ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~   作:ナッパにウィッグを。

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ミスター・サタンのお嫁さんは、ミゲルさんらしいですねお名前
原作では亡くなられてからサタンの女遊びが激しくなったとかなんとか




閑話 〜天使と悪魔 その②〜

「……そうですね……あまり人に話したことはないんですが、私が過去に起こした過ちについて話しても……?」

「ああ、それで気が紛れるなら、聞こう」

 

 ラディッツは、男の話を促した。

「……あれは、私が妻と結婚する前の頃でした……」

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 そのころ、私はとある道場に通っていました。

 ──自慢ではないですが、どうやら私は武術の筋が良かったらしくてどんな大会も出れば勝つ、または相手が体調不良で運よく勝ち進み、優勝したものです。

 ……後半の部分は、ま、運も実力のうちってやつ……ですかね? 

 

 順風満帆だった私は、次の大会の開催場所である南の都に、通っていた道場の師範と一緒に酒場で酒を飲んでいました。

 気が大きくなってたんでしょうな……「はっはっはっ、俺は最強だぁ!」とか叫んでいた記憶がありますよ。

 

 そのとき、酒場に一人の男が入ってきたんです。

 全体的にピンクの出で立ちで……髪型もピンクのリボンを付けたオジサンでした。

 酒を飲んでいた私たち二人はその男の髪型をバカにしたんですよ。

 

 今考えると馬鹿なことをしたものです。

 

 次の瞬間、師範は胸に穴をあけて死んでいました。

 最初は拳銃かと思いましたよ。

 

 ですが、違いました。指から光線がでていたんです。

 どどん……とかなんとかいう技らしいですが、私もそれを撃たれ、倒れました。

 その時、男は去り際にこう私に言い残しました。

 

『武道家たるもの相手を見極めることもできんのか。雑魚め』と──

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「私はそのあと一命をとりとめましたが……そのときのことがトラウマでしてね……失礼」

 

 男は初めて缶コーヒーのふたを開け、中身をゴキュゴキュと一気に飲み干す。

 その内容物以外に、色々と飲み込みたい思いがあったのだろう。

 

「ふぅ……。……正体のわからない……理解に苦しむ相手や無茶苦茶強い相手とは絶対に戦わないようにしよう、関わらないようにしよう──その時、私は心の中で誓いました」

 

 そして男は手術室の扉をじっと見つめた。

 手術中のランプが赤々と点灯している。

 

「……私の妻を助けるため、あなたが空を飛び運んでくれることを提案したとき、大変失礼ですが……得体のしれないあなたと関わりたくないと思いました……」

 

 ふぅ……とため息をひとつ吐き出し、男は続ける。

 

「情けない男ですよ私は。自分のトラウマを優先して……危うく妻と、そして娘の心を殺してしまうところでした……」

 

 その言葉はラディッツではなく、扉の向こうにいる自身の妻に吐露するかのようだった。

 

「はは……今日は色々とあり過ぎて語りたくなってしまいましたね……私は、地位だけはあるのに弱い男です」

 

 自嘲気味に笑う男は、急に椅子から立ち上がり、ラディッツに深々とその頭を下げた。

 

「話を聞いていただきありがとうございます。そして……先程はあなたと……あの男の子を疑ってしまい酷いことを言いました、申し訳ありません……」

 

 下げられた頭から目をそらし、静かに話を聞いていたラディッツはこう答えた。

 

「顔を上げてくれ、その謝罪は……今は受け取れん」

「……そりゃ、そうですよね……許されませんよ」

 

 頭を上げ、力なくははは……と笑う男にラディッツは続けた

 

「『今は』と言ったろう? 俺はな、楽しみは最後にとっておくほうなんだ……」

 

 ラディッツはわざと凄みのある声を出し、ニヤリとした。

 

