ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
悟空が神殿に戻ってきた、悟飯とピッコロを引き連れて。
「カカロット、戻ったか」
俺はそう声をかけて悟空に近寄ると、その後ろにいた悟飯とピッコロの目が鋭くなった。
俺が行った所業を考えればそんなことになるのも無理はない。
悟飯にいたっては怖いんだろう、少し震えている。
ぐっ……こたえるなぁ……
「悟飯、ピッコロ、でぇじょうぶだって! 兄ちゃんはもう悪いことは─」
「カカロット、俺が話す。ありがとうな」
フォローに入ろうとする悟空を制し、二人に近寄る。
─まずは悟飯だ。
片膝を地面につき、できるかぎり悟飯と目線を同じくして、俺は話し始めた。
「……お父さんを俺の勝手な都合で─しばらく引きはがしてしまって、すまなかったな。もう絶対、引きはがさんよ」
「お父さんが死んじゃったとき、僕……いっぱい泣いちゃった……でも!」
─もしもまたお父さんに悪さするようなら! ぼ、僕が許さないぞ!
一生懸命に震えを抑え、俺を睨みつけながらいう悟飯。
怖いだろうに。怖いだろうになぁ。
将来「勝てんぜお前は」とかいう子に育つとはいえ─
ものすごく良い子だ、本当に。
ピッコロさんもコロコロさんになってしまうのわかるわ。
「……約束しよう。お前のお父さんにはもう悪いことはしない」
そういいつつ、頭へ手をポンッと軽く置く。
「……強くなったな、悟飯─カ、孫悟空の立派な息子だ」
ポカーンとしている悟飯。
その表情がかわいらしくて、そのままくしゃくしゃっ、と撫でまわしてしまった。
「わっわわっ!」
びっくりはしているが振り払うでもなく、だんだん震えもおさまってきたらしい。
ああ、まだ撫でまわしたいし名残惜しいが……
「さて……」
俺はそっと悟飯の頭から手を離し、なんか撫でまわしたあたりで
目がさらに不機嫌に鋭くなっていたような気がするピッコロに向き合った。
「……久しぶりだな」
「フン……先に言っておくぞ」
剣呑だなー。怖いなー。
「悟空のヤローにはうまく取り入ったようだが……。俺は 特 に キサマと慣れ合うつもりはない……!」
特に! と念押しされた。まぁ慣れ合わんだろうが、念のため釘は刺しておくか。
「肝に銘じておこう……だが修行には付き合ってもらうぞ」
も、もし修行に付き合ってくれなかったらそれはそれでまずいからね。
余計な被害は出したくないんだ。
「へっ、修行には心配せんでも付き合ってやるさ……クックックッ、修行中についうっかり倒されることのないよう注意しておくんだな」
やだ。何を言ってもめっちゃ強い言葉返してくるこの緑色。
あまり強い言葉を使うな。俺の心が弱まるぞ。
「……ああ、わかった。お前もその威勢に見合う実力を身に着けておくんだな」
「チッ……」
こっちも強い言葉で返すかーと思って返したら舌打ちが返ってきた。
ピッコロとはバッドコミュニケーションな気もするが……何はともあれ、これでふたりとも挨拶を済ませた。
神殿に誰かシュタッと到着した音が聞こえる。……タイミングがいいな。
「ヤムチャ、いいタイミングだな。ブルマへは頼めたか?」
「おー、頼んできたぜ、ええとたしかな─」
俺はヤムチャに、ブルマ(とブリーフ博士)に頼んで欲しいことがあるとお使いに出していた。
自分ではいかないのか? とヤムチャが言うので、俺が行くよりお前が行く方がブルマが喜ぶだろう、と言っておいたら効果てきめんだった。
「無線機については3日もあればできるから、3日後にカリン塔に来て欲しい、そのときにスカウターで測るからとも言ってたぞ。重力制御トレーニングルームは敵が来る前には難しいかも……とは言ってたが……」
依頼内容は3つ。
ひとつ、小型無線機の開発および量産。
……スカウターのような形で、かつ戦いの邪魔にならないものであればなお良し。
原作を見ていても思うことだが、報連相がうまくいかずそのおかげで手こずることが多かった覚えがある。
それらを防ぐため、そして予想外のことが起きたときに役に立つだろう。予想外なこととは何ぞやだって?
