みかんこぉ^〜(決闘開始の宣言) 作:回帰壊獣バブミエル
(新生活が始まったため遅くなりました……)
「先攻は譲る。かかってきなさい!」
「ガキが余裕見せやがって! 後悔させてやる! ドロー!」
いつものように後攻を選択する。
最初の手札は悪くない。《
さて、問題は相手のデッキだが、果たして何が出てくるやら。こういうのは大抵悪い予想が当たるのが常だが。
「俺はフィールド魔法、《Nouvellez Auberge 『À Table』》を発動!」
「そのカードは……ああ、この店ね」
「料理人たる者、まずは厨房がないとなぁ! このカードの発動時の効果処理として、デッキから《レシピ》カードを1枚加えることができる。
俺様は《Recette de Spécialité~料理長自慢のレシピ~》を手札に加えるぜ!」
だよね、と心の中で呟く。
ここまで露骨に《ヌーベルズ》に関連したものに囲まれているのだ。
「次に俺様は《Voici la Carte~メニューはこちら》を発動! デッキから異なる名称の《ヌーベルズ》モンスターを2枚見せて、相手に1枚を選ばせる」
「なんだ、メニューはあるんだね」
「俺様はこの2枚のカードを選ぶ。さあ、選びな」
差し出されたカードは……ふむ、《ブエリヤベース・ド・ヌーベルズ》と《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》か。
「魚料理だけじゃん。まあ、美味しそうだったからいいけど……なら《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》にしよう」
「ケッ。選ばれた《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》を加えながら、手札に加えた種族によって追加でカードを手札に加えることができる。
ポワレティスは獣戦士族だ。よって《Recette de Poisson~魚料理のレシピ~》を手札に加えるぜ」
順当に手札を補充している料理長。
さて、そろそろ動いてくる頃か。
「儀式魔法《Recette de Poisson~魚料理のレシピ~》を発動! 手札のモンスターを生贄に捧げ、儀式モンスターを儀式召喚する!
俺様はテメェがさっき選んだ《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》を生贄に、《ブエリヤベース・ド・ヌーベルズ》を儀式召喚! さあ、前菜を楽しみな!」
《ブエリヤベース・ド・ヌーベルズ》★1 DEF/1,850
突如現れた鍋に食材が放り込まれ、コトコトと煮込んで出来上がったのは魚介のブイヤベース。
食欲をそそる香りだが、湯気はどこか5つ腕の悪魔のような形にまとまっていく。
「そして《Recette de Poisson~魚料理のレシピ~》の追加効果。デッキ、墓地からこのカード以外の《レシピ》儀式魔法を手札に加えることができる。
俺は《Recette de Viande~肉料理のレシピ~》をデッキから手札に加えるぜ」
「えー、前菜にしては量多くない? これだけでお腹いっぱいになっちゃうよ」
「注文の多い客だな……ブエリヤベースの効果発動! 召喚成功時、デッキから5枚カードを捲り、《ヌーベルズ》と記されたカードがあれば1枚手札に加えることができる!」
《儀式の下準備》
《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》
《戦華の智-諸葛孔》
《炎舞-天キ》
《ハングリーバーガー》
「捲れたのは《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》だけか。しょうがねぇから手札に加え、残りはデッキに戻す!」
「おい何か今変なの入ってなかったか?」
「さてなァ、自分で考えやがれ!」
いや明らかに料理に関係ない軍師がいたんじゃが。
割とガチガチなデッキ構成が見え隠れしたこの情報アドバンテージは非常に大きいが、困ったものだ。
リリース対策として場をがら空きにすると、一気にオジサンたちが怒涛の攻めをしてくる未来が嫌でも見えてしまう。おお怖い怖い。
「カードを2枚伏せてエンドフェイズ……っと、忘れるところだった。フィールド魔法、《Nouvellez Auberge 『À Table』》がある限り、エンドフェイズに墓地の《レシピ》儀式魔法と他1枚をデッキに戻し、カードを1枚ドローする。
さっき使った《魚料理のレシピ》と、コストにした《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》をデッキに戻してドロー」
儀式モンスターと魔法罠を2枚伏せ、手札は3枚……多いなぁ。
儀式テーマは手札の消費が激しいが、テーマカードが手札を増やす動きをしているから、あまり変化がない。
いいなぁ。そのギミック、他の儀式テーマにも分けてやれよ。
あっ、《粛声》と《メガリス》は座ってて♡
「これでターンエンド。さあ、地獄のフルコースの始まりだァ!」
「料理長、悪役みたいな台詞やめてくださいよ……」
赤毛の少年……弟子1号くんが頭を抱えている。
すごい板についているから違和感なく受け入れてしまったが、この人一応普通の料理人なんだよな?
ただ食人ハンバーガーを作れるってだけで。いや普通じゃねぇだろ。
それは置いておくとして、盤面としては下級モンスターがいるだけ。魔法罠を2枚伏せという状況だ。
しかし侮るなかれ。《ヌーベルズ》はこれだけでも充分なカードパワーがある。
(攻撃したらモンスターごとリリースされちゃうんだよな。さて、どう崩したものか)
《ヌーベルズ》モンスターの効果発動のトリガーは“対象になること”だ。下級モンスターは効果の対象、攻撃の対象になると相手モンスターをリリースしてレベルの高い新たな《ヌーベルズ》モンスターを召喚するという効果を共通して持っている。
原作でも二億回くらい言及されているが、リリースという除去手段は遊戯王において最強、と古代エジプトから言われている。
それを自在に操る《ヌーベルズ》は環境とまでは言えないが、カジュアルにしては些か強すぎるパワーと言えるだろう。
「?」
観戦しているポワちゃん……いや、弟子2号に視線を向ける。
首を傾げているが、彼女、《ポワソニエル・ド・ヌーベルズ》がいれば、能動的に対象になった際の効果を起動することができる。
そうなれば、一気に上級の《ヌーベルズ》を並べられ、さらに最初に手札に加えた万能無効カードの《Recette de Spécialité~料理長自慢のレシピ~》で更に盤石な盤面にさせられていたことだろう。ペンデュラムなんて概念が持ち込まれていないのが幸いだった。
「俺のターン。ドロー」
ただ、先ほども説明したとおり“対象となる”効果がトリガーになる。
一方、《御巫》側としては戦闘で攻撃“対象”にせざるを得ない。さらに除去やら無力化やらするために《愚鈍の斧》を装備させようとしても、装備魔法も装備させるモンスターを指定してカードを発動する──────つまり“対象に取る”効果だ。
正直に告白すると、相性はかなり悪い。
……だが、俺にはその不利を無にするほどの、この世界の全てを破壊する最強の永続魔法がある。
デス・デュエルをしていた頃はさすがに自重していたが、この異世界では容赦せん!
俺はマスターデュエルから来た男! 許されるのであれば《盗人の煙玉》で全ハンデスを決めることだって躊躇うことはしない!
「うおおおお、手札から究極の永続魔法発動!
《カイザー・コロシアム》!」
「な、何ぃ!?」
ギースと違ってこいつの恐ろしさをわかっているようだな!
そう、この永続魔法は発動しているプレイヤー側にいるモンスター以上の召喚を封じる、OCGおよびマスターデュエルでも禁止カードにぶち込まれた激ヤバカード。
実はこのカードの実装は2001年。
古のカード故、この時代でも実装されている上、なんと
だがしかし、この時代は不動性ソリティアとか満足とかの大量展開がなかったから大した拘束力はなかっただけである。まあ《御巫》には恐るべき効果があるため、この永続魔法と一緒に棒立ちさせるだけでもかなりのプレッシャーになるはずだ。
そして、ここに《召喚制限-猛突するモンスター》があれば俺の暗黒コンボが完成するわけだ……ククク。
「永続罠発動、《Recette de Personnel~賄いのレシピ~》!
