みかんこぉ^〜(決闘開始の宣言)   作:回帰壊獣バブミエル

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側にいるよずっと

 遠くで汽笛の音が聞こえる。

 首を痛めるほどに見上げていたクルーズ船も、すっかりミニチュアのように小さく見えるくらいに遠くなってしまった。

 先程まで乗っていたのが嘘みたいに思える。

 

 振り返れば、こちらも見上げようとすると首が痛くなるくらいに大きな建物。円盤上の天井とクラゲのように足元に伸びる柱。

 特徴的な形状はまさしくデュエル・アカデミア“本校”。

 現役で活躍するプロであるヘルカイザー亮をはじめ、数多くの優秀な決闘者を排出する専門学校。

 

 

「来ちゃったよ……」

 

 

 つい、溢れた言葉。

 あのデュエル・アカデミアをこの目で見れたことのミーハーな気持ちとこの先待ち受ける苦難に対する億劫な気持ち、そんな感情が綯交ぜになって出てきてしまった。

 

 

「ヘイ、尊! どうしたんださっきから!」

 

 

 後ろで肩を叩かれて振り向くとワニの顔が。

 ワニ人間……なんておかしなものではなく、長身の男性がワニを担いでこちらに近づいてきているだけである。

 いや、それも十分おかしいんだけど、そんなことでは動じない。

 

 

 

「なんでもないよジム。心配させてすまない。カレンもありがとうね」

 

「ぎゃあ♪」

 

「自分でやっておいて何だけど、全く動じないんだな。こんな早くカレンともすっかりフレンドになれる人なんてユーくらいさ!」

 

 

 そう言うとジム・クロコダイルクックはカレンを背負い直す。

 

 

「なんだい、ひょっとしてそっちにもクロコダイルが沢山いたりするのかい?」

 

「まあね。俺がいた山には猛獣がいっぱいさ。ワニだって熊だって投げ伏せてターンエンド、ってね」

 

「はははははっ、そんなユニークなジョークを話すのもユーくらいだな!」

 

 

 こちらもははは、と乾いた笑いが出てくる。

 別に冗談のつもりもなかったんだけど。

 

 こんな風にジムとはクルーズ船の中ですっかり打ち解けてしまった。作中屈指のコミュ強は伊達ではない。俺は半ば現実逃避のためこんな話ばかりしていたが、きっとジムも話相手が欲しかったのだろう。

 

 モノローグのようにアモンが言っていたように、あのクルーズ船、比喩なしに俺達留学生+コブラ以外、誰も客が居なかったのだから。

 

 社長! コスパ! コスパが悪すぎます! 

 いくら実力主義で強い決闘者を優遇するとは言っても、あのクソデカ船を動かすためにどれだけコストかかると思ってるんですか! 止めろモクバ! 

 

 閑話休題。

 

 コブラは論外。オブライエンはこの時は任務優先で取り付く島はなさそうだし、ヨハンは……あの船にいたんだっけ? それとも前乗りしてたんだっけ? 今この場にいないからよくわからん。

 そんな留学生たちの中で気楽に話ができるのなんて俺くらいだろう。

 え、アモン? だってアイツ……

 

 

「…………」

 

 

 黙ってこちらを微笑ましそうに眺めているだけだ。ヤダ怖い。絶対値踏みしているよこの視線。

 

 この男、元浮浪者の孤児だったせいか、目的のためには他者を容赦なく犠牲にするタイプの人間だ。

 しかも、こんな優男に見えて腕力には自信のある男だ。暴力を振るわれたら敵わん。対抗するにはバシレオス校長かメテオラゴン先生を連れて来なければなるまいて。

 こういうのは関わらないことが一番だ。頼むから関わらんといて。

 

 

『このメガネいいですね。《マシュマロンのメガネ》と交換しましょう』

 

「いややめろバカ。それに《マシュマロンのメガネ》は永続魔法だろ」

 

「?」

 

「?」

 

 

