ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~   作:ナッパにウィッグを。

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文章の書き方にまた悩みまして、一人称視点に再度してみました。
最初の方は結構一人称で書いてたなぁと思ったんですが、
多分悟空の一人称視点文章でだんだん詰まってきてやめたんだと思います。



──よく考えたら地の一人称文で悟空のセリフをあの訛りに合わせる必要はないんじゃないか?


弟はナメック星へ 兄はあの世へ 強敵は地球へ ★22

 ラディッツからターレスへ放たれたエネルギーの球体──

 

 あたしは何も考えることなく、ふらふらとその間へ割り込んでしまう。

 鶴師匠たちがあたしに向かって何か叫んでいる──

 

 だが、そのどれもが聞き取れない。

 不明瞭にザザ……と耳へ届くのみだ。

 

 あたしはターレスを見る。

 今のアイツは、あのときのアイツとは全然違う。

 その目は冷たく、傲慢で、朗らかさの欠片もない。

 

 ──それでも。アイツはやっぱターレスなんだ……

 

 こんな状況で、いやこんな状況だからこそ、あたしは最初にターレスと出会ったときのことを思い出していた。

 

 

 最初に出会った頃は、下心ありありの救助だった。

 この男を助けて、鶴仙流の門弟にすれば師範たちが喜ぶだろう、という考え。

 

 だが毎日を共に過ごすうちに──。

 

 圧倒的な強さを持ち、皮肉げでいてどこか抜けているところがあり、そして頼もしい──。

 

 いつしかターレスは鶴仙流には無くてはならない存在となっていた、と思う。

 

 三つ目ハゲやチャオズが居なくなってポッカリとあいた穴にすっぽりと……いや、溢れんばかりの存在に。

 

 ターレスが来る以前の鶴師匠と桃先生は、ボーッとすることが多く気力もみるみる衰え、たまに二人で寂しくお酒を飲んでは亀仙流への恨み言や天津飯たちがいたときのことを哀愁漂わせながら語っていた。

 

 だがターレスが来てからは、活気に満ち溢れ、ターレスへの指導にも熱が入り、酒を飲んだら二人してターレスのことばかりああだ、こうだと楽しく話していた。

 いまでもその光景は目に浮かび、夢じゃないと誓って言える。

 

 あたしはあたしで──ターレスからの不器用とも思える気遣いや、時折見せる寂しそうな顔を見ているうちに──

 本当に、本当に心の底からアイツが好きになってしまっていた。

 

 故に身体が身勝手にこの球の軌道上に出てしまったのだろう……こんなエネルギーの塊なんて、あたしにはどうすることもできないのに。

 

 でも、もうどうでもいい。

 アイツとずっと一緒に居られたらそれでいい。

 アイツは、あたしが知っているアイツじゃない。

(でも……それでもそばに……)

 

 そんな破滅願望にも似た思いがずっとグルグルあたしの中で巡り続けていたときだった。

 

 ターレスが何かを叫んだ。

 聞き取れはしたが、その言葉は脳が理解を拒んでしまう。

 

 いつの間にかターレスが目の前にいた。

 あたしの肩に衝撃が走り、すぐそこにいたターレスが視界から消えてしまう。

 

 ドン! と何かにぶつかった。

 どうやらあたしは、壁に跳ね飛ばされていたらしい。

 衝撃と痛みが身体を走るが、それ以上に混乱が全身を駆け巡る。

 

 ──誰に何をされた? 

 

 すぐ近くで、何かが起きた。

 何が起きたかわかっている。見たくない。その方向を向く。見たくない。目を凝らす。見たくない。見たくない。見たくない。見たくない。見たく──。

 

「ターレス!!」

 

 ──見たく、なかった。

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

(あのエネルギーの塊……当たったら……いや、カスっただけでもわかる……オレは問答無用にお陀仏だ……!)

 

 ラディッツから放たれた恐ろしいほどの戦闘力を感じる球を見てオレは、そう直感し、冷えたものが身体中を巡り回る。

 

 ──早く逃げなくては! 