これで《ブエリヤベース・ド・ヌーベルズ》を対象に取り、コイツと同じレベルのヌーベルズトークンを特殊召喚する!」
《ヌーベルズトークン》★1 DEF/50
「そしてもう一つの効果を発動!
この罠を墓地に送ることで、手札・フィールドからモンスターを生贄にすることで、手札から《ヌーベルズ》儀式モンスターを儀式召喚する!」
「相手ターンに儀式召喚だと!?」
「俺はフィールドの《ブエリヤベース・ド・ヌーベルズ》と《ヌーベルズ・トークン》をリリースすることで、儀式召喚! 《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》!」
《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》★2 DEF/1,850
「《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》の効果! 特殊召喚に成功した場合、フィールドの魔法・罠を破壊する! そこの何か不穏な永続魔法を破壊ィ!」
「Oh」
急に出てきた肉料理の赤い悪魔によって《カイザーコロシアム》が呆気なく破壊されてしまう。やはり解説はフラグってことだね。
特段《ヌーベルズ》は大量展開するテーマではない……ということは、さっきのデッキトップ確認でも見たように混ぜ物している別のテーマには刺さるんだろう。
「まあ、1枚で
「言ってろ。まだ俺の守備は超えられてねぇってのによ」
「うーん……」
料理長の挑発には同意するしかない。
手札もドローも悪くない、が、決め手にかける。
見えている妨害はコンフィラスの対象時のリリースと万能無効の罠。
たかが、2妨害。されど2妨害だ。
順番に妨害を踏み抜いていくしかないが、まずはコンフィラスを何とか突破しないと。
これ以上、コースが進むとちょっと面倒なことになる。
「まあ、やってみるか。手札から《増援》を発動。デッキから《剣の御巫ハレ》を手札に加える。そして…………うーん、よし、そのまま召喚」
『とぅ! ハレちゃん、颯爽登場!』
《剣の御巫ハレ》★3 ATK/0
気合の入った声を張り上げながら召喚されるハレ。
こうして通常召喚するのは珍しいから、《増援》で呼んだ時に(えっ、もう出番!? ちょっ、ちょっと待って!)と聞こえた気がした。
まあ少し悩む素振りをしてみたのはこのため。
フ、俺はさり気ない気遣いもできる男。デートで女の子がお手洗いに行っている間に食事の会計を済ませておくタイプなのだ。
「装備魔法《スピリット・バーナー》をハレに装備──────そして、ハレの効果。装備魔法が装備された場合、《御巫》と名のついた装備魔法を手札に加える」
ハレの周囲にはどこか不穏な雰囲気を醸し出す霊魂が周囲を漂う。
すると、ハレの頭から、焔でできた円形の耳が出現した。
背後から根本から先端にかけて細い一本の尾がたなびく。準備運動とばかりにくるりと横回転をすると、火の粉がちりちりと舞い上がる。
元イラストもいいけど、この装備魔法を装備してからが本番、って感じいいよね。
「俺はデッキから《御巫の誘い
「なんだ、嬢ちゃん出しただけで終わりかよ」
「そうだけど。まあ攻めるには時期尚早かなって」
とは言いつつ、この間に万能無効の罠を打って欲しかったのが正直なところだが。相手はこちらのテーマを把握していないからか、判断が意外と慎重だ。
この手の相手こそ《御巫神楽》の破壊がささるんだけどなぁ……こんな時にどうして《
「俺様のターン、ドロー。手札から《切り盛り隊長》を召喚!
《切り盛り隊長》★3 ATK/1,200
このターンの先頭バッターはエプロン姿の《切り込み隊長》こと《切り盛り隊長》。
召喚されたことに驚いているのか、お玉と味見用の小皿を手に持ったままキョロキョロしている。
ちょうど料理中だったのか? 隊長自らが?
「このカードを召喚した時、手札を1枚デッキに戻してデッキをシャッフルした後に1枚ドローする。そのカードがモンスターだった場合、特殊召喚することができるぜ。へっへっへ、何が出てくるかなぁ」
「なんでそんな潤沢な手札からそんな奴が出てくるんだよ……」
「こいつとも長い付き合いだ。思い出すぜ、あれは俺様が軍の料理人をしていた頃……」
「そういうのいいです、料理長」
弟子2号ちゃんの冷静なツッコミに黙る料理長。
ホロリと涙が出ていたのに容赦ないね。あまりに感情がない言葉に料理長もスン、ってなっちゃった。
「さて、ドロー……おっ、来たぜ! うおおおお、《暗炎星-ユウシ》を特殊召喚!」
「な、なにぃ!?」
《暗炎星-ユウシ》★4 ATK/1,600
《切り盛り隊長》がコトコト鍋を煮込むと、湯気とともに出てきたのはゴッテゴテの筋肉モリモリマッチョマンの剣士……剣士!? 《ヌーベルズ》はどこに行った!?
《切り盛り隊長》も鍋から出てきたユウシにビビって料理長を二度見しているし。完全にドン引きしてるじゃん!
「おい、料理はどうした!?」
「お前を料理してやるんだよオラッ!
手札から永続魔法《炎舞-天キ》を発動! このカードの発動時の効果処理として、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスター、《戦華の仲-孫謀》を手札に加える!」
「おかしい……俺はフレンチを食べに来たはずなのに、急に中華のテイストになってきたぞ……」
「料理人たる者、ジャンルで食わず嫌いなんてできねぇからな!」
志は立派だけどさすがに節操なさすぎだろ!
こちとら《キラー・トマト》やら《キラー・ポテト》やら《人じん》やら食材たちを匠に扱うものだと思っていたら、意味不明なおっさんたちが押し寄せてきているのだから頭がバグりそうになっている。
……決めた。こういうの、“メルフィーにアーゼウス”って諺にしよう。
「そして、ユウシの効果発動! フィールドの《炎舞-天キ》を墓地に送ることで発動する。フィールド上のモンスター1体を対象に取り、破壊する!」
「対象……まさかっ!?」
「残念ハズレだぜ。ここはフィールドの《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》を対象にするぜ!」
いや正解です。
能動的に《ヌーベルズ》の効果を発動させるための《炎星》かと思ったら確かにその通りだった。面倒なことになったぞ。
「ククク……ここで《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》の恐るべき効果を発動! このカードが対象に取られた場合、自身と相手のモンスターを生贄にすることでデッキから別の《ヌーベルズ》儀式モンスターへとコースを進めることができるのさ!
というわけで、そこの嬢ちゃんには消えてもらうぜ!」
『うわーっ! 料理に食べられるなんてーっ!』
「は、ハレー!?」
鍋から漂う悪魔がハレを掴み、そのまま鍋へと引っ張っていく。先程まで自分が食べていた料理と立場が逆転する構図……なんとも形容しがたい気持ちだ。
「さて、次の料理はコイツだ! 《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》をデッキから特殊召喚!」
《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》★3 ATK/1,200
ニニが食べていた白身魚のポワレから現れたのは青い悪魔。コンフィとは異なり、細めなシルエットと鋭い目つきで見定めるようにこちらと向き合う。
さて君はどうかな、と言いたげなその視線は随分と挑発的だ。
「ポワレティスの効果。特殊召喚された場合、デッキからカードを1枚ドローする。
さて、ここでバトルだ! ポワレティスでダイレクトアタック!」
「罠発動《攻撃の無力化》を発動! 攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了──────」
「無駄無駄無駄ァ! さらに罠発動! 《Recette de Spécialité~料理長自慢のレシピ~》! 《ヌーベルズ》モンスターがフィールドにいる時、モンスター効果、魔法、罠の効果を無効化する!」
「何だって!?」
虎の子の万能無効をここで切ってきただと!
