みかんこぉ^〜(決闘開始の宣言)   作:回帰壊獣バブミエル

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 ここに宣言しようか(お礼)



君は悪くない

『放課後より、“デス・デュエル”が開始されます。全校生徒は配布されたデス・ベルトを装着してください』

 

 

 校内放送でそんな億劫なことが嫌でも耳に入り、隠しきれない溜息をひとつ。

 他生徒も同じく浮かない顔をしている者もちらほら。コブラの「成績が悪い者はデュエル・アカデミアを去ってもらう!」と言われたことが精神的に負担になっているんだろう。

 

 けれど、決闘(デュエル)の成績を集めるためなんてものは所詮建前に過ぎない。

 配られたデス・ベルトを指で回しながら、ぼんやりと眺めながら歩く。真の目的はこのベルトから決闘(デュエル)エナジーとやらを吸い取って、ユベル復活のためのエネルギーにすること。

 

 最大出力で吸い取られれば屈強な決闘者(デュエリスト)でさえ、良くて入院、悪ければ死に至るっぽいレベルに陥るトンデモ装備だ。そんなことわかっていれば退学なんてまだマシだと思ってしまう俺は果たしてこの世界では異端なのだろうか。

 

 

「“コキド・エルゴ・スム”──────“我、考える。故に我あり”。決闘(デュエル)は熱い戦いにだけ意味があるわけではない。むしろ哲学的なゲームだと思うのだが」

 

「何言ってんの?」

 

「“カンガルーは有袋類だから袋あり”だな。俺はカレンと昼寝でもしてるさ」

 

「だから何言ってんの?」

 

 

 横の高身長二人はこんな感じだし。意☆味☆不☆明だぜ! 

 あ、剣山たちがこっち見てる。俺も意味深なこと言って強キャラ感出しておくか? 

 ……やめておこう。変な迷言を残してMAD素材にされては堪らんからね。ドゥヒン。

 

 

「ここなら誰もいないか」

 

 

 と言うわけで二人と別れて人気のないところにやってきましたよっと。

 試しにデス・ベルトをそこら辺の木の枝に取り付けてみる。取り外しのためのボタンはないため、自力では外すには枝ごと折るしか方法はない。

 いや、なんで取り外しできない仕様なんだよ。普通に考えてなんか仕込まれていること見え見えだろ。

 

 

「おーい、これ外せる?」

 

『できますよ。これでよろしいですか?』

 

「おお、さすがー」

 

 

 《オオヒメの御巫》は細い指で突くと、カチリと装着前の状態へと戻る。

 トラブルばかり起こす奴だが、こと“装備”に関しては追随を許さないカード群。読みどおり、万が一があっても取り外しできる保険は確保できた。ヨシ! 

 

 じーっと、黙って見つめてくるのは暗にもっと褒めなさいと口にしているようなものか。

 確かに良い仕事だが、まだ足りない。

 ついでに新たなチャレンジをしてもらおう。

 

 

「あと、このベルトの機能の一部だけを作動しないようにできる? 例えば、エナジーを吸い取る機能だけを動作しないようにするとか」

 

『可能です。私にかかれば装備の扱い方は自由自在ですので』

 

「おお、これは偉すぎる」

 

 

 正直、実物を手にするまではわからなかったため、デュエル・アカデミアに来るまでずっと不安だったことが解消された。

 事前に細工だけしておけばエナジーを吸い取られることもないため、俺の方は気軽に決闘(デュエル)することができるわけだ。たとえコブラがいちゃもんをつけてきたとしても「ベルトの故障じゃないですかぁ〜〜?」とガキムーヴで乗り切れることだろう。これは手放しで褒め称えることができる。

 

 

「お前がいてくれて良かったよホント」

 

『そうです。もっと、もっと褒めなさい』

 

「よっ、装備マスター! 豊穣の神! 自制心赤ちゃんレベル!」

 

「何やってるんスか?」

 

「おうっ!?」

 

 

 首がねじ切れそうなくらいに振り向けば翔くんの姿。きゅ、急に背後から声をかけてくるなーっ! 

 この学校、どこにどんな危険生物(人物含む)が潜んでいてもおかしくない場所なんだぞ! 寿命が2ヶ月縮んだ心地だぞ! 

