ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
悟天はきちんとあの時期に生まれます。
まぁ今後の悟空さとチチをまた度々見て頂けると幸いです。
ナメック本編の方はひとつを除いてなんとなく頭に浮かんでるので……
──とある日。
「ふぅ……今日も無事終わったね、伯父さん!」
「ああそうだな、助かったよ悟飯。……お〜、夕日に照らされた空が綺麗だな……」
ラディッツと悟飯は農家のおっさんの配達を終え、夕日色に染まった空をバッグに飛んでいた。
「しかし……手伝わなくてもいいんだぞ? お前も修行で疲れているだろうに……」
「伯父さんと配達に行くと、僕の知らない『新しい』が見れて楽しいから! だから手伝わせてよ!!」
「そうか……」
少しくたびれた顔をしているのにえへへ、と楽しそうに微笑む悟飯に癒されるものを感じつつ、ラディッツたちは神殿に向けて飛行する。
どれくらい経った頃だろうか──
──ァー……ン
──……ん‥‥……え……
「……ん?」
(なんだ、この音……?)
かすかに、何か聞こえた気がしたラディッツは空中で急停止して、耳を澄ませる。
「? 伯父さん、どうしたの? 急に止まって……?」
「なぁ悟飯……何か聞こえないか?」
「んん……?」
急に止まったラディッツに事情を聴き、同じように耳を澄ませる悟飯。
──えー……ん……えーん……
──パァー……ン……
(こ、これは……間違いない)
「「泣き声と銃声だ!」」
ラディッツと悟飯はお互いに同じことを口走った。
「行くぞ悟飯!」
「はい!!」
そしてそのまま、一目散にその音のする方向へ加速した。
◇◇◇◇◇
(な、なぜこんなことに……)
「パパ……えーん!!」
泣き叫ぶ自分の娘を抱きかかえ、男はこちらに銃を向ける二人組の強盗を睨んでいた。
一人は小柄でニヤニヤとしており、もう一人は大柄でぶすっとしていた。
「へへ……金目の物を出せば命は助けてやると言ってるだろう……!」
「だ、だから金目の物は渡したじゃないですか!! まだ足りないというんですか!?」
強盗の目の前に積み上げられた財布や宝石など、あらゆる金目のものを指差して男は叫んだ。
だが、小柄な方の強盗はさも愉快そうに、目の前の男が運転してたであろう車を指差して話しかけた。
「おいおい、足りる足りないじゃねぇ……まだ残ってるじゃねぇか……その車とかよぉ!」
「く、車!? 車は勘弁してください!! 貴方に撃たれた妻を病院に運ぶ必要があるんです!!!」
「おいおいおい、約束は守らないといけないってガキでもしってるぜ? さもないとまたこれが火を吹いちゃって……今度はそのカワイコちゃんに穴を開けちまうかもしれねぇぜ〜?」
小柄な強盗はそういうと手に持つ拳銃を空に向けパァーンと一発放つ。
「さぁ、さっさと車を渡した方が、身のためだぜ?」
「そ、そんな……お願いします! 妻を病院へ届けたあとはこのことは誰にも言いませんから!!」
「はぁーはっはっ! 今の約束を果たせないやつに、これから先の約束も果たせると思うかぁ? ん〜?」
男はワナワナと怒りに震えつつ、考えた。
──こいつらは話が通じない。
仮に車を手放してもあれこれ悪党らしい理屈を述べて娘や、撃たれた妻、そして自分を確実に殺すだろう。
(許さん……許さんぞ……!)
