?」
「この方法で何度鴉を捕まえたかしら」
「永遠に阻まれたら、私は逃げられないわね」
「その通り。それじゃ、こっちに」
本体の手が近付く。一度永遠に染まった手は動かない。私の魔法故にそれがわかる。ただの火力だけでは顔すら焼けない。一度それで防いだのだから、わかる。でも、一矢報いたい。
「心って言ってたけど。一つだけ私に託してないものあるでしょ?」
「っ、うるさい!」
ようやく動けるようになった。ようやく元に戻れた。どうやら私は心と私を分けるのにかなりの魔力を必要としたらしい。おかげで、かなりの時間を使ってしまった。不便なものだ。考える為に心を無くすのは良いが、それ以外には向かない。それがようやくわかった。
「そう。白蓮がいるのね」
頭の中で、分身の記憶を読み解く。忌々しい白蓮の顔。そのほかにも魔法使いがいる。アリス、フランドール、パチュリー、魔理沙。どうやら魔理沙という人物は白蓮に連れられ魔界に行ったことがあるらしい。あんな者の手を借りるなんて、あり得ない。だが白蓮も実力がある様子…
「…どうしようもない、か。」
分身の私は、人里で思い通りに遊んでいたようだ。正直言って、幼稚なものだ。そこで慧音という人物、多々良小傘、華扇という妖怪とも出会ったらしい。そして博麗神社では巫女とも。
「そうねぇ」
下に降りて行く。鴉に見つかって突撃を喰らう。は?
「あやや!申し訳ありません!」
どうやら分身の私は相当甘かったらしい。結界を張るだけで終わりだったようだ。
「そう。堕ちなさい」
「っ!?」
地面に落とす。仕組みは単純。重力がかかる時間を永遠にし、その永遠を一纏めにしただけである。
「…さ、今度こそいきましょうか」
「あら、漸く戻ったの」
「…八雲紫」
「貴女にそんなふうに言われたくないわ。大魔法使いさん」
「チッ」
厄介な妖怪と出会った。更に警告付き。『幻想郷で暴れすぎるな。突っかかってきた奴だけを相手にしろ』と。憤慨してもしきれない、嫌な警告を受けつつ下に降りる。アレもアレで実力はあるし、私の魔法を無効にする可能性がある。私との相性がそもそも悪い。嫌な奴だ。
「何をするか、迷うわ」
「お、ラメじゃないか!」
「あら、魔理沙。奇遇ね」
「まあな。でもお前、驚きだな。小傘の奴から、靴買ったとか聞いたんだが…変わってないな」
「大事なものは取っておくタイプなの」
「そうかぁ。まあ良いか。ちょうど聖がいるんだよ。こっちだぜ」
…白蓮。忌々しい。魔法を教える事だって嫌だった。だから歪で他者に依存する魔法を教えたのに。それさえも好き勝手に解釈して宗教の道に組み込んでいる。本当に、忌々しい。子供のうちに命蓮に対して薬を使えば治った病を放置した挙句、弟と宗教の道なんてものを歩いて。
「…おや?」
「魔理沙、少し席を離してくれる?」
「ん?何故?」
「白蓮とお茶した事ないからかしら」
「えー?私も一緒にやりたい〜」
「残念、こればっかりは無理」
「すみませんね、そういう事です」
「…ちぇっ」
白蓮の方も察したらしい。私が本体である事を。いつ見ても忌々しい顔をしている。よくもまあそんな顔で人里を歩けたものだ。私の分身体に会えたものだ。一体どんな気持ちで私と出会い、私に謝罪しようとしたのか。知っても意味はない。命蓮は、帰っては来ない。
「お久しぶり、ですね」
「ええ。随分と」
「先日とはかなり様子が違いますが?」
「戻れたのよ」
「…そう、ですか。やはり、許しては…」
「許さないわ。永遠に。命蓮が幼い頃であればまだ、薬草で助かるはずだった病。それを無視して、自分の弟と離れたくないからと言って薬草を持つ医者とも言える人間に渡さなかった貴女を許すことなんてできないわ」
「それは、その」
「私と会って、私に吐き出した弟の死への恐怖。それを貴女は聞いていたはず。なのに貴女は彼を見殺しにして、黄泉の国へと行かなかった」
責め立てる。私だって命蓮のことが好きだったのに。その時すでに私は魔法使いだった。老いて死ぬことはなかった。だから、白蓮に死後の命蓮を頼んだのに。だというのにこの女は、命蓮が死んだことを言いに私のところへ来て、私に魔法を教えてもらおうとした。嫉妬だ。醜い。それはわかってる。でも。
「…私の気持ち、知ってたでしょ…?」
本体「付き合ってください!」
命蓮「私が死んでからも、あなたを私で縛りたくない。だから、その告白は受けれない。」
こうして恋は散った