 

 

「何、日課のデッキとの対話さ。こうやって褒めて崇め奉ると初手の手札が良くなるっていう説があってだねハハハ」

 

「あー、ゲン担ぎってやつっスね。それならちょっとわかる気がするっス」

 

「そんなことより、翔くんこそ何を?」

 

「え、えーっと……」

 

 

 逆に質問を返すと翔くんは目をそらす。

 あー、これは悩んでいますねこれ。何だっけ。確かこのデス・デュエルが自分の目指すリスペクト・デュエルと違う気がするってことに悩んでいるんだっけか。

 

 リスペクト・デュエル。

 うーん、これはOCGで25年経った今でも難しい問題だ。

 相手を侮らず、尊敬の気持ちを持って互いに全力を尽くすこと……と言えば聞こえはいいが、こればかりは人によるのかもしれない。

 

 例えば、初期のスターターデッキ相手に《スネークアイ》をぶん回して先攻制圧して何もさせない、というのはリスペクトと言えるのだろうか。

 さらに言えば「全力を出せば制圧できるのにやらない」のは果たしてリスペクトと言えるのか、という二律背反的な問題も絡んでくる。

 

 まあ、かく言う俺のデッキも偉いことはいえない内容か。相手の盤面なんて知ったこっちゃないと言わんばかりにラヴァゴくんで荒し回る戦術は果たして“リスペクト”と言えるのだろうか。

 

 この世界だと“決闘(デュエル)”という文化が現実よりも密接になっているからこそ、そんなことを考えさせられてしまうなぁ。

 

 

「何か悩みがあるのかな? 良かったら話だけでも聞こうか?」

 

 

 そんな思うところがあるからこそ。

 余計なお世話かもしれないが、ちょっとだけ自分を棚に上げさせてもらうことにした。

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 アモン・ガラムという人間はガラム財閥と呼ばれる世界有数の財閥の御曹司だ。

 しかしそれは表の顔。本当の顔は財閥における真の後継者たる弟を影で支える活動するスパイである。

 

 そんな彼がデュエル・アカデミアに留学になったのは偶然なのか、何かと世界を揺るがす事件の中心となっているこの学び舎に対し、留学以外の別の目的があったのか。

 少なくとも、今の彼は目下はきな臭い動きをしているプロフェッサー・コブラの動きを追っていた。

 

 懐刀と言われるオブライエンとともに移動することを確認し、気づかれないように細心の注意を払いながら尾行する。

 辿りたいたのは島の外れ。波によって崖となった海岸沿いで何やら密談をする──────予定だったのだろう。

 

 

「それでっスよ、アニキったらボクの悩みをよくわかんないって言ってきたんスよ! アニキなら答えを教えてくれるって思ったボクが馬鹿みたいっス! こうなりゃヤケのやけっぱちっス!」

 

「うんうん。それは十代が悪いねー」

 

 

 そこには先客がいた。

 一人はブルーの制服を身にまとう小柄の男子生徒。確か丸藤翔と言ったか。アモンが事前に調査した生徒のリストには、あのヘルカイザー亮の実の弟という情報はあった。

 元来の気の弱さはあるものの、入学当時のオシリスレッドからオベリスクブルーにまで着々と成績を上げている生徒。()()()()()()()

 

 取り立てて脅威となる存在ではないと判断していたが、対するもう一人の生徒は特殊だった。

 

 

「翔くんも3年生だからね。悩むのは誰だってあるけど、いつまでも十代に頼りっきりになるのはよくないんじゃないかな。本来、それを後輩にやってあげる側の人間でもあるわけだし」

 

「それはそうっスけど……」

 

「それに、十代って多分口でアドバイスできるタイプじゃないでしょ? むしろ行動で導くというか、影響を与えるタイプっていう感じかな?」

 

「確かに! アニキにそんなこと期待したボクが馬鹿だったっス!」

 

「結構辛辣だね」

 

 

 上埜尊。

 あの“秘境の分校”()()()()()()()()()()()()()謎多き決闘者(デュエリスト)

 人畜無害そうな風貌だが、アモンとしてはクルーズ船に乗っていた時から妙に距離を取られていることを感じ取っている。

 

 御曹司としても、そしてスパイとしても人心掌握はお手の物だというのに、初対面からあのような対応をされる経験は滅多にない。

 先述の経歴のない背景を相まって、警戒レベルは高い部類の人物と認識していた。

 

