戦場の花ー死神と言われた男とエリートの物語ー 作:Scotchs
ミリンダと機動整備大隊一同の運命とは。
全てが現実となった時、クエンサーとヘイヴィアが見る景色は
“平和な日常”か
“悪夢“か
“それ以上”の何かか
ごゆっくりご覧ください。
整備工場裏
早速、とって来た魚を七輪を使い調理するクエンサー。
「何をしているんですか?あなた様。」
リーシア・ミッシェル
兵科 レーダ分析官 分析長
身分 将校
階級 少尉
出身 平民出身、孤児
年齢 22歳
性別 女性
ロンングの黒髪、平均的身長と体型の女性。
的オブジェクトの分析・索敵を得意とする。
「とって来た魚を焼いてるんだよ、おまえこそどうした?」
「あなた様が見えたので・・・」
「その呼び方やめろ」
強い口調でそういうクエンサー。
「失礼しました。」
「お前は少尉なんだ、堂々と構えろ。で、今回の勝率は?」
「0(ゼロ)」
即答するリーシア。
「だろうな、例のものとこの周辺の地図は?」
「用意できています、場所はこの座標に。」
そういうと、クエンサーにA4サイズの茶封筒を渡す。
「ありがとう」
「どうかされましたか?」
リーシアは、クエンサーの表情から何かを察する。
「何もないけど?」
「本当ですか?私には何か悩みを抱えられていると感じます。」
そう言われるとクエンサーは苦笑いをし、ゆっくりと目線を七輪へと落とし、
悲しそうに見つめる。
その表情を見て、リーシアは続けて言った。
「あのエリートですか?」
「あぁ、その通りだ。」
「しかし、あのエリートそこまで悩むことがあるのですか?」
「異常なほどの覚悟だよ。」
それは、以前からクエンサーが気になっていたことであり小川での
“あなたは本当に、覚悟ができているの?”
あの言葉が脳裏から離れなかったからだ。
そのことをリーシアに話す。
「与えられた任務と向き合い、それを果たせなかった末路に直面対する覚悟ということでしょうか?」
「それもある。それに加えて、“人殺し”となる覚悟だろうな…」
クエンサーは淡々と話を続ける。
「彼女から見て一般兵にその覚悟が見れないからこそ、そのような質問をしたのだと感じたのだろう。」
「今更では?」
それもそうだ、今まで幾度となく戦場に立ってきた。
いうタイミングは今でもない。
「今更だ、しかし彼女はその前に言った“この戦場では勝てないかもしれない”とな。」
「なるほど…末路は“敗北”と“死”、争うというなら“人殺し“となること。」
「そうだ、きっとそれは現在の一般兵はその任務への執着心も覚悟もない。それが彼女にとって気がかりであり、俺に質問した理由だろうな。」
軍人だろうがなかろうが、部隊に配属され任務遂行のために活動すれば必然とついてくる。
“敗北“
“死”
“人殺しへの後悔等”
それを彼女は誰よりも知っている。
だからこそ、これからも軍の下で働くと言ったクエンサーに尋ねたのだろう?
「しかしそれでは本題が見えないですが?」
「まぁ待てよ、問題ここからだ。そういう兵として未熟な奴が仲間の為に“死ぬ”と思うか?」
簡単に言うと、任務続行不可と決定すれば簡単に撤退もする。
その際にミリンダが行う行動に部隊は何をするのだろうか?
そう簡単な答えだ。
「救出の放棄。なるほど…命を挺して守った仲間からの裏切りさえも覚悟していると言いたいんですね。」
「あぁ、普通はそんなことを思う部隊員がいる時点で部隊は“終わって“いる。」
「そうですね、“確固たる信頼“がないということですから。」
「極端に言えば、いつ自分を盾にして逃げるかもしれないと怯えながら戦うもんだ。そんな中で最前線で戦うなど、まぁ.…普通の兵だったらまず“不可能“だろうな。」
「そうですね。」
「あぁだがあの子はそれを成し遂げている。この意味分かるだろ?」
「仲間に期待などしない…」
クエンサーを話を割るように話す。
「そうだ、助けてほしいと願う反面、来ないことを理解している。なのに、部隊の仲間を大切に思い、死なせたくないという純粋な気持ちでコックピットにいる。」
クエンサーは、感じていた。
他人思いで
優しい
そんな彼女が、
ー本当に?ー
そう尋ねた時の、ミリンダの悲しげな表情の裏に
敗北への悔しさ
仲間の死への懺悔
そして、自身が身代わりになることになり仲間を助ける反面、確実に自身の命がなくなることへの覚悟
「そんなことをたった“14歳”が考えることか?」
「そうですが、しかし…」
そもそも、普通の14歳の少女は覚悟どころか考えることはない。
それを誰よりも覚悟することは”異常”である。
それはリーシアは一番わかっているが、言葉を濁すのも無理はない。
現代戦はオブジェクトが主体であり、歩兵の価値など皆無に等しい。
よって撃破されれば戦闘を中止させて白旗のシグナルを発信し、戦闘を終わらせる。
そのまま終われば、特に何も問題はない。
しかし、
白旗のシグナルの無視
情報収集を目的とした拷問等
オブジェクトの完全な破壊を目的とした攻撃
捕虜後の交渉決裂
