月9の撮影が終わってから数日後。
ショッピングモールには二人の男女が集合していた。
「アクアくんお待たせ!ごめんね、待たせちゃって」
「いや、時間通りだし気にするなよ。俺こそ悪いな、あかね。結局4月以降時間作れなくて」
一番忙しい時期が終わったアクアは彼女の一人と予定を合わせてここしばらくできていなかったデートの約束をしていた。
ただでさえ複数彼女がいるという歪な関係を認めてもらっている状態なので、少し後ろめたさを感じていたアクア。
ただあかねは時間ができたらすぐ埋め合わせをしようとしてくれたアクアの優しさの方が嬉しかった。
「アクアくん忙しかったもんね。初めての歌にも挑戦してたから仕方がないよ」
「あかねは相変わらず甘いな」
「そんな事ないよ、私もアイドルやってるからその辺りの大変さは分かってるからね」
特に初の歌という事で入念に準備をしたかったのだろう事は、あかねにも想像がついている。
実際公開されたエンディング曲は心もよくこもって歌の基礎も完成度が高い、非常にいい曲に仕上がっていたとプロであるあかねからも感じられた。
「それに……可能な限り時間を作ってくれていたのも知ってるから」
メッセージでのやり取りは毎日していた上、学校に二人ともいる時は必ず直接会って話をする時間を設けていた。
あかねはそんな彼の努力を知っているため、むしろ心が温かくなっていたりする。
そのままではずっと続きそうな話になっていたので、アクアは一度話を変えることにした。
「あかね、そのワンピース似合ってるな。あかねの綺麗な顔立ちに合っていて清楚な感じが出ていいと思う」
「ほんと?嬉しいなぁ、アクアくんもシンプルな格好が映えててかっこいいよ」
多少髪を弄ったり雰囲気を変えることでバレないようにしている二人は互いの格好を素直に褒め合う。
素材の良さを殺さない変装がすっかりここ最近は身に付いていた。
「行くか」
「あっ……うん!」
アクアからスッと差し出された手をあかねが取り、二人は目的地へと歩き始めた。
こういうところ女の子慣れしてるなぁと思いつつもあかねは丁寧に扱われて嬉しく思う。
歩きながらも二人は会話をしていて、内容は今日の行き先についての話になった。
「結局本当に映画で良かったのか?」
「うん、アクアくんも見たかったでしょ?アイさん主演の映画」
「当然だな」
アクアにとってアイは推しであり、母である特別な存在だ。
彼女の出ている映像作品は全て網羅したいと思っている。
堂々と答えるアクアにアクアらしいなと思いながらあかねはからかい交じりに返す。
「アイさんの事大好きだもんね。嫉妬しちゃうな〜」
「あかねの事も好きだぞ、アイと同じくらいには」
「!?あっありがとうアクアくん」
あかねはアクアからの流れるような台詞に顔を赤くしながら繋いでいた手をにぎにぎと動かす。
元からアクアはあかねにも優しかったが、こういう直接的な言葉を言ってくれるようになったのが、あかねにとって正式に彼女になったと一番感じる瞬間だった。
「そういえばフリルちゃんの件はどうなったの?」
「まだ秘密」
「それほとんど答え言ってるようなものじゃないかな」
アクアの返事を聞いてあかねは苦笑する。
三人目が出来るというのは想定通りではあるため、どうして曖昧な言い方をしたんだろうと首を傾げた。
そんなあかねにアクアはフリルの意図を説明する。
「アイツはアイツで皆をビックリさせたいんだとさ」
「ドラマで何やったんだろう?フリルちゃんは結構トレース大変だから予想しづらいんだよね」
「あかねに予想させないって凄いなアイツ」
演技に落とし込みながら告白するという器用な事をしたフリルが加わり、いよいよ三股男となったアクア。
ただフリルが加入したという事実はまだ二人だけの秘密となっていた。
その理由は告白当日へと遡る。
〜〜〜〜〜〜〜
撮影の後、楽屋に呼ばれたアクアは改めてフリルから思いの丈をぶつけられていた。
『分かってると思うけどさっきの告白は『不知火フリル』の気持ちも入ってる。マリンのことが一人の男の子として好き……付き合ってくれるよね』
