ヒフミが席を立つとすぐに兵藤一誠は本題に入り、イリナとゼノヴィアにエクスカリバーの破壊を報酬にコカビエルからのエクスカリバー奪還の協力を申し出て、了承を得て行動を開始した。
▽
絹旗はいつものように不良仲間と廃墟で屯していた。
その日はいつも以上に遅くまで仲間と遊んでいたら、天井が抜け落ちてきた。天井が落ちて舞い上がったホコリの中に人がいた。
「なんだ? 老朽化?」
「バカ! 人も落ちてきた!」
「殴り込みだ!」
状況の把握ができていない不良が叫ぶ。
絹旗は嫌な予感がしてならなかった。エクスカリバー編が始まったとORTからも連絡は来ていた。
「旦那、1人ではしゃぎすぎっすよ」
正面の入り口から2人が入って来て、1人が天井を抜いて降りてきた人物に声をかける。
「超最悪ですね」
絹旗はこの廃墟がイリナがヤラレる場所と判断する。まさか今日の集まる日と被るなんて思ってもいなかった。
「おお、先客がいるじゃないですか! これからオレっちらがパーティするんでサッサとおかえりお願いします」
「テメェらが帰れや!」
「オッサンらが痛い目に会う前に帰るんだよ」
不良たちが侵入者にケタケタとバカにする声が聞こえるたびに絹旗は緊張が走る。いつでも動けるように窒素装甲を発動しておく。
「悪いことは言わないから早く帰りなって」
「フリード1人ぐらい軽く痛めつけて追い返せ」
正面から来た中年の神父がもう1人の青年に命令した。
フリードはすぐ近くにいた不良を殴り飛ばす。殴られた不良は3回転ほどして止まる。
「は? ありえない飛び方しだぞ!」
「どうする! やり返すか!」
「勝てるわけないだろ」
一部の不良は自分たちが勝てる敵ではないと理解して大騒ぎする。
「大丈夫だ! こっちには絹旗さんがいる」
「そうだ、あれぐらい絹旗さんなら同じことがヤレる」
ガタイの良い不良たちが絹旗に視線を向ける。絹旗が仲間に加わる際にボコした不良だ。
事情を知らないものが見ると中学生ぐらいの年齢の絹旗に高校生が期待する不思議な光景にフリードも疑問に思う。
「おいおい、女の子に下がるなんて情けなさすぎじゃないですか?」
「その口は絹旗さんに勝ってから言えや!」
「絹旗さんに殴られたら先の倍は飛ぶからな!」
実体験のこもった言葉にフリードは油断しないように視界に入れる。
「超最悪ですね。超油断してくれたら超楽なんですが」
「たまに強い一般人がいるからね? 油断は出来ないんですよ! それにぼくちん。ここでミスるとお仕事なくなっちゃうんですよ」
「そっちの落ちてきた人はやらないんですか」
この場で1番の異常の天井から落ちてきて無傷で立っている男に絹旗は声をかける。フリードとやり合っている時に横槍を入れられたら絹旗には対処が難しい相手だからだ。
「コカビエルの旦那! 手は出さないでくださいよ。あくまでコイツらパンピーなんですから!」
絹旗の予想通りでコカビエルだった。残りの1人がバルパー。絹旗はペロロストラップでORTに緊急の連絡を入れる。
(状況は把握してました)
「超不本意ですが、私が足止めしますんで、お前らは超逃げてください」
(1人でやるんですね。ギリギリまで援軍は送らないようにします)
「絹旗さん。俺らもやれますよ」
「おれは邪魔にならないように倒れたアイツを連れて裏口から逃げます」
「オレはやるぞ」
絹旗は地面を踏み砕く。
「超邪魔なんで全員、超逃げてください」
「わかりましぇた!」
蜘蛛の子を散らすように廃墟に屯していた不良は全員が裏口から出て行った。フリードたちも追いかける事はなく絹旗に視線を向けていた。
「お嬢さんも帰ってくれないですかね?」
「超見逃してくれる気はないでしょ」
「一般人には俺っち優しいんだよ」
「超足止めと言ってしまって、超無傷で戻ったら超恥ずかしいですよ」
絹旗は地面を蹴り飛ばしてフリードに殴りかかる。フリードは軽くいなして蹴りを最愛に入れた。
