異能戦線:ファンタジック・アカデミア   作:ネコわさびRPG

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06:超絶お楽しみ空間~死刑執行を添えて~

 

 ───事実その一。

 いくら事故とはいえ、一国のお姫様を辱めてしまったとなれば、どんな奇跡が起きても無罪はあり得ない。何かしらの罪には問われる。これは確定事項だ。

 

 ───事実その二。

 王族に対する犯罪行為の罪は、当然重い。

 普通なら牢屋に数年ぶち込まれる程度の悪行も、その対象が『立場のある人間』というだけで罰の重さが一気に跳ね上がる。

 

 ───事実その三。

 というかもう率直に言ってしまえば……『死刑』への判断が異様に軽い。

 それがこの国、アミューゲル王国における貴族・王族の世界だ。

 

 

 

 ───であれば、解答その一。

 おそらく死刑必至の罪を犯してしまった農民・ハルト。

 そんな彼が、ここから巻き返せる事があるとすれば……。

 

 

 

(とにもかくにもできる限りお姫様にお怒りを鎮めていただいて、刑を軽くしてもらう以外に道はねえ!!)

 

 己のやるべき事を正確に把握し、ハルトは全身に絡まる鎖を器用に外して「よっこいせー!」と、気合いいっぱいに立ち上がる。

 ……事ここに至ってなお、まだまだ生き抜く気満々の意地汚さ。

 不運と不幸の申し子であるハルトは、この程度の逆境ではへこたれないのだ。

 

「さて! お姫様との謁見とあっては、僕も準備不足じゃいけないな! くれぐれも失礼のないよう、しっかり心構えをしなくては!」

 

「下郎にしては良い心掛けです。どれほど礼を尽くそうが、死刑は確定ですが」

 

「ふふ、それはどうかな? 僕の謝罪スキルを舐めてもらっちゃあ困る! 滑稽なまでの平謝りっぷりを、とくとご覧に入れようじゃないか!」

 

 自信満々に胸を張りながら、全く胸を張れない事をのたまうハルト。

 そんな彼が披露しようとしているのは、東洋の国に伝わる神秘の謝罪技法。

 その名も、『ド・ゲイザー』である。

 

 その驚異的な謝罪力は、海を渡り、大陸を超え、このアミューゲル王国のみならず近隣諸国にまで名を轟かせるほど。一説では「達人が繰り出すド・ゲイザーは国をも動かす」と称されるほど、まさしく人知を超えた究極奥義である。

 

 まさかハルトも、農民生活で培ったド・ゲイザーの技術を、こんな形で発揮する事になるとは夢にも思わなかった。

 しかし事は命に関わる。出し惜しむ時ではない。生きるか死ぬかの大一番だ。

 見せてやるぜ。全力全開の大謝罪を。

 魅せてやるぜ。我が最大の平謝りを。

 燃え上がる姫様の憤怒、見事に鎮めてみせようじゃあないか!!

 

(まず出会い頭にド・ゲイザーで先手を打つだろ?)

 

 ハルトは頭の中で綿密な計画を立てる。

 

(そして全力全開で泣き喚き! 反省と後悔の意を伝え! 最後は裸踊りでフィニッシュ! これが僕の編み出した、究極の謝罪コンボだぜ!)

 

 プライドもへったくれもなかった。

 恐ろしく質感の軽い作戦を企て、ハルトは「ふっふっふ……」と怪しい笑み。まるで国家を揺るがす策士にでもなった気分で、

 

(これまで色んな荒くれ者達に絡まれたり、追い剥ぎ達に襲われたりしてきたけど、このコンボの滑稽さには誰も彼もが戦意を喪失してきた! これを一国の姫にも真正面から食らわせてやる! そして刑罰を『死刑』から『死ぬまで強制労働』くらいに引き下げる! 大丈夫! 生きてればそのうち良い事あるさ!)

 

 バカみたいな計画をバカな頭で考えるバカは、ニヤリ、とバカの如き笑みを浮かべてみせる。

 その滑稽なまでのバカ面に、何かを察したのだろうか。

 

「っはああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ……」

 

 ハルトのバカ面を横目で見ていた幼女メイドは、バカでかい溜息を一つ吐いて、

 

「覚悟をお決めになられたところで……変態様、腕をお出しください」

 

「え、腕? ……なに、いきなり……」

 

 突然の意味不明な命令に、ハルトは思わずたじろぐ。

 腕をお出しください、だと? どういう意味だ?