「そうだな、娘さんと奥さんが見ている前で『ローリングウルトラ土下座』で謝罪してもらおうか。必ず奥さんがいる前でだぞ」

「ろ、ローリングウルトラ土下座……!?」

 

 ローリングウルトラ土下座という単語を出され、それは一体なんだ? と困惑している男の顔をさも愉快そうに見つめながらラディッツは立ち上がった。

 

「少し子どもたちの様子を見てくる。ああ……それとな……」

 

 去り際、男の肩にポンと手を置いてラディッツは呟いた。

 

「……『情けない男』ってのはどこにいるんだ? 俺の目には最初から『立派なパパ』であるお前しか映っていないぞ」

 

 

 

 

 ──ひとり、残された男は動かない。

 聞こえるのは嗚咽と、顎に伝う雫が床に落ちる音だけだった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

「ねぇ天使様ってどうしてお空を飛べるの?」

「天使様はなんでそんなに強いの?」

「天使様はなんで私と同じくらいの身長なの?」

「ねぇ天使様! 天使様!」

 

「は、はわわ……ちょ、ちょっと待って……」

 

 悟飯は、普段あまり交流することのない同世代の女の子から質問攻めを受けており、目と気持ちがグルグルしていた。

 

「あっ! ごめんなさい! わ、わたしったら……」

「き……気にしないで……ふぅ……」

 

 悟飯は頭を振ってシャッキリさせると、ふと女の子に疑問に思っていたことを聞いてみた。

 

「そういえばなんで僕のことを『天使様』って呼ぶの?」

「え? だってママが読んでくれた絵本だとね! 困ってるときにお祈りしたら、お空から『天使様』が来て助けてくれるんだって!」

 

 ──それでねそれでね! 

 

「わたし、ずっと祈ってたの! 誰か助けて、って一生懸命祈ってたの!」

 

 ──そしたらね! 

 

「空からあなたが、悪者を蹴飛ばして助けてくれたの! だからあなたは、『天使様』!」

「な、なるほどー」

 

 女の子に適当な相槌を打ちながら悟飯は少し考えた。

(これ、僕は『天使様』じゃないよって言ったら……この子、がっかりしちゃうよなぁ……でもなぁ……うーん)

 

 天使じゃないことを打ち明けるか悩んだ末、いつか死んだ時に閻魔様に謝る方を悟飯は選んだ。

 

「さ、流石だなー! え、えーと、実は僕、その天使ってやつなんだ!」

「やっぱり天使様なんだ、やったぁ! 会ってみたかったんだぁ!」

 

 はしゃぐ女の子に釣られ、悟飯もつい笑顔になる。

 

「ね、ね、天使様! わたし! 天使様みたいにお空を飛んでみたい! わたしにもできますか!?」

「え、えっとね……うん、えっと、一生懸命に訓練すれば……?」

「本当!? 訓練すれば飛べるの!?」

 

 目をそらしつつ悟飯は答えると、そのそらした先に女の子の顔が飛び込み、食い気味に再び聞いてきた。

(は、速いッ!? ピッコロさんより、ずっと速い!!!)

 

「う、うん、と、飛べるよ! ……ぼ、僕もたくさん訓練して飛べたんだよ。君にも絶対できるよ!」

「わぁい! やったぁ! さっそく教えて天使様! 先にお外へ出てるね!」

 

 悟飯の返事を聞いて大喜びの女の子は、善は急げと病院の入り口へ駆けていく。

 

「あっ、ちょっと! 勝手に走り回ると危ないし、それに夜だよ! というか今から!?」

 

 その女の子を追いかけ、慌てて悟飯も入り口へ急ぐ。

 ちょうど病院の入り口の、屋根がある部分で女の子は空を見つめていた。

 

「天使様、今日はダメみたい……」

「あらら、すごい土砂降り……」

 

 残念そうに空を見る女の子の横顔をふと、見つめる悟飯。

 なぜか、悟飯はその横顔から目をそらすことができなかった。

 