「うぐ、いてぇぇー」
悲鳴を上げたのは攻撃を入れたフリード。最愛は蹴りを貰いながら踏み込んでフリードを殴った。物理には絶対の防御を誇る最愛は魔法系が絡まなければ転生者で肉弾戦最強。
追撃で殴り飛ばしたフリードに拾った石を投げつけるがフリードは空中で体勢を立て直して避ける。
「ほう、面白い」
コカビエルに興味を持たれることに嬉しくない最愛。フリードを倒したら次の相手はコカビエルだ。手の内は出来るだけ晒したくない。
「フリード、サッサと終わらせるためにエクスカリバーを使え」
「はいよ!」
フリードがエクスカリバーを抜いて最愛を襲う。さっきまでの速度と比べものにならない速度で最愛に当たる。
「うそ! まじで! 切れねー!」
エクスカリバー自体は最愛の脅威になり得ない。絹旗は窒素装甲で守られている。魔法系でない限り突破はほぼ不可能で速度が上がっただけの刃物なんて通るわけがない。
「超これで終わらせます」
一撃で決める気でいたフリードは予想外の事に反応が遅れ、最愛の一撃がもろに入り地面に叩きつけられる。
「フリード下がっていろ。少し遊んでやろう」
「超やり合う事になりますよね」
「物理に強いようだがコレはどうかな」
光の槍が絹旗に目掛けて飛んでくる。絹旗は窒素装甲に擦めるがギリギリで避ける。避けなければ光の槍は窒素装甲を貫通していた。
「自体がエネルギーのみだと防げないのか」
「超どうでしょうね」
「もう一度、試すだけだ」
光の槍が再度、絹旗に向けて投げられる。絹旗は落ちている鉄パイプを拾い光の槍を払う。
「簡単にはネタを明かしてもらえないか」
絹旗はなんとか間合いを詰めようと動き回るが、光の槍がコカビエルから絶え間なく絹旗に向かって投げられる。格上の相手に絹旗は避けるか鉄パイプで払うしか出来ない。
絹旗は瓦礫を拾いコカビエルに投げつけるが光の槍を振るって砕かれて終わる。
「超無理ゲー。超押し切れない」
「中々やるな。どうだ俺の仲間にならないか?」
「超断ります。超仲間なら別にいますので。むしろ超裏切ると何されるか超怖くてなりませんよ」
「先ほどの奴ら、なんぞ俺が消してやるぞ」
「超嫌ですね」
不良仲間は最悪どうなろうと最愛は気にはしないし、他の転生者の理不尽な強さを知っているため、勝ち目がなくても最愛は裏切ることはない。また、コカビエルが落ち目なことを最愛は知ってるので泥舟に乗る気はない。
「随分と超余裕ですが、時間をかけて超大丈夫なんですか。超何かに追われてるんじゃないんですか?」
「気にするものではない。欲しい物をわざわざ運んでくれるのだからな」
転生者の援軍は最愛が死にかけるまで来ることはないが原作の3人がもう暫くしたら着く。もしかしたらクロナも来たら勝利を確信できる。
「超時間があるのでしたら、超面白いもの見せてあげますよ」
「ほう? やるといい! 貴様の力はこちらの世界でも滅多に見ない能力だ。存分に俺を楽しませてくれ」
コカビエルは光の槍の投擲を止める。
絹旗も安全を確認してその場に止まり、ポケットから液体の入った小瓶を取り出す。
「超使うのが嫌です。でも超今のままだと、超相手にもならないですからね。私、超戦力外は嫌なんですよ」
コカバエルに小瓶を見せつけて、絹旗は小瓶の液体を一気に飲む。
「超味しないですね」
文句を言って小瓶をポケットにしまう。
「ドーピングか。つまらんな」
「超そんなもんですよ」
絹旗はコカビエルに向かって走るとコカビエルも光の槍を放つ。絹旗は光の槍を気にせずに突っ込む。窒素装甲に光の槍が着弾するが絹旗に当たるギリギリで止まる。
「フリードの攻撃を止めれる程度だったのが、俺の槍を受け止めれるか!」
「うぇ、超これでギリギリなんですか」
絹旗が飲んだ液体は単純に超能力を強化するものではない。ヒフミが銃を打つ時と同じ感覚で神秘を液体に放出して作成した神秘液。
