戦場の花ー死神と言われた男とエリートの物語ー   作:Scotchs

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主人公たちはある任務を付与され、極寒の寒さが身を襲うアラスカの地へと赴く。
その中で起きる、“悪夢”へのカウントダウン。
その前話…
ごゆっくりご覧ください。


1話 始まり

1話 始まり

 

ハァハァハァ

 

人間はなぜこうも、忘れたい記憶を鮮明に覚えるのだろうか…

 

ハァハァハァ

 

人間はなぜこうも、夢を見るのだろうか…

 

 

ー突入!ー

 

パン、パン

 

 

それも、この世で一番見たくもない

 

 

ークリアー

ークリアー

ークリアー

ーオールクリアー

 

そういうとある少年が部屋の奥で、天井から吊るされた人影に向かって走る。

 

『夢』であってほしい『現実』を

 

ーリーナ、しっかりしろ!ー

 

全裸で吊るされる少女、爪は剥がされ、目はくり抜かれ、手と足はドリルでだろうか大きな穴が空いていて、全身は傷だらけ。

尋常ではない異臭もする。

その姿は見るに耐えないものだ。

しかし、その少年はそれをものともせず、慎重に少女を地面へと下ろした。

 

ーしっかりしろ、リーナ。助けに・・ー

ー***くん・・・ー

弱々しく少年の名前を呼ぶ。

ーん?どうした?ー

ーごめん・・なさ・・い。私、みんなを・・・ー

血を吹きながら、弱々しく話す。

ーもういい、もう喋るな。ー

ーごめんな・・・さい。ー

何度も何度も謝る声は徐々に小さくなり、。

ーリーナ?リーナ?おい!リィナァ!ー

 

 

「はっ!はぁはぁ」

 

鼓動が静かな部屋に響き渡るほど、激しくうるさく動く心臓。

ベッドに跡が残るほどの汗のあと。

少年は大きく息を吸い、落ち着かせる。

 

「3時か・・・」

 

そう言うと、そばにある白い容器に手を伸ばす。

 

”ミニプレス”

 

蓋を開け、口へと流し込み飲み込む。

そして再び大きく息を吸い込み吐く。

 

「本当に最悪だ・・・」

 

と、呟く少年は。

 

 

クウェンサー・ヴァーポタージュ

 

兵科 工兵

身分 戦地派遣留学生

出身 平民出身

年齢 17歳

肩に届かない程度のサラサラとした金髪

ウェポンエンジニア(オブジェクト設計士)の最短コースとして、戦地派遣留学生として軍に入隊

志願して、第37機動整備大隊(通称:時代遅れ集団)に配属される。

至って身分以外は普通の学生

 

 

悪夢を見て3時に起きる。

クエンサーにとっては、いつものことだ。

そして、寝付けないのを知っているのでコーヒーを入れてオブジェクト関係のニュース等に目を通すのがルーティンである。

 

 

そうこうしていると朝日がのぼり0800、出勤の時間だ。

そして、出勤して早々命ぜられた任務…

 

 

アラスカ 某ベースキャンプ 滑走路

 

胸まである雪で覆われた滑走路の雪かきだった。

 

 

「あ〜もうやめだ!俺はこんなために軍に入ったわけじゃない!」

そう言って愚痴をこぼしスコップを地面へと叩きつける少年

 

 

ヘイヴィア・ウィンチェル

 

兵科 レーダ分析官

身分 正規軍人

階級 上等兵

出身 有力貴族『ウィンチェル家』嫡男

年齢 17歳

短い茶髪を真ん中分けにした、多少筋肉質な体格の少年

的オブジェクトの分析・索敵を得意とする。

ウィンチェル家の家督を継いで当主になるために必要な武勲を積むべく軍に入隊し、2浪は当たり前と言われる上等兵となるための教育課程“短期訓練過程”を浪人せずパスする有能な男

 

 

「仕方ないだろ、オブジェクト主体の戦場に歩兵の出る出番はないんだから」

「だからって、万という兵は極寒の地で凍え死ねと言うのは酷くないか?」

「さっきも言ったが、戦場の勝敗を決めるのはオブジェクトとそれを操る・・・

 

”エリート様”

 

だからよ。」

「それだ!それだから、滑走路を掘っても意味がない、だからやる気が出ないんだ。」

「やる意味はあるよ。」

「なんなんだよ。」

「いざと言うときのための、即応体制の確立よ。」

ヘイヴィアが大きくため息をつくと

「それ日はいつ来るんだよ。」

「いつか?」

 

ヘイヴィアとクウェンサーは目を合わせてしばらく見つめ合う。

 

「やめだ〜飯にしようぜ」

ヘイヴィアがため息混じりでいった。

「それには賛成」

 

2人は、近くの雪山の上に座ると用意していたレーション(軍用携行食)の封を切り栄養ゼリーを手にする。

 