 

「……君たち、こんなところで何を油を売っている?」

 

「ひっ!」

 

 

 当初の目的であるコブラが二人に接触した。

 要注意人物同士の接触。呼吸すらも最小限にし、気配を殺す。

 予想外ではあるが、良い機会だ。

 ここで彼らの関係性を暴いてやるとしよう。

 

 

「丸藤君とは決闘(デュエル)に対する考え方について意見交換していました。

 ……失礼ですが、プロフェッサーこそこんなところに何のご用でしょうか? オブライエンも連れているなんて穏やかじゃないですね」

 

「オブライエンには私用を頼もうとしていただけだ。心配無用、君たちが気にすることではない」

 

 

 それより、とコブラ目を細めながら続ける。

 

 

「意見交換は結構だが、それよりもまず君たちは己の存在意義を示すことが先ではないのかね? まさか、今朝私が話したことを二度も言わせる気かな?」

 

「とんでもない。プロフェッサーのお考えもごもっともだと思います。ただ、彼にとって何の憂いもなく決闘(デュエル)するために必要だと考えていただけです」

 

 

 尊は事実を述べて返答する。

 ジムや先程までに相談にのっていた翔と相対していた時とは別人のように淡白な反応だ。

 コブラの厳しい態度にも一歩も引かずに立ち向かっている。

 

 

「そうか。では、ちょうど良い。この場でデス・デュエルをしてもらおうか。私直々に見届けるとしよう」

 

「ええっ! そんなぁ!」

 

 

 巻き込まれる形になってしまった翔から悲鳴に似た声が出る。

 彼からしたら五人の留学生──────精鋭中の精鋭相手にいきなり決闘(デュエル)させられるわけだ。

 負けて成績不振として扱われれば“退学”の二文字が頭を過る。進んで相手したいとは思わないのは自然か。

 

 

「やろうか翔くん。なあに、難しいことを考えるよりも行動した方が答えがでることもあるさ」

 

「うう……」

 

 

 淡々。一方、渋々。

 態度やモチベーションは対照的に見えても、相対すればそんなもの最早関係のない。

 ここからは、どちらかが勝者と敗者になる世界だ。

 

 

 

「デュエル」

 

「デュエル!」

 

 

 

 手札を見る前に尊側より手を差し出される。

 握手よりも掌を差し出す。

 

 “先攻を譲ろう”

 

 そんな動作を受け、翔は先攻としてデッキからカードをドローした。

 

 

「………………」

 

 

 あえて先攻を譲るという行為。

 侮る、と言うよりは余程後攻に自信があるのか。

 

 

「ボクのターン! 《ドリルロイド》を召喚! 

 カードを1枚伏せてターンエンドっス!」

 

 

《ドリルロイド》 ATK/1,600

 

 

 攻撃力のあるモンスターを召喚し、伏せカードを1枚伏せて終わった先攻1ターン目。

 無難な展開。まずは様子見、と言ったところか。

 

 

「ドロー」

 

 

 山札から引いたカードを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 それで終わり。

 尊は文字どおり何もせず、伏せカードすら無しにガラ空きの盤面を晒して終わった。

 さすがにこれは翔だけでなく、コブラやオブライエンすらも困惑する。

 

 

「な、何もしないんスか?」

 

「ああ、君のターンだ」

 

 

 アモンもまたその一人。戸惑うのも無理はない。

 何か攻撃に反応するようなものが手札にあるのか。

 何もないことこそが得体のしれない不気味さを掻き立てる。

 

 

「そ、そうっスか。ドロー……よし!」

 

 

 先攻2ターン目。

 躊躇いながら引いたカードはどうやら狙いのものだったらしい。

 決闘(デュエル)開始当初とはうってかわり、翔の眼差しは真っ直ぐと尊を見据えていた。

 

 

 

「手札から《融合派兵》を発動するっス!」

 

「……ん?」

 

「融合モンスターを1体を相手にみせることで、そのモンスターにカード名が書かれた融合素材モンスターを1体デッキから特殊召喚するっス!」

 ボクは《スーパービークロイド─ジャンボドリル》を見せることで、素材の《サブマリンロイド》をデッキから特殊召喚するっス!」

 

 

《サブマリンロイド》 ATK/800

 

