ドラゴンボール~兄より優れた弟は存在する!~ 作:ナッパにウィッグを。
みんな!すまねぇ!オラ頭がノーテンピーカンだからよ……!
ご覧いただきありがとうございます。
お詫びにギャグ書きます。あとがきで。
俺は今、バブルス君を背中にのせて筋トレをしている。
何故かって?
今、悟空と、界王様を通じて神様が会話してるからだ。
混ざればいいじゃん、って?
悟空から言われたんだよ。
─わりぃ兄ちゃん! ちぃーとばかし離れててくれねぇか?
直球ストレートに仲間外れにしてきて泣き虫ラディッツの名に恥じず、泣きそうになったね。いやー無常無常。
─まぁ積もる話もあるだろうし、俺がいると話しづらいこともあるのだろう。
できた兄である俺は了承し、悟空と界王様に、神様に伝えて欲しいことをお願いし、ひとり離れて筋トレを始めた。
腕立て伏せをしていたら、背中にバブルスくんが座ってきたのには驚いたが。
─寂しそうに見えたとかで座ったんじゃないだろうな?
悟空がドラえもん……失礼、界王様を通じた神様との会話を終えたようだ。
俺の背中にいたバブルスくんを捕まえようとして避けられ、鬼ごっこが始まっていた。
俺が神様に伝えてほしい、とお願いしたのは……一人の男を蘇らせてほしいことだった。
俺の意識がラディッツとしてこの世界に目覚めたのは、悟空とピッコロの戦いの中だ。
その前に俺は一人、男を殺していた。通称『戦闘力5のおっさん』─地球の一般人だな。
恐らく原作には書かれていない、ラディッツがたくさん殺してきた中での─たった一人の男。
ただ原作で俺に殺された描写のある地球人。
──偽善、気まぐれ、罪滅ぼしにもならない罪滅ぼしかもしれないが……
俺の前世の感情にどうにもひっかかり、『蘇らせられないか』とそう思っていた。
─……蘇ったとしても、会う機会がないだろうな。
◇◇◇◇◇
界王様の元で俺と悟空はみっちり修行していた。
漫画だとサラッと流されたけど……
キ ツ い。
想像していた100倍もキツかった。
だが、おかげで悟空はもちろん、なんと俺も『元気玉』と『界王拳』ができるようになった。
ついでに『気のコントロール』も習得した。
これで俺も雑魚のフリができるぜ!
あと修行の中で、俺と悟空は暇さえあれば組手をしていた。
最初の方は俺のほうが強かったが、修行が進むに連れだんだんと互角の勝負になり、そして先日─
「ま……まいった! こ、こ、降参だ!!」
悟空に一撃をもらい、地面に倒れ伏せた俺は
どうしても立ち上がることができず、降参の意を悟空に伝えた。
─ついに悟空に負けた。
「やったー! 兄ちゃんに勝った!!」
ぴょんぴょんと跳ね跳び、全身で喜びを表現する弟。
あー悟空がぴょんぴょんするん……やめておこう。
……いずれそういう時が来るだろーなー……とは思ったが、ついに負けた。
主人公が強くなるのは当たり前ではあるが……本当に強くなったな悟空……。
感動して泣きそう。既に泣きそうになってるけど。主に痛みのせいで。
……痛みにほうけてる場合じゃないな。
気を引き締め無理やり立ち上がった。
「つ……強くなったなカカロット……それでこそ俺の弟だ……」
「兄ちゃん……サンキューな!!」
うむ。いい笑顔だ。感動的だな!
「じゃあ兄ちゃん! 早速『第2ラウンド』やってみっかぁ!」
だ が 無 意 味 だ─
「─ま?」
「んじゃ早速─」
「ま、待てカカロット! ……体のあちこちがハデに痛くて……ちょっと休ませてくれるわけにはいかないか?」
「─かまえろよ、兄ちゃん」
悟空が笑顔でかまえた。
そんないい笑顔で言われたら……ちくしょう!
