がちゃんとドアを開き振り返り玄関にいる大きな角を持った水色の女性に緑色の髪を流した少年?は言った。
「それじゃあ母さん。行ってくるよ。」
「お弁当、忘れないでね?」
心配気に言う母親に対し少年?は笑みを浮かべて鞄をポンと叩く。
「じゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
その声は全くのいつも通りで緊張感も無くて、彼らは今から行われる『雄英高校』の受験に緑色の髪の少年が合格することに確信を抱いているようだった。
「ここが雄英か。とても素晴らしい建物だね。」
周りは緊張でガチガチになっている中、彼はマイペースでいた。見知らぬ廊下をさも何年も歩いたかのように勝手知ったる様子で歩き進む。そんな彼はよくも悪くも浮いていた。
「おい、スッゲー美人いるぞ」「流石雄英。レベルたけー」
・・・それにはどうやら彼の容姿にも要因はあったようだが。
だが彼は気にしない。大きな講堂の中はかなり埋まっていたがメガネの少年の隣が空いてるのを見つけ声をかける。
「ごめんだけどここ、座らせてもらってもいいかな?」
「気にしないでくれ!それにしても君は大分余裕があるようだね。余裕があるのはいいことだ!」
「そうだね、僕も同意見だ。緊張は薬だが必要以上の緊張は毒になる。」
メガネの少年の意見に同意する緑髪の少年。彼に好印象を抱いたメガネの少年はそのままの勢いでまくし立てる。
「君とは意見が合いそうだ!俺は飯田天哉、よろしく頼む!」
「僕は森羅流樹だ。よろしく。」
やかましいメガネの少年とにこやかな笑みを浮かべる緑髪の少年が和やかな会話を続けている。
「リスナー達ィィィィィ!今日はオレのLIVEへヨウコソォ!」
だが講堂の扉を跳ね飛ばす勢いで開いたメガネの少年よりやかましいサングラスの男によって会話は打ち切りとなった。
長いので割愛。トラブルといえば飯田が緑髪の少年を注意した際、流樹が反応して拗れたぐらいだった。
「3、2、1、ハイスタート!」
あまりにあっさりしたスタート。受験生達があっけに取られ棒立ちとなる。
しかしすぐに受験者達は意識を持ち直し走り出す。
「オイオイ緑髪ボーイ!お前は行かなくていいのか?」
「コンディションはバッチリだからね。だけど人がいると使えないんだ。じゃあいくよ」
そういうとしゃがみこみ地面に手を当てる。地面から表すのは金の鎖。空を龍のようにうねり交差し伸びていく。
プレゼントマイクは目の前に生まれたばかりの黄金の樹の威容に呑まれ、あんぐりと口を開けている。いや、会場全体が精神的に彼に呑まれていた。
だが、次の瞬間には物理的にも呑まれる。高みから会場全体を見た彼は受験者に当てないよう、黄金の鎖を操る。空から降り注ぐ鎖はロボットのみを穿ち、巻き取り、締め上げていく。
『ヤメロ!ヤメテクレ!』
『オレタチガナニヲシタッテンダ!』
『オカアサァァァァン!』
「やりにくいなぁ…」
苦笑を浮かべるが攻撃の手は微塵も緩めない。ある程度を殲滅すると黄金の鎖を纏めて消し、袖口から放った鎖を使って移動を始めた。
「クソッタレ!こんなところで終わってられるか!」
それを好機と見た受験生達が無理に攻める。当然、怪我人も生まれる。だが、重傷に至る者はいなかった。足を怪我すると鎖が引っ張り擁護室に連れて行き、瓦礫に潰されそうになると鎖が粉砕する。ありえない程のマルチタスク。
当然、教師陣も注目していた。
「おい、オイオイ!なんだありゃあ!」
一際うるさいプレゼントマイクが騒ぎたてるが誰も咎めない。その場にいる全員の代弁をしている言葉であったためだ。
規模も凄まじい。だが、鎖一つ一つを的確に扱うマルチタスクはどこか【速すぎる男】を彷彿とさせる。
もう一つ、同じ会場に暴れる風があった。建物を巻き上げ、ロボットもろとも破壊する。
風の持ち主は黄金の鎖の主を探して飛び回る。そのついででロボットも壊す。
一般参加者からするとたまったものではない。瓦礫は鎖が打ち壊す。だが、点数が稼げない。もはや合格を絶望視していた。
「なにあれ…」「もう無理だろ…」
顔面を蒼白にして涙を堪え、恐怖の象徴【0点ロボ】から逃げる。
だが、反対に猛スピードでロボットに近づく二つの影。
「進ませないよ!」
「止めるっス!」
試験が大荒れした原因達が巨大ロボへ攻撃する。鎖で足を絡め一瞬動きを止めると、そこへ暴風が襲いかかる。ロボットが体を浮かすと地面から生えた鎖が引き倒す。トドメとばかりに暴風が鎖もろともねじり壊した。
『シューーーーリョーーーーー!!!』
「ふう、少し疲れたよ」
「俺はもう息絶え絶えっスよ。アンタスゴイっスね」
ゆったりと汗を拭う流樹。そこへ肩で息をする坊主頭の少年が話しかける。
「俺は夜嵐イナサっス!アンタは?」
「僕は森羅流樹。合格したらよろしく」
「…はい!俺は筆記が心配なんすけどね!」
「ふふっ、しっかり見直しはしたかい?」
「ギリギリだったっス…」
「僕も君の合格を祈っておくよ。もちろん自分を一番祈るけどね」
会話を続け帰路につく様子は試験と裏腹にとても和やかだった。