となれば、エリート他兵士の命などない。
「致し方ないではないですか…」
ー上層部も歩兵どもも、腰抜けばかりですからー
そう、1世代機。時代遅れの機体を守るほど上層部は優しくはない。
その上、歩兵に関しては支援なしで戦闘は行えるほどの能力を持ってはいない。
つまり、エリートが戦地のど真ん中で孤立した際“救出”などこない。
捕虜に関する規定があるとはいえど守らない国もあり、一度捉えられれば交渉終了前に“死ぬ”こともありえる。
「だとしても、あの年齢であれはな…」
「しかし、我々にはどうすることも…」
クエンサーは、より一層眉間に皺をよせて目を細める。
そして、力強く唇を噛む。
しかし、リーシアがいうことは正しい。
少尉という立場であるリーシアでさえも、軍部から見れば1人の列兵にすぎない。クエンサーも同様。
そんな立場の者2名が何を言っても、組織は変わらない。
それを理解しているからこそ、クエンサーは悔しいのだ。
日が落ち、暗闇の中チリチリと赤く煌る炭を見つめるクエンサー。
「それがやるせないんですよね、クエンサー。」
「あぁ…」
そう答えると、リーシアは近くにあった紙皿に魚を取り、クエンサーに手渡す。
「考えても仕方ないのでは?」
顔を上げて、リーシアの目を見るクエンサー。
「その時にやるべきことを成す、それでいいのでは?あと食べません?」
リーシアは、微笑みながらクエンサーに問いかける。
「そうだな…食べるよ、君も食べるか?」
「はい!」
満面の笑みで答えるリーシアを見たクエンサーは、少し微笑む。
そして2人は、クエンサーが釣った魚を食べるのだった。
翌日
「オブジェクトらしき巨大物体が接近中」
「第1種戦闘準備。」
カピストラーノ少佐の指示により戦闘が始まる。
そして、今回の相手は
『信心組織』
オブジェクトの特徴は、アメンボに姿が似ているため軍は以下のようになづけた。
“Water Strider”
無数の足によって地面をとらえ、どのような路面状況でも高速走行が可能。
この雪原地域には相性がとても良いのだ。
そう、その事を知っているにも関わらず俺は甘く見ていた。
そして―
ベイビーマグナムが目の前で大破した。
基本、オブジェクトを大破されたならば速やかに白旗をだし陣地を明け渡すのが暗黙のルール。
「早く、白旗を出せよ」
一緒にいたヘイヴィアがそう叫ぶ。
そうしていると、白旗の警報が鳴り響き公式に白旗が出される。
そしてその場の全員が安堵するが…
敵の砲は依然とこちらに向いている。
「なんでだよ!」
ヘイヴィアは驚く。
まぁ無理もない。
白旗を出せば終わるはずなのに終わらないのだから。
もう一度おさらいしよう、このルールは“暗黙”決して条約や戦時国際法で決まってはいない。
つまり、
『守る義務はない』
「それはそうだ、言っていただろ。その決まりに執行力はない。」
「それってあり…」
『伏せろ!』
クエンサーは叫びヘイヴィアを押し倒す。
その瞬間、閃光がクエンサーたちの頭上を通りすぎ、後方で大きな爆音が鳴り響く。
続いて、車列の方へと砲が向けられ一瞬にして炎に包まれる。
「おい、ヘイヴィアこっちにこい!」
そういって、クエンサーはヘイヴィアの手を取って走り出す。
「どこにいくんだ!」
「あいつらは、巨大な脅威を倒した、次にするのは破壊、続いて殺戮。
そして、破壊対象の手順として、最優先されるのは?」
「まさか!」
その瞬間、閃光が頭上を通り整備工場に直撃し大きな爆発と爆風がクエンサーたちを襲う。
2人その場に倒れこむ。
爆風が収まると、クエンサーは再び立ち上がりヘイヴィアを立ち上がらせると再び走り出す。
その間でも、攻撃はやむことはない。
頭上から鉄筋コンクリート破片やドラム缶が降ってくる中走り続ける。
そして、瓦礫が行く手を阻まれる。
ゆっくりと、後ろに目をやると青いアメンボの砲口はこちらを向いている。
2人はその姿を見て立ち止まる。
ヘイヴィアは酷く怯え、クエンサーは背を向け顔だけを向け睨んでいる。
そして、しばらくすると青いアメンボの姿は雪原の中へと消える。
ヘイヴィアが安堵していると…
ピィーピィー
何かの音に気が付く。
音の方へと視線を向けると、そこには一つのタブレットが落ちていた。
そのタブレットに2人は目線を向ける。
そこにはあるところの座標が示されていた。
「これは」
「お姫様からの救出信号だ。それも、暗号化されてない。」
そう、ヘイヴィアが言った。
「クソッ!」
つまり、ミリンダは囮になったのだ。
その時、クエンサーは小川でミリンダが発した言葉が、自身が予期していたことが現実になったことに。
それも悪夢なんて甘いものではなく“地獄”という最悪最低の形として。
その時、猛スピードで一台の車両が目の前で止まった。
ーおぉい!貴族と学生、今のうちに逃げるぞ!ー
悪魔の囁きを…
囮となった、お姫様ことエリート“ミリンダ中尉“
それを知ったヘイヴィアとクエンサーはどんな選択をとるのか…
次回 3話『兵士の責務と任務』