 《オオヒメの御巫(コイツ)》を御するのも一苦労している。

 目新しいものにすぐ飛びつくから、船の中を探検しているだけで丸1日潰れたくらいだ。ただ徘徊するだけならいいが、こいつは物理干渉できるタイプの精霊。隙あらばこんなイタズラを思いつくから、船の機関設備なんか触れられたら遭難待ったなしである。

 あと、やたらとコブラやらアモンやらちょっかいかけようとするの何なんだ。よりにもよってやべーやつらに目をつけられるような真似するんじゃないよ。

 

 

『別に船の中で全然構ってくれなかったことなんて気にしてませんが』

 

「絶対気にしてるやつ……部屋戻ったら時間やるから」

 

 

 無表情で視線を逸らすな、怖いから。

 そしてアモンの眼鏡に触れようとするな、怖いから。

 結構根に持ちそうだし、近い未来酷い目に遭ったりしそうだからそっとしておいてほしい。

 故に、丸々1日構ってやっただろうとは反論しないでおくことにした。大人になろう。

 

 

「oh……イマジナリーフレンズ……」

 

「悩みがあるなら話を聞こうか? これから親交を深めていく僕らだからこそ話せることもあると思うから」

 

「いや本当に失礼しました頼むから見なかったことにしてください」

 

 

 一方、一部始終を見られていた面々からは可哀想な視線を頂戴することに。黙っていたアモンからも心配そうに声をかけられてしまった。

 やめてくれ二人とも、それは俺に効く。

 

 そりゃあ傍から見たら空想の友達とよろしくやってるやべーやつだ。反省。

 理解はしていたけど、山にいた頃は意識していなかった反動が来てしまった。

 かつてのシティーボーイだった頃の意識は捨ててお上りさんという自覚を持て。

 

 

「何を無駄話をしている。早く行くぞ」

 

 

 前を歩くコブラの一声に、俺含む三人は口を噤む。

 話題ぶった切ってくれて助かった! 

 ありがとうプロフェッサー! デュエルエナジーはあげたくないけどね! 

 

 

「…………」

 

 

 と、黙って後ろから追い抜くようにオブライエンが先を行く。

 歩く動作からでも見て取れる隙のない空気。

 さすがに話しかけるのも憚られる。

 

 

「オブライエンとも仲良くなれるかな」

 

「オフコース! 時間をかければ彼も心をオープンにしてくれるさ!」

 

 

 ジムよ、歯を光らせて肩を叩かないでくれ。

 まるで俺が友達少ないから欲しがっているように見えるだろう。いやまあ事実多いわけではないんだけど。

 

 ……この頃のオブライエンはガチガチの実の全身仕事人間。見るからに必要ない会話はしないタイプだ。

 十代との決闘を通じて、割と早い段階で態度は柔和されることになるものの、今はまだ時期尚早と言ったところか。

 

 それでも、彼とは親交を持っておきたいと思う。

 この留学での野望というか、目標としているくらいだ。

 

 勿論、好きなキャラというのはある。

 一度は恐怖で逃げ惑いながらも、友のために覇王に立ち向かった彼の姿はとても輝いて見えたのだから。

 

 ついでに──────あとこれは本当についでなのだが、あわよくばそのまま──────

 

 

「《ヴォルカニック・クイーン》をトレードして欲しい」

 

「結構いい性格しているんだね、君」

 

 

 オメーに言われたかねーよ、鬼畜眼鏡がよォ! 

