【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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国民的美少女

B小町Rに対して行った交際報告から半月が経った。

学校も再開して日常が戻ってきている。

とはいえ、この日は撮影が入っており、アクアとフリルは二人揃って学校を休んで撮影現場へと来ていた。

既に撮影は始まっており、アクアとフリルは他の出演者とともにカメラ映りを意識しながら役に入り込んでいる。

 

「引っ張らないでくれないか?」

「こうでもしないと着いてこないでしょ?」

 

ある程度アクア演じる浩一の話した仮説が合っていると分かった結果、難事件の捜査は大きく進展を見せていた。

フリル演じる瑞稀は本格的に浩一を巻き込もうと決め、上司達にも相談し、許可を取ったところから今回の撮影は再開される。

 

「瑞稀くん?彼は一体……?」

 

瑞稀が腕を掴んで引っ張って連れてきた男を、瑞稀の上司である男性警官が不審者を見る目で見ながら質問する。

協力者が来るとは聞いていたが、どのような人物か知らないための反応だ。

そして、そんな警官を演じるのはアクアもよく知る人物。みたのりおだった。

『東京ブレイド』に続いての共演であり、ララライのトップと自称するだけあって演技も最高クラスの実力を持つ。

演じるのは真面目で優秀な警官というシンプルな物だが、だからこそ実力が分かりやすい。

ごく自然体に、だが常に威厳を感じられる歴戦の警官といった雰囲気を醸し出すのは、アクアも参考になると思わされていた。

 

「先日話をした捜査協力者です。私の幼馴染で……守秘義務の書類にもサインしてもらっています」

 

そんな玉森に先日の幼馴染に対する軽い話し方とは違う、職場の上司に対する丁寧な言い回しで、フリルは瑞稀を演じていく。

いつもとは違う愛嬌を感じさせる上品な笑顔で浩一を紹介するフリルは、普段と異なり喋っていてもコメディエンヌではなく、『国民的美少女』と言って良い清楚感を見せている。

 

「ほら、自己紹介して」

 

それに対して浩一に声を掛ける時は砕けた話し方で、距離感が近い。

そのギャップが瑞稀とそれを演じるフリルの人気をあげそうだなとアクアは思っていたが、自分の台詞の番となり、演技に意識を戻す。

 

「どーも鷹野です……なんで僕が捜査なんて」

 

ボサボサの髪をしており、信じられないほどダサい服装をしているやる気がない浩一。

それすら様になるのは恵まれた容姿故だろう。

設定上も容姿は整っており、五反田がアクアを選んだ理由の何割かも、だらしなくてもカッコいいという設定であるが故だったりする。

ここまで連れてこられてから今更面倒そうな顔をする浩一に、瑞稀は睨みつけるような視線を向けた。

 

「先払いでパティスリーのケーキ奢ったでしょ!ほらほら頑張って」

「……仕方がないね」

 

浩一は甘党であり、ケーキが好きだ。

それを覚えていた瑞稀により提案されたケーキ奢りは、彼にとってそれなりに価値がある。

自分で買えばいいのだろうが、人から奢られるのはまた格別と思っており、つい乗ってしまったという形だ。

このシーンは実際の放送の時には、フリルの台詞の後に既に別撮りしている浩一と瑞稀のお茶をしているシーンが挿入される事になっている。

 

「彼が?……こほん、捜査一課の玉森です。本日はよろしくお願いします」

 

ここまで捜査が進んだ立役者ということで、しっかりした年上の人間をイメージしていた玉森は、まさかの年下な上だらしなさそうな男が出てきて驚く。

 

「玉森さんか、よろしく。でも悪いね、瑞稀のアホが早とちりしちゃったんだよ」

「早とちり?どういうことかね?」

「事件の愚痴に付き合うの面倒だったからさ、適当な事言って誤魔化したんだ。その後たまたま面白いように事件の捜査が進んだって僕が分かって言ったと思われたわけ」

 

浩一の言葉に玉森は首を傾げる

事件を理解していたわけではなく、それらしい助言をして誤魔化したらたまたま合っていたという事を浩一は言っているわけだが、そんな事あるのだろうか?と。

 

「はぁ……」

 

それに納得していなさそうな玉森を見て、浩一は歴戦の刑事って面倒だなとため息を吐く。

その後、再びごく自然に、偶然を装って思い付きの言葉を発して事件の調査を進めた浩一。

それは偶然なのか、必然なのか、玉森の鍛えられた観察眼でも見抜く事はできなかった。

 