こういうのは展開初動の妨害か、確殺ラインを超えたあたりで切ってくると思い込んでいたため一瞬呆気に取られる。
「しゃあ、攻撃続行だ! 行け、ポワレティス!」
「ぐあっ!」
尊 LP:4,000→2,800
「続いて《切り盛り隊長》でもダイレクトアタック!」
「痛っ!」
尊 LP:2,800→1,600
「トドメだ! 《暗炎星-ユウシ》でダイレクトアタック!」
「罠発動、《御巫の契り》! デッキから《御巫》モンスターを1体特殊召喚する! 来い、《鏡の御巫ニニ》!」
『はいっ!』
《鏡の御巫ニニ》★3 ATK/0
つま先から華麗にフィールドに着地するニニ。
それと同時に頭部から空を映す水のように澄んだ青色の耳と、二つに枝分かれした尾が出現した。
「さらに、手札・墓地に装備可能な装備魔法がある場合は、それを装備することができる。墓地の《スピリット・バーナー》をニニに装備する!」
「構わねぇ! そこの気に食わねぇ嬢ちゃんをやっちまえユウシ!」
構わずに突撃する鎧武者。
居合いで抜いた刀は容赦なく少女を切り裂く──────ことはない。
「《鏡の御巫ニニ》は装備魔法を装備している場合、戦闘では破壊されず、受けるダメージは相手が代わりに受ける! そのまま跳ね返せ、ニニ!」
『お返しです! それっ!』
「なにっ、そんな効果が──────ぐおっ!?」
料理長 LP4,000→2,200
ニニを切ったかと思いきや、手応えはなく水面を切っただけ。
気がつけば水でできた鏡が取り囲まれ、ユウシ自身をあらゆる角度で映し出す。
その隙間を視界の端で滑るように移動していたニニに、水鏡を突き抜けながらも再度強襲を仕掛ければ、切ったのは主たる料理長。
傍から見れば何を血迷ったかと思うだろう。
誘い、惑わすのは《御巫》の専売特許。
どんな屈強な戦士でも、そう、千年生きた龍であろうとも逃れられることはできない。
「よし、助かったよニニ。ありがとう」
『いえ、当然のことをしたまでです。それより……』
「ああ」
最後まで口にはしないが、ニニの言葉に同意する。
ユウシに召喚権を切ってくれたおかげでこの程度で済んだが、着実にライフを削られてしまっているな。ぶっちゃけキツい。
「まさかそんな効果があったなんてな」
「攻守0のモンスター相手に迂闊な攻撃は厳禁だよ。覚えておくといい」
「ちっ……カードを1枚伏せてターンエンド」
明らかに不機嫌そうな顔で手札からカードを1枚手に取り、デュエルディスクに差し込む。
「まあ、仕込みは上々だ。さあてと、次ターンが終わったらお前のライフを刈り取ってやるよ! 最期の晩餐を楽しみな!」
「だから料理長、悪役みたいな台詞言わないでくださいって……そのせいでいつもお客様に誤解されるんですよ」
「う、うるせぇやい! 料理人は料理ができてなんぼのもんじゃい!」
「前時代的……」
弟子1号2号が頭を抱えるのを、地団駄を踏んで反論する料理人。
しかしまあ、それはそれ。
逆に客を食べようとするような猟奇料理を出したりするのはいただけないな。性格だけではニニの腹の虫も収まらないだろう。三沢やファラオの仇を取るためにも──────ん?
「あれ、三沢?」
「……ふぅ、あ、勝手にトイレを借りたよ。すまない」
「いえいえ」
いつの間にか三沢が普通に歩いていた。
にこやかに弟子2号ちゃんに笑いかけていたし、先程までの腹痛を訴えていた姿とうってかわり、小奇麗な姿に……いや、綺麗になりすぎていないか?
「三沢? なんかめっちゃキラキラしてない? 無精髭とかゴーグル焼けとかなくなっているし」
「いやあ、最初はこの世のものかと思わないくらい腹痛だったけど、トイレに行ったらこんなにスッキリしてしまった! 見てくれ、こんなに激しい運動もできるんだ! はははは!」
怖いくらい嬉しそうな笑い声とともに、その場でスクワットをする三沢。まさに死にそうだった人間とは思えない動きをしている。
「……えーっと、これ、ひょっとして」
「ええ、このように当店の料理は心身ともに癒やされるように特殊なレシピを使用しております。先程まではこの《ヌーベルズ》たちが体内の悪い部分を除去していたことに伴う一時的な副作用です」
「です!」
弟子1号くんと弟子2号ちゃんが解説してくれた。
そんな馬鹿な、と反応しようにも、ここまで元気になった三沢を見れば何も言えない。
このテンションの上がりよう、スカイダイビングしたエドを彷彿とさせるぞ。怖いよぉ……。
「そこのあんちゃんは空腹、脱水、過労、睡眠不足……と挙げればキリがない位ェ酷い症状だったんでな。あそこまで症状が合併していると、さすがに体にも負担がかかるってもんだ」
「え、じゃあファラオは?」
「んにゃおおん!!」
「うわあめっちゃ毛並み良くなってる!?」
「このデブ猫はただの不摂生だ。痩せろ。もっとブラッシングしてやれ」
ファラオは大嫌いなシャワーを浴びた後のようにサラサラの毛並みになっている。まるでコンディショナーのCMのように輝いて見えるほどにサラサラだ。ノミも居なくなってそう、あとでモフろう。
いや、そんなことより……この状況はつまり?
「えーっと、この
「……申し上げにくいのですが」
「わァ……!」
スゴイ・シツレイをしてしまっていた!
先方、とてもこちらのことを慮ってくださっていた! も、申し訳ねェ!!
「え、じゃあ俺の《ハングリーバーガー》も深い事情が……!?」
「あ? あー……あれは俺様の手癖だ? うん、手癖だ」
「手癖!?」
こっちは深い意味はないのかよ!?
「だから私は配膳したくなかったんですよ! なんですか、フレンチにハンバーガーっておかしいですよね!?」
「ああ、正直俺もどうかと思う」
「んだとう!? 俺様の店で俺様の好きなメニューを出して何が悪いってんだいスットコドッコイ!」
「論点、ソコジャナーイ!」
料理長と弟子たちがわちゃわちゃし始めているが、肝心の俺は置いてけぼりにされてしまっている。
何だ、俺が食べられかけたのは別に意味はなかったのか!?