飲んだ者に神秘の力を一時的に付与する。付与された神秘の力で絹旗の身体能力と超能力の強化がされている。
また、バンビエッタが飲めば滅却師の力が強化される。
「超速攻で終わらせてやりますよ」
「面白い、面白いぞ。小娘! つまらんと言ったが先ほどのドーピングは素晴らしい! 少量でここまで強くなるのは相当な物だ」
ドーピングしているが先ほどと戦況がほぼ変わらない。絹旗は避ける必要がなくなった分、コカビエルの間合いに踏み込み攻撃するが綺麗に躱される。
「超強すぎですよ」
「槍が効かぬなら次はこれだ」
コカビエルは手のひらを絹旗に向けて正確無慈悲に雷が放たれる。絹旗は避けるのが間に合わないと判断して防御姿勢を取って突き進む。
絹旗の決死の特攻でコカビエルに初めて攻撃をくらわせる。
「ゔ、超服が焦げましたよ」
コカビエルから放たれた雷は窒素装甲を貫き、服の袖が焦がす。
神秘液でキヴォトス人の防御力が付与されてなかったら即死だった。
「耐えるか! 良いぞ。直撃して無傷で済んだ者は初めて見たぞ」
絹旗の攻撃がコカビエルに効いた雰囲気が一切ない。
コカビエルのテンションが頂点に達したと思われた時に廃墟の半分だけ開いていた扉が切り刻まれる
「追いついたぞ、フリード」
廃墟の入り口から木場、イリナ、ゼノヴィアの3人が中に駆けてくる。
「超水を差されましたね」
「ふはは、そうだな小娘。水を差されたな」
コカビエルと絹旗の視線が3人に向かう。戦闘体制はお互いに崩さない。
「どうしようゼノヴィア。子供が戦ってる!」
「見た感じ仲間ではないようだが、こちらの事情とは別件か?」
「そこの奴らにここで遊んでいたら、超襲われただけですよ。超一般人を巻き込まないでくださいよ」
「コカビエルとやり合える人間が一般人だと」
「コイツは確かにたまたま、ここで会って戦っているだけだ」
「そんな事はどうでも良い! フリード勝負だ!」
木場がフリードに切りかかる。戦闘が中断されていたので時間のない絹旗は助かる。
神秘液は転生者で絹旗のみデメリットがある。神秘液を飲むのは魔術を使用したと見なされて体が内部から壊れていく。
絹旗は体だけではなく内臓周りもボロボロだった。
イリナとゼノヴィアはコカビエルと対峙する。しかしコカビエルは2人に興味がないようで絹旗のみに興味を示していた。
「ゼノヴィア。私が隙を作るからよろしくね」
「任せろ! お前も隙を作れ」
「超命令しないでください」
絹旗は自分だけでコカビエルを倒す気でいたが合流までに倒しきれなかったのでイリナに合わせてコカビエルに攻撃をする。イリナの攻撃は軽くあしらわれ、絹旗の攻撃はしっかりと大きめに確実な回避。そこで出来た隙にゼノヴィアが切りかかるが往なされる。
「ヒャはー。弱えよ。クソ悪魔」
フリードは木場を絹旗に向けて吹き飛ばす。
「超邪魔です」
絹旗には庇う余裕がなく、飛んできた木場を絹旗は殴り飛ばす。神秘液のデメリットで体が震えて攻撃に参加する頻度が少ないがイリナとゼノヴィアよりコカビエルから警戒される。
「組んだ相手が使えないな! 小娘もっと楽しませろ」
「超攻撃してるのにダメージがまともに入らない」
コカビエルを警戒して戦っているところにフリードが木場を無視してイリナに高速の不意打ち。
「お三方、ぼくちんもお忘れなく!」
「フリード。その雑魚ともう一体は構わんが。小娘に手は出すなよ」
「はいよ!」
「っち」
木場がフリードをエクスカリバーを執着して攻撃するが相手にされない。
そのせいで3体1でなんとか絹旗の攻撃だけが通る状態にフリードも参戦して乱戦気味になる。
綱渡の状態で続いていた戦いは、絹旗が血を吐いて倒れると簡単に崩壊した。絹旗の体が代償に耐えられなくなり、身体中から血が出てくる。
「ドーピングの代償か。残念な結末だがこれも戦いだ」
イリナとゼノヴィアの攻撃にコカビエルは光の槍でカウンターを決める。
「じゃあな小娘。楽しませてもらったぞ」