男は覚悟を決め、娘にこう囁く。
「……パパのかわりにママを見てあげて欲しい。……パパに似て強い子だから、できるね?」
「──パパ……ぐすっ、わかった……」
幼いながらも何となく察したのか、目に涙を溜めるもグッと泣き止み、自分の母が待つ車へと駆け込む女の子。
その様子を見届け、立ち上がる男は銃に震える足に情けなさを覚えつつ、キッと強盗を睨みつけた。
「く、車は渡せん……お前たちのせいで私の……俺の妻が死にかけてるんだ……! お前たちを倒してでも! 病院に行かせてもらうぞ!!」
その男の様子を見て、小柄な強盗はキャハッハッハッハ! と大笑いしたあと、大柄の強盗に話しかけた。
「おいおいおいおいおい、マジかよ! 丸腰で銃相手に立ち向かうのか? 命知らずもここまで来ると笑いもんだぜ! なぁ相棒!」
「──こいつ、格闘界では有名なやつだ。油断するな……!」
ここまでずっとダンマリだった大柄な強盗がつぶやくように警戒を促す。
それを聞いて小柄な強盗はますます下卑た笑みを浮かべた。
「じゃあ、明日の新聞の見出しはこうだな! 『格闘家、銃の前になすすべなく家族もろとも無念に倒れる』……ってな!」
小柄な強盗は空に向けていた拳銃を構え直し──ふと何かが落ちてくる気配を感じた。
(威嚇射撃で鳥でも撃ち落としたかぁ? ……!?)
そう思い空を見上げると、その落ちてきたものに横っ面を蹴り飛ばされ、小柄な強盗はそのまま意識を失った。
「……!」
大柄な強盗は急いで落ちてきたものに照準を合わせようとしたがそれは叶わなかった。
「……クズが……」
──落ちてきたもうひとつのものにより、彼の両肩は既に骨が粉砕しておりその痛みで失神したからだ。
突然の出来事に覚悟を決めていた男はポカーンとその様子を見ていたが、落ちてきたものが近付いてくると覚悟が抜けてしまったせいかガタガタ震えて叫んだ。
「お、おまえた、たたた、たち! こ、こここ、こ、この私が……おま、まままえらを……」
「安心しろ、危害を加える気はない……というか銃の音がしたが、怪我はないか?」
理解できない存在から心配されるとは思わず、再びポカーンとする男。
そこに──。
「パパッ!!」
「お、おお、も、もう大丈夫だぞ……おりょ!?」
車から走り寄ってくる娘を抱きしめようとする男の横をスルーして、娘は空から落ちてきた2つの前に駆け寄り、お祈りをするかのように屈んだ。
「ママを、ママを助けてください! 天使様!!」
◇◇◇◇◇
「あー……お嬢ちゃん……俺たちは天使ではないが……ママがどうしたんだ?」
天使様といわれた……ラディッツはその女の子──悟飯と同じ年齢くらいだろうか──に問いかけた。
「ママが、血で一杯で……死んじゃいそうなの! 助けて!!」
「……! ……ママはどこだい?」
「車の中!」
車に近寄り、中を覗いたラディッツは(これはまずいな……)と直感した。
すぐさま近くのポカーンとしている男に声をかけた。
「ここから一番近い病院はどこだ!」
「ヒッ! え、えぇと……東の都……!」
「よし、わかった! 一刻を争う容態だと思う! すぐさま運ぶ必要がある!」
「なっ!? ……わ、わかった、すぐに車を……!」
男の発言を手で遮り、ラディッツは続けた。
「俺が空を飛んで運ぶ! アンタは背中に乗ってくれ! 俺があんたの奥さんを病院まで連れて行くから道案内を頼む!」
「は、はぁ!? そ、そ、空を飛ぶだと!! それを信じろというのか!?」
ラディッツはぐっ、と詰まった。
「詳しいことは後で話す! ……頼むから今は、俺を信じてくれないか!!」
「ま、まて大体な……お前たちが強盗の仲間かもしれんだろ!」
「信じてくれないようなら無理矢理運ぶ! いまは少しでも時間が惜しいんだ!! 助かるものが助からんぞ!!!」
「ぐ、ぐぐぅ……む……?」
返事に詰まった男は、ふと足元にしがみつく気配を感じ視線を下ろした。
「パパ……!」
自分の娘が、父親である男を見上げていた。
ママがどうなってもいいの? という目で。
「わ、わ、わかったぁ! だ、だが何か変なことしてみろ! この私が許さんからな!!」
「ああ、許さなくていい! 悟飯、その女の子をおんぶして俺のあとをついてきてくれ!」
「わ、わかったよ伯父さん!」