 

 脳が警鐘を鳴らし、俺に耳打ちをする。

 が、俺はそれに舌打ちで返事するより他ない。

 身体が動かない、まるで氷漬けにされたかの如く。

 

(また、恐怖を感じているのか……オレは……!)

 

 指でさえ満足に動かせない情けなさにいっそ憤りを感じる。

 そのとき、前から迫ってくる球と自分の間に誰かがフラフラと割って入ってきた。

 

 目を凝らしてよく見るとその人物は、先ほどまでオレを説得しようとしていたあの女だった。

 

 なるほど……無くした"地球の"ターレスはどうやら、相当この星のやつらに入れ込まれていたようだ……。

 ああいう無鉄砲な女がでるほどには……な。

 

(馬鹿な女だ……お前が慕う方の"ターレス"はもういないってことにまだ気づかんか……)

 

 

 しかし、僥倖……! 

 この女ではあの球は防げないだろうが……少しでも俺に届くのを遅らせることでギリギリオレは避けられるかもしれない。

 

(このチャンス──存分に利用してやろうじゃないか……)

 そう思ったオレはオレはニヤリと口角を上げ──驚愕した。

 

 なんと自分の身体が、意思に反して勝手にその女の方へ駆け寄っていたからだ。

 

 ──な、何故だ……身体が言う事を効かん! 

 

 そして勝手に開いた口から出てきた言葉に、ますます混乱を極める。

 

「避けろ! ユーリン!!」

 

(オレは今、この女の名前を……!?)

 

 かなり力を加減してユーリンを脇へと突き飛ばす。

 そして目の前に迫る球に絶望しながら、オレは──。

 

 

 

(この女の名前だと、オレは何故思った……? オレ……は……)

 

 

 

 

 

 

 

 ──次から次へと、知らない自分の記憶が、走馬灯のようにターレスへ流れてくる。

 

 桃白白の、服を頼んだときの照れ笑いを浮かべた表情──

 鶴仙人の、どどん波を放ったときの驚愕と歓喜の表情──

 ユーリンの、オレが買ったペンダントを嬉しそうに受け取り頬を染めて首にかける表情──

 

 

 サイヤ人のオレと、地球のオレは今、一つになった。

 冷酷なオレも、地球のオレも……同じ"ターレス"だ。

 

 目の前の球が、抵抗をまったくしないオレをゆっくりと包み込む。

 意識が急激に暗闇へといざなわれる中、最後にオレは──。

 

(もっと、もっと早く……)

 

 ──"オレ"が"オレ"に気付いていたら、もっと違った……結末……に……

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 俺が放った元気玉がターレスを包みこみ、そして神精樹も巻き込んでいく。

 その光景を見ていた俺が思ったことは、戦いに勝利した喜びでも、地球を助けられたという安堵でもなく、ただただ呆然とする。

 何故なら、元気玉がターレスに当たる直前の、奴の行動を見ていたからだ。

 その行動は、まるで──。

 

「……あ、あいつ……何故ユーリンを助けた……もしや最後の最後に記憶を……!?」

 

 桃白白の言葉に俺は絶句した。

 それこそまさに、俺が今考えていたものだったからだ。

 

「い、や……いや……ターレス!」

 

 どこか遠くにあった意識が戻ってきたのだろう。

 呆然としていたユーリンは、叫んでいた。

 

「いやぁあああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 ……その声は俺の記憶に長く留まりそうなほど、悲痛で、沈痛なものだった。

 だが、いつまでもここにいるわけにはいかない。

 

「……ここにいては巻き込まれるかもしれない、皆……逃げるぞ!」

 

 俺はそう皆に呼びかける。

 天津飯がユーリンを抱えるのを見届けると、鶴仙人や桃白白なんかも慌てたように神精樹の洞から外へ出て行った。

 

 俺は出て行くときに振り返り、もう聞こえるはずもないターレスに向かってこう言った。

 