『流石にそれくらい察してる。……本当に俺でいいのか?フリル以外にも俺は二人と付き合っている訳だが』
事前に伝えてはいるが、改めてアクアは確認する。
フリルが思っているよりも今後は大変だ。全員が世間に認知されるのは難しい。
そんなアクアの言葉にフリルはジト目をしながら返事をする。
『無粋な確認だね。惚れさせたマリンが悪いんだから諦めて背負って。アラフィフの甲斐性を見せて?』
『アラフィフじゃねぇ、肉体に引っ張られて精神的にはまだ10代だっつの!』
フリルからのからかい交じりな言葉にツッコミを入れるアクア。
ただ今回はアクアがわざわざ再確認したのが悪いため、それ以上は追及しない。
『悪かった、わざわざフリルの覚悟を再確認するような言い方して……俺こそ、よろしく頼む』
『やった』
ぐっと拳を握り締めて改めて現実を噛み締めるフリル。
そのまま追撃とばかりにどうして
『ちなみにマリンは私を手放しがたく思ってくれたみたいだけど、それはどうしてか教えて?』
『フリルといると楽しいんだよ。俺と感覚が似てるからかもっと話したくなる感じだな』
前世の吾郎のようなセンスというべきだろうか、綺麗なものは視力にいいとか独特のワードセンスとアクアは言っているものの、感覚としては実のところ近い。
小学生の頃にすぐ仲良くなれたのも、そういうところが楽しかったのが大きかった。
『嬉しい評価。私も似たような事思ってたから』
『そうかよ』
互いの気持ちを確認し合った二人は、そこから軽く互いの好きなポイントを話した後、B小町Rにいつ伝えるかを相談する。
『とりあえず私たちが付き合い始めた事はB小町Rのメンバーにも内緒にして欲しい』
『彼女になってる二人にもか?』
『出来れば。『鷹研ぎ』最終回でビックリさせたい』
どうやらサプライズを企んでいるらしかった。
少しとある人物の反応が恐ろしいと思いつつも特段不利益もないと判断したアクアはその提案に乗る事になる。
〜〜〜〜〜〜〜
「むぅ……デート中に他の子のこと思い出すのは良くないよアクアくん」
「いや、あかねが自分で話題振ったんだろ」
フリルと話した内容を思い出していたアクアにあかねが『今ガチ』を思い出させる膨れ顔を見せる。
そんな彼女に呆れた顔をしながらアクアは言葉を返した。
「ふふっ冗談だよ。フリルちゃんが内緒にした理由もそのうち分かるんだろうし、今は置いとくね」
「そうしてもらえると助かる」
くすくすと笑顔になるあかねを見て少しホッとしたアクアは、何股もするのって本当に甲斐性がいるんだなと思わされるのだった。
映画を見終わり、二人は先程見ていた映画の感想を言いながらゆっくりとショッピングモール内を歩いて行き先を探す。
再び手を繋ぎ、歩幅を合わせて歩く姿は理想の美男美女カップルに周囲からは見えているだろう。
「アイの演技もだが、話も面白かったし見た甲斐があったな」
「だよね!展開も予想の斜め上って感じで、話の本筋を見せながらミスリードを交ぜる手法が取られていて脚本のテクニックを感じたよ」
今回の映画は元々アイを見るのがメインだったが、話自体もよく出来ており、二人ともパンフレットを買う程度には気に入っていた。
アイのグッズと合わせてアクアが繋いでいない方の手で二人分持ち歩いている。
「個人的にはアイが水の中で祈りを捧げるシーンが印象には残ったな。あの絶体絶命の局面で序盤の伏線を回収してくるとは思わなかった」
「うんうん!やっぱりそこだよね!迫真の演技も合わせて私涙出ちゃったもん」
アクアの言葉に同意するあかね。
笑顔で語っていた彼女だが、少しして何かを思い出したのか少しテンションが落ちる。
「やっぱりアイさんの演技はすごいなぁ。私の再現出来ていない部分がまだあるって思い知らされた」
その原因は映画の中で見たアイの演技にあったようだ。
元々アイのファンでもある彼女は、自分もああなりたいという一つの理想としてアイを置いている。
どれだけ近付けても本物との差がある事は本人が一番感じているのだろう。
残りの数%が埋まらない絶対的な差だとあかねは認識しているようだった。
