ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
助けてビルス様
「ら、ラディッツさんが……死んだ……こ、殺された……!?」
三つ目が特徴の男──天津飯の口から聞いた事実をサタンは信じることができなかった。
「う、嘘ですよね……と、トリックだ……」
「嘘でもトリックでもない……真実だ」
懇願するかのように天津飯に確認するも、事実だと返されたサタンは呆然とその場にへたり込んだ。
「どうもブルマたちはマークだったか……に伝えていなかったようだな」
いつの間にか背後に来ていたヤムチャがそっと天津飯に耳打ちする。
天津飯もそれにうなづき、さてどうしたものかと考えているとサタンがぼそっと呟いた。
「ドラゴンボール……」
「ん?」
ドラゴンボールという単語がサタンの口からだされ、天津飯は思わず聞き返す。
「なんでも願いを叶えられる、ドラゴンボールというのがある……と聞いたことがあります……あんなトリックみたいな人が現実だったんだ、ドラゴンボールも必ずある!」
それならば生き返らせれるのでは!? と続けるサタンに天津飯は頭を振って答えた。
「……一度、ラディッツは生き返っている。ドラゴンボールではもう……生き返らせることはできないんだ」
「そ、そんな……」
今度こそがっくりと項垂れるサタンに、ヤムチャは罪悪感を覚えたのか補足するように言葉を続けた。
「もっともこの地球のドラゴンボールでは、だけどな。別の星にあるドラゴンボールでなら生き返すことができるかもしれない」
「おい、ヤムチャ! お前何を……!」
「別の星の……ドラゴンボール……?」
サタンの口調に強さが戻る。
すがるように天津飯にしがみつく。
「わ、私もその星に連れて行ってください! これでも私は世界チャンピオンなんだ!! 役に立ちま……いえ、役に立たせてください!!! お願いします!!!!」
こうなることは予想できただろう……とヤムチャを睨む天津飯。
当のヤムチャは口笛を吹いて目を逸らしていた。
「お願いします! お願いします!!」
「……駄目だ、お前を連れて行くことはできん。……はっきり言って足手まといだ」
「……なんだと……!?」
『足手まとい』といわれたことにサタンは激怒する。
自分は世界チャンピオンだ……格闘家としてのプライドがフツフツと湧き上がってきた。
「どうしても着いて来たいのであれば俺に一撃でもパンチを入れてみろ……一撃でいい」
「ば……馬鹿にしおって……! あちょー!!」
サタンは天津飯に殴りかかった。
天津飯はそれを避け、サタンの腹部に普通なら気絶する程度のパンチを入れた。
「あぐっ……ううぅ…………い、痛い……!!」
「ほう……耐えるか……だがこれでわかったろう? 貴様は足手まといなんだ!」
「て、天津飯! さすがにやり過ぎだぜ殴るなんて!!」
慌ててヤムチャがサタンと天津飯の間に入る。
ヤムチャには天津飯の意図はわかっていたが──それにしてもやりすぎではないか。
「殴ってなぜ悪いか! 自分の力量を省みずに危険な場所へ行きたいなどと……勇気ではなく、ただの蛮勇だ!」
「だけどな! そいつはラディッツのことを──」
「わたしは……確かに……勇気はありません……!」
天津飯とヤムチャが言い争いになりそうなとき、腹部を抑えた男から声が上がった。
「で、ですが……そんな男でもラディッツさんの……友のために行動もできないのは……あまりにも、あまりにも……」
──辛くて、むごいじゃないですか……。
そう続けるサタンに対し、ヤムチャも天津飯も言葉をかけることができない。
そこへ──。
「友を思う、その気持ちは素晴らしいとわしは思う──じゃがな……いまのあんたじゃ無情な言葉にはなるが……あんたは弱いんじゃ」
いつの間にかサタンの背後には亀仙人がいた。
その肩にポンと手を乗せる。
「じゃから……友のためを思うなら、このわしの元で鍛えてみんか? ……武天老師の修行にお主が耐えられるのであればじゃがな」
「!?」
唐突な弟子勧誘にヤムチャも天津飯も驚いていた。
サタンは後ろを振り返り、目をキラキラさせて亀仙人を見ていた。
「ご、ご老体がわたしを鍛えてくださると……!?」
「そうじゃよ。武天老師が直々に弟子に勧誘することなどめったにない事じゃぞ~……ただし、条件がある!」
亀仙人の真面目な顔にゴクリと喉を鳴らすサタン。
「うむ……ピッチピチでムッチムチでボインボインなギャルを一人、連れてまいれ!」
「……は?」
ポカンとするサタン。天津飯もポカンとしていた。
だが、そのポカンの意味はお互いに違っていた。
「どうしたんじゃ? ほれほれギャルを一人連れてこないと弟子に……」
「ひ、一人でいいんですか!?」
「え? ご、ごほん……何人でもよいぞ!」
キリッとした表情の亀仙人とサタンは、お互いに握手をしっかりと交わした。
天津飯は『武』とは……? と一人、立ち瞑想に入っていた。
「ところで……あー、武天老師様でしたよね……わたし、その世界チャンピオンの立場もあるので偽名で変装した上で弟子入りしたいんですがいいですかね……?」
「……うーむ」
「ギャル十人でどうです?」
「もちのろん、オールおっけーじゃ!!」
◇◇◇◇◇
「ターレス、お前もう既に鶴仙流の技をすべて極めたと兄者からきいたが、どれだけ才能あるんだ……」
「……へっ……自分でも驚いているぜ、この才能に……」
夕飯時、ターレスの前には本人が見えないほどのご飯が山盛りにうずたかく積もられており、そのおかずとしてターレスが狩ってきた恐竜の丸焼きが置いてあった。
──どどん波で狩ってきたのだった。
「てめぇ……新入りの癖に俺より強いなんて……ぐぬぬ」
「はっはっはっ! ユーリンがそういうのもわかる……だがこれで鶴仙流も安泰じゃ! ターレス、よくやったぞ!」
「……俺は何も特別なことはしてねぇよ……おっとそうだ。桃先生よぉ、話があるんだが……」
ターレスが獲ってきたマグロのステーキにかぶりついていた桃白白が「わし?」みたいな顔でターレスを見る。
「……鶴仙流の道着ってなんというか……色使いがあまりすきじゃなくてな……」
「ふん! 悪かったな、緑に黄色で!」
「どうどう……それでよぉ……俺が着ていた……鎧? と同じ色でアンタと同じ服を仕立ててもらいたいんだが……できるか?」
かぶりついていたマグロのステーキを飲み込むと桃白白はフフンと鼻を鳴らした。
「よかろう……本来ならば金を取るが……かわいい弟子からの頼み! 特別に無料で仕立ててやる!」
「……何から何まで感謝するぜぇ」
ハハッとターレスが笑う。
ターレスは心の奥底から今の状況を楽しんでいた。
だが同時に──記憶が戻るのが怖いとも考えていた。
記憶が戻ったとき、今の関係は崩れる──ターレスはなんとなくそう確信していたからであった。
そのターレスが一瞬見せた寂しそうな顔をユーリンは見逃さなかった。
ビルス様、病気だけ破壊してください