ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
かくいう私は人造人間21号が好きでね……。
でもチライも好きでね……。
「ぐぁあああぁあ!!!」
ベジータはかめはめ波に身を焦がし、空へ空へと昇っていた。
(こ、このままだとま、まずい……)
なんとか身体を動かし、かめはめ波の波動から転がるように逃れ空中に浮かぶ。
全身から血が流れ、肩で呼吸しながらベジータはイライラした。
(お、俺はサイヤ人の王子なんだぞ……! な、なぜ俺がこんなところで……!)
「ちっくしょぉめぇぇー! お、俺は……サイヤ人で最強のベジータ様だぞ!!」
今頃自分はドラゴンボールで願いを叶え、不老不死になり、いけ好かない野郎どもを殺して宇宙を行脚していたはずだ、と自分勝手な己の野望が思うように進まず、怒りと悔しさでわなわなと震えていた。
「ち……ちくしょう! それもこれも……あの弱虫が悪い……!」
あの弱虫─ラディッツが悪い、と結論づけた。
あの男さえいなければ……あいつさえいなければ……!
「月だ! もう大猿しかない! 醜くなるからイヤだが大猿になりさえ……すれ……ば……?」
逆転の一手を求め、月を探すベジータだが……
「な、ないぞ月が!? 何故だ!! もう出ていてもおかしくない時間だろう!!」
存在するはずの月が無かった。
ちなみに月がないのは原作通り、大猿化した悟飯を止めるため、ピッコロがその月を壊したからである。
「く、く、く……くそったれぇえええ! あいつら!! 大猿になるのを防ぐために! あらかじめ月を破壊してやがったな!!」
イライラが頂点に達したベジータは、最終手段に手を伸ばす。
「この技は戦闘力が落ちるから使いたくなかったが……仕方がない!!」
(あいつの尻尾はちぎれていた……、ナッパも念の為尻尾を切り落とした……ふ、ふふ……確実にあいつを─殺せる!)
邪悪な笑みを浮かべながら、ベジータはラディッツが待つ地上へ向かうのだった。
◇◇◇◇◇
俺はベジータの気を探っていた。
(……月を探しているんだろうな、だがピッコロが破壊している……となれば……『パワーボール』か)
月の代わりになるボールを発生させる技……大雑把にいえばそんな技だ。
(大猿になれば単純な戦闘力は10倍だったか……)
普通に考えればベジータが一発逆転を狙うのであれば……この技しかないだろう
「……す、すげぇがや! おめぇ!!」
訛がひどい声が聞こえた。あっ……この声は……。
「お前はアルマジロ」
「だんからっヤジロベーいうとるでしょーがっ!」
やだ、お前はアルマジロだ。今後ずっとそう呼んでやるからな。
……なんだその首からかけている小さなズタ袋は……お守り代わりか?
おっと。
「すまんすまん……でどうした?」
「いやどしたもこしたもねぇべよ! 隙を見て尻尾きぃれちゅーとるがや、こんなんもう出番ねぇおもうたがやね!」
ああ……そうか。
ピッコロと悟飯以外に、ヤジロベーも俺は連れてきていた。
彼に命じたのはひとつのみ。
「おみゃーさんがいりゃあ、尻尾きれんでももう影響はなかとでしょ?」
「いや……尻尾で攻撃されることもあるからな、武器を潰せるにこしたことはない」
「そ、そうか……な、なぁその口ぶりってもしかして……」
「もし生きてなかったらもう臨戦態勢は解いてるぞ……だから気配を消して隠れておけ」
「わ、わかっだ……!」
ピュピュピュのピューと逃げ去るヤジロベー。
彼が見えなくなったと同時にニヤニヤとベジータがエントリーしてきた。
「考えたな、ラディッツ……月を消しておくとは。……してやったりってところか?」
「やはり……大猿になろうとしていたのか?」
「はははははっ……あ、頭にくる話だが……貴様を完膚無きまでに叩き潰すために変身してやるぜ!!」
パワーボールを作ろうと構えをとりつつ演説を始めようとするベジータ。
だが、今ここにいるのは悟空ではない、残念だったな……
「貴様の絶望顔が目に浮かぶふぉお!?」
「へっ、甘ちゃんだなベジータ……この隙を逃すかよ!」
俺は2倍界王拳で高速移動し、ベジータの頭を手でつかんでラリアットのような形で岩山の岩盤に突進しベジータを叩きつけた。
なんかどこかでよく見た技を出してみたが、こうもうまくいくとは……。
ぐいぐいと力任せに押し込む俺にベジータは息も絶え絶えに絞り出した。
「は、はなせぇっ……」
「この地球から出ていくなら考えてやるぞ! ベジータ……」
「き……貴様……!」
「なんだぁ……その目は……!」
反抗的な目をしてきたのでさらに界王拳を0.5ほど出力を増させ、岩盤へさらに押し込む。
「ぐぁぁ……わ、わかった……! だからは、離しやがれ……!」
「……いいだろう」
降参の意を示してきたので少し離れた地面に叩きつけておいた。
─これで終わり、なら楽なんだが……
地面から立ち上がったベジータは、息も絶え絶えだが何度目かの怒りがきたようだ。
逆上したときのベジータってたしかよくあれしてた気がする。
なんだっけ……あれだよあれ。
「はぁー! うぉーりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!」
そうそうグミ撃ちグミ撃ち……
俺はベジータが放つグミ撃ちをかわし、そのグミ撃ちで舞い上がった埃に紛れ移動した。
「はぁー……はぁー……ざ、ざまぁみやがれ……!」
「サタデークラーッシュ!!」
もうもうとあがる埃からベジータの位置を捉え、俺は自分の技である『サタデークラッシュ』をベジータに放った。
「おぐぁっ……!」
腹にもろに受け、屈み込むベジータ。
もう、パワーボールも作れるほどの体力はないだろう。
まだ少しだけ動けるだろうが……。
「おっしゃ! あとはまかせんしゃい!」
─ここで俺には誤算が生じた。
ヤジロベーがベジータに突進してきたのだった。
……尻尾を切るのではなく、トドメを刺そうと。
ヤジロベーの首にかけたお守りのような何かが妖しく揺れるのだった。