 ……待て。まさか「貴様の腕をこの場で切り落とし、姫様への献上品としてお届けしてやろう」という意味か!?

 恐ろしい想像が脳裏を過り、ハルトはサッ! と両手を股の間に隠して、

 

「嫌だ! 僕の腕は僕だけのものだ!」

 

「お出しするのは心臓にいたしますか?」

 

「ひっ!?」

 

 幼女メイドの瞳から放たれる、刃の如き鋭い眼光。

 それに見据えられただけでハルトは理解する。……これは脅しじゃない。彼女なら本当にやる。本当に心臓を『お出し(物理)』させられる……。

 変態は大人しく武力に屈した。

 これではド・ゲイザーどころではない。判決の前にこの子に殺される。

 

「い、痛くしないでね……」

 

 痛くしない腕の切り落とし方なんてあるのかどうかは知らないが、とにかく痛いのは嫌だった。

 恐る恐る、幼女の前に両手を突き出す。

 しかし幼女メイドは、腕を切り落とすつもりも、へし折るつもりもないらしく、

 

「え?」

 

 ガチャリ、と。

 ハルトの両手を拘束していた枷が、あっさりと外される。

 勝手に取れたのではない。あらかじめ準備していた鍵を使い、幼女が拘束を解いてくれたのだ。

 ……と思ったのも束の間。

 

「準備はよろしいですか?」

 

「おっ?」

 

 幼女メイドは、ハルトの背中を片手でガシッと掴む。

 そのまま一気に……グン! と。

 

「おお!? おっ、おっ、おっ、おっ、おっ!?」

 

 突然、ハルトの視界が九〇度ほど上向きに回った。

 何が起きたのかと思えば……なんて事はない。幼女メイドが、その小枝のような細い腕で、ハルトの体を頭上に持ち上げていたのだ。

 

 その小さい体のどこにこれほどの筋力を蓄えていたのか。 

 ハルトは幼女に持ち上げられたまま、体を赤子のように小さく丸めて、

 

「ちょっ! なに!? なになになになに! どういう事! どういう何!?」

 

「喚かないでください。不愉快です」

 

 一切の説明はなかった。

 ハルトを片手で持ち上げた幼女は、もう片方の手を巨大な扉に押し当てる。

 

 そして、『何か』を囁く。

 それに扉の方が反応した。

 

 ゴォン……ッ!! と、体の奥まで響き渡るような重低音。

 龍の彫刻が施された、巨大な扉が薄く開く。

 それは彼女が押し開けたというよりも、明らかに()()()()()()()ような印象があり───

 

「そろそろ断罪のお時間です。心行くまでお楽しみください」

 

 いちいち状況を理解している暇はなかった。

 ハルトの体が、一瞬、ふわりと重力を忘れた。

 

 投げられた。

 ……というか、投げ捨てられた。

 まるで石ころでも放り投げるような乱雑さ。真上から振り下ろすモーションで、幼女はハルトの体を扉の向こう側に放り投げた。

 

「ぶ!?」

 

 変態は顔面から床に落ちた。

 直後、グギ!! と硬いものが折れたような音が鼻から鳴り響く。

 そう思った瞬間、

 

「いっ───」

 

 爆発するような激痛が、ハルトの顔面を駆け巡った。

 

「───ってぇぇええええええええええええええええええええええ!! づあああああああああああああああああああ!! 鼻!! 鼻ああああぁぁぁ……!!」

 

 痛みのあまり両手で鼻を押さえ、床の上をのたうち回る。

 ほとんど打ち上げられた魚のようなザマだが、もう恥も外聞も関係ない。ここ直近で一番の痛みだった。ハルトは両目にジワっと涙を滲ませて、

 

「あ、あの狂いメイドぉぉぉぉ……! いくら罪人にだからってもっと人間の扱い方ってものが……ああああいってぇぇぇぇぇ……っ!!」

 

 鼻どころか顔面全体を覆い出した激痛に、「本当に鼻の骨がへし折れてるんじゃないのか?」と、もう一度パニシェイラに診断していただきたいくらいの気持ちだったが……しかし。

 

「あ?」

 

 そんな暇などなかった。

 状況は決定的に動いていた。

 特に何も考えず、ふと顔を上げたハルトの目に、とんでもない光景が飛び込んできたのだ。

 

「……あ……」

 

 自分は今、どこに投げ込まれた?