「─兄としてはかまわんで欲しかったぜ……」
─俺もかまえるしかないな。
◇◇◇◇◇
『蛇の道』を通ってきたあのサイヤ人の兄弟が
此処へ来てから150日ほど経過した─
二人は、ワシがたどり着けなかった境地─『界王拳』を会得し、さらには『元気玉』まで習得しおった。
(思った通り……いや、予想以上に見込みがあるわい……)
……地球へ襲来中のサイヤ人が到着するまでまだ30日もあるが、そろそろええじゃろう。
もう教えることはワシからはない。
─悟空からたまに感じる……張り詰めたような感情が気になるが……
修行と兄弟漫才喧嘩と忙しく繰り広げる2人にワシは声をかけた。
「おーい、悟空とラディッツや〜い」
─ラディッツがいるから、大丈夫じゃろう。
─ふぅ、寂しくなるのぅ。
◇◇◇◇◇
「……もう修行は終わりなのか」
意外に早く終わったな……と思いつつ、
俺はこのあとの自分の身の振り方を考えていた。
悟空が早く蘇ったことにより、悟空の仲間─Z戦士たちの被害は抑えられるだろう。
だが俺は……どうしようか。
地獄で罪を償いつつ、自己流のトレーニングなどをしてみるか。
……ラディッツの親父であるバーダックはいるんだろうか。
もしいるならバーダックを探して修行してもいいかもしれない。
すごくスパルタになりそうだが……
ま、暇よりはマシだろう。
悟空は今、青狸……界王様を通して神様と話をしているみたいだ。
─悟空の頭の輪っかが消えた。
(いよいよ別れのときが近付いてきたな……)
なんだかんだ、ここでの時間は楽しかった。
原作の、兄としてのラディッツは最悪だったろうが、
この世界で俺が憑依したラディッツは、悟空にとって
ちょっとでも兄らしくできただろう。
悟空が俺に近づいてくる。
最後くらいカッコよく別れてやろう。
「カカロット、頑張れよ。─お前がナンバーワンだ」
「へへへ、サンキューな兄ちゃん! んじゃ一緒に行くかぁ!」
ん? 一緒に行く? ああそうか、地獄も「蛇の道」を通らないといけないか……いや落ちればよくないか?
「俺を連れてどこへ行く気だぁ……?」
「いや、地球だけんど……」
は? ん? え?
「あー……悟空よ、もしかしてラディッツに説明してなかったのか?」
え? なにが?
「たはは、いっけねぇー! オラ伝えるの忘れてたぞ!!」
だから何をだ?
「兄ちゃんもドラゴンボールで蘇ったんだ!」
あーなるほどね。
へー蘇ったんだ。
誰が?
俺。
ふ〜ん。
─え? なんで?
「なぜだ……?」
「オラ、兄ちゃんともっともっと修行してぇ! もっともっと強くなりてぇ! だからオラと地球へ来てくれよ兄ちゃん!」
真っすぐな目で俺を見てくる弟。
その目を見て俺は、過去に疑問に感じたことを思い出した。
─なんで悟空は俺に対してこんなにも好感度が高いんだ?
返事をしない俺を見て─いるのかいないのかわからない目で、悟空はさらに話し出す。
「『蛇の道』で一人だったら、もっと時間がかかってたかもしんねぇ」
─……
「ここの修行で一人だったら、こんなに強くなれなかったかもしんねぇ!」
「いや……地球へ戻るのに時間がかかってみんなが犠牲になっていたかもしれねぇ!!」
─……ああ。
「オラは……オラはもっと強くならなくちゃなんねぇ! 地球を……みんなを守るためにもっと強く!」
─……そういうことか。
「もっと……もっと強く……!」
─チッ……まったく……
「オラがやらなきゃ……ッ!!」
「……うぬぼれるなよ、カカロット!!」
─世話の焼ける弟だ。
◇◇◇◇◇
兄であるラディッツに怒鳴られた悟空はわけがわからなかった。
「な、なんで─」
なんで自分が怒鳴られているのか。
「カカロット、お前は仲間を信用していないのか?」
そんなんじゃねぇ!
