ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~   作:ナッパにウィッグを。

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サイヤ人襲来前、ラディッツが死ぬ前の小話その②


閑話 ~弟夫婦~

 ある日のこと。

 神殿に悟飯のドリルの進捗状況を見にやって来たチチは、勉強を主に見てくれているラディッツと話をしていた。

 

「悟空さの兄が、まさか勉強を見れっとは思わなんだべ……」

「……弟はああ見えて頭はいい方だぞ。興味があることに振り切ってはいるがな」

 

 悟飯は、カリン塔で悟空を相手に組手をやっている。

 

 ──ラディッツに相談したいことがある、とチチから言われたのだ。

 もしかすると弟や息子に聴かせたくない話もあるかもしれないと思い、ラディッツが手を回しておいたのだった。

 

「悟空さは修行ばっかで……家庭をかえりみねえだ!」

 

 チチの相談開口一番を聞いて、ラディッツは改めて己の行動を褒めていた。

 

「悟空さは口を開けば『修行だー!』ばかり! もううんざりだべ!」

「それで修行から帰ってきたらたくさん食べるだ!」

「おっとうの財産が無ければオラたちもうすでに路頭に迷ってるだよ!」

 

 近くで訓練していたピッコロとクリリンがチラリとラディッツを見る。

 その視線で、二人が何をしてほしいか何となく察する。

(何とかしてくれ、か……)

 

 その奥で訓練しているヤムチャと天津飯と亀仙人も同じくこちらを見ていた。

(義理の妹は見せもんじゃないぞまったく……にしても、だ)

 

「ガピー! ビーガガガ!!」

 ヒステリー気味に喚き散らすチチの話を聞きつつ、絶妙な相槌を打ちながらラディッツはどうするべきか考えていた。

 

(……原作を読んだ時も思ったが、これは相当に疲れてるなぁチチさん)

 

 無理もない、旦那は殺され息子は誘拐──。

 再び再会できた夫と息子は死闘に晒される──。

 収入は自身の父親頼り。サイヤ人は大食らい。

 考えなくてよいことまで悪く考えてしまうかもしれない。

 

 ──もしも自分がチチの立場だったら、と思うと少し身震いする。

(そんなこんなの心労が積もり積もって原作の『悟空さはどうだっていいだ!』につながるんだろうなぁ……)

 

 その言葉は、原作の悟空はどうだったかわからないけど、この世界の悟空は間違いなく確実に傷付く。

 兄として確信している。

 

(お節介かもしれんが……兄としては見過ごせんな)

 

 一通り叫び終えたのか、少し落ち着いたチチに声をかけた。

 

「だいぶ吐き出したな。……悟空の兄として話したいことがある」

「……も、もすかしてラディッツさも悟空さの味方け!? サイヤ人だからべか?!」

「そういう風に聞こえることもあるかもしれん。だが、ひとまず話をさせてほしい。……最後まで聞いてくれるか?」

「──ちょっと口を挟んだりすっかもしれねぇけども……わかっただよ」

 

 ラディッツはゴホン、と軽く咳を一つした。

 そして──

「まずは今更だが。……弟と結婚してくれてありがとう」

 深々とチチに頭を下げた。

 

「ふえぇっ!? ど、どうしたべ、ラディッツさ!?」

 

 予想してた話と全然違っていたのだろう。

 チチは素っ頓狂に返していた。

 

「いや……、弟とはあの世と……そして生き返ってからの短い付き合いだが……うむ。一言でまとめると……大変、だろう? 故に、結婚してくれてありがとう、と」

「は……はぁ……。そ、そりゃあ悟空さは大変だけども……お、お、オラ、世界一悟空さを、あ、あ……愛してっ……からな!」

 

 唐突に結婚について感謝され、困惑しながらもそりゃあ愛しているから当たり前だとプシューと湯気を飛ばすチチ。

 

「はははは……あんなに言っても、愛しているんだな」

「そ、それとこれとは話が別だべ! な、なんか文句さあるべか!?」

「安心しただけだ。……なら、この話をしても大丈夫そうだ」

「……ど、どんな話だべ」

 

 急にひそひそ声になったラディッツにあわせてついひそひそ声で応答するチチ。

 ラディッツは、あの世での悟空が語った「オラがやらなきゃ」話をチチに伝えた。

 

「──とまぁ、こんな話があってな……」

「…………」

 

 チチからの反応は特にない。

 ふぅむ……何か反応がありそうなもんだがな……。

 

 ──と思ったらチチの目から文字通り滝のように涙が出てきた。

「うわぁあああああぁん! お、お、オラ……悟空さの嫁さ、失格だべぇえええ!!」

 

 ピッコロとクリリン、ヤムチャと天津飯と亀仙人が驚いた顔でこちらを見ていた。

 

 

(あのチチを泣かした!? とか思われてそう)