あまりに理不尽極まりない仕打ちに、“三沢たちが無事どころか回復させてくれたし申し訳ないことしたな”と言う気持ちが霧散する。
「うおおおお、許せんっ! このまま
『はいっ! 三沢さんたちの事は謝りますが、マスターに危害を及ぼしたことは許せませんっ!』
「当たり前だバーロー! こっちはまだ俺様の料理にケチつけたこと許してねぇぞ!」
いや、ケチはつけてないっていうかそもそも食べてないんじゃが、というツッコミはさておき。
さて、ここで盤面を改めて整理しよう。
まず、相手モンスターは《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》と《暗炎星-ユウシ》……と《切り盛り隊長》。
そしてフィールド魔法が1枚と、正体不明の伏せカードが1枚。
隊長とユウシに関しては相手ターン中に何か動くものはない。
問題はポワレティスだ。こいつは相手も含めた自身以外のモンスターが対象に取られたらリリース効果が起動する厄介な奴。つまり俺のモンスターに装備魔法をつけたら効果が起動し、せっかく装備したモンスターをリリースされてしまう理不尽を強いられるわけだ。これが1妨害。
そして伏せカード。これは見えていない情報だが、前のターンで万能無効の罠を惜しみなく切ってきたことを考えると、2枚目を引いていた可能性も捨てきれない。あちらも同じ万能無効と考えて動いた方が得策か。つまりこれも1妨害。
一方、こちらの手札はこれからドローする分も含め2枚。
そして、フィールドにはニニと温存していた伏せカードたちが1枚。
(ラヴァゴがあれば全て解決できるんだけどなぁ)
無い物ねだりをしても仕方ないが、脳死で解決できる手段があれば頼りたくなるのは人の性か。
しかし、どうしたものか。
このまま次の料理長のターンに行けば、間違いなく“中華のレシピ”で動いてくる。
孫謀でニニをバウンスされて、諸葛孔で魔法罠無効、何だったら追加で呂奉まで出てくるかもしれんぞ。
残りライフ1,600の俺には過剰戦力すぎる。フレンチはどうしたフレンチは。
攻めの《戦華》、守りの《ヌーベルズ》。
獣戦士族という点だけが共通しており、両テーマにシナジーがあるとは言えないが、役割分担をキッチリして噛み合うとここまで厄介とは思わなんだ。
「俺のターン、ドロー!」
ドキドキのドローカード、ちらりと見る。
当然、ラヴァゴ……ではないが、盤面は動かせそうだ。
「俺は装備魔法《御巫の誘い
《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》を対象にして装備する!」
「ん、相手に装備するのか?」
復帰した三沢からそんな質問が飛んでくる。
そういえば、こちら側の賑やかしが誰もいなかったな。ヨハンばりの「ああ!」と返事をして不敵に笑ってやるとしよう。
「このカードは俺のフィールドに《御巫》モンスターがいるかぎり、装備されたモンスターのコントロールを得る効果を持つ」
「何っ!?」
テーマ限定の《強奪》効果に対し、さすがに料理長側の反応も穏やかじゃなかった。この時期は確かもう禁止カードになっていたな。釈放まであと20年かかるなんてな。先は長いものだ。
「そのままコントロールが移っちゃうよ? どうする?」
「それは…………ヤバすぎるため、《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》の効果! フィールドのモンスターが対象になったため、このカードを含めたモンスター2体をリリースして、レベルが上の《ヌーベルズ》儀式モンスターを特殊召喚する!
俺様はポワレティスとそこの青い嬢ちゃんをリリース!」
ポワレティスがどこからともなく出てきた鍋にニニを連れ込もうとする。
悲しいことに、ニニ自身に逃れる術はない。
彼女の効果は強力でも対象を取る以上は《ヌーベルズ》とは相性が悪すぎる。
ただ、俺のデッキではニニは数少ないモンスター。
何より、この
「チェーンして罠発動、《御巫かみくらべ》!
俺のフィールドに《御巫》モンスターがいる時に発動可能。フィールドのモンスターを対象に、俺のデッキから装備魔法を装備させる! 俺はデッキから《愚鈍の斧》を《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》に装備!」
「俺様のモンスターに装備だと!?」
《ポワレティス・ド・ヌーベルズ》ATK/1,200→2,200
ポワレティスの手にはいつの間にか無骨な斧が握られていた。
料理に対して明らかにミスマッチな構図。これでは折角の美味しそうな料理が台無しだ。
「《愚鈍の斧》を装備したモンスターは攻撃力が1,000アップするけど、デメリットがあってね。装備したモンスターの効果を無効にしちゃうんだ」
「な、なにぃ!?」
「上手い! あえてデメリットのある装備魔法を相手に装備させることで、相手のモンスター効果を無効にするのか! つまりポワレティスの効果は不発! リリースは行われないっ!」
「ああ!」
俺が話すことは三沢が全部喋ってくれたぜぇ!
料理効果が残っているのか、テンションが高い気がするが……まあ、解説役にピッタリだな。
「で、誘い
「く、食い逃げなんて許せねぇ……」
「こっちは危うく食われ逃げされそうになったんだ! これくらいは許してもらおう!」
ニニの持つバトンから現れたリボン。
それがポワレティスの皿の下に滑り込み、早すぎない動作で引き抜こうとする。要領としてはテーブルクロス引きだが、一定の速度で行われるため皿も一緒についてくる。
こうして俺のフィールドにやって来たが……なんか今回結構力技だったな。なんかこう、もうちょっと幻想的なイメージだと思っていたんじゃが。
『さすがに皿の上に乗っているから、自分で動いてもらえなくて……』
「アッハイ」
律儀に俺の余計な思考に答えてくれるニニ。
生き物相手なら、目玉ぐるぐるの状態でフラフラとこっちに来てくれるから、ニニもどうすればいいかかなり悩んだのがわかる。しっかりカードテキストに書かれた効果なのに、なんか無茶ぶりをしてしまったようで申し訳ない。
ともかく、全ての効果処理が行われ、ポワレティスが俺のフィールドにやってくる。
しかし、この一連の流れを鑑みるに、正体不明の伏せカードは万能無効じゃないのか?
……なら、やりようはあるか?
「……俺はニニを守備表示に変更する」
この判断が果たして吉と出るか。凶と出るか。
「バトル! ポワレティスで《切り盛り隊長》に攻撃!」
細身の青い悪魔が重たそうに斧を振り上げて攻撃する。
対する《切り盛り隊長》の手には貧弱なお玉。
得物の差は歴然。このままでは押しつぶされるように倒されてしまうのは明らかだ。
「罠発動! 《Recette de Personnel~賄いのレシピ~》!」
「なっ、2枚目はそっちか!?」
「説明はいらねぇよな! 俺はフィールドの《暗炎星-ユウシ》をリリースして儀式召喚! 《フォアグラシャ・ド・ヌーベルズ》!」
《フォアグラシャ・ド・ヌーベルズ》★4 ATK/1,600
出てきたのはフォアグラのソテー。キャビアもふんだんに使われたそれはまさに高級食材の宝石箱。
陳腐な表現だが、実際、高級食材のお子様ランチみたいな組み合わせなのだ。これメインディッシュじゃないんですか?
「フォアグラシャの効果! 特殊召喚に成功した場合、墓地のカードを3枚デッキに戻す!
俺はこの3枚を手札に戻すぜ!」
《ブエリヤベース・ド・ヌーベルズ》
《コンフィラス・ド・ヌーベルズ》
《Recette de Spécialité~料理長自慢のレシピ~》
指定されたのは全て自身の墓地のカード。
《ヌーベルズ》はこのようにリソースを循環させていくのがセオリーだ。何枚も儀式モンスターをデッキに入れていても事故にしかならない。
この効果があればこそ、儀式テーマであるにも関わらず継戦能力が高い所以だ。
「っと、バトルが巻き戻しされるが……どうする? 続けるか?」
「当然、続行だ! 攻撃対象をフォアグラシャに変更して攻撃!」
「バカめ! フォアグラシャの効果! フィールドのモンスターが攻撃対象になった場合、《ヌーベルズ》モンスター1体と、自分・相手のモンスター1体を生贄にレベルの上の《ヌーベルズ》儀式モンスターを特殊召喚する!