……急に劇場版の敵が現れたりとか?
─まぁ備えておくのはいいことだ。
ふたつ、スカウターによる定期的な戦闘力確認。
クリリンから「そういやお前の耳についてたやつなんだけど……」と話をされたときに思いついた。
今はブルマが修理して持っているらしいので、そのスカウターを借りて─いや元々は俺のだから返してもらい
─今の実力を確認しておこうという算段だ。
まぁスカウターの数値が全てではないとは思うが、
ある程度の目安にはなるだろう。
みっつ。重力制御トレーニング室の作成。
悟空がナメック星に行くときの宇宙船に積まれてたあの装置。
1〜100Gを調整できる、いや100G以上も出せるならありがたいが─いわゆるトレーニングルームが欲しいことを伝えた。
これは残り日数を考えるとサイヤ人の襲来が終わったあとの完成になりそうだが。
……それはそれで問題ないだろう。備えておいて損はない。孫だけに。
……これいいな。界王様に教えてやろう。
「─いや、それでいい。今回のサイヤ人はお前たちと共に凌げたとしてもだ、世の中にはまだまだ強いやつがいるからな……」
「そ、そうか……備えあれば嬉しいな、ってやつだな!」
「……、まぁ……憂いも無くなるから確かに嬉しいな……」
─頭の修行も必要かもしれない。
あんな大人にさせないよう、ここで修行する間は気分転換に悟飯の勉強でも見てやるか……。
「ラディッツよ。今、いいか?」
そんなZ戦士学習計画を建てていたら神様より声がかかった。
「─お前に会わせたいものがいる」
了承の意を込めて頷くと、そんなことを言われた。
─誰だろう?
俺は気付かなかった、神様がニヤリと笑みを浮かべていることに─
◇◇◇◇◇
いま、俺は神殿から離れ、指定の場所まで空を飛んで向かっていた。
……俺が蘇生するよう頼んでおいた戦闘力5のオッサンとこれから会うのだ。
神様は、俺が頼んでおいたオッサンの件をキチンと覚えており、俺たちと一緒に蘇らせていてくれたようだ。
憂いを残さない事が嬉しいのなら、サイヤ人との戦いの前に会いに行って謝罪してこい、と言われ今に至る。
……あとでヤムチャに無茶させてやる。
─二度と関わらないか、いつか謝罪しようと考えていたが……まさかこんなにも再会が早くなるなんてなぁ。
(罵倒なんていくらでも受けてやる……知らんこととはいえ、ラディッツの─自分の罪であるのは間違いない……だが─)
─それはそれとして、気が重いことには変わりないのだ。
はぁ〜……。
◇◇◇◇◇
(ここか……目視では誰もいないように感じるが……)
たどり着いた場所は、原作でラディッツが農家のオッサンを殺した場所だった。
(念の為、気を探ってみるか……)
精神を研ぎ澄ませ、自然に任す。
すると少し離れた場所から何かが近付いてきていた。
(このスピードは……車に乗っているのか……ゆっくり待つか)
しばらく待っているとブロロロ……という音とともにやけに新しいトラックが現れた。
そのトラックからでてきた男はまさしく─戦闘力5の、農家のオッサンだった。
こちらに気付き、おっかなびっくりと言う様子で近付いてくるオッサン。
─とにかく謝罪をしなくては。
そう思った俺はそのままジャンプし─オッサンはビクゥッとしてた─土下座を決めた。
「この度は大変申し訳なかったッ! 謝罪して許される事では到底ないだろうが……! 本当に申し訳ない!!」
─とにかくこれで謝罪はした、相手の出方によるさ。罵倒されようが殴られようが。あとは流れでお願いします俺。
「い、いや、顔をあげてくださいだ! 今回のことはおらが悪いだ!! 命の恩人におら、そんな事言われたら申し訳ないだ!!」
─ん? 想定外の返事が来たぞ? どういうことだ?