 そもそも『ここ』はどこだった?

 目の前には『当たり前の事実』があった。

 改めて、ハルトは自分のいる場所を思い知った。

 

 ───そこは、だだっ広い空間だった。

 床も、壁も、天井も、柱も、全てが大理石で出来た艶やかな大広間。横幅の広い一枚の赤い絨毯が、扉の前から遥か向こうの最奥まで伸びていた。

 

 ―――そこは、『玉座』のある空間だった。

 赤い絨毯が伸びる先には、数段しかない階段と、いかにも国王が座って良そうな豪奢な椅子がドッシリと構えていた。

 

 ―――そこは、ちょっと良い匂いのする空間だった。

 花の香り……ではない。香水だ。時たま城下町を訪れる貴族から漂ってくる香りを、ハルトも嗅いだことがある。それと同じものが、その空間を満たしていた。

 

 つまり。

 

 

 

 

 

 そこは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………な、ん」

 

 赤い絨毯を挟むように、何十人も。

 髪型も、体形も、背丈も違う多種多様な少女達が、ズラリと列を作り、当たり前のような顔をして並んでいたのだ。

 

 しかし思えば当然の事。

 なにせここはシルフィール異能学園。特異技能者を育成する乙女の花園。むしろ男であるハルトがこの空間に居合わせている現状が、最大の異常事態なのだ。

 だからこそ。

 

「…………」

 

「……………………」

 

「………………………………」

 

「…………………………………………」

 

「「「「「「「「「「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」」」」」」」」」」

 

 お互いに、しばらく無言だった。

 

 絶句するハルトは、大勢の少女達の視線を一身に浴び。

 少女達も少女達で、突然現れた男に呆気にとられ、ただ呆然とハルトを見つめるしかなかった。

 

 しん……と、静まり返る大理石の大広間。

 誰も彼もが機能を停止させる、無音の大空間。

 

 そんな時間が数秒ほど続いて、ようやくだった。

 少女達の中の誰かが、ゆっくり、深呼吸でもするみたいに、大きく息を吸った。

 直後だった。

 絶叫が迸った。

 きゃー! とか、いやー! とか、そんな可愛らしいものじゃなかった。

 

 

 

「見つけたわ!! あれが噂の変態覗き魔よ!! 今すぐひっ捕らえて八つ裂きにしてしまいなさい!! 総員っ、かかれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

 

 

 

 ワァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!! と。

 絶叫というよりも号令のような叫びを合図に、一〇〇に及びそうな少女の群れが、空間全体を揺さ振る勢いでハルトに向かって突っ込んできた。

 

 別の表現をするなら。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が、束になって襲い掛かってきた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!? 誰か助けてくれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 押し寄せる殺意の波に、気付けばハルトも絶叫を上げて走り出していた。

 だが叫ぶだけ無駄だった。どうせここには彼の味方なんていない。

 その証拠に、逃げるハルトの背後からはなんとも恐ろしい断罪の声が……。

 

「あの男が姫様を凌辱した犯罪者ですの!? しかも衛兵の服を纏って侵入とは!」

 

「なんて狡猾かつ下劣! あの駄馬の如き面構えで姫様を辱めたのですね!?」

 

「どうしましょう! わたくし変態とかいう魔獣の扱いは存じませんの!」

 

「噂によると単に殺しただけでは何度も蘇ってくるらしいわ! 灰も残らず焼き払うか、永久凍土に放り込むしか殺傷手段がないという話も聞きます!」

 

「生きたまま内蔵を抉り出せば誰だって死にますわよね!?」

 

「斬る! 潰す! 刺す! 折る! 千切る! 殺す!」

 

「長い年月をかけてゆっくり衰弱させてから殺さないと死なない男もいるそうよ!」

 

「やはり白馬に乗って現れる殿方など幻想でした!!」

 

「門番、研究部員、救護委員! 学園の全員をここへ集めなさい! なんとしてでもあの汚物を処理します!」

 

 人間扱いなど、もはや望むべくもなかった。

 好き勝手言われながらも、ハルトは少女達に背を向けて一目散。全力疾走で自分が投げ入れられた巨大な扉へと突っ込んで行く。そのまま体当たりするみたいに扉にしがみつく。だが。

 