俺はフォアグラシャと……お前に盗られたポワレティスをリリースする!」
今度は魚料理と肉料理が鍋でミックスされる。
一度作った料理を転用するとか衛生的に不味いだろ! 保健所に密告してやるぞ!
「…………」
「ん? どうしたの?」
急に料理長の表情が変わった。
口を閉じて何か物思いに耽っている……いや、悩んでいるような気がした。
「……いや、気にすんな。俺様は《バラムニエル・ド・ヌーベルズ》を特殊召喚!」
《バラムニエル・ド・ヌーベルズ》★5 DEF/1,850
変な間があったが、今度の料理はムニエル。魚料理で統一してきたか。
ポワレティスよりも遥かに禍々しくなり、両肩からそれぞれ赤と青の悪魔がこちらを睨む。まるでケルベロスのような三つ首は魚料理のメインディッシュとしての格の高さを思わせる。
「ポワレティスに装備されていた装備魔法が破壊されたことで、墓地の《御巫かみくらべ》の効果発動。このカードを除外することで、墓地の装備魔法を回収することができる。
俺は破壊された《愚鈍の斧》を手札に加える」
「こっちもバラムニエルの効果発動! このカードが特殊召喚された場合、デッキから《ヌーベルズ》もしくは《レシピ》カードを1枚加える!
俺様はさっき墓地から戻した《Recette de Spécialité~料理長自慢のレシピ~》を手札に加える!」
「また厄介なものを……」
「お互い様だろうが!」
今度こそ引いたのは万能無効の罠カード。
こちらはどんどん消耗していくというのに、あちらは上手い具合にリソースが循環している。本当に羨ましいかぎりだ。
さて、バトルフェイズはこれで終了。
メインフェイズ2、ここからが勝負だ。
「手札に戻した《愚鈍の斧》を再び発動! 《バラムニエル・ド・ヌーベルズ》に装備!」
「なっ、テメェ!?」
「どうする? リリースして逃げる?」
「できっ……ねぇ」
《バラムニエル・ド・ヌーベルズ》★5 ATK/2,000→3,000
よし、これでまずは《ヌーベルズ》側の動きを封じた。
今の攻防について、観客の三沢が顔を訝しんでいる。
「どういうことだ?」
「……チッ。バラムニエルでリリースできるのは“
「そうか、だからニニを守備表示にしたのか」
「シェフなんだから料理の説明くらい、食べる前にやって欲しいよね」
まあ、俺も御巫側の効果説明はしていないんだけどね。お互い、カードテキストはよく読みましょう、ってやつだ。
「カードを1枚伏せてターンエンド」
「俺様のターン、ドロー!」
さて、ここから始まるぞ。
「もう有無も言わさねぇ! これで決めてやる!
永続魔法、《戦華史略-三顧礼迎》を発動!
そして手札から《戦華の仲-孫謀》を召喚!」
《戦華の仲-孫謀》★4 ATK/1,800
硬い鉄の鎧の音とともに両手に剣を持った青色の戦士が威勢よくフィールドに飛び出してくる。
「来るか……中華料理!」
「この瞬間、《戦華史略-三顧礼迎》の効果! 《戦華》モンスターの召喚に成功した場合、デッキから《戦華》モンスターである《戦華の智-諸葛孔》を手札に加えるぜ!」
「じゃあそこにチェーンしてニニの効果を発動! 装備魔法が装備されている状態なら相手ターン限定で相手モンスターのコントロールを奪える。当然、俺は孫謀を選択して一時的に配下にさせてもらうよ」
「ムキーーーー!!!!」
気がついたら俺の側にいる孫謀を見た料理長の顔は真っ赤に膨れ上がる。まるで《キラートマト》だ。
この孫謀さえ居なければバウンスされることもなし。それなりに攻撃力もあるため、呂奉とかいうクソデカモンスターも出せない。
《ヌーベルズ》のリリース効果さえなければ安心してコントロールを奪える。
「おっと、処理としてはそっちの方が後だ。サーチするカード選び直していいよ」
「いや、変えねぇ! 手札に加わった《戦華の智-諸葛孔》の効果発動! 《戦華》カード効果で手札に加わった場合に特殊召喚できる!」
おっと、あの軍師はポプルス効果と、《戦華》永続魔法、罠を墓地に送ることでこちらの魔法・罠の発動を無効にする効果を持つ。
こちらの罠を警戒して出してきたのか。
それはちと不味いので、ここで使っておこう。
この後、万能無効も伏せられるからね。
「その効果にチェーンして罠発動、《御巫かみくらべ》。御巫モンスターがいる場合、フィールドのモンスターを対象に装備魔法を装備する」
「な、なんだぁ!? また俺様の料理たちに変な物装備させる気か!?」
「いいや、今回の対象は俺のニニだ!」
デッキを扇状に広げる。
ええと、次のターンのことを考えると妨害した方がいいのか……いや、ここまで《戦華》で動いてきた以上、ここから《ヌーベルズ》で動くには手札が足りないだろう。
よし、なら決めに行こう。
「装備するのはこれだ!
《閃刀機構-ハーキュリーベース》!」
「な、なんだそれはっ!?」
『えっ』
なんかニニの方からも驚く声が聞こえた。
ああ、砂漠でハレと話をしていた時に条件的に装備できないと話をしたからか。
確かに、このカードはメインモンスターゾーンにモンスターがいる時は発動できない。
だが、例外が存在する。
コンマイ語にも穴はある……沢山あるのだ!
「この装備魔法はルールが追いついていないため本来なら発動できない装備魔法。しかし、《御巫かみくらべ》は“装備させる”ため、処理に装備魔法の発動を介さない! よって、この装備魔法はニニに装備できるのさ!」
「なるほど! 発動の条件はあっても装備させるモンスターの条件はないからこそできるルールの穴をついたわけか!」
三沢君、“
類似例を挙げるとすると、《ヘルホーン・ザウルス》のフィールド魔法をデッキからフィールドに表側表示で“置く”効果だ。これだと発動時の効果処理は発生しないが、このようなメリットも存在するというわけだ。
「さあ処理を続けよう! ニニに、ハーキュリー・ベースを装備! そして、そっちの場に意味不明なパリピ軍師が特殊召喚される!」
「パリピ……?」
「パリピ……?」
「パリピ……?」
なんか弟子二人と三沢が首を傾げているが気にするな!
どこからともなくやってきた戦闘機がニニの横に横着する。ソリッドビジョンの影響かサイズは想定の二周りは小さいように見える。しかし一人は搭乗できるほどのコクピットが見えた。
「さあ、乗るんだ! ニニ!」
『あ、あの、マスター……これは……』
「大丈夫! いけるいける!