「はいカット!OKだ、全員文句なし!特に早熟……怠そうな感じをキープして動けてるのは流石だな。初回SPの撮影は文句なしだ、この調子で頼むぞ」

 

今回撮影していたのは初回のラストシーンと第二回の一部だ。

浩一がその態度と裏腹に有能であることを見せていくシーン。

とはいえ、あくまで絵面としてはだらしない男である必要があり、画面越しにもだらしなく見せ続けながらたまたま言ったことが当たったというギャップを生み出す必要がある。

このドラマは浩一がどうしてやる気を出さないのかというのが物語のサブテーマとして存在しているというのも見どころの一つだ。

 

「マリンがいい味出してたおかげで演技しやすかった。ありがとう」

「流石に俺の方が演技慣れしてるからな」

 

演技の終わりが告げられてすぐにフリルはアクアの元へと近付いて声を掛ける。

フリルは緊張こそあまりしていなかったが、演技をしている内に少々空気に呑まれそうになる場面もあったのだが、アクアの演技のおかげで自分のペースを保てたところがある。

人がやりやすい演技というのは、アクアからすると得意分野だ。

そしてフリルが相手であれば演技を抑える必要がなく、互いが噛み合う演技をするのも難しくない。

 

「アクア君、フリル君、お疲れ!これからは一緒のタイミングが多いだろうから一言言っておこうと思ってね、今時間いいかい?」

「大丈夫ですよ」

「私もです」

 

そんな会話をしているアクアとフリルに、先ほど玉森役をしていたみたのりおが近付いて声を掛けた。

撮影で一緒になったのは今日が初めてであり、これからはレギュラーとなるため、撮影が一緒になる機会が多いからこその挨拶でもあった

 

「フリルちゃん、君凄いね。正直な話をいえば……最初キャストを見た時は、あまり実績ないアイドルの子をアクア君のコネで持ってきたなって思っていたんだけど」

「無理もないと思いますよ」

 

フリル自身から見ても彼女は月9のヒロインを務めるには、明らかに実績が不足していた。

実力自体が今役者として売れている人達に比べて劣っているとは彼女自身も思っていない。

ただこれまでフリルは地上波のドラマで主演をした事はない。

月9ともなればネームバリューも重要になってくるため、この起用はかなり珍しかった。

それだけでなく、これまでの月9ヒロインは最年少でも18歳。

それを2つ下回る年齢のフリルは世間的に見ても若い。

 

「でも実際に会ってみれば、その引っ掛かりはすぐに晴れたよ。君は視野が広く演技も上手い。何より君には目を惹きつける何かがある」

 

不知火フリルにしかできないと思わせる演技は、彼女という極上の素材を際立たせており、今後来る女優をアピールする場として月9でのキャスティングは監督の慧眼だと考えを改めていた。

 

「噛み合いさえ違えば、有馬君や黒川君より先に君が世代トップになっている可能性もあっただろう」

「あの二人と比較してもらえるなんて嬉しいです」

 

フリルから見てもあの二人の演技は図抜けている。

そんな彼女たちと比較してもらえるのは、フリルとしても喜ばしい事だった。

一通りフリルの良かったポイントを話したみたのりおは続いてアクアの方へと向き直る。

 

「アクア君のちゃらんぽらんな姿を見て、演技だというのに本気で『本当にコイツで大丈夫か?』と思いながら演技させてもらったよ。嘘のはずが真に迫っている演技。『東ブレ』の時に姫川と演技のぶつけ合いをしていたのを見て、共演楽しみにしていたけど……期待以上だった。若い才能はいいな!」

 

共演こそしていたものの、直接演技を見る場面は練習の時のみだったため、ギアを変えている本番の時は初めて間近で見たわけだが、まだ17歳になったばかりなのに自分に比肩しうると感じたが故の高い評価。

負けるわけにはいかないなとアクアに対して対抗意識を内に秘めている。

 

「こちらこそ『東ブレ』の時はお世話になりました。今回も所作での威厳の出し方は俺の引き出しにないやつだったので勉強になりました」

 

対してアクアからすれば細かい部分に詰まった演技技術は、自分でも出す事ができないとして内心で少し悔しい気持ちと認められて嬉しい気持ちが混ざって複雑だった。

姫川大輝がセンスによる演技だとすれば、みたのりおの演技は理論派を突き詰めたような演技。

真似できない演技だとは思えないのに凄いと感じさせる代物だ。

 