顔を上げて困惑する俺にオッサンは説明を続ける。
「な、なんでジャンプしたかはわがんねけども……あ、あんたさまのことは神様から聞いてるだ! あっ、神様とは夢の中でしか見たことないだべが……」
オッサンから聞いた神様の話をまとめるとこういうことらしい。
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宇宙から来た俺─宇宙人であるラディッツは、ファーストコンタクトとして出会った人間に平和的に交渉しようとした。
あのスカウターは翻訳機で、それに表示された挨拶の言葉をオッサンに伝えたが、どうやらタイミング悪く壊れていたらしく、まるで罵倒をするかのように誤訳されてしまった。
オッサンは恐怖のあまり銃を撃ってしまったが、俺こと宇宙人は
それが地球人の挨拶だと勘違いし、その銃弾を手で受け止め打ち返してしまった。
それが間違いだと言うことに気が付いたが後の祭り、罪悪感に苦しんでいた俺を『クールでニヒルでシブい』神様が哀れに思い、
おとぎ話と信じられているドラゴンボールのことを教えた。
オッサンを蘇らせるために地球で旅に出た宇宙人ラディッツ。
幾多の危険を乗り越え見事、ドラゴンボールを集め、オッサンを蘇らせることに成功したのであった。
=====
なんだこのカバーストーリー!? 神様???
なんか今、神様が「私が考えました」みたいな生産者マークつけて見ていそうな気がする。
絶対ピースしてるぞあの神。ミスターポポも添えてピースしてる。
そんなことを考えつつ、おらがわりぃんだ、許してくれ!! と俺よりも
めちゃくちゃ謝るオッサンに対し慌てて話をするのだった。
ええい俺の良心が久々に死ぬ!
「と、とりあえず、これ以上、謝らないでくれ。俺が命を奪ったのは事実だから……」
「いや! おらが恐怖に負けて銃をぶっぱなしたのがどう考えても悪いべ! それなのにおらを蘇らせるために、あのおとぎ話と思ってたドラゴンボールを集めてくれただなんて……」
「だから……う、むむむ……」
─しばらくしてオッサンと俺は最終的にお互い様、ということで話を決着させた。
「いやー……夢ん中で神様もおっしゃってたんだべが、ラディッツさんは本当にいい人だべな!」
「あ、ありがたく受け取っておこう……しかし、俺のせいでもあるんだが、その……いなかった間の農場は大丈夫だったのか? もしも俺で手伝えることがあるなら─」
「いんや! 夢ん中で神様が、オラが死んでいる間見ていてくれていたらしいべ! つくづく神様には頭を下げられんべ! トラックもなんか新しくしてくれたしな!」
神様もラディッツさんもほんといい人……いや神様は人っていい存在だべか? と首をひねっていた。
─神よ、感謝しておくぞ。
「そうだ! ラディッツさん! これ、おらの農場の場所が載ってるチラシだべ! もし美味しいもんが必要な場合は声かけて欲しいべ! あ、あとおらんところで育ててる野菜だ、ほんの少しだけど受け取って欲しいべ!」
「わ、わかった。ありがたく受け取っておこう。─さて、名残惜しいがそろそろ俺は引き上げるとするか」
ダンボール2箱分の野菜と、農家のオッサンの農場のチラシを受け取った俺。
「わかっただよ! ほんとうにありがとうな!! ─ところでラディッツさんはその荷物、どうやって持って帰るべ?」
「ん? ああ─」
ひょいと段ボールを軽く持ち上げ、ふわっと空を飛んで─
「宇宙人らしく、持って帰るさ。じゃあまたな」
ニヤリとほほ笑んでオッサンと離れた。
「やっぱ宇宙人ってすげぇんべなぁ……」
オッサンはそう呟いた。