「オラ、クリリンや天津飯、ヤムチャ……みんな、みんな信用してる!」
なぜ兄ちゃんは怒ってるんだよ!
「ではなぜ自分がやらないといけない、と思うんだ? お前が信用している仲間に任せればいいじゃないか」
「それはっ……死なせたくねぇからだ! オラの力が足りねぇせえで……死なせたくねぇっ!!」
なんで……。
「では聞くがなカカロット……お前が弱いせいで何か被害を被ったとき……お前の仲間たちは─」
─お前を恨むのか? お前を憎むのか? お前への信頼を─無くすのか?
「違う! あいつらは……オラの仲間はそんなやつらじゃねぇ!」
なんでだよっ……。
「そうか……なぁカカロット」
なんで兄ちゃんは怒ってるのに……
「お前は……地球や仲間たちに被害が及ぶ─そのすべてが」
その目は─
「そのすべてが……自分のせいだと……自分に責任があると─思ってるんじゃあないか?」
すごく優しい目をしてるんだよっ……!
◇◇◇◇◇
「もう一度言おう! うぬぼれるなよカカロット!!」
顔を俯いて、肩をわなわなと震わせる悟空に対し俺は……
「お前が信用している仲間たち……お前が信用した仲間たちだ!」
─カカロット!
「例え何があろうと─お前のせいだ、お前が悪い、と責めたりしないだろう!」
─お前はお前自身が仲間たちの中心にいたせいで
「だがお前は……悪いことはすべて─自分が弱いからと考えてしまってるんじゃないか!」
─背負わなくていい責任まで……
「カカロット─孫悟空は常に強くなくちゃいけない、と思ってるんじゃないか!?」
─ただただ純粋……純粋であるがゆえに
「誰かに頼ることを……してはいけないこと、と考えているんじゃないのか!?」
─背負っていたんだろうな
「だからこそだ……戦闘力が強くて頼れる兄である俺に……」
(自分で自分のことをそう評価するのは……なんというか、恥ずかしいものはあるな)
─だからこそ、だからこそ
「無意識のうちに─俺を頼ったんじゃないか?」
─俺に救いを求めていたのかもしれない。
悟空はうつむいたまま……絞り出すように話し出した。
「……だったらオラは……オラはどうしたらいいんだ!」
声が震えている。
「兄ちゃんのいう通りだ……! どうしても自分のせいだと考えてしまっているオラがいるんだよ……!」
泣いているのだろう。地面にポツ……ポツ……と水滴が落ちている。
「オラはどうしたら……どうやって頼ったらいいんだよ──」
救いを求めるような声で。
「助けてくれよ……兄ちゃん……」
─やっと、弱音を吐いてくれたか。
「……わり、何言ってるんだろうなオラ……ははっ! 弱気になっていけ─」
悟空の言葉をさえぎるように俺は叫んだ。
「みくびるなよカカロット!!!」
「なん─!?」
「お前を助けるだと? ハッそんなこと─」
「当たり前だろうが!」
「お前は俺の弟……自慢の弟だ!! そんな弟が助けてくれだって!? 馬鹿か!! 言われなくても絶対に助けてやる!!」
すごい剣幕で話す俺の言葉を聞いて、顔を上げる悟空
─その目にはやはり 涙が浮かんでいた。
「お前が背負わなくてもいいのに背負ってしまったものは! すぐにはおろせないだろう!!」
「ならお前が安心しておろせる日まで! 俺も一緒に背負ってやる! だから!!」
俺はそこで言葉を切って、ニヤリと笑った。
「─地球でもよろしくな、カカロット」
「……あんがとな」
悟空の目には新たな涙が浮かんでいた。
しかしその涙は──
「オラ……兄ちゃんが『兄』で本当によかった……!」
嬉しさからこみあげてくる 涙だった。
アイスを愛す。