「姫川との演技は互角だったみたいだが、俺もそう簡単に負けてはやらない。しばらくよろしく頼む」

 

アクアに宣戦布告のようなことを言って、言いたいことを伝えたと満足したのか去っていくみたのりお。

その後ろ姿を見送ってフリルは再びアクアに声を掛ける。

 

「なんというか凄い人だったね。自分に自信があるって感じ、積み上げてきた実績と実力があるからそれが揺らがないのかな」

「ある意味役者の完成形だな。基本に忠実にを極めて個性にまで昇華させてる」

 

『東京ブレイド』の時は大輝とかなの二人と演技勝負をする方に意識が向いていたところがあったが、みたのりおは大輝と同格と言える現役トップ役者の一人だ。

アクアは今回の撮影でみたのりおよりいい演技がしたいと一つの目標を定める。

 

「私も二人と同じ場面での出演が相当多いからね、二人の演技に負けないどころか食べる演技をしちゃいたいところ」

「フリルの演技はこの月9の間だけでも伸びているから油断できないな」

「やっぱり?自分でも成長期だなーって思ってたんだよね。演技レベルが高いところでやってるからかな?」

 

月9は国内ドラマの中でも認知度や格が高い。

そのためアクアやみたのりおに限らず、参加するメンバーは悉くレベルが高く、フリルにとっては良い成長機会にもなっていた。

アクア、かな、あかねという若手3トップと練習しているフリルだが、本番の空気感はまた違う。

初回の撮影が一通り完了した時点でもこれまでと違うとフリル自身が感じるほどに進化している。

 

「これまでのフリルは自分の魅力をそのまま魅せる事が多かったが、その魅力を有効に魅せるという部分が上達した感じがするな。……参考にしたのはみなみか?」

 

フリルは何も工夫せずとも自然と周囲の目を惹く才能がある。それを意図的に魅せる事で、これまで以上に魅力が増して見えていた。

アクアの言葉にフリルはほんのり笑みを浮かべながら答える。

 

「あっ流石だねマリン、その通り。流石にあそこまで自然には出来ないけど……みなみにもっと教えてもらおうかな」

 

身内にさまざまな演技をする人物がいるという環境は、自分の演技の幅を広げるいい手本にもなるという事だ。

そしてそれを吸収できる素質がフリルにはある。

これまでは上手く再現できなかったが、月9の撮影がもたらした表現力の向上によって可能になっていた。

 

「みなみはアイの魅せ方も映像越しだけで参考にできるからあれはセンスだな」

「凄いよね、それを自覚してある程度体系化してるのも頑張ってるなって伝わるから」

 

以前みなみがドラマの端役で出た時、アイの若い頃の失敗を参考にしてもらった事があった。

その時もすぐに演技に応用していたあたり才能という他ない。

そしてそれに驕らずに自分磨きをしているみなみを、フリルは同い年ながら尊敬していた。

 

「皆もこないだの話し合いの後から、以前以上に頑張ってるし私も自分の武器を磨かないとね。マリンも気合い入れてるでしょ?」

「甲斐性ある男にならないといけないからな」

「少なくとも五人分抱えられるように頑張ってね」

 

月9の撮影はまだ期間も長い。

アクアにとってもこの経験が今後の役者人生に良い形で活かせるように、フリルに負けないよう努力しないとなと改めて思うのだった。

 

 

 

「という感じ、私たちの撮影は今のところ問題なしかな」

「いいなぁ〜おにいちゃんと共演。やっぱり番宣番組とか二人で出たりするの?」

 

時間がまだあるからと事務所に戻ってきたアクアとフリルはルビーとみなみという同級生コンビと遭遇した。

撮影どうだった?という言葉にフリルが今日一日の撮影模様を口頭で説明する。

フリル節が混じってワードセンスこそ独特ではあるものの、話が分かり易く整理されており、すっと話が伝わってくるのはバラエティーに駆り出されても余裕でこなせるよなとアクアは思いながら見ていた。

 

「マリンは何か聞いてる?」

「5〜6月には番宣の撮影が予定されてるな。その間バラエティーは少なくとも5本は出ることになりそうだ」

「流石月9やねぇ……どの番組出るん?」

 