「ねぇ天使様、お空を飛べたら……お空を飛べたら……天使様みたいに強くなれるかな……」

 

 女の子の表情は変わらない。

 その目は空を見たままだ。

 

「ママ、わたしの目の前で撃たれて……、パパは一生懸命、わたしとママを守ろうとしてくれた」

 

 女の子の表情は変わらない。

 その目はまだ空を見つめている。

 

「……車のなかで、ママ、ずっとパパとわたしの名前をつぶやいてたの」

 

 女の子は変わらない。

 

「わたし、何もできなかった……泣くことと、お祈りすることしか、できなかったの……」

 

 女の子のその瞳から、雨とは違う何かがこぼれ落ちる。

 初めて女の子は空から地面に顔を向けた。

 下唇をギュッと噛み、溢れる涙を止めようとする。

 

「わたしがもっと強かったら……わたしが、わたしが──わたしのせいで……ママが……ママが死んじゃったら……!」

 

 悟飯は、女の子の正面に移動し──そっとその女の子を優しく抱きしめていた。

 自身が不安にかられ、泣いたりむずがったりしたときの母の行動──不思議と悟飯は安心するのだった──の真似をしたのだ。

 

「…………てん、し、さま?」

「……怖かったよね、苦しかったよね、悔しかったよね……もう大丈夫、大丈夫だよ、安心して泣いたっていいんだよ」

「! ……ひっく……ぐす……」

 

 ──うわぁああああん! 

 

 女の子は、その小さな小さな身体から懸命にこぼさなかった気持ちを、悟飯の胸に顔を埋め溢れさせていた。

 

 そんな女の子の背中をポン、ポンと優しくあやすように悟飯は叩いきながら悟飯は思う。

 

(お母さんが僕にしていたことを、まさか僕が真似する日が来るなんてなぁ……)

 

 

 

 

 

 しばらくして、気持ちを余すことなくこぼした女の子は悟飯の胸から顔を上げた。

 

「……落ち着いた?」

 

 悟飯は、顔を上げた女の子を見て微笑みながら聞いた。

 

「う、うん……あの、天使様……」

 

 落ち着いたという割に、女の子は顔が真っ赤に染まっており、あちこちに目をそらして悟飯を見ようとしない。

 

(泣いちゃったから恥ずかしいのかな? ……よし)

 

「悟飯」

「えっ?」

 

 悟飯の口から、突如として出された単語につい悟飯の目を見る女の子。

 

「『天使様』って呼ばれるの、なんだかむず痒いや……僕、『孫悟飯』っていうんだ!」

「……ええと……悟飯、さ……くん?」

「よくできました! ねぇ、君の名前も教えてよ!」

(これで少しは変わるかな?)

 

 そう思った悟飯だが、予想に反してますます赤くなる女の子の様子に焦った。

 心無しか、目の焦点も定まっていないように見える。

 

「ね、ねぇ真っ赤だけど……大丈夫? 雨に濡れて風邪でも……」

「あ、あの……! か、顔が近い……です……悟飯、くん……」

 

 その言葉に悟飯は一瞬きょとん、とした。

 そして、自分が女の子をまだ抱きしめていることに気が付き、なぜ真っ赤なのか一瞬で理解した。

 慌てて女の子から両手を離し、少し下がる。

 悟飯も真っ赤だった。

 

「ご、ご、ごめん! えっと! なんて言ったらいいかな……とにかくごめんね!」

「……ル……」

「ほえっ?」

 

 悟飯から顔を背け、自分の頬を両手で抑えながら、女の子は言った

「わたし……ビーデルっていうの……」

 

 

 

 

 

 

 

 一方、悟飯たちに見えないところ……廊下でその様子をニヤニヤ観察していたラディッツは、女の子の名前を聞いて口に含んでいたコーヒーを吹き出し、夜勤の看護士さんにしこたま怒られていた。




あかん悟飯が王子様になってまう!
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