「そういえば、ヘイヴィアって貴族出身だっけ?」

「そうだよ、武勲とか言うやつをとらねぇとやっていけないんだよ!」

「へぇ〜大変そうだな。」

「そう言うお前こそ。こんな極寒の地まで留学してよ」

「まぁ平民だからな。こうして職につかないと食っていけないからな。」

「オブジェクト関係の設計士を目指している・・・んだっけか?」

「あぁ、現場経験なしでは語れないからな。だからこうして来てるのさ。」

「ふ〜ん」

と、ヘイヴィアは返答した。

しばらく沈黙が続くと、ヘイヴィアが口を開く。

「それにしては、軍の飯っていうのは何度食べても慣れないもんだな。」

「まぁ、戦闘に必要な物しかないからな。美味しいとはいえないだろ。てか、国民の血税で食えてるんだからありがたく思えよ。」

「そう言うお前は、どう思うんだよ。」

「まぁ、普通かな。」

その言葉を聞いたヘイヴィアは、大きくため息をつく。

そして、何か思いついたのか目を光らせながらクエンサーに問いかける。

「それより、鹿の肉を食いたくはないか?」

その言葉から察したのか、クウェンサーは少し強い口調で。

「やめとけよ、戦場で銃声を鳴らせばどうなるかぐらいわかるだろ?」

「大丈夫だって〜こっちにはお姫様がいるだろ?」

「今回の敵は、“2世代機”それも雪原特化型なのは知っているだろ?」

「だけど〜」

「それに、弾薬もタダじゃないんだし戦場で大きな音を出すのは言語道断だ。我慢しろ。」

そう軽く返すヘイヴィアに少し強い口調で返す。

「わかったよ・・・」

不服そうに返答するヘイヴィア。

クウェンサーは、レーションを食べ終えると立ち上がって歩き出す。

「どこ行くんだよ!」

「俺は静かに狩れる獲物を取りに行くよ。」

 

そう残すと、再び歩き出した。

 

 

ベースキャンプ 小川

 

クウェンサーは胸ポケットから、縦横30センチぐらいの折り畳み式の釣り道具を取り出す。

手際良く、組み立てて釣り針に餌をつけ小川に垂らす。

クウェンサーは釣り針を見つめながら

 

「存在意義ね・・・」

 

と、呟いた。

 

「何しているの?」

振り向くと、競泳水着みたいな青いバトルスーツを着た少女が立っていた。

「釣りだよ、あまりにも味がない食べ物に飽きたから少しは贅沢をしたいと思ってね。」

「ふ〜ん。」

「それにしても、なんでお姫様がここに?」

お姫様こと、この少女は。

 

 

ミリンダ・ブランティーニ

 

兵科 オブジェクト操縦員 別名”エリート”

身分 将校

階級 中尉

出身 不明

年齢 14歳

肩にかかるふわっとした金髪に、色白な肌で繊細な体格の少女

普段は無表情なことが多く、天然で端から見るとボーッとしているように見える。

眼球の動きもオブジェクトの入力デバイスとして組み込まれているため、瞳の色素が抜けて空色へ進化している。

愛称として、”お姫様”と呼ばれている。

 

 

「オブジェクトは整備中、暇だから外をプラプラしていたら人の声がしたから。」

「ふーん。」

「あなた、オブジェクトの勉強をしにきたんでしょ?」

「そうだよ。」

クウェンサーは、小川を見つめながら答える。

「なんでこの基地なの?私の操るオブジェクトがどういうものなのか知ってるんでしょ?」

 

『第一世代総合マルチロール型オブジェクト』

 

「つまりどんな地形、天候であっても戦闘が行うことができるというスタンダードな機体。」

「スタンダードって、“時代遅れ”っていうことなのよ。」

「そうか?」

「えぇ、第二世代はそんな欲張ったことは言わない。目的や地形に特化している分、そこでは普通に戦うオブジェクトを凌駕する。」

ミリンダは、遠くの方へと目線を向けながら言う。

 

ーこの氷雪地帯のみ、私のオブジェクトは勝てないかもしれない。ー

 

「それでも戦うんだろ?」

 

ーそうするしかないからだよー

 

その言葉を聞いた瞬間、クエンサーは目を点にする程驚いた。

放つ言葉の重みとそれに対する覚悟が、18歳とは思えないほど重いのだ。

その姿に、思わず。

 

「そうか…」

 

と、返答することができなかった。

 

「ねぇ、なんでここにきたの?」

「価値観の違いかな?」

ミリンダは、何も言わず静かに耳を傾ける。

「勝敗や優劣を重視するのは、お偉いさんの考えだ。

だが、俺はあくまで“学生”で“整備員見習い”だ。そんなもの興味ない。」

「ん?」

「どんな世代機であっても、基本構造は1世代からなんら変わってない。

だから、1世代機であるあのオブジェクトを学べば、ある程度の応用は効く。

よって、お姫様のオブジェクトのあるこの部隊にいる方がお買い得ってわけさ。」

「不謹慎って言われない?」

「言われるよ、でも。」

 

『学生だから』

 

2人とも同時に口に出し、見つめ合いながら笑う。

「戦場で欲張ると長生きできないよ。」

さっきまでとは違い、少し明るくそういうミリンダ。

「いいんだよ…もう…」

 

ー死んでるんだからー

 

逆にクウェンサーは、小川を見つめながら静かに答えた。

「それはどういう…」

「じゃぁ俺はもう行くぞ。」

そういうと、釣り道具を素早く片付けると立ち上がって基地の方へと歩きだした。

「待って。」

呼び止めるミリンダ

「ん?」

「あなた、覚悟は決まっているの?」

唐突に質問するミリンダ。

「当たり前だ。」

 

『本当に?』

 

少し間をおいて問いかけるミリンダ。

「あぁ。」

クウェンサーは即答すると、再び基地へと歩き出した。

それも、顔を俯きながら静かに。

 

基地へと戻るや否や、安全装置の点検や主砲の点検などと気がつけば夕方となっていた。

 




1日が過ぎるのはいつも通り。
しかしながらミリンダが発した言葉が今後どう現状を左右させるのか。
そして、クエンサーが最後に見せた表情の裏側とは。

次回「覚悟と予言」
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