ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
(……暇が過ぎっぞ)
悟空は西の都にある、とある病院の病室で寝ころんでいた。
骨が折れているせいで手足が吊るされ、筋トレもできない。
「なぁナッパ、暇だなー」
「……そうだな」
同室にはナッパも同じような状況で寝ころんでいた。
お互いにサイヤ人である。
動けないことは拷問に等しかった。
「そうだカカロ……いや悟空のほうがいいのか?」
ナッパがふと呼びかけようとするが、名前について聞いてきた。
たしかに自分は孫悟空だけれども、もう一つの名前で呼ばれるのも問題ない。
そう思いナッパに返事をする。
「いんや、カカロットでいい。オラ、悟空という名前も好きだけど兄ちゃんが呼ぶこの名前も好きだからな」
(はじめはカカロットって名前あんま好きじゃなかったけんど、変わるもんだなぁー)
最悪な兄から最高の兄へ変わったように、カカロットという呼び方に対しての認識も悟空の中で変わっていた。
「そうか、じゃあカカロット。お前、どうやって結婚したんだ?」
「けっこん?」
ナッパの質問がよくわからず、聞き返す悟空。
「いや、お前その……口はちょっとうるさいけど美人な嫁さんいただろ、どうやってあんな人を捕まえられたのか聞いてみたくってな、へへ……今後の参考にもしたいし」
「……うーん、なんかいろいろあって、そしたら結婚してた」
悟空のあまりにもあんまりな端折りっぷりにナッパはズルッと滑った。
「その『いろいろ』の部分をもっと詳しく知りたいんだって言ってんだぞ、こっちは!」
「なんだー、んじゃ最初からそういえよー! へっへへ!!」
「んぎぎ……お前本当にラディッツの弟かよ……」
悟空はチチとの馴れ初めを話し始める。
ものの数十秒でナッパは悟空の結婚までのいきさつを参考にするのはよそうと結論付けた──。
「──ってなわけでよ、オラとチチは結婚して、そういて今こうやってるわけだな!」
「……な、なんというか……お前すごいな……」
「えっへへ……それほどでも!」
あんまり褒めてないが、ともろに表情に出ているナッパに悟空は全然気が付かなかった。
「で、そんなカカロットさんは嫁さんのどこが好きなんだ?」
「ん? どこって……チチの嫌いなとこなんて、ほとんどねぇから全部好きってことじゃねぇか?」
「……おあつぅございますねー……へっ」
ぷいっと悟空と反対方向に顔を向けるナッパに、自分の発言がまずかったのか悟空は考えてみた。
(うーん……とは言ってもなぁ、本当にチチのことは『好き』だと思うんだけどなぁ)
一つ、チチの顔を思い浮かべてみる。
──笑顔のチチ。心がポカポカする、っていうんかな、そんな感じがすっぞ。
──怒り顔のチチ。こえぇけんど、ちょっとポカポカすっぞ。
──悲しむ顔のチチ。なんだかオラも辛くなっぞ。
(いろんなチチの顔があるなぁー……あれ?)
悟空の意思に反して、色んなチチの顔が出てくる。
そのたびに暖かくなるような、そんな錯覚のような何かが身体を巡る。
(あれ……オラ、なんかポッカポカしててドッキドキして……あれれ?)
「な、なぁナッパ……オラ顔どうなってる?」
「あ? ああ!? お前顔が真っ赤じゃねぇか!?」
「……な、なんか病気かな、オラ……」
そのとき、病室の扉が開き、悟空はその扉の方向を見る。
「悟空さ、具合はどうだべ?」
今まさに顔を思い浮かべていたチチの顔をみたとき、ボシュッ! と悟空の頭から音がした。
「ご、悟空さ!? 顔が真っ赤だべ!」
「チ、チチさんよぉ、悟空が病気かもしんねぇ! おい医者を呼んでくれよ!」
「わ、わかっただ!!」
目をグルグルさせる悟空をよそに、チチとナッパは大慌てするのだった。
誰もが気付かなかった……悟空の変化に。
悟空にはあまり自覚のなかった感情が、悟空の中に初めて大きく芽生えたのであった。
◇◇◇◇◇
「おい弟弟子、目当ての人物が来たようだぞ」
「お、そうか。ありがとう兄弟子」
俺はそういうと目当ての人物の元へ向かった。
その人は水晶玉に乗ってフワフワと浮いていた。
「弟から話は聞いているが、こうやって会って話すのは初めてだな……『売れないババ』だったか?」
「『占いババ』じゃ! まったく……せっかく持ってきてやったこいつを渡さんぞおまえ……」
「いやすまん……素で間違えた……占いババ様か、ここまで持ってきてくれたこと、感謝する」
深々と占いババに頭を下げる俺に、占いババはポカンとしていた。
いやしかし、しわくちゃだなー、亀仙人のお姉さんらしいけど、どういう家系なのやら……。
「……ご、悟空の兄にしては礼儀がなっておるの……ほい、ポッポポカプセルじゃったか、渡しとくぞ」
「おう、ホイポイカプセルだな。本当に感謝する……予想以上にたくさんあるんだが、これは?」
「サタンからの贈り物と、農家の果物3年分詰め合わせらしいぞ? あとそいつらは中の物を一つずつ取り出せるようにした試作品っていっとったわ」
天才かあのカプセルコーポレーション。天才だったわ……。
試しに一つ、果物から1つリンゴを取り出す。
おー美味そうだな。
「おい、兄弟子。受け取れッ!」
そのリンゴを閻魔大王に投げ渡す俺。
パシッと受け取った閻魔大王はそのリンゴをマジマジと見ていた。
「仕事の合間のおやつ代わりにちょうどいいだろ」
「お、おう……」
「占いババ、重ね重ね感謝する。界王様、戻るぞ」
「んー……ふわぁ。よく寝たわい」
蛇の道の入り口に、向かう俺と界王様。
閻魔大王の机の上には、先ほど渡したリンゴとは別の果物もいくつかおすそ分けとして置いておいた。
「じゃあな兄弟子! あんまり根詰めて仕事するなよ!!」
バシュウ! と界王様を背負って界王星に戻っていく俺。
さぁ修行するぞ修行するぞ修行するぞ!!!
────
ラディッツが渡してきたリンゴを見つめ、ハァ……とため息をつく閻魔大王。
「……まったく、騒がしいやつだったな。……困ったもんだ」
言葉に対して閻魔大王の表情は柔らかかった。
リンゴを口の中にポイッと入れ、かじる。
「うむ、美味い」
どこか嬉しそうな閻魔大王であった。
未来悟飯はこの世界だとどうなるかねぇ