 

 地面から浮上してきたのは潜水艦型のモンスター。

 2体のモンスターが並ぶ。

 盤面の攻撃力の合計は2,400。ガラ空きとはいえ、このままではLP4,000を削り切ることは不可能。

 

 翔の《ロイド》デッキは攻撃力が高いモンスターは少ない。ここでもう一度相手にターンを譲りたくないところだが、《スチームロイド》のようなモンスターは果たしているのか。

 

 

「ボクは《パワー・ボンド》を発動するっス!」

 

「っ!?」

 

 

 だが、翔は引いていた。

 切り札となるカード。アモンやコブラたちは知らないが、翔としては兄のように使いこなすことを目標としている機械族限定の融合魔法。

 

 

 

「フィールドの《ドリルロイド》、《サブマリンロイド》、そして手札の《沼地の魔神王》を素材に融合召喚するっス!」

 

「ほう。《沼地の魔神王》は……」

 

「融合素材の代用にできるっス! 融合召喚!

 ──────《スーパービークロイド-ジャンボドリル》!

 

 

《スーパービークロイド-ジャンボドリル》ATK/3,000

 

 

 どしん、と地ならしが起きる。

 先程の《ドリルロイド》を遥かに大きくした図体。地面どころか、並大抵のモンスターであろうともあの大きなドリルに刺されればひとたまりもないに違いない。

 

「《パワー・ボンド》の効果! このカードを使って融合召喚したカードは攻撃力が2倍になるっス!」

 

 

《スーパービークロイド-ジャンボドリル》ATK/3,000→6,000

 

 

「攻撃力……6,000!」

 

「バトルっス! ジャンボドリルでダイレクトアタック!」

 

 

 ドドドドド、と土煙を巻き上げながら尊へと突き進む。

 トラック、否、戦車と見比べてしまうほどの体格差。

 

 これが通れば勝負は決まる。

 この一撃が決まれば勝ち。

 決まらなければ《パワー・ボンド》の代償で攻撃力3,000分のダメージが翔を襲う。

 

 

「フッ……」

 

 

 今がまさに分水嶺。

 だが、尊は一切動じることなく、包容するように腕を広げてそれを受け入れた──────

 

 そして──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐえー!」

 

 

 

 LP 4,000 → -2,000

 

 

 そのまま押しつぶされた。

 何もなく、ソリッドビジョンが消え去り、残ったのは哀れにペシャンコの振りをした敗者の決闘者(デュエリスト)ひとり。

 

 

 ──────え、嘘だろう(っスよね)? 

 

 

 あの不敵な笑みは絶対に何かあると思った。

 迂闊に攻撃したら取り返しのつかないしっぺ返しがあると思うに違いない。

 

 しかし何もなかった。

 翔。

 コブラ。

 オブライエン。

 そして物陰から見ていたアモンさえも唖然としている。

 

 

 

「……だ、大丈夫っスか?」

 

「クックック……めっちゃ事故った

 

「ええ……」

 

 

 見せつけられた手札は緑一色(リューイーソウ)

 モンスターの姿はないどころか、装備魔法ばかりで壁モンスターや盤面に干渉するカードも存在していなかった。

 

 

「それでは長官。失礼します」

 

「ま、待ってよ尊くん!」

 

 

 そそくさとその場を後にする尊と、一人になりたくない翔。残ったのは当初の予定と同じくコブラとオブライエンのみ。

 

 ……まあ、気持ちはわかる。あんなあっけない決闘(デュエル)になってしまえば恥ずかしくていたたまれないだろう。アモンもあれには同情してしまった。

 

 

「……どう思う?」

 

「サー。彼の手札は確かに装備カードしかないことを目視で確認できました。手札事故という発言に誤りはないと推察されます」

 

「そうだな。それと、遊城十代との決闘(デュエル)は手筈どおり攻め続けさせて奴の潜在能力を限界まで発揮させるのだ。いいな?」

 

「サー!」

 

 

 コブラはそう言い残し去っていく。

 ……アモンとしては色々と拍子抜けではあったが、ある程度彼らの関係性は察することはできた。

 

 この留学もコブラが直々に勧誘しにきた経緯を踏まえ、コブラ側の人間──────とも思っていたが、これは杞憂だった。

 