 ふふふ、《御巫》以外の通常召喚できるモンスターをデッキに入れるといつの間にか弾かれるようになってしまったらこうもなろう。

 

 過剰なパワーを持ったカードを使っている代償ということなのかもしれない、と納得しようとしているが、やはり《壊獣》のような気楽に相手の場に高打点のモンスターを立てるギミックは欲しいものだ。

 

 そして、唯一入っているモンスターである《溶岩魔人ラヴァ・ゴーレム》くんが手札で腐った数を憶えているのかい? この時代、先行で2体以上モンスターが並ぶことなんて稀。

 故に《ヴォルカニック・クイーン》さえあれば戦術の幅が格段に広がるというもの。

 

 ああ、サンダー・ザ・キング……ジズキエル……こんな時君たちがいてくれたら……

 

 遠い遠い前世に置いてきてしまったカードたちに思いを馳せながら、デュエル・アカデミアの建物の敷居を跨いだ。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 そんな初日は特段何もなくあっという間に過ぎてしまった。

 いや、この表現は語弊があるか、イベント自体は目白押しだった。

 我ら留学生の顔合わせとコブラによるデス・デュエルの説明、そして十代とヨハンのデモンストレーションデュエルとまさに原作どおりの流れだ。

 

 俺のような異分子が入っても展開は変わることなく“特段何もなく”過ぎていったわけだ。

 いやー、実際にネオスや宝玉獣をこの目で見てみると感慨深いものがあるなぁ! 

 そういう面では来てよかったと手放しで言える。

 

 ……強いて変わったことを挙げるとすれば、俺の自己紹介の時に生徒一同少しざわついていたことくらいか。

 まあ、留学生と称していながら本校直系の分校なんてところからも人が来るとは思っていなかったのかもしれない。

 

 別にクスクスと笑い声が聞こえたような聞こえていなかったような気もするが、まあ幻聴だろう。

 何も、俺自身の格好に何か変なところはなかったはず。

 田舎者と指を刺されて笑われないようにオベリスクブルーの制服を改造した甚平に近い服装でいるわけだ。フォーマルな場でも使えるように、着方次第ではジャケット風になるようなTPOを考えられた仕様だ。どこも不自然なところはあるまいて。

 

 堂々としていれば何も気にならないものだ。

 甚平みたいな服着やがってお祭り気分か、と言われたら「そうだが?」と言い返してやろう。デス・デュエルでなければ実力で叩き伏せてやるから覚悟しろフフフ。

 

 

 

 

 と、その次の日の朝。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、マシュマロンのメガネの人っス」

 

 

 もう帰りたい。

 部屋に帰って寝たい。

 

 ()()()()()()()()、レッド寮の前を通ったら丸藤翔くん御一行に指さされてメンタルを病んでしまいそうになる。

 

 

「……? ???」

 

「いや、そんなキョロキョロしてもこの場にはアンタしかいないザウルス」

 

「マシュマロンのメガネとは何だ? いつ発動する?」

 

「ひょっとしてこの人もアニキたちと同じ決闘馬鹿っスか?」

 

 

 初対面の相手に決闘馬鹿呼ばわりはルールで禁止スよね? 

 え、デュエル・アカデミアなんて通ってる奴らなんて全員決闘馬鹿だろって? それこそ禁止カードだろ。

 

 それはそれとして、入学当初とは比べ物にならないくらい図太くなったよね翔くん。まあ2年生の頃から体格差がエグい剣山相手にもぶつかるくらいの度胸はあったものね。

 

 違和感なく装備させられていたマシュマロンのメガネを握り潰しながら笑顔で背後にいる《オオヒメの御巫(犯人)》へと振り向く。

 ああ、自己紹介の時笑われている気がしたのはこのせいか……最近、イタズラに拍車が掛かってきてないかコイツ。何が豊穣の神だ後で覚えておけよ。

 

 

「失礼、お互い悲しい誤解があったようだね。改めて、俺は上埜尊。分校から留学してきたごく普通の生徒だよ」

 

「あ、丸藤翔っス。で、こっちがティラノ剣山くんと、遊城十代のアニキっス」

 

「よろしくドン。で、上埜先輩はなんでレッド寮に何の用ザウルス?」

 

 

 実際に聞いてみると語尾が個性的すぎるザウルス! 

