戦場の花ー死神と言われた男とエリートの物語ー 作:Scotchs
味方オブジェクト使用不能の状況
敵オブジェクトの脅威
絶望的な状況下で、クウェンサーとヘイヴィアがとる選択は…
”救出”
それとも
”放棄し撤退”
ごゆっくりご覧ください。
「おぁい!貴族と学生、今のうちに逃げるぞ!」
そういってくるのは、
フローレイティア・カピストラーノ
職務 実地指揮官
身分 将校
階級 少佐
出身 貴族『カピストラーノ家』
年齢 18歳
うっすらと青みを帯びた長い銀髪に紫色の瞳、爆乳を持つ絶世の美女。
ある理由から、少佐の階級に留まっている。
「山を一つ越えれば谷がある。つり橋を超えれば逃げ切れるかもしれない。」
「お姫様が…」
「あの子は、私たちがあっけなく殺されない様におとりになっているんだ!」
カピストラーノ少佐は、クウェンサーの胸倉をつかみ叫ぶように言った。
―あぁーこいつも同じか‥‥―
吐き気が止まらない。
反吐が出る。
クウェンサーは俯いて何も口にしない。
その間にもカピストラーノ少佐は何か言っているようだが、クウェンサーの耳には聞こえない。
そして、しばらくしてクエンサーは口を開いた。
「くだらない‥‥」
「学生‥なっていった?」
「将校として、人間としても腐りすぎて、耳まで聞こえなくなったかと聞いている!」
そういうと、俯いたまま拳をカピストラーノ少佐の左頬へと勢いよく振り上げる。
素早い右ストレート、
顔面を左でつかみ、車両の助手席のガラスに後頭部を叩きつける。
うなだれながらその場に座り込むカピストラーノ少佐
「本当にくだらないな、お前も貴様らも!」
目を見開き、周囲にいる兵士たちへゆっくりと目線を向ける。
「オブジェクトの前では無力な貴様ら“蛆虫”が、生きてこられたのはあの子のおかげじゃないのか!」
怒号を浴びせるクウェンサー。
「いつも自らの命よりも、部隊の生存を最優先させ、不利な状況でも命を挺して戦えといい、それに盲目としたがうあの子のとは裏腹に、蛆虫どもはこういうときでもあの子のやさしさに甘えて、己の命を最優先するんだな?」
その場の全員、何も言えない。
図星なのだ。
その中でも平然と言い続けるクウェンサー。
「それは我がままとは思わんかね?能無し幹部カピストラーノしょ・う・さ。」
ヘイヴィアはクエンサーに近づき、
「ならお前は、オブジェクトと戦えるのかよ?!」
瞬時にヘイヴィアの胸ぐらをつかむクウェンサー。
徐々に顔を近づけて耳元でささやく。
“戦える?じゃない、戦うんだ。塵になっても‥な”
そういうと、地面へと勢いよく投げつける。
「いいか、兵士は“国民を国家を守る”という任務を遂行するのは絶対だ。だが、任務(それ)を遂行する軍人が戦友守れないで誰を守れる?」
「一度でいい、国民守ると口にする前に…」
―仲間の為に命懸けてみろよ!―
「それすらできないお前らに、存在する価値も生きる価値もない、ただのゴミ集団だ。」
静かにその場にいる全員を見下ろすように言い続ける。
“そして、そんな集団など全員死んでしまえばいい“
そう言い残すと、雪原へと歩いて行った。
2分ほど歩くと、地面を掘る。
そこから出てきたのは、白いリュックと黒い長方形のケースと大きな袋。
それぞれから、MK18と書かれたライフル、雪原用ギリースーツ、地図、コンパスを取り出し、装填し、すぐさま救難信号が示した座標を確認して再び歩き出す
吹雪の中、コンパスのみを頼りに迷いなく歩き続けるクウェンサー。
そして救難信号が示した座標近くに着くと、クウェンサーはゆっくりと地面に伏せる。
スコープ越しで、敵兵をゆっくりと確認する。
「あいつらのエンブレム、北極側に展開する第230大隊か…まぁ屑の集まりには変わらんけど…ん?」
敵兵の口が動いていることに気が付くクウェンサー。
「こ、い、つ、が、せい、とうおうこく、エリート、はだか、ミンチ‥さっさと始末するか…」
状況が悪化することを感じたクエンサーは、すぐさま攻撃をする。
パスッ
こもった銃声と共に数百メートル離れた敵が次々に地面へと倒れこむ。
パスッパスッ
起きたことに理解できないまま残りの敵も地面へと倒れこむ。
敵がいないことを再度確認すると、すぐさまミリンダがいるところへと駆け寄る。
そして、ミリンダがいる周辺の車両もくまなく捜索する。
「運転席…」
ガチャ
「クリア」
そうして、捜索し終えて敵がいないことが確認できると、銃口をさげてゆっくりとミリンダに近づいた。
「落ち着いてくれ、整備大隊の者です確認させてください。」
クウェンサーを睨みつけ震えるミリンダにやさしくいう。
「はい。」
静かに答えるミリンダ。
「ミリンダ中尉で間違いありませんか?」
「えぇそうよ。」
「認識番号をお答えください。」
そういうと、ミリンダは淡々と答える。
「了解、よく頑張ったねお姫様」
そういうと顔にかぶっていた目出し帽をはずして顔を見せる。