「は!? 開かねえ! 嘘だろ!?」

 

 ガチャガチャガチャガチャガチャ! と。

 恐ろしくお金が掛かってそうな豪奢なドアノブを、力任せに押したり引いたりしてみるが……なんて事だ、ビクともしない。扉は一ミリも動かない。

 一体全体、なんだってこんな───

 

「まさか……」

 

 まさか、というか。

 心当たりなんて、一つしかなかった。

 

「外から閉じ込めやがったなあの鬼畜幼女メイドおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! ちくしょうめえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 ───そろそろ断罪のお時間です。心行くまでお楽しみください。

 

 扉に投げ込まれる直前、彼女に言われた言葉が今さらのように脳内を反響する。

 なるほど。しっかり断罪を楽しめるよう、アフターケアまで万全というわけか。

 この場合、楽しむのはハルトではなく、あちらのお嬢様達の方だろうけど。

 いやーさすがはメイドさん。何から何まで計算ずく。隅々まで気が利くなあ。

 あははははー!!

 

 アホか。

 

 絶望的な状況に、いっそ脳内で笑い飛ばすしかなかった。

 だって、こんなの……ひどすぎる。

 逃げられない。避けられない。何もできない。

 襲い掛かってくる少女達を、ハルトはどうする事もできない。

 

「観念しなさい変質者!! おっ、かっ、くっ、ごぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「ちょ、待っ……待ってえええええええええ!! 話せば分かるからああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 あれ? なんか前にもこんな事があったような……?

 そして同じ事を叫んだような……?

 思い出そうとしたが思い出せなかった。こんな緊急事態では走馬灯すら上手く流れてくれないらしい。

 ……あるいは、自分には走馬灯で流す価値のある記憶すらないだけだったのかもしれない。

 

 農民生活、約五年。

 その間の記憶といったら、野菜を育て、上手くいかず、野菜を育て、上手くいき、時々野獣や魔獣に作物を荒らされ、腹を空かせ、藁小屋で雨風に晒され、また野菜を育て……ずっとそんな事の繰り返しだった。

 

 で、そうやってコツコツ積み上げてきた人生が、こんな終わり方をするのか。

 このまま無残に断罪されるのか。走馬灯すら流れてくれないのか。

 あまりに暴力的過ぎるシナリオに、不運と不幸の申し子・ハルトといえど、思わずジワっと涙を滲ませる。

 

 ───あれ? なんか女の子がいっぱいこっちに来るな。

 

 ───あれはもしや、僕を迎えに来てくれた天使達?

 

 ───とすると、ここってもしかして、天国か?

 

 あまりのショックに現実と妄想の区別もつかなくなる。

 

 この時、ハルトが取った行動は、おそらく最も愚かなものだった。

 すなわち……恐怖のあまり尻もちをつき、そのまま体を丸め、押し迫る暴虐から目を背けるみたいに両腕で顔を覆う。対処を放棄し、しかし逃げるでもない、現実逃避の構えだった。

 だって無理だ。できない。

 逃げる事も。避ける事も。ましてや戦う事なんて。

 

「う──────」

 

 ただの農民には。

 できる事など、何もなかった。

 

「うわぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

 

 殺される。

 そう思った。

 その直後だった。

 

 

 

 

「あら、面白そうな事をしてるのね」

 

 

 

 

 聞こえてきたのは、『少女』の声だった。

 優しく包み込むような、大きくも小さくもない、友達に話しかけるような声。

 にも拘わらず。

 その声には、鼓膜よりも先に意識の方へと強引に突き刺さって来るような……尋常ならざる『圧』が含まれていた。

 

 気付けば、だった。

 その声が聞こえた時点で、大声で喚き散らしていた少女の軍勢は、一瞬で静まり返っていた。

 

 静寂を取り戻した空間に、コツン、と短い足音が響く。

 

 いつの間にそこにいたのか。

 ハルトの目の前に、一人の少女が立ちはだかっていた。

 ……いや違う。立ちはだかったのではない。立ち塞がったのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「皆イジワルだわ。私を置いて楽しんじゃうなんて」

 

 

 フワリと舞うのは、銀色。

 おそらくそれが、彼女の色。

 

 

「私も混ぜてもらおうかしら」

 

 

 世界の中心が切り替わる。

 腰まで伸びた銀髪の少女が、声だけでその場を支配した。

 

 

 

 

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