今日からニニは《閃刀姫》だ!」
『も、も〜〜!』
勢いでニニをコクピットに乗せることに成功。外見年齢相応に困った表情、珍しかったな。
問題なく装備は完了すると、待っていたかのように緑色の軍師が風を纏いながら着地した。
《戦華の智-諸葛孔》★4 ATK/1,000
召喚されたところで、もう料理長は動けるカードはないことはわかっている。
ぐぬぬ、と悔しそうにしながら料理長はエンドフェイズの処理を進めた。
「バラムニエルを守備表示に変更、カードを1枚伏せて、エンドフェイズに入る……フィールド魔法の効果で墓地の《賄いのレシピ》と《フォアグラシャ》をデッキに戻して、カードを1枚ドローするぜ……」
「エンドフェイズなら孫謀のコントロールはそっちに戻るよ。ほら、帰りな」
正気に戻った孫謀は跳躍して料理長の側に戻っていく。だがもう俺の中ではもう勝利の道筋は整っている。
「俺のターン、ドロー……から、すぐにバトルだ! 閃刀姫ニニで守備表示のバラムニエルに攻撃!」
「バカめ! 攻撃力0のモンスターで……ハッ!」
「さっき説明したよね! 装備魔法が装備された御巫との戦闘ダメージは相手が受ける! それは、こちらから攻撃した時も例外ではない!
ハーキュリーベース、出撃ィ!」
『え、ええと……いっけぇー!』
半ばヤケクソのニニを乗せたハーキュリーベースが、相手のバラムニエルに向けて突撃する。
戦闘機に轢かれたにも関わらず、バラムニエルおよびその下にある魚料理は全く無傷である。
ただし、そのソニックブームのような衝撃は担い手たる料理長へと波及する。
「ぬおぉぉぁぁぁぁぁ!」
「りょ、料理長!?」
料理長 LP 2,200→350
吹き飛ばされそうになる料理長だが、身を屈めてその場に留まる。
「受動、能動でもダメージを与えられるのか。強力な効果だが……」
「ああ、これで攻撃は終わり! 詰めが甘いぜ小僧! デザートを出すのはまだ早えってもんだ!」
料理長が威勢良く立ち上がる。
三沢が言いかけたように、俺のフィールドはニニだけ。弟子たち含めて皆、料理長がこのターン生き残ったと思っているのだろう。
「悪いけど、《ハングリーバーガー》はもう出せないよ。
そもそも、まだバトルフェイズは終了していないんだ」
「んだとぉ?」
天井を指差す。
料理長、弟子ニニを乗せたハーキュリーベースがUターンしていた。そして見るがいい、そのまま再び料理長の元へと突進してくるではないか。
「《閃刀機構-ハーキュリーベース》を装備したモンスターは、直接攻撃できなくなる代わりに2回攻撃が可能になる。わざわざこの装備魔法を持ってきた意味はわかったかな?」
「な、何ぃ!?」
カン★コーン!
思わず口から溢れてしまいそうになる効果音を飲み込む。
いい反応をしてくれたお礼に、ひと思いに決着をつけるとしよう。
「まあ、気づいた時にはもう遅いんだけど。ニニで再びバラムニエルに攻撃──────さあ、これにてお終いだ」
「ぐわあああああああ!!!!」
料理長 LP 350→-1,500
ハーキュリーベースの余波に巻き込まれた料理長は悲鳴を上げながら吹き飛ばされる。
◆◇◆◇◆
「よし、俺の勝ち」
「く、くそおおおおお……!」
項垂れる料理長のもとへ近づいていきながら一連の
……いや、本ッッッッッッ当にキツかった!
あちらは弟子2号ちゃんなしのフルパワーではないと言っても、リソースの回収力が半端なさすぎて途中泣きそうになったくらいだ。なんで俺が手札1枚しかないのに相手は3枚あるんだよ。
だから短期決戦しようとしても相手の盤面ステータス低いし、殴ったら殴ったでリリースされて新しいモンスターが出てくるギミックが《ヌーベルズ》。どう考えても対面不利です。本当にありがとうございます。
ぶっちゃけ、こちらが相手側テーマの知識があったことと、逆に相手側がこっちのテーマの知識がなかったこと。
この差でもぎ取れた勝利といったところか。危ない危ない。
「ごべーーーーーーん! あたし全然活躍できてなかった!!」
「そんなことない。ハレが居て助かったよ。ありがとう」
「うー……次は頑張るから!」
実体化して謝罪してきたハレを宥める。
むしろ俺の方が活躍させてあげられなかった、と言う方が適切か。こちらこそ申し訳ない。
まあそもそも宇宙最強のリリース除去と意味不明な中華のコラボなんて、こればかりは相手が悪すぎる。前回はハレがフィニッシャーだったから、今回はニニに譲ってくれたってことでひとつ落とし所にしてもらいたい。
「さてと……」
吹き飛んだ料理長の元には弟子の二人がついている。
「料理長、いい加減ハンバーガー辞めません? アレなかったらあっちも矛を収めてくださってましたよ」
「そうですよ。料理長は料理の腕は確かなんですから、奇をてらう必要なんてないんですよ」
「うるせぇ……フレンチだろうと中華だろうと、俺様が本当に作りてぇ料理はこんなもんじゃねえんだよ……」
倒れたままめそめそと泣き始める料理長。
なんというか、大の大人がこうしていじけているといたたまれないな。
ただ、三沢たちが元気になったのは彼のおかげでもある。せめて話くらいは聞く責任はある。
「えっと、まずは三沢たちの件はごめんなさい。こちらの早合点でした。このとおりです」
「会釈」
「……」
俺に続く形でハレとニニも一緒に礼をする。
ハレの方は最初から中立的だったが、ニニはまだ納得していない部分が大いにある。《ハングリーバーガー》の件がどうも引っかかっているんだろう。
「で、あの《ハングリーバーガー》は何なんですか?」
「何って、
「手癖って言ってましたけど、なんか腑に落ちないんですよ」
両手で覆われた顔から、僅かばかり見えた眉が動いた。
弟子たちの話から察するに、このフレンチ料理店でハンバーガーを提供しているのはこの料理長の個人的な理由なはず。
しかし、この人が手癖で作った料理を客に出すとは思えない。俺以外に提供された料理は全てその客に合ったもので、料理を通じて三沢やファラオの治療をしてくれた人物像と一致しない。
これがずっと引っかかっていたのだ。
で、先程弟子たちへ口にした弱音が、先の違和感を埋めるピースだと思った。
「……勝者はお前だ。白状してやる」
料理長は起き上がり、語り始めた。
「俺様がガキん頃だ。当時は貧しくて貧しくて、生きるのに精一杯だった。ゴミを漁ったりして生きていたし、料理なんて考えすら知らなかったからな」
「それは……心中お察します」
「にゃお」
三沢がその心を推し量る。
彼もこの異世界に来てから……そもそも先程までは同じ状態だったのだ。この場において、その気持ちがわかる一番の人間だ。
「そんな時、道端で落ちてたハンバーガーを見つけたんだ。一口、口をつけただけの真新しいものが落ちてたんだ。通行人にぶつかって落としたのか、それとも口に合わなかったからか捨てたのかわかんねぇけどよ。
俺様も、初めは食べ物だってことすら思わなかったぜ」
「料理長、拾い食いは汚いですよ」
「おう、お前らは絶対やるなよ。
で、匂いがいいから試しに口にしてみたら、美味いのなんの。
──────ああ、あの時のハンバーガーが、世界で一番美味かった」
そう話す料理長の顔はとても穏やかだった。
懐かしい記憶を回顧する時は誰だってこんな爽やかな笑顔になるものなのだ。
「で、そんなことがあって、俺様みたいなやつに感動を与えたくて、必死に頑張って料理人になったんだ。
……ただ、問題がひとつあった」
声のトーンをひとつ落ちる。
ここが彼──────料理長の語る核心。
懺悔するように、それでも怒りを隠せないように頭の上で拳を握りしめながら告げた。
「俺様がハンバーガーを作ると、あの《ハングリーバーガー》になっちまうんだ」
「え」
そんなことある?