「そう悲観するものでもないぞ」
「アクアくん?」
ただそんなあかねを励ますように、アクアは努めて明るい声をかける。
それからあかねにしっかり自分の考えが伝わるように説明していく。
「そもそもアイを完全にコピーしただけだと、いくらあかねの再現力があってもアイの劣化にしかなれない。それをあかねは他の演技や解釈と融合させる事で昇華させてる。アレはもうあかね自身の演技だ」
あかねにその自覚はないようだが、アイ単独の演技は勿論、それに役柄や自分の感覚を融合させている時点で独自の演技となっている。
そしてそれはあかねだけの武器だ。
「それに……アイも実は結構あかねの演技を意識してるところがある。あかねがアイの演技をした後は妙にいつもより甘えてたりな」
「あはは、アイさんアクアくんのこと大好きだもんね」
本人から言わせると息子が取られてしまうのではという感覚に襲われるのだとか。
実の息子どころか本人すら危機感を抱かせるその再現性は、アイの演技力の向上にも一躍買っているとアクアは考えていた。
ちなみに付き合うことに関しては寂しさこそあるものの、問題ないらしい。
あくまで母親としての地位さえ脅かされなければ大丈夫とのことだった。
「何が言いたいかと言えばあのアイにすらそう認識させるくらいにあかねの演技が伸びてるって話だ。自信を持っていい」
「そ、そうなんだ。……あのアイさんが。嬉しいなぁもっと頑張るぞ〜」
特に『東京ブレイド』の舞台であかねが演じる鞘姫を見てからのアイは、その表現に可能性を感じて一部を逆輸入して自分なりにアレンジしていたりする。
今のあかねはそれだけ演技力が向上しているという事だ。
「そういえばこの後ちょっと本屋に寄ってもいいかな?ちょっと『東京ブレイド』の新刊を買おうかなって。アクアくんはもう買ったの?」
「ルビーが昨日買ってきてた。俺はまだ読んでないけどな」
星野家では全員演技の勉強にもなるからと漫画を読む。
特に『東ブレ』は星野家だと全員が読んでいるため、基本誰かが買ってきたらそれを回して読む事にしていた。
「前巻で鞘姫が恋愛面で攻勢に出てたし、刀鬼がどんな選択をするか楽しみだよね」
原作の展開的に負けヒロインだと思っていた鞘姫が最近盛り返しているのを見て、あかねは自分が演じたキャラに幸せになってほしいなと内心で願っていた。
「今後カップリングがどうなるのかは分からないが、つるぎと鞘姫がライバル関係にもなってたな。互いに反発し合いながらも認め合う感じが……なんというか、かなとあかねっぽかった」
アクアはあかねの会話に乗り、前巻の内容を口にする。
かなとあかねっぽいというより、思い切り二人、下手をしたらアクアも含めて三人の影響を受けているのだろう。
あかねも苦笑しながらアクアの言葉に返事をする。
「あはは、言ってたもんね。寸劇からインスピレーション受けたって。ちょっと恥ずかしいかも」
「俺も似たような感覚はあるが……まぁアビ子先生も悩んでいたらしいから解決して良かったと思うしかないな」
影響は受けていそうだが、あくまで刀鬼、つるぎ、鞘姫から逸脱してはいない。
元々寸劇では三人ともキャラに寄せていたからこそではあるが、その辺りは流石プロ漫画家と言えるだろう。
「あっスケコマシとあかねだ」
そんな二人の横から聞き覚えのある可愛らしい声がして二人はそちらに視線を向ける。
そこにはミミがおり、アクアに対して少し引いた視線を向けていた。
ミミはアクア達の変装のパターンを知っており、たまたま見掛けても見破る事は難しくなかった。
彼女から冷たい視線を向けられるのはすっかり慣れてはいるものの、お約束としてアクアはツッコミを入れる。
「おいミミ、会うなりそれは酷くないか?」
「自分の手を見てから言うべきだと思う」
ミミの視線はアクアとあかねが繋いだ手に向けられており、確かに公式的には振った相手と手を繋いで出掛けている状況はあまり健全とは言えないなとアクアは思い直す。
「……もしかしてミミ邪魔しちゃってる?ごめんねあかね」
