ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
アニオリ的な感じで見ていただけたならば。
「ほう、勉強か」
「……」
ここは神殿。
来たるサイヤ人との戦いに向けて、戦士たちが鍛えている。
今日の修行が終わり、皆思い思いに騒ぐ中、神殿の隅っこの方で算数のドリルを広げている悟飯と、
その様子をわざわざ目の前に座って眺めている悟空の兄……ラディッツとの会話? だった。
(この人は……僕のお父さんを殺した悪い人だってピッコロさんが言ってた!)
口をギュッと真一文字に結び、チチから宿題として渡されていた目の前の算数ドリルに集中する悟飯。
何故か自分の父親である悟空はラディッツのことを信用しているみたいだが、僕は騙されるものか! と密かに決意する。
(絶対に口をきくもんか!)
「……」(カリカリカリカリ)
「……ふーむ、計算が早いな」
「ふえっ?」
決意はいとも簡単に崩れてしまった。
「しかも正確だ」
「……えへへ!」
「だが惜しい、この1問だけ間違っている」
「えっ!?」
スッっとラディッツの指が一つの問題をトントン、とたたく。
怪訝に思った悟飯が改めて計算をし直してみると、確かに間違っていた。
「うーん、まちがえちゃった……」
あちゃーという顔の悟飯。
「だがほとんど正解だ。それに間違いに気付いたということは、今後見直しをすれば気付けるということだ、問題ないと思うぞ」
アドバイスをしつつ、ラディッツは悟飯にとある物を渡す。
「あー……これ知り合いからもらったんだが、俺はあまり甘いものは食べなくてな……いるか?」
「あっ! キャンディだ!!」
ラディッツの手からカラフルな包み紙にくるまれた飴を年相応の笑顔で受け取ろうとする悟飯。
──ふとその手が止まり、サッと手を引っ込めていた。
「どうした?」
「ぼ、ぼく、いらない!」
(お、おかあさんが言ってた! 知らない人と悪い人から受け取ったらだめだって!)
ラディッツの問いにそう返し、ドリルに目線を戻す悟飯。
ただし、名残惜しそうにチラチラとラディッツの手にある飴に視線が泳いでいるが……
「そ、そうか……ふーむ」
「……?」
悟飯のドリルの上に、ひとつずつ飴の入った包み紙をそっと優しく落とすラディッツを、怪訝な顔で悟飯を見つめる。
「お、おやぁ飴を落としちゃったな〜! どこに落としたか分からないから拾った人のものになっちゃうなー」
そんなことを言いながら神殿から出ていくラディッツの背中を、悟飯はポカンと見つめていた。
しばらくしてラディッツが戻ると、悟飯はすでにおらず、飴も全て無くなっていた。
代わりに1枚の紙がおいてあり、拾って読んだラディッツは微笑んでいた。
──ありがとう。
とだけ書かれた、鉛筆の字を見て。
◇◇◇◇◇
「ヤムチャさん、ラディッツ知りませんか?」
「ん? あー、あいつならついさっきあっちの方向へ出かけていったぞ?」
とある日の神殿。
いつもより早く鍛錬が終わり、暇にしていた悟飯。
なんとなく、少し離れたところのクリリンとヤムチャの会話を聞いていた。
「へ、そうなんですか。しまったなー……ちょっと見てほしい技があったんですけど……」
「ふーん。でもどのみち駄目だったと思うぞ……さっき俺が頼んだら『スマン、今日は無理だ』と言われたからな」
「え? ふーん、よっぽど大事な用事だったんですかね?」
「ははっ、そうだな……大方、これでもできたんじゃないか~?」
そういって小指を立て、ほくそ笑むヤムチャ。
「え、えー……あのラディッツがですかー!?」
「でもモテそうじゃないか、俺ほどじゃないだろうけどな!」
「う、うぅ……いいなぁ……」
「……ま、クリリンもいつかできるさ。今日は俺と組手やってみようぜ!」
「はい! お願いしますヤムチャさん!」
(ラディッツさん、どこへ行ったんだろう?)
クリリンとヤムチャがいなくなった後、そんな疑問が湧いた悟飯。
(……も、もしも悪いことしてたら、お父さんやピッコロさんに知らせなくちゃ! ……な、なんだか探偵やスパイみたい!)
さらに幼いながらの正義感と冒険心がムクムクと湧き、そっと神殿を離れていた。
ヤムチャが言っていた方向へ飛んでいると、前方にゆっくり飛ぶラディッツの姿があった。
(あ、いたいた!)