「調理法は当然のこと、食材も、器具も、場所も、何もかも条件を変えても、“
「そんなことある?」
ハレなんか声に出しちゃったよ。
いや、料理長が神妙に話すから、どんなことを言われても受け止める覚悟をしていた。
ただ……悪い、にわかに信じがたいです。
「いや、マジです。料理長が作ると絶対ああなるんです。何年も一緒に厨房いる俺達が証人です」
「ご主人、多分これマジなヤツだ!」
ハレが指を指しながら俺の袖を引っ張る。
うん、俺も驚いている。
料理長はメシウマとメシマズの両方の性質を併せ持つ……♧
んな馬鹿なコトある?
しかし、弟子1号くんが言葉で、弟子2号ちゃんが激しく首を縦に振って肯定した。
これはもう、事実として受け止めるしかないだろう。ニニも三沢も頭を抱え始めてしまった。
ファラオは欠伸しながら香箱座りをしている。かわいいね♡
「俺様も和食、中華、洋食……その他の民族料理を網羅するように勉強して、実践して、こうして高級フレンチを出すくらいの料理人にはなれた。
──────でもよ、
この分野だけは弟子たちにすら勝てねぇし……笑えるよな?」
「お労しや……」
料理は美味しいし、料理を通して治療することもできるほどの不思議レシピを使いこなす料理人。
しかし、その実は……なんて、こんな話聞かされて笑えるヤツなんてそれこそベクターくらいだろ。
この料理長、その手の呪いのようなものを抱えながらも頑張ってこれたとか、見方が一瞬で変わってしまった。
「挙句の果てにはこんな客のいない砂漠に店ごと飛ばされてよぉ……どうしてこうなったんだよ……」
「つまり、貴方たちも被害者だったんですね」
ニニが話したとおり、ここにいる全員は別々の世界から迷い込んできてしまった者たちと言うことだ。
まあ、こんな格式高いフレンチ料理店が砂漠にぽつんとあるわけないよな。
なんでここに来てしまったのかはあちらは把握していないようで、いつものように仕込みをしていたら外が砂漠だったらしい。
「そんな時にお前たちが来店してきてよ。
どいつもこいつもボロボロで酷い状況だったから、年甲斐もなく無料で腕を振るってやったよ。どうだった?」
「ああ、料理は文句なしに美味しかった」
「はい、ごちそうさまでした」
「へへ、そりゃあ良かった」
三沢、ニニが太鼓判を押すと、料理長はニカッと笑った。
しかし、あんなことを話した後だからか、その笑みには力強さよりも哀愁が醸し出されている。
……さて、それを踏まえた上で、最後の謎を話してもらおう。
「で、俺にハンバーガーを作ったのは……」
「お前さんは肉体は全然大丈夫だったけどよ、一番辛気臭い顔してやがったからな」
「辛気臭い?」
「おうよ。厨房から覗いてみたけどよ。何かずっと思い詰めたようにウンウン悩んでいたぜ?」
「マジ?」
他の人たちにも視線を送ると首を頷く。
ハレやニニなんかは「ちゃんと話してほしい」という責めるような視線が含まれているような気がした。
悩みなんていくらでもあるけど……ああ、そうか。
ふと、《
こんな時にアイツならなんて言うかな、とか。
絶対マナーとか守らないだろうから普段なら行けないよな、とか。
……思ったよりも精神的なダメージが大きいみたいだ。こうして皆にバレてしまっている以上、言い訳なんてできるわけもない。
「だから、俺様の一番情熱を注いだ料理で元気づけてやろうって思ったんだ。小僧、肉体面はケチつけようのないくらい完璧だったモンでな」
「なるほど」
つまり、料理長なりの励ましだったわけだ。
結果的に《ハングリーバーガー》降臨の儀式だっただけで。
「ま、結果、お前らと拗れちまったけどな。やっぱり俺様、向いてねぇんだな。ハハハ……」
「料理長……」
心配そうな視線を弟子二人から向けられる料理長。
……もし、
相手フィールドのモンスターの効果を全て無効にした上で、可能な限りリリースする強力無比な効果によって俺は敗北していただろう。
なぜ、料理長はそれをしなかったのか。
《バグリエル・ド・ヌーベルズ》のもう一つの効果で、相手モンスターをリリースして《ハングリーバーガー》を特殊召喚する効果がある……先程の背景からそれを遠慮したのか。
それとも、俺が零した「魚料理が美味しそう」という言葉を汲み取って、魚料理たる《バラムニエル・ド・ヌーベルズ》を出したのか。
……追及はしないが、どちらの理由が正しくても彼の不器用な優しさがよくわかる。
ニニなんかも、あれだけあった敵意がなくなっているし、責任追及する気なんか沸かないよなぁ。
そして店内に残るのは沈黙。
なんて声をかけたらいいのか、かけられる言葉が思いつかない。
こんな時、俺はどんなことができるだろうか?
「ねぇ、さっき厨房に飛ばしたアレ、持ってこれる?」
「? は、はい」
思いつきで、弟子2号ちゃんに頼みごとをする。
意図がわからず一度首を傾げたが、そのままトテトテと厨房の中へと消えていった。
もし自分が料理長の立場だったら、と考える。
俺は料理人ではない。
どう頑張っても食事をする側の人間だ。
「お、お待たせしました」
「───、───!」
脳天をナイフで刺された《ハングリーバーガー》がやってきた。
うお、めっちゃ皿の上でカタカタ動いている。
これ絶対、俺に反撃するよね。怖っ。
……一瞬躊躇うが、こういうのは勢いが大事なのだ。
よし、と気合を入れて、刺さったナイフの手元を掴む。
「おい、小僧。何する気……」
「いただきます」
「ご主人!?」
「マスター!?」
この場にいる全員からの視線が集中した。
料理が出てきたらどうするか?
そんなもの、食べるに決まっているだろう!
「ハレ。ニニ。俺は学んだよ。
料理って言うのは、作る人が食べる人への思いやりが大事だ。
でも、それを食べる人も、作ってくれた人のことを思いやることも同じくらい大事なんだ」
意識していないだけで、皆日常的にやっていること。
いただきます。
ごちそうさまでした。
あれはこの世の全ての食材に感謝するが、作ってくれた料理人にとってのお礼でもある。
習慣、当たり前──────故にお互い忘れがちになる。
彼……料理長にはこれが必要だった。
顎が外れるくらいに口を開け、がぶりと齧りついた。
「ぅんまァ〜〜い!!」
一口だけでも多種多様な食材たちが自己主張する。
バンズの香ばしさ。
レタスとトマトのみずみずしさ。
パティの柔らかさと溢れる肉汁。
どれも際立ちながらも他の食材たちと調和する。
豪快な料理でも味付けはどれも繊細。
結論──────美味いです。星みっつ!
ビジュアルのエグさから敬遠していた反動もあってテンションがおかしくなる。
自然に体が動いてしまいそうだ。つい、踊ってしまいたくなる。
「やっぱりさ、ハンバーガーってこれくらいシンプルなのが一番だよね。バンズ、レタス、トマト、そしてパティ。うん、こういうのでいいんだよこういうので」
ていうか、フレンチ……広義的に見れば洋食屋の作るパティとか絶対美味いだろ。
暴れるのを押さえつけながらガッツリガツガツ! 悪いけどマナーは見逃してくれ!