 まあそんなことで一々驚くことはない。

 我が母校には「ウォークライライライ!」なんて笑っている奴だっていた。それに比べれば全然大したことはないのだ。

 

 

「いやあ、どこか部屋が空いてないかなーって思って」

 

「えっ。留学生は皆ブルー寮に部屋があてがわれているって聞いたドン?」

 

 

 やっぱり変な語尾とスペースザウルスの件以外は本当にまともだよね剣山くん。

 彼の言うとおり、ちゃんとオベリスクブルーの寮に部屋はある。昨夜はそこでお世話になったわけだ。わざわざオシリスレッド寮の質素な寮にお世話になる必要はないと考えるのは自然か。

 

 

「そうなんだけど落ち着かなくてね。ちょっとペンキの臭いがキツくて……つい最近改装工事とかやったのかな?」

 

「あー……ちょっと塗装し直したって話を聞いたようなー……あははははは」

 

 

 斎王の一件で真っ白にされちゃったからね。

 まあ、そんな事情は知らない振りをする。

 塗装の件は本当であるが、こちらも方便を使っているのだから。

 

 実のところ、ブルー寮とイエロー寮は異世界転移に巻き込まれそうだから嫌なのである。

 

 ……記憶だと、転移した後の島を外から見た描写があった時、ブルー寮とイエロー寮の敷地も含めてごっそりとクレーターができていた。

 実際の異世界編では校舎だけ転移していたわけだが、実は描写されていないだけで巻き込まれていた可能性もあるわけだ。

 

 で、明確に無事だったのはレッド寮だけだった記憶がある。ペガサスがこの島に来た時、ポツンとレッド寮だけ残っていた記憶がぼんやりとある。

 なら、初めからレッド寮にいれば巻き込まれる可能性少ないんじゃあないのか、と思った次第だ。

 

 

「で、実際レッド寮って空いてるの?」

 

「確かに空いていたんスけど、つい最近二人入ってきたからもう満員っスよ。残念だったっスね」

 

「そっかー」

 

 

 そういえばこのシーズンが始まる前に万丈目と早乙女レイちゃんがレッド寮に入る流れがあったな。

 失念しているとは何たるウカツ! 

 なんかオシリスレッドの生徒って十代の印象が強すぎて他に生徒がいるイメージないんだよなぁ。そのせいで楽観的に突撃してしまった。

 

 仕方ない……こうなれば当日はここら辺りで野宿を決行するしか──────ん? 

 

 

「兄貴、どうしたザウルス? さっきから黙ってばっかドン」

 

「いや、なーんか背後になんか見えるっていうか。ぼやーっとした影が見えてさ……」

 

「お、オバケ!?」

 

 

 道理で何か足りないなって思ってたら、そういえば十代がずっと喋ってなかったな! 

 いつも明るい人が急に黙ると少し怖いよね! 

 しかも翔くんオバケか何かと勘違いしてるな。ハハハこやつめ、後で《オオヒメの御巫(コイツ)》が笑顔で何か装備してきても知らんぞ。

 

 

「ああ、そんな身構えなくてもいいよ。多分精霊の一種だから」

 

「精霊!? お前もいるのか!?」

 

「ああ!」

 

 

 それってハネクリボー? なんちゃって。

 俺にはまだハネクリボーの存在はどこにも見当たらない。ふぅん、ビビって隠れちゃったのカナ? 

 

 逆に、十代は《オオヒメの御巫(コイツ)》がぼやけて見えているっぽいな、俺にはハッキリ見えるんだけど。

 

 

『おそらく私は他の方々とは“存在の位置”が異なるのでしょう』

 

「位置? 高いとか低いとか?」

 

『いいえ、高低差でなく()()()()という方が適切でしょうか。強さや優劣ではなく、単に認識するための次元が異なる、ということです』

 

「??? 意味わからん。テレビのチャンネルが違うような感じってこと?」

 

『てれび? ああ、多分そうですそれそれ』

 

 

 そこは自信持っていって欲しかったなぁ! 