 その情報が得られれば充分。アモンも退散しながら今後の方針を整理した。

 

 上埜尊は壁を作るべき人間とそうでない人間の区別はハッキリしている。前者がコブラやアモン。後者はジムや翔。

 その嗅覚は見事だが、()()()()()()()()()()()()

 あれではせっかく距離を取りたい人間から、逆に怪しまれることになるだろうに。

 

 ならばそれを利用するか。この調子ではコブラは警戒するだろう。

 このまま隠れ蓑にして、その分自分は好きにやらせてもらうとしよう。

 

 好都合な存在がいて助かるよ。アモンは心の中でほくそ笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 と、その時だった。

 アモンの視界がぐにゃりと歪む。

 

 

「かっ──────」

 

 

 とても立っていられず、茂みへと突っ込んでしまった。

 体が崩れるような錯覚とともに全身を襲う倦怠感と寒気。

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ」

 

 

 呼吸すら億劫になる気持ちをおさえつけて深呼吸を試みる。それでも荒くなる呼吸はまるで犬のよう。

 脂汗をかきながら折れた茂みの枝木を支えにしようとし、手を掠める。

 

 情けない姿だ。

 とてもこの男が世界有数の財閥の御曹司とは思えないだろう。

 まるで浮浪者の時のように仰向けになり、しばらくは空に流れる雲を眺めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……そんな屈辱を噛み締めているうちに既に日が暮れそうになる。

 なんとか歩けるまで回復したアモンは己の身に起きたことを通信機で外の協力者に報告する。

 

 彼は、ありのまま起きたことを二点報告した。

 尾行中に強烈な体調不良に襲われたこと。

 

 

「何だったんだ、一体」

 

 

 そして、解析中のはずだった“デス・ベルト”が()()()()()()()()()()()()()()()こと。

 アモンはふらふらと立ち上がりながら、己の腕を見てボソリと呟いた。

 

 この超常的な現象を説明できる者は、この場には誰一人存在していない。

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 いやあ、負けた負けた。

 

 まさか手札全て意味不明な装備カードで埋まるとは思わなかった。いつもならハレかニニのどちらかが来てくれるのに。どうしたんだ全く。

 

 しかも《御巫の水舞踏(アラベスク)》すら来ないとか。まさに完璧な手札(笑)じゃないか。《御巫》は()()()()()()()()()というのに勘弁してくれよ。

 

 

「ん?」

 

「どうしたんスか?」

 

「いや、何か()()()()調()()()()()()()()

 

「カードの引きはあんまりだったっスけどね」

 

「言うじゃないかハハハ」

 

 

 コブラたちから離れた先、レッド寮の食堂スペースをお借りして感想戦をしていると忌憚のない意見ってヤツが飛んでくる。

 

 まあ2回くらいドローしたら何かしらくるだろ、って悠長に考えていたら普通に負けたし。くぅ悔しい。

 この悔しさをバネに島一周走れそうなくらいエネルギーに満ち溢れているぞ俺は。

 翔くんも疲れた様子は見えないい。

 《オオヒメの御巫(コイツ)》のおかげで決闘(デュエル)エナジーを吸い取られないようにしてくれているおかげか。

 

 

『にこー』

 

 

 にこーじゃねえよ、にこーじゃ。

 結局いつものアルカイック・スマイルじゃねえか。

 でも今日はすごい役に立ってくれているし、後でもっと褒めてやるとしよう。

 

 よし、これなら遠慮しないで決闘(デュエル)しても問題ないか。これからは異世界転移に巻き込まれないくらいの距離感で遠慮なく力試しをしていこう。

 意気込みを新たにする一方、それはそれとして聞きたいことが一つあった。

 

 

「翔くん。もしかして君のデッキって《メカロイド都市》とかデッキにあったりする?」

 

「え、入っているっスけど……」

 

「そっか〜〜〜〜〜〜」

 

 

 《融合派兵》が飛んできた時も思ったが、なんでそれなりに現代カードが混ざっているのだろうか。素でビビったんじゃが。

 

 いや《剣闘獣》使いだった安田くんもドミティアノスとか持っていたし。薄々、本校もそうなのかなと思っていたらそのとおりだった。

 

 全員が全員、そんなカードを使うことはないとは思う。実際翔くんも最初のターンは《ドリルロイド》棒立ちだったし。

 ただ、突然パワーカードが飛んでくる可能性もあるということだけ。

 