「全然大丈夫だよ、気にしないでミミちゃん。一昨日ぶりだね」
「一昨日かよ、ほんと仲良いな」
『今ガチ』で仲良くなった二人は、それなりの頻度でゆきも交えて遊んでいるらしい。
女子組は女子組だけで集まる機会も多く、もう親友と呼んでもいい仲になっていた。
ゆきから話を聞いて羨ましがったノブユキからアクアとケンゴ宛に『今度男子組も集まろうぜ』とメッセージが送られており、男子組も別日に集まる予定が出来ていたりする。
「ミミはどうしてここに?」
「ミミも『東ブレ』買いに来たから……本誌でも読んでるけどやっぱり単行本も欲しいし」
ミミは元々『東京ブレイド』はかなり好きだ。
関連したコスをコスプレアカウントに載せている事もあるくらいだ。
それから三人は『東ブレ』の話題で盛り上がり立ち話をする。
『ピリリリリ』
「げっ……にーちゃんからだ。うーん、ちょっと出るね」
話が盛り上がっている最中、ミミのスマホに着信があった。
彼女は会話の邪魔をされたことに嫌そうな顔をしながらも、二人に断ってから電話を取る。
「もしもし、にーちゃんどうしたの?」
最初は普通に嫌そうなだけだったミミだが、次第に哀れみのこもった目をし始める。
アクアとあかねは顔を見合わせて、ミミの兄シュンに何があったんだろうかと疑問に思っていた。
しばらく電話をしていたミミが電話をやめてアクアたちへ視線を向ける。
そんなミミは少し悩んだ素振りを見せながらあかねに質問をした。
「……あかね、この日ってお仕事ある?」
ミミは自分のスマホでカレンダーを表示して、8月の中頃を示す。学校は休みだろうが、あかねの場合来月は予定が入っている可能性が高かった。
ミミとしても駄目元といった様子の確認である。
「えっとその日は……あっごめんね、撮影が入ってるみたい」
あかねも自分のスケジュール帳を確認してみるが、やはり撮影が入っているらしい。
来季放送予定のドラマで主演級な彼女の時間はそうそう簡単には確保できなかった。
「ミミ、どうかしたのか?」
「二人はまだ時間……ある?」
アクアとあかねは二人ともお人好しだ。
少し不安そうにするミミを見て、二人は顔を見合わせて頷き合い、何か困っているらしい友人を助けることを決める。
『東京ブレイド』の新刊を予定通り購入し、場所を喫茶店に移したところでミミが先程の話について説明を始めた。
「……なんかにーちゃんがコスプレイヤー探してるみたいで。ミミにも協力して欲しいって言われた」
それからミミはアクアたちにシュンから聞いた話を伝える。
なんでもシュンが勤めているネットテレビ局の番組『深掘れ☆ワンチャン!!』で今度コスプレの企画をやるらしい。
それで芸能人のコスプレイヤーを探しているとか。
「……『深掘れ☆ワンチャン!!』か」
「どうしたのアクアくん」
アクアがその番組名を聞いて少し反応したのを見てあかねはどうしたんだろうかと尋ねる。
「あの番組は確かにネット局のバラエティーなんだが、構成作家が豪華で業界視聴率が高い。だからウチから人を出すのは確かにありだと俺も思う」
「へー……カントクさんから聞いたの?」
「いや、これは壱護さんから。俺にも一回話持ってきたくらいだ」
結局アクアが月9で多忙だったのもあって断ったのだが、普通なら今のアクアをネットテレビ局にわざわざ出そうとはしない。
それをわざわざ壱護が使おうと考えるくらいには、今後に繋がる可能性がある話というわけだ。
「……聞くだけ聞いてみるか」
アクアは自分のスマホを取り出して連絡先から一人の少女に電話を掛ける。
「みなみ、今時間大丈夫か?」
『ウチは大丈夫やけどアクアさんこそどしたん?今日ってあかねさんとデートやなかったっけ?』
アクアが電話を掛けたのはみなみだ。
ミミはあかねに助けを求めていたが、あかねは普段からコスプレ画像などはあげていない。
結果的に予定が合わず断る事になったが、下手をしたらヤラセとして炎上に巻き込まれる危険がある。
「実はたまたまミミと会ったんだが、8月のこの日にコスプレの企画に参加する仲間を探してるらしい。みなみが空いてたらと思ってな」