 

 まあ確かにこいつはこの時代で見れば10年以上先の未来のカードだし、平気で物理干渉するし、色々特殊なんだろう。

 イタズラ好きな面も……今もこうして翔くんの眼鏡をマシュマロンのメガネにすり替えようと……やめろやめろ! 

 

 

「あー、君もアニキと同じ感じっスか」

 

「そんな感じみたいっす。ついで言うと、今、翔くんの眼鏡をマシュマロン仕様に変えようとしてる」

 

『別にオバケ呼ばわりされたことなんて何も気にしてませんが????』

 

「ひいっ! な、なんか寒気がしたっス!」

 

「ははっ、面白い精霊ついてるんだな! だったらデュエルしようぜ! デュエル中だったら見えるかもしれないし!」

 

 

 太陽みたいな笑顔でデュエルディスクを見せてくる十代。

 うお……圧倒的光属性(正しい闇)すっごい……これがどんどん曇っていって再起不能ギリギリまで追い込まれるとか笑えないんじゃが……。制作陣はゲイのサディストかよ。

 

 

「うーん、今日は遠慮するよ。君、少し顔色悪いように見えるし」

 

「えっ、そうかぁ?」

 

「あー、確かにいつもより顔が白い気がするザウルス」

 

 

 昨日もヨハンとデス・デュエルしていたのだから無理もない。この後、オブライエンと一戦する予定なのだから、ここは大事を取ってもらおう。

 ついでにデス・デュエルをするとエナジーを吸い取られる伏線を貼っておこう。悪いなオブライエン、先に“()()()”てもらったぜ。

 

 

「そんな焦らなくても、留学の期間はまだあるから。俺も船旅の疲れが残っているし、お互い万全の状態でやろうよ」

 

「うーん……しょうがないか。約束だからな! いやー、ヨハンといい、やっぱり世界は広いんだなぁ。今からいろんな精霊と会えると思うとワクワクするぜ!」

 

「そうだねー、まあ、俺は1体しかいないから。沢山いるっぽいヨハンのところとか賑やかそうだよねー」

 

「ん?」

 

「ん?」

 

 

 あれ、今ちょっと話が噛み合わなかった気配。

 こう言ったことは後で「し、知らね〜〜!」なんてことになって酷い目に遭うのがこの世界だ。この場でハッキリさせておくべき事柄だ。

 フムフム、つまり文脈から察すると……

 

 

「え、ひょっとして他にも居たりする?」

 

「いや、ぼやーっとだけどいるだろ、2……3……くらい」

 

「何それ……知らん……怖っ……」

 

「……ひょっとして、ひょっとするドン!?」

 

「や、やっぱりオバケじゃないっスかーっ!?」

 

 

 翔くん。迫真の絶叫である。

 その後はもうひっちゃかめっちゃか。

 完全に偏見を抱かれてしまった翔くんが取り乱してしまい、そのまま解散することに。結局ヨハンとはエンカウントしなかった。十代には見えなくても、ヨハンだったら何か別の視点があったかもと期待したが機会を逃してしまった。

 

 で、ペンキ臭いブルー寮に戻ってきた。

 ここなら周囲の目を気にする必要はどこにもない。

 

 

「ねえ、俺の周りってお前以外の精霊っているの? 初耳なんだけど」

 

『うふふふふふ』

 

「おい」

 

『うふふふふふふふふふふふ』

 

「だめだこりゃ」

 

 

 オバケ呼ばわりが余程癪に触ったらしい。

 コイツ、会った頃はずっと笑顔だったのに随分感情豊かになったものだ。あのアルカイック・スマイルの目元が暗くなっているため、何しでかすかわからない怖さが滲み出てしまっている。

 人間味を増したことに喜べばいいのか、それともトラブルメーカーっぷりに頭を痛くすればいいのかわからなくなってきた。

 

 静まれ静まれー、とヨシヨシしながら、十代の言葉を反芻する。

 3……3体と来たか。1体はこの《オオヒメの御巫》として、他に憑いているのであれば、普段の決闘でも何かしら影響が及んでいるはず。

 

 考えろ、俺のデッキの中で心が通じ合っているカードと言えば──────

 

 

 

「そうか、わかったぞ!」

 

 

 考えてみればわかることだった。

 いつも手札に来てくれて、どんな相手でも問答無用で打開してくれる解決札。

 この《御巫》デッキの中でも頼りにできるアイツと言えば勿論。

 

 

 

 

「ずっと側で俺を支えてくれていたんだな……

 

 

 ──《溶岩魔人ラヴァ・ゴーレム》!