「……すまんな」

 

 俺の中にドロリとまとわりつくように渦巻く物は、もっと何とかできなかったのかという、漠然とした後悔であった。

 

 

 

 

 

 俺が外にでたとき、神精樹は俺の元気玉で倒壊した。

 それと共に、吸い上げられた地球の元気が、キラキラと地球へ戻っていく様は、まさに奇跡ともいえる様相だった。

 

 ひび割れた赤茶けた大地には緑が戻り、様々な生命の色が元に戻っていく。

 さわやかな風が俺の身体をそっと撫でる。

 チチチチ……と小鳥のさえずりも聞こえてきた。

 

(こんな気分じゃなかったら、最高だったんだろうがな)

 

 だんだんと活力が戻っていく周囲に対し、俺は──いや俺も含めここにいる仲間たちは、皆押し黙っていた。

 重苦しく、息苦しい、そんな雰囲気に包み込まれている。

 

 ユーリンの嗚咽だけが、その中で音として聞こえ、それがさらに深い深い底へと雰囲気をいざなっていた。

 

「……いろいろ、あったけどよ……ひとまず終わったんだな……おつかれさん、ラディッツ」

 

 沈黙を破った主はヤムチャだった。

 なんとか笑顔をつくろうとしているが、ぎこちないのは誰が見てもわかる。

 

「ああ、終わったな……」

「……あまり気落ちするなよ、お前は……いや、みんなベストを尽くしたんだ」

「……ベスト?」

 

 ピクリ、とユーリンが反応する。

 

「この結果が……ベストを尽くした結果だって言うのかお前は!?」

「ユーリン、よせ……」

 

 鶴仙人がそう諫めるが、その声には力が無かった。

 見れば桃白白もイラだちを含んだ目線でヤムチャを見ている。

 

「……ああ、そうだな。ベストだと思うぜ俺は」

 

 鶴仙流の視線をもろともせず、ヤムチャははっきりとそう告げた。

 

「俺たちも俺たちなりのベストを尽くした。お前たちも、お前たちなりのベストを尽くしただろう?」

「ああ! だが、その結果を見てみろよ! ターレスは……ターレスは!!」

「だったらどうすんだよ! ずっとターレスのことを助けられなかった、とみじめたらしく泣き続けるか!?」

「ヤムチャ! ……もう、やめろ……」

 

 今度は天津飯がヤムチャを諫める。

 

「いいや止めてなるものかよ! 俺が言いたいのはな、過去を想うのはいい! だが、それで未来を潰すんじゃないぜってこった!」

「何が言いたいんだよ! テメェ!」

「……ターレスは最後に、お前を助けたんだろ? お前に未来へと生きて欲しいからこそ……」

 

 ヤムチャはそこで一息ついて、改めてユーリンに話しかけた。

 厳しい表情に対して、その言葉は優しかった。

 

「……お前が前をみて、幸せに生きていくのがあいつにとっても幸せなんじゃないかな?」

「……そんなの……わかってるぜ、あたしだって……でも、すぐに割り切れるわけないじゃんか……」

 

 暗い雰囲気が続く中、ごほん、とひとつ咳が聞こえた。

 

「ご高説はここまでにしてもらおうか。……おい弟、ユーリンを連れて先に帰れ、わしはもうちょっと用事がある」

「……わかったよ、兄者」

 

 そういって桃白白はユーリンを連れて帰っていった。

 ユーリンはまだヤムチャのことを睨んでいたが、桃白白に急かされて離れていった。

 

「……さて、そこの男が言うことも癪だが一理ある……おい、ラディッツとやら」

 

 鶴仙人が俺の名前を……俺? 

 

 

 

「──わしはお前に用事があるんじゃ」

 

 

 その表情は、真剣であった。




ターレスはあの世にいて、ラディッツもあの世に戻る──。

つまり、ちょうどいい相手が存在するってことになるのは知っているね?
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