しばらくして男を背負い、女性を抱きかかえたラディッツと女の子を背負った悟飯は空へと飛び立った。
「あ、あわわわわわわわ……ト、トリックだ……」
「……怖いだろうが我慢してくれ、道案内を頼む」
「パパ! お空を飛んでるよ! 私もお空を飛びたいなー……」
「わわわ、危ないよ! きちんとつかまってね?」
「あ、うん! わかったよ天使様!」
◇◇◇◇◇
東の都の病院にたどり着いたラディッツたちは急いで女性を医師に任せた。
出血多量と弾丸の摘出ということで緊急手術が行われるらしい。
「は、運んでいただいてあ……ありがとうございました……あとは私が……」
男は疲労困憊といった様子で深々と頭を下げようとするが、女の子が再びラディッツたちの前でお願いのポーズをした。
「お願い天使様! ママが目を覚ますまでいてください!!」
「なっ……! こ、これ……!」
(元々そのつもりだったし、最悪カリン塔へ運ぶ必要もあるかもしれんからここにいるか)
「……これも何かの縁だ、ここまで運んだ手前、俺にも責任はある、ここに残らせてほしい」
「わーい! 天使様がいるなら、ママも絶対に治るねパパ!」
「え!? は……そ、そうだな! ……ありがとうございます!」
「伯父さん、僕もここにいていい?」
「ん?」
「……あのね……」
悟飯はラディッツに耳を近づけ、耳打ちする。
「あの女の子、空ですごくはしゃいでいたんだけどね……なんかすごく震えてたんだ……ぼ、僕が同じ立場だったら多分、すごく泣いてると思う……」
だからね、と悟飯は続ける。
「僕……あの子のお母さんが大丈夫! ってなるまで……そばにいてあげたいんだ……ダメ?」
…………。
……。
……。
「伯父さん?」
「な゛、な゛ん゛て゛い゛い゛こ゛な゛ん゛だ゛ぁ゛あ゛ご゛は゛ん゛ん゛ん゛!!!!! お前、実は天使か!?」
「わっ! お、伯父さん、ぐ、苦しい……!」
ラディッツはあまりにもいい子ぶりに感極まって悟飯をぎゅっと抱きしめた。
多分チチがこの場にいたら同じことをするだろうしピッコロがいたらクールに自慢してる(確信)
「病院では騒がないでください! あー困ります! 困りますお客様!!」
「すみません(小声)」
何事かと駆け付けた看護士数人にすごい剣幕で怒られ、縮こまって謝罪しているラディッツを見て女の子はクスクス笑っていた。
「天使様なのに怒られてる……ふふふっ!」
◇◇◇◇◇
ラディッツは病院の電話を借りて、農家のおっさんとチチに今回のことについて伝えておいた。
農家のおっさん曰く。
「おらのことばええから、その家族たちをみてあげるだ! それにしても……ラディッツさらしいべなぁ!」
チチ曰く。
「そったらことが起きたんだべか……わかっただよ。悟空さたちにはオラから伝えておくだ。ラディッツさも無理はいけねぇぞ!」
それぞれに「ありがとう」と伝え、受話器を下ろしたラディッツは、手術室の前にあるベンチに祈るように座っている男の傍に座った。
「……コーヒー、ブラックと砂糖入り、どっちがいい?」
「……では、砂糖入りをいただきます」
「ほらよ」
砂糖入りの缶コーヒーを男に渡して、ブラックの缶をカシュッと開ける。
一口飲むと、ほろ苦さが口に広がり体に染み渡るような気がした。
「……あの」
渡した缶コーヒーのふたを開けることもなく、ぼそっと男がつぶやく。
「どうした?」
「……その、本当に、いろいろとありがとうございます……」
渡された缶を片手でクルクルと回し、その様子を見つめながら心ここにあらずと言った様子でボソボソと呟く男。
「感謝の言葉は奥さんの命が助かってからいくらでも遠慮なく受け取るさ……今はそれより、少しでも体を休めた方がいいぞ」
「……いえ……、こうして話している方が、気がまぎれますので……差し出がましいようですが……もしよろしければ、このままお話をさせていただいても……?」
(……今回のことで色々と思ったことがあるのかもしれないな……無理もないか……女の子の方は悟飯が相手をしてくれているしな)
「……聞くだけならいくらでも、それで気が紛れるのであれば、話したほうがいい」
「……助かります……」
そして男は語り始めた。
ラディッツはその横顔を見てなんとなく、こう思っていた。
(なんか原作でみたことがある顔だな、この人……)
ラディッツは天使だった──?