 ピッコロたちに「こっち見んな」とあっかんべーをして、チチが泣き止むのを待った。

 

「ぐ……ぐす……オラ……愛してるくせに悟空さのこと、何もわかってなかっただ……」

「それが人間だ。……そのだな、弟と一度、夫婦ふたりきりで話すことが必要だと思うんだ」

 

 チチが泣き止む頃合いを見計らってラディッツは話を続ける。

 目の前に追加のティッシュ箱を置いて。

 

「オラと悟空さが……?」

「そうだ。……俺は結婚してないから夫婦ってもんがわからんが……夫婦円満の秘訣はお互いに本音をぶつけあったりする時間が必要なこともある、と聞いたからな」

 

 そうラディッツは言いつつ、「そして」と付け加える。

「これは……俺がそういう考えなだけだが……『惚れた女性には弱みを見せたくない』という男もいるんだ……不器用だろ?」

「ほ、ほ、惚れ……!?」

 

 再びヤカンみたいにプシューと湯気を立たせるチチ。

「弟がそういう考えを持つかは……俺はわからん。だが……あんなに強い弟も『弱さ』は持ってるんだ」

 

 だから──とラディッツが続けるのをチチは食い入るように聞く。

(これはメモしとくか)

 ──ヤムチャが何故かメモを取っていた。

 

「兄のワガママで本当に申し訳ないが、一度夫婦でゆっくり話し合ってみてほしい。どんな話でもいい、今後のことでも今のことでも、なんでも。もちろん、2人の兄として、俺も全力で協力するから……」

 

 どうだろうか? と精一杯にこやかにラディッツは微笑んだ。

 一方ヤムチャは、必死にメモしていた。

 

 しばらく目を閉じて考えていたチチはパチッと目を開けた。

 

「……はぁー……わかっただよ。オラも自分本位で物事を考え過ぎていたかもしんね……」

「いやいや、チチさんも弟と悟飯のことを思っての行動だろう? こういうことはお互いゆっくり話して、ゆっくり歩みよればいいさ」

「……だな! 善は急げだ! ちょっと悟空さのところさ行って今日話せるか聞いてみるだ!」

「俺はゆっくりと、っていったんだがな……ま、それもチチさんの個性か。悟飯は任せてくれ」

「ははっ、だいぶスッキリしただよ、ありがとうなラディッツさ。悟飯ちゃんをよろしく頼むだ!」

 

(よし、なんとか良い流れになったな)

 ラディッツがホッと安堵して、カリン塔に戻るチチを見送っていると……いつの間にかヤムチャがそばにいた。

 

「な、なぁラディッツ! 浮気がバレたときの……そのー平和的なお話の仕方〜……とか知らないか?」

「ヤムチャか。知らん。他を当たれ」

 

 馴れ馴れしく、浮気の言い訳について聞かれたラディッツは冷たくあしらった。

 ラディッツは純愛主義であるのだ。

 

「そ、そんな冷たくするなって! お前意外と話が上手いし! な! な!?」

(なんだこいつ……ん……? もしかしてもう既に!?)

 

 それでもなお食い下がるヤムチャに、ふとあることがラディッツの脳裏を横切る。

 

「なぜそんなにも必死なんだ……もしかして……何か身に覚えがあるのか?」

「うぐっ……い、いや俺じゃなくて……そ、そうそう友人だよ友人!」

 

 ラディッツの質問にたじろぐヤムチャを見て、ラディッツは確信した。

 後ろで天津飯が信じられないものを見るような目でヤムチャを見ている。

 

(お前……露骨すぎるぞ……)

 

「……友人に伝えとけ、自業自得だ。おめぇの出番だ天津飯」

「了解したラディッツ。ヤムチャ……お前を(社会的に)殺す──」

「エゴだよそれは! や、やめてくれ!!」

 

 天津飯に連れられていくヤムチャにラディッツは合掌する。

 その様子を見ていたクリリンは「『彼女』って恐ろしいのかもしれない、逆らわないようにしよう」と決意するのであった。

 

 

 翌日──

「というわけで、オラも若い頃を思い出して鍛錬するだよ」

「!?」

 

 髪の毛をお団子からポニーテールに変え、カンフー服を身に纏ったチチと、少しやつれた様子の悟空とともに、ラディッツはカリン塔にいた。

 

「カカロット、説明を頼む」

「……兄ちゃんが、オラとチチは一度ゆっくり話した方がいいちゅーわけで昨日一晩話したけんど……その結果こうなったんだ」

「わけわからん……」

「オラも……。ははっ……兄ちゃん」

「ん?」

 

 カリン塔でカリン様を追いかけ回すチチを見ながら──

 

「オラ、チチと結婚してよかった!」

 

 笑顔で兄に報告する悟空であった。




ドラゴンボールスパーキングゼロが発売ちけぇぞ!
オラテッカテカしてきたぞぉ!
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