だがみなみならば、彼女はミミにコスプレを教わってからそれなりにコスプレ画像をTwitterにアップしており、十分にコスプレキャラとしても認知されているため問題にはならない。
もし普通のネット局なら今更みなみが出るメリットは薄い。
時間が拘束されるデメリットの方が大きくなってしまうが、『深ワン』ならばメリットが勝る。
アクアは事情を説明する。
『なるほどなぁ。ええよ、その日はちょうどお仕事空いとるし。それにミミちゃん困ってるんなら助けたいし』
「悪いな。幸いこの話はみなみにもメリットがある話だ。損はしないと思うぞ」
『そうなん?でもこれでミミちゃんが困らんならなんでもええかな。困った時はお互い様やし。一応ミヤコさんに確認しとくな?』
あっさりと参加を了承してくれたみなみとの通話が終わり、アクアはあかねとミミの方へと向き直る。
「ということでみなみが参加できそうだ。一応ミヤコさんに確認するって言ってたけど壱護さんと相談して許可は出ると思う」
「良かったねミミちゃん!みなみちゃんなら可愛いしコスプレ映えも話題性も文句ないだろうからお兄さんも満足なんじゃないかな」
「……本当にB小町Rが参加しちゃった。にーちゃんビックリして昇天しちゃわないかな」
あかねに聞いたのも駄目元な上、その場にいたからであってみなみに相談しようとは思っていなかったミミ。
トップクラスのアイドルであるB小町Rから本当に参加してもらえるなんてカケラも考えていなかったため、予想外の結果に驚きを隠せない。
「そういえばコスプレの種類って指定とかあるのか?」
「なんかにーちゃんが言うには『東京ブレイド』限定みたい」
アクアとあかねはその名前に少し嫌な予感がして顔を見合わせる。
思い出すのはちゃぶ台返しされた舞台の思い出だ。
「あー一応シュンさんに版権関連は早めに確認するように伝えてもらえないか?」
「え?」
舞台で起きた悲劇を知らないミミは不思議そうに首を傾げる。
アクア達もその話を直接するわけにもいかないため、ぼかして説明をした。
「アビ子先生はいい人なんだが、作品への拘り強いからな。変な企画とかだと弾かれる可能性がある」
「というより編集さん辺りがブロックしちゃいそうだよね。アビ子先生の逆鱗に触れたくないからって」
アクア達の懸念は外れる可能性もあり、その場合は何も対策は必要ない。
だが、もしもに備えて動く方が後々楽だ。
二人の真剣な表情にミミはこくりと頷いて、帰ったら兄に念押ししようと決めるのだった。
話がついたところでミミはこれ以上邪魔できないからと言って別れ、アクアとあかねはデートを再開する。
動物がモチーフの小物を見たり、夏物の服を互いに選びあったり、アクセサリーをアクアがプレゼントしたりして過ごすとあっという間に日も暮れていく。
「今日はとっても楽しかった。プレゼントもありがとね、アクアくん」
「こっちこそ。休日の貴重な時間を付き合ってくれてありがとう」
アクアに家の前まで送られたあかねは、首に掛けたネックレスを大事そうにしながらあかねははにかむ。
アクアからしても、あかねと過ごす時間は楽しく、こんなに幸せでいいのだろうか?と思うくらいだった。
「いいんだよアクアくんは幸せになって。君にはその資格があるんだから。私がきっと君を幸せにしてあげるね」
「あかね?」
心を読んだかのようなあかねの言葉にドキリとするアクア。
ただ口にした当のあかねも不思議そうな表情をしていた。
「なんでだろうね、何故かこう言わなきゃって思ったんだ。変だよね……でも私が、私たちが君を幸せにしてあげたいって言うのは本当だから」
「大袈裟だな。二股とかしてる時点で幸せじゃないとか言ったらバチ当たるだろ」
母がいて妹がいて恋人達がいて、見守っている父に幼馴染に友人にと満ち足りた人生を送っている。
本当に幸せ過ぎるくらいだった。
「いいんだよ、アクアくんはそれくらいわがままでも」
「……そうかよ」
「そうだよ」
くすりと二人で顔を合わせて笑い合う。
デートの最後は平和そのもので、アクアはこんな日々がずっと続けばいいと思うのだった。