 本当に、この段階で知れてよかったと思う。

 もしこのまま余裕ぶっこいていたら《魔砲戦機ダルマ・カルマ》とか飛んできてナムアミダブツ、なんてことになるところだった。

 だが、今の俺はすこぶる体調がいいせいか、ポジティブシンキングに磨きがかかっている。

 

 つまり、これは変に遠慮しなくていいということか。

 《壊獣》はないが、現代のカードはこちらにも少しばかり残っている。汎用的なものはないが、これならちゃんとならこちらも数々の後手捲りカードを使い潰してやるとしよう。

 

 これぞリスペクト・デュエル。

 相手に合わせることも大事だけど、全力を出すことも大事だよね。

 

 

「よし、次こそ俺のデッキの恐ろしさを見せてあげよう。このままテーブルデュエルでもする?」

 

「……やっぱり尊くんもアニキと同じで決闘(デュエル)馬鹿っスね」

 

「いきなり悪口は禁止カードだろ」

 

「い、今のは褒めたつもりっスよ!?」

 

 

 翔くんともすっかり打ち解けられた。

 まあ、この後、翔くんはオブライエンに捕まって崖に吊るされるけどね。よし、このまま十代vsオブライエンの野次馬もするか。いざとなったら助けてあげよう。

 

 ……《M・HEROダークロウ》とか相手ターンコスモ・ネオスとかしないよね、十代? 

 剣山くんも《究極伝導恐獣(アルティメットコンダクターティラノ)》とか出して来ないよね? 

 

 ポジティブシンキング、向いていないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「そうだ、翔くん眼鏡変えた?」

 

「え……あっ! ま、《マシュマロンのメガネ》になってるっス!」

 

『あらあらまあまあ』

 

 

 《オオヒメの御巫(コイツ)》、結構根に持ってたんだな。

 

 





■アモン・ガラム
 一見柔和な優男だが腕力には自信ニキで、万丈目グループとは比較できない財産を持つ家の正当後継者である……ということもなく、彼は養子のため真の後継者は弟の方。
 一度は弟を手にかけようとしたこともあったが、思いとどまって今は弟のために後継者面しながら、財閥のためにスパイ活動に奔走する“良い兄”として振る舞っている。だが、本当は子供の頃の自分のような浮浪者が生まれないような世界を作りたいと渇望している。
 前半は《雲魔物》を使っていたが、後半から唯一の理解者たる本田ヘアーの女性を生贄に捧げて《エクゾディア》を使い始め、ユベル相手に初期手札エクゾディアパーツ4枚とかいう業の深さを見せつけてくる。えー、バカです(ひ○ゆき並感)
 本来、デス・デュエルの危険性を真っ先に気がついて回避しようとするはずなのに何でデス・デュエルした後のようになっている。不思議だね。


■丸藤翔
 初期からずっと十代の舎弟をしており、かつ本編でも強キャラであるカイザー亮の実弟。
《ビークロイド》を始めとした機械族デッキを使用。アニメが続いていくに連れ、着々と成長しているはずなのだが、3期は彼への試練もてんこ盛り。
 この後、オブライエンに捕まり、また十代に助けられることになる。「やっぱアニキは頼りになるっス!」と言う一方で、主人公から言われた「十代に頼りきりでいいのか」という言葉に引っかかっている様子。果たして本作では挽回できるのか。


■手札事故
 後手捲りデッキの宿命。誘発カードを持っているにもかかわらず相手は動かず、さらに肝心の初動カードを引けず。結局、何もできずにターンエンドすることになる。その度にデッキから消えていく後手捲りカードたち。《拮抗勝負》は3枚入れるな。《無限泡影》はキトカロスに放て。
 この宿命には主人公も逃れる術はない。決して誰かさんたちが拗ねているわけではない。《御巫》はサーチ手段が少なくて大変だね。
 うーん? 何を言ってるんだ? 


■相手ターンコスモ・ネオス
 相手は死ぬ。(類語:相手ターンカラミティ)


 一応、現代カードはあくまでテーマに沿ったカードしか出てこない予定です。ただ《ヴォルカニック・エンペラー》なんて出てきたら“引退”してしまうのでそこら辺は“諸事情”します。
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