主演ということで当然のように番宣担当に選ばれたアクア達は全部の番宣に出演する事になる。

今までの比にならないペースでの出演に、みなみも驚きながら尋ねた。

それからアクアはいくつか出演が決まっていて事務所内で公表できるものをピックアップしてみなみに話すと知っている人気番組ばかりであり、自分達が有名になってきた実感が出てきたのか少し目を丸くしていた。

 

「アクアさんはともかく、フリルちゃんもすっかり有名人やね」

「そりゃそうなるだろ。フリルに限らずみなみ達も先月ドームでライブやったトップアイドルだ。YouTubeの登録者もアイドルとしては異例の600万人超えって異常だからな」

 

これまでテレビの露出こそ絞っており、少なくはないが多くもなかった彼女達だが、ネットという舞台を使い知名度を広げ、その圧倒的タレント性で一躍トップまでジャンプアップしてきたのだ。

順序的には逆になってしまっているが、テレビの出演も加速度的に増える事になる。

 

「『B小町Rちゃんねる』は今でも月に二回はメンバー全員が揃う企画動画やって、週に一回は何か動画出して、週に一回は誰かしらが生配信してるもんね!」

「改めて聞くと結構マメだな」

 

B小町R全員が揃って配信するとなると色々大変なので、個人個人で動かすこともある『B小町Rちゃんねる』。

おかげで今も更新がそれなりの頻度で行われており、登録者が多い理由になっていた。

 

「ちなみに明日は私の担当。ゲストはお姉ちゃんでFPSをやる予定。マリンもやる?」

「あー……遠慮しておく。俺の実力じゃ足引っ張るしな。かなが空いてたら誘ったら良いんじゃないか?」

 

B小町RがYouTubeをやると決まった時、かなはゲーミングPCを購入した。

それ以降たまにフリルとゲームで一緒に遊んでいる。

おかげでそれなりに高いPCが置物にならずに済んでいた。

アクアもたまにカジュアルなゲームは一緒に遊ぶ事があるが、配信に載せるのは少々躊躇われたため、まだ遊ぶ頻度の高い彼女を推薦したわけだ。

 

「あっいいね。重ちゃん仕事は入ってなかったはずだし、マリンとの予定もないなら暇でしょ」

「かなさん聞いたら絶対怒るやろな今の」

 

みなみの予想通り聞いていたら中々の反応を見せていただろう。

確かに彼女は友人が少ない部類だし、それを自覚している。

ただ人に指摘されたくはないというプライドを持っていた。

 

「フリルちゃんところもちゃんの対決切り抜きめちゃくちゃ回ってたし今回も期待されちゃうかもね」

「お姉ちゃんが配信見て割り込んできただけなんだよねアレ」

 

不知火ころも、フリルの姉であり元アイドルだ。

今はアイドルを引退して芸能界も引退。

YouTuberへと転身して朝から晩まで配信をやるモンスター状態である。

 

「どうせなら正式にコラボしたらええんやない?」

「あっ!それいいかも!早速連絡しようよ」

「お姉ちゃんなら意外と乗ってくれそう。ありだね」

「流石に急過ぎるだろ。ミヤコさんに連絡して確認しろ」

 

思いつきで話がポンポンと話が進む三人にアクアは思わずツッコミを入れる。

 

「「「あっ」」」

「はぁ……この辺りは変わらないよな」

 

少し脇の甘いところがある彼女達にため息を吐きながら苦笑しつつも、アクアはそんな三人を内心で微笑ましく思うのだった。

 

 

ちなみに、その後ミヤコはあっさりと許可を出し、実際に後日配信される事になる。

配信内容は至ってシンプルで三人用のFPSをフリル、かな、ころもの三人で遊ぶという物。

プレイヤー達が全員美人美少女な事が特徴の配信だったのだが

 

『フリル最近乙女だよね、告白とかしないの』

『するよ、今はマリン攻略に向けてせっせと準備中。あかねにも負けない』

『うわっ普通に答えた。私がアイドルやってる時代と変わったんだね』

『いや、こんなのB小町Rくらいよ!?アンタも炎上しないからって気楽に言い過ぎ!!』

 

このようなぶっ込んだ会話が所々で行われており、サジェストに『不知火 告白』と出たせいで、ころもの方が誰かに告白するのかと一瞬勘違いされて荒れかけたが、フリルと判明した瞬間鎮火したとか。

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