バレないようこっそりと後ろを飛んで追いかける悟飯。
しばらくするとラディッツがおり始めた。悟飯も一緒におり始めこっそり後を追う。
(ここ、なんだろう……? 変な鳥がいるなぁー)
とある家の前に着地し、ノックするラディッツ。
悟飯はすぐそばの干し草の塊の裏に隠れていた。
「はいはい~……おお、ラディッツさんだべか!」
「ああ、また配達の手伝いにきたぜ」
「いやー! 本当に助かるべ! しかし、こんなにオラの農家のもんが売れるとは思わなんだ……」
「嬉しい悲鳴ってやつだな。お前にもらった野菜を地球の知り合いにも配ったらおいしいって好評だったぞ」
「そら素直に嬉しんだけども……もすかして、そっからひろがったんじゃねぇべか?」
「………………。……さーて、いっちょハデに運ぶか!」
「やめてけれ! こ、これ以上はオラが忙しさで二度目の死を経験しちまうから地味に頼むだよ!」
家の中から恰幅のよい農家の装いをした男性がでてきた。
まるで昔からの知り合いのように、ラディッツとポンポン会話をしている。
あの神殿では見たことが無いラディッツの表情に、悟飯は新鮮さを覚えていた。
ふと、耳元で何か動くのを感じ、その方向を見る。
「わわっ!!!」
この牧場で飼っている、なんか変な鳥が悟飯に近づいていたのだ。
びっくりして隠れていた干し草から悟飯は飛び出していた。
「だ、だれだべ! 泥棒か!?」
「ご、悟飯!?」
おっさんとラディッツが飛び出してきた悟飯の方向を見てびっくりしていた。
「な、なんだ知り合いだべか……びっくりしただぁ……」
「す、すまんな……俺の甥っ子だ。悟飯、怪我はしてないか?」
「う……うん、怪我はないよ。──ラディッツさんが出かけたのが気になって……それで……」
怒られるものと覚悟していた悟飯は、心配そうに自分に目線にあわせて両肩に手を置いて話しかけるラディッツに少し戸惑い、言葉を詰まらせながらもここまでの経緯を話した。
「そうか……正直に話せて偉いぞ、悟飯!」
「ラディッツさは正直に話してないけんどもな……」
「うぐっ……正論力50万の化け物め……!」
やいのやいのと言い合ってる二人を交互に見上げ、悟飯は震える声で「ごめんなさい」と頭を下げた。
「い、いや悟飯……これは俺が悪いからな」
「このロン毛のおじさんが悪いから気にしなさんな」
「……おい」
「でも、今度は誰か大人の人と一緒に来るといいだ。それにしても、きちんと謝れる子はいい子だべー。ほれ、飴好きか? ここで採れた果物の果汁が入った飴だべ」
「あ、ありがとうござ……あれっ、この飴……ラディッツさんからもらった飴と同じ包み紙だ」
悟飯はおっさんから飴を受け取ると、その見覚えのある包み紙に首を傾げる。
「……オレ、ゴハンニワタシテナイゾー……オトシチャッタカラナー、オレハナニモシラナイナー」
「なんでカタコトだべか? ……あー、強面で甘いもの好きそうにないラディッツさんが、ここに手伝いに来るたびに飴を欲しがる理由がわかったべ」
「は、配達に行ってくる!!!」
ニヤニヤと笑みを浮かべて横目でラディッツを見るおっさんに、顔を少し赤くしながらジトッと睨み返し、そのまま配達の品物が置いている場所に向かうラディッツ。
(……ラディッツさんは、僕のためにここの飴を持ってきてくれてるんだ)
「悟飯くん」
農家のおっさんが悟飯に話しかける。
「いい伯父さんを持っただな?」
その問いに対し、悟飯は元気よく大声で答えた。
「はいっ! ……僕の、大好きな伯父さんです!!」
そういうと悟飯は自分のおじさんの元へトテテテ……とかけて行った。
(宇宙人ってやつは色々と違う部分があるけんど……地球人と同じ、同じ人間だべなぁ)
配達に出て行くラディッツたち──ラディッツの頭から湯気が見える気がする──の背中を見届け、農家のおっさんは気合を入れる。
「さて、今日も今日とて働くべ!」
農家のおっさんの名前はもう、おっさんでええか……