ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
拙い文章ですが、どうぞ……よろしくお願いいたします。
「──おとうさんを……いじめるなー!」
俺がふと意識を取り戻すとそんな──幼く……
まだまだ親に甘え盛りの子供の──
怒りを乗せた声がした。
突然のことに混乱する、俺の意識は
まだ定まらないが、着実に、確実に
フツフツと怒りが俺の中に宿る。
(こんな小さい子が……怒るなんて……)
──ロクでもないやつが何かをしてるに違いない。
(許せん……だがひとまず、この子どもを)
──危ない場所から避難させないと
そう思いつつ足に力を入れる。
(意識をしっかりさせんと……ん?)
足に力を入れたとき、ぐああ…!とその足の方から声が聞こえた。
──俺は今、何か……いや、誰かを踏んでいる……?
いかん、すぐに離れねば──
そう思い踏んでいる何かを見たとき──
「悟飯……! 来るんじゃねぇ……!!」
(!?こ、この人は──ソン……ゴクウ……!?)
そこにはあの──忘れもしない、俺の大好きな──ドラゴンボールの孫悟空がいた。
そして近付く何か──これまた見たことあるはずだ……悟空の息子である悟飯──を見たとき、気付いた。
自分が誰なのかを。
そしてこのあとの自分の『運命』に──
「うわぁああああああん!!!」
ドスッと言う鈍い音とともに腹を中心として
痛みが走る──
「ぐああ……っ!?」
俺は──
ああ……俺は「ラディッツ」だ──
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──ラディッツ
ドラゴンボールという漫画に出てくる主人公、孫悟空の兄だ。
兄というにも関わらず、最初にやられてそのままフェードアウトするいわゆるやられキャラだが
──俺は前世にいたとき、このキャラが好きだった。
おそらくドラゴンボールのゲームである
「スパーキング◯オ!」IFストーリーのおかげだろう。
記憶を失ったラディッツが悟空たちによって善人として戦い、そして散るというものだった。
そんなラディッツだが、本編では悟空の兄というアドバンテージを発揮することはその後、なかった。
前世の世界で少なくとも──
俺が生きていた間はそんなことが無かったな。
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俺の腹部に突撃をかましてきた悟飯──怒り爆発状態──の超痛い頭突きが直撃し、
再び意識が飛びそうになる。
「ぐぅっ……!」
だが、俺はなんとか耐えた。いや痛いってもんじゃあないな。
死ぬ。いや漫画だとこれから死ぬんだけどな。その前に死にそう。
(っと……あぶねぇ!)
俺に突撃した勇気ある当人は頭から地面に落ちそうになり、俺はとっさに抱きかかえてしまった。
力任せではなく、できるかぎり力を抑えて。
「よくもやってくれたな……!今のは痛かったぞ……!!」
「──あ……あ……!!!」
痛みをこらえて腕の中の悟飯に話しかける。
俺の腕の中で震えている。そりゃあそうだな、自分の父親を殺そうとするやつの手の中にいるんだからな。
しかしこうやってみると……可愛いもんだ。思わず口許が緩んでしまった。
「や、やめろ……やめてくれ……悟飯を離せ……悟飯をっ……っ!」
──そうだった。今、俺は戦闘中でこの子は敵である悟空の息子だ。
やめろ悟空、懇願するのは。これでは俺が悪役ではないか。
いや悪役だったわ。はははっ。
しかし。
俺はちょっと焦っていた。本来の俺は飛ばされた悟飯を殴った上で
エネルギー波とかで殺そうとしたはずだ。
今の俺を見てみろよ。抱えてしまってる。悟飯を。大事そうに。
平和な時なら『ラディッツ伯父さんに抱えられている悟飯ちゃんの図』で大変すばらしいんだが。
ほら俺敵だし。
悟空はなんとか立ち上がってこっちを絶望的な表情で見ているし、
あの緑……──ピッコロもいるな、ヨシ! ──は「魔貫光殺砲」ポーズで止まってるし。
俺は、どうすればいい? どうすすむべきだ?
ひ、ひとまず話かけるか。トークしようよトーク!
「そ……カカロット」
ちらとピッコロを目で見た後、悟空に話しかける。
あぶねぇ、孫悟空って言いそうになった。
やめてください悟空さん、キッと睨まないで。
俺の良心がもうゼロなの。
「……(ガタガタガタガタ)」
悟飯ちゃんもガタガタ震えないで!ごめんて!!
もってくれ! 俺の良心! 3倍だ!
「もう一度聞く!……この兄とともに来る気はないのか?」
「だ、誰がおめぇなんかと! おめぇなんか兄貴じゃねぇ!! オラの息子を……悟飯を……返せ!!!」
そうはいいつつも、悟飯をなんとか助けられないかと考えている顔の悟空。
腕の中の悟飯ちゃんの震えがさらに酷くなってる!!
俺の良心! 20倍だぁあああああああああ!!
「そうか……残念だ」
なるべく残酷な顔になるように俺は表情を作る。
──なら、すまないがこうするより他ないな。
「カカロット。お前が選択した結果だ。しっかりと目に焼き付けておくがいい!」
そういいながら俺は悟飯を──
「おとうさぁあああ……! ─あれ?」
「チッ……! 外道め……!! ──!?」
「や、やめろ! やめろ!! やめ──え?」
悔しそうにするピッコロ、絶望する悟空。
その悟空に近づき俺は──そっと悟飯を悟空の胸に押し付けた。
「どうした……お前の息子なんだろう。
──しっかり抱いてやれ」
悟空は虚をつかれた顔をしていたが、意識を取り戻すと悟飯をぎゅっと抱きしめていた。
俺への警戒を怠らずに。悟飯は悟空にしがみついているが、不思議なものを見るように俺を見ていた。
「き、キサマ……何のつもりだ!?」
戸惑いを隠せない様子のピッコロに対し、俺はあらかじめ用意していたセリフを──
自らがつけているスカウターの向こうにいるだろうあの二人に対して、聞き取れるように口からだした。
「……お前、ナメック星人だな?」
ピッコロに向き直りつつ。悟空に──わざと背を向けるようにして。
……悟空、原作通りに戻れるように舞台は整えてやろう。
「ナメ……?」
「ナメック星人ということは……どんな願いもかなえる玉がここにもあるということか……」
ピクッとピッコロが体を震わせる。
「ハッハッハッ……図星らしいな。いい情報が手に入ったぜ!」
ピッコロ……さんが俺をにらみつけてくる。怖すぎて「さん」付けしてしまった。
ちびりそう。いいのかそんなことして? サイヤ人の看板に傷がつきかねない失態を犯しそうだぞ。
悟飯と一緒にちびるぞ。いいのか? お?
「ついでだ。いい事を教えてやる。俺がつけているこの機械は通信機器を兼ねていてな……。」
「──俺より強い2人にも聴こえてるだろうよ!」
「なッ……!」
青い顔をますます青くしているよ。いや改めてみるとちょっとわかんない。
これから先もっともっと強い奴がたくさんいるから頑張ってくれよな!
……念の為、地球の被害を抑えるか。
「街を壊したりすると……その玉が壊れるかもしれないな……あの二人は大体遅くても
一年後までにはくるだろう。それまでに玉を集めてもらおうか、ナメックせいじ……!」
突如後ろからガッ、と羽交い絞めにされる。
……ああ、そうだ。これを待っていた。
原作の通り進むには、これでいい。
「……何をする気だぁ? カカロット!!」
後ろに振り返ると孫悟空が俺を背後から羽交い絞めにしていた。