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
完食。
おててのしわとしわを合わせて幸せってなぁ!
ボリュームはハンバーガーが……4個分くらいかな?
白状すると、
なので、最後の方はフードファイトじみていた。
まあ、それでも美味しかったけど。
……さて、これで証明もできただろう。
料理長の作るハンバーガーは、ちょっと暴れるが味はピカイチの料理。
誰も食べることができなかった、食べようとしなかったがために当人が気付けなかっただけで、決して才能がないわけではない、ということを。
「お代はいいんだっけ? じゃあ失礼するよ」
「はい! 料理長、良かったですね!」
「お客様に気を遣われちゃいましたね」
弟子二人が料理長を見上げる。
彼の表情は……いや、見るのは野暮か。
男は格好悪い姿を見せたくない、見栄っ張りな生き物。ここは黙って席を立ってクールに去るべきだ。
「──────またのご来店を、お待ちしております!」
背後は振り返らないが……きっと、深々とお辞儀をしているだろう料理長を背に、俺達は“À Table”を後にした。
◇◆◇◆◇
「なにぃ!? お前らみたいなやつがいっぱい来てるだと!?」
「そうなんすよ。あのクラゲみたいな建物見えます? ちょっと遠くて見づらいですけど」
──────なんてことはなく。
和解ができたため、当初の目的である勧誘をしに戻ってきた。
いや、正確には冷静なニニに呼び止められただけなんだが。何とも締まらない空気になってしまった。
ともかく、事情をかくかくしかじか。
お互い、元の世界に戻る目的は同じなのだから協力し合わないかと提案してみたわけだ。
「なるほど、備蓄はあっても活かせるやつがいねぇと……よし!」
パン、と太腿を叩きながら立ち上がる。
賄い料理を食べながら話を聞いていた弟子1号くんと弟子2号ちゃんに視線を送り、料理長はこんなことを口走った。
「弟子二人! 修行の一環だ! 二人だけで行ってこい!」
「んーっ!?」
弟子1号くんから驚きの声が発せられる。
賄い料理を食べながら話を聞いていたが、反応するあたりちゃんと口を閉じているあたり行儀がいい。
弟子2号ちゃんもごくりと料理を飲み込んでから話し始める。
「いや、私達も吝かではないですが、料理長はどうするんですか?」
「本当だったら俺様も行ってやりてぇけどよ。ここは俺様の……いや、俺様たちの店だ。すっからかんにして変な奴らに襲われたらたまったもんじゃねぇ。だったら、お前らに留守番を任せるよりも行かせたほうがいいだろ」
「まあ、確かにそれなら……」
実際、弟子二人も修行中の身でありながら料理はできる方らしく、アカデミアの人数を言ったら「二人ならいけるかぁ」と話し合っていた、マジか。
どうも現代チックな風貌や常識的な言動で錯覚していたが、彼らも立派な精霊なんだな。常識なんて物差しが通用しないのは同じか。
「三沢、大丈夫かな?」
「構わないさ。向こうにも事情があるんだ。こちらも配慮するべきだろう」
「うん、じゃあ責任持ってお預かりします……これからよろしくね」
「よろしくお願いします! 得意料理は肉料理! 本職はフレンチだけど、スタミナのつく料理も作ってみせます!」
「よろしくお願いします。得意料理は魚料理です。スイーツも作れるので材料に余裕があればご用命を……また皆様としばらく一緒に居られて嬉しいです」
こうして弟子二人を預かることになった。
これで異世界転移を果たしたデュエル・アカデミアの課題である食料問題が解決できる目処がたった。
あとはハーキュリーベースを実体化させてさっさとアカデミアまで全速前進だ!
内部分裂を防げる分、脱出の予定を後ろ倒しさせてやるぞぅ!
「あと、もう一つ理由があってな……」
「ん?」
ぼそり、と料理長がそんなことを呟いた。
他に理由があるんですか、という質問は、厨房から響きわたった、がっしゃーん、という騒音にかき消される。
積み上げていた食器が崩れたわけではなく、妙な気配が近づいて来る気がして身構えた。
「ご主人、危ない!」
猛スピードで近づいてきたあるモノを、ハレが剣で受け止める。
その丸い円錐型のシルエットを、俺達は知っている。
『■■■■■■──────!』
厨房から飛んできたのはご存知《ハングリーバーガー》。
今、俺の胃の中にあるはずのものが、再び襲ってきた。
「は、《ハングリーバーガー》!?」
「ギャー! さっきご主人が喰らい尽くしたはずじゃ!」
「料理長! また黙って作ったんですか!?」
「い、いやァ。今だけダブルキャンペーンってのが……」
「ふ、ふざけている場合ですか!?」
なぜか俺を狙うハンバーガーをハレが相対し、
どうすればいいかわからず、弟子二人はあわあわし、
ニニが再び料理長に詰め寄る。
そんな収拾がつかない料理店───“À Table”
異世界でも賑やかなまま営業中。
皆も、機会があれば是非お越しください!
定休日は月・水。
──────ディナー帯は、前日までにご予約を!
「ふふ、賑やかになったな」
「にゃおん」
「いてっ。あちちっ」
対岸の火事を眺めるように食後のコーヒーを啜る三沢。
そんな彼にはファラオの猫パンチが繰り出された。
■料理長
《ハンバーガーのレシピ》の人。
貧困の出のため、言葉遣いや態度は悪いが、不器用な優しさと思いやりのある鉄の料理人。
貧しい子供時代に食べたハンバーガーの味が忘れられず、至高のハンバーガーを作るために料理人になった。
料理の才能には溢れていたが、肝心のハンバーガーを作ると何故かモンスター化するという宿業を抱えた困った人。
あらゆる店で修行し、紆余曲折あって自分の店を持ち、評判は上々、有望な弟子二人にも恵まれた。しかし、彼の夢はずっと心の中で燻ったまま、晴れることのない曇天に覆われていた。
この後めちゃくちゃお片付けした。
■《ハングリーバーガー》
かつてファミレスのコラボメニューにもなった料理。食べれなさそうな牙部分は実はチーズでできているため、食べても残すところはない。
1体目はそのまま主人公に美味しくいただかれたが、“今だけダブルキャンペーン”によって生み出された2体目はアングリーバーガーとなり、仇として主人公に襲いかかる。
この後めちゃくちゃお片付けされた。
■《閃刀機構-ハーキュリーベース》
今日の最強カード。直接攻撃ができなくなるデメリットがあるが、装備モンスターは2回攻撃できるようになる。
なお、モンスターを戦闘で破壊すると1枚ドロー効果があるが、《御巫》では使われることはない。
え、そもそも《閃刀姫》でも使われることは滅多にないし、何なら2回攻撃を付与するなら《閃光の双剣-トライス》なら《御巫かみくらべ》経由しないでも良いって?
ああ! それってハネクリボー?
ちなみに本作ではこれからは移動手段としても使われる模様。これから原作で書かれなかったワクワクドキドキ異世界冒険が始まる?
《ヌーベルズ》、どれもカード名長すぎワロタ。
しかも普通にやったら《御巫》側が色々辛くて、なんやかんや展開こねこねしたおかげで文字数23,000超えの超大作ができてしまいました。重すぎィ!
さて、こんな感じで異世界にいるまだ見ぬ強敵たちと戦わせていきたいですね。原作は意外と行動範囲がアカデミアの中と周りだったので、せっかくの異世界をもっと堪能してもらいましょう。