 

 

 え、残りの1体? 

 それも()()()()()()()()()()()()に決まっている。

 我のデッキには二枚積んでいるからな! 

 

 

 いやー、道理でよく手札に来ると思ったんだよ! 

 二枚とも初手に来て扱いに困るくらいにさ! 

 

 そんな時はナンテコッタイと思いながらリリース二連打ぶちかましたが、こうして精霊が憑いていると思うと感慨深いものだ。

 勢い余った故の行為と思えば愛おしく思えるな。

 

 

「フフフフフ、ああいいぞぉ……

 

 

 元の持ち主(闇マリク)の真似をしながら不気味な笑い声を漏らす。

 どこか、背後で何か倒れる音が聞こえたような気がしたが多分気のせいだろう。

 

 





 ■《マシュマロンのメガネ》
 永続魔法(迫真)
 《マシュマロン》がフィールドにいれば攻撃対象を集中させる効果を持つ。戦闘耐性かつライフバーン効果持ちのモンスター相手に加えて更に盤面をカチカチにすることが可能。
 後に上記2枚の効果およびイラストが1枚のカードにまとめられた《マシマシュマロン》というリメイクカードが登場する。


 ■《溶岩魔人ラヴァ・ゴーレム》
 世界大会でも使われた有名すぎるモンスター。通常召喚できないが、相手モンスターを2体リリースして相手の場に特殊召喚できる。攻撃力3,000の強力なステータスな上に、特殊召喚したターンは他のモンスターの通常召喚が封じられてしまうが、ゲームのルール上、神だろうと完全耐性持ちだろうと除去できるため、後手捲りにおける宇宙最強カード。
 さらにコントロールプレイヤーは毎ターンスタンバイフェイズに1,000バーンを負担することになるが、漫画・アニメでは700バーンとちょっと控えめになっている。さすがにLP4,000ではやりすぎか。
 なお、特殊召喚に関してはターン制限が存在していないのでバウンスさせれば何度でも再使用可能。アラベスクと迷わし鳥で使いまわすの気持良すぎだろ!
 ちなみに俺のペットの必殺技は“ゴーレムボルケーノ”だ。城之内ィ、高らかに攻撃宣言しなァ! 
 どうした? 攻撃力3,000のモンスターで攻撃してみろ! 更なる地獄がきしゃまを待っているぜぇ。フハハハハハ! 


 ■《ヴォルカニック・クイーン》
 ラヴァゴと同じく相手モンスターをリリースして相手フィールドに特殊召喚できるモンスター。通常召喚できない制約がかかる上にリリースするモンスターは1体のみという相違点があるが、複数体モンスターが並ぶまで時間を要するゲームスピードを考慮すればこちらの方が使う機会が多いのかもしれない。
 ちなみに主人公はカテゴリ的にオブライエンが所有していると思ってるが、実際に使用したのはダークネス編で()()()()()()()()()()()()()()()()()T()である。よってオブライエンへ必死にラブコールを送っても無駄なのだ! 哀れ!


 ■《壊獣》
 通常召喚できない制約がない《ヴォルカニック・クイーン》効果を持つカード群。例えばガメシエルは壊獣カウンターを取り除くことで万能無効+除外できるようなリリース召喚以外にも隠されし効果(隠れていない)がある。
 なお諸事情により主人公のデッキには入っていない模様。捨ててしまったああああああ!!!!


 ■ずっと側にいたHさん
 ズコー


 ■ずっと側にいたNさん
 ズコー
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