「あなたは!」
「と、感動の再開の前に・・おい茂みから覗いている奴でてこい。」
そういうとミリンダの後ろに広がる森林へと銃口を指向する。
「へいへい、待てよ相棒。」
そういって出てきたのは、ヘイヴィアだった。
「お前何してんだよヘイヴィア。」
「いや~意外に早くことが終わって出るタイミングミスったんだよ!」
そういいながら、合流するヘイヴィア。
「どうして?」
立ったまま俯いていたミリンダが、唐突に口を開く。
「実際にオブジェクトに乗って戦う“エリート”でもないくせに、分厚い装甲に守られているわけでもないくせに、どうして私を助けたの?」
眉をひそめて困惑した顔で尋ねるミリンダ。
「私、心の中ではあなたたちを馬鹿にしていたのに…」
そういうと、左手を顔面を覆うようにした。
―いつも私が守ってやっているって―
―オブジェクトがいなかったら殺されるしかないって―
―否定しようとしても、正しくありたいと思っても―
―ずっとそんなひどい考えをばかり浮かんでいたのに―
『なんでそんな人間を助けるために、あなたたちはこんなところまできているの!』
涙を見せ、そう叫ぶ少女。
それを見たクエンサーは、銃を持つ手に自然と力がはいりつつも、静かに口を開く。
「君が思っていることは“正しい”、否定するところがどこにあるんだ?」
ふと目線をクエンサーに向けるミリンダ。
「君は‥」
戦場のど真ん中で怠ける兵士に流されることなくあのオブジェクトの中で、
たった一人で、機体性能という足かせをものともせず、
どんな不利な状況下でも任務完遂の為に、戦い多くの戦友を、国民を救った、
「そんな君の行いは、正統王国軍人として、一人の兵士として、素晴らしいことであり‥」
―称賛に値する―
そういうとクウェンサーは腰をかがめてミリンダと目線を合わせて言う。
「だから、自分をこれ以上“卑下”などするな、“誇れ”。いいね?」
そういうと、首を縦に振るミリンダ。
クウェンサーは、手を差し伸べてミリンダを立たせると、
「それにもう一人じゃないだ。俺たちがいる。」
そういうと、ミリンダの顔を見ながら微笑むクウェンサー。
「あぁそれと、助けた理由だったか?それは簡単さ、兵士の責務だからだ。」
「兵士の…責務?」
そう訊ねるミリンダ。
「国民を守るだけが義務であり責務ではない。戦友も国民も守るのが一人の軍人としての義務であり責務だ。俺はそれを大切にしているし、ただ単純に戦友を失いたくないからだよ。」
「俺もだ、こいつがだ“兵士としてどうなんだ”っていってな、今まで戦ってくれたお姫様に示しがつかないって感じて冷静になれたんだ。それに“しかたねぇ”ってとこか?」
そういうと、ヘイヴィアが顔をそらす。
「それじゃぁお姫様に、ナイト様これ以上はゆっくりもできなさそうだ。」
耳を澄ますと、低い音が遠くから聞こえてくる。
「行くぞ!」
そういうと、クウェンサー一行は近くの洞窟へと向かう。
「どうするクエンサー?これじゃあ…」
「入り口をふさぐ、そうすればオブジェクトの攻撃も通らないだろ。」
そういって、C4爆薬を洞窟に2個ほど仕掛けると、
「早く奥へ!」
2人を奥へ行ったことを確認すると、クウェンサーも奥へと急ぐ。
ある程度奥へいくと
「発破!」
大きな音と共に入り口が塞がる。
それを確認した一行は、洞窟の入り口を探し出し外へとでる。
「よし、警戒しながら飯だ。」
そういうと各人持っていた軍用食(レーション)を口にしながら次の行動を決める。
「今敵は、俺らを見失っているんだよな?」
「そうだが、ここで逃げても味方の全滅は避けれないぞヘイヴィア。」
「クソッ!」
「でも、彼らが逃げるまで囮を続けらえるかな…」
「無理だろ、お姫様のオブジェクトでも敵わなかったんだから。」
「あれは、いきなり装置が作動して解除しているところに、さらに攻撃を受けたからであって…」
「機密保護装置ね。」
「なんだ、それ?」
「その名の通り、オブジェクトは機密の塊だから各装置のセンサーが行動不能を感知すると、自爆するんだ。」
「レクチャーどうも、そんなことよりどう逃げるかを…」
「無理だ。」
その答えをバッサリと切るクウェンサー。
「なんでだよ!」
「対抗兵器なしの状態、体力も温存しなければならない状況でこれ以上の逃走又は囮も困難。
となると…」
「おい、まさかだよな?」
「そのまさかだよ。」
「ちょっと私をのけ者にして話を進めないでくれる?」
頬を膨らましながら睨みつけてくるミリンダ。
「ごめんごめん。」
「で、クウェンサー。何をするの?」
それを聞いたクウェンサーは、異常なほどの笑みをこぼしながらこう言った。
ー*****ー
ミリンダの救出に成功したクウェンサーとヘイヴィア。
しかし、依然として敵オブジェクトの脅威は拭えない。
そんな状況をどう打開するのか。
次回 4話 死の宣告上編 『決断』