【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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芸能界の闇

星野家にとって最後にして最大の障害が消えた翌日。

 

『次のニュースです。先日、苺プロ所属のタレントアイ……失礼しました。星野アイさんが自分に子供がいるという情報を公表しました。元々会見が必要になったのは週刊誌にて熱愛報道が……』

「いや〜今日もやってるね。昨日の夕方も結構やってたのに」

「そりゃそうだろ、ファンは結構いい感じに納得してくれたみたいだけど、未成年で妊娠って芸能界そのものについて突っ込まれても仕方がない話だ」

 

朝のニュースが流れているのを見て、アイは軽い感じに意見を口にした。

はっきり言ってめちゃくちゃと言ってよかった記者会見の反響は、今日もテレビを賑わせている。

テレビとしては中継などはできなかった分、好き勝手言いたいところだろうが、アクア達の言い分、世論、そして今年中に公開される映画で全てがわかるとまで言われては、なかなかリスクも高いのか、大人しいものだ。

ただ大人しい原因はそれだけではない。

 

『いやぁアイの素顔ねぇ、あの子ほんといい子だからなぁ。スタッフにも気を遣ってくれるし』

『私も当時B小町のファンだったので、『アイドル』や『サインはB』の踊りとかもよくやってましたよ。なんなら今でもB小町Rのファンになっちゃって!』

『アクア君とは共演した事あるけど、率先して挨拶も回るし子役の頃から礼儀正しくてびっくりするよ』

『今回のスキャンダル、はっきり言って大問題なのですが……アイさんは既に18年近く子供をちゃんと育ててきたわけで、母親としてその分しっかり稼いでいたと考えるとあまり否定的にはなれませんね』

 

報道を見ていても全体的にアナウンサーやコメンテーターの発言は好意的だ。

三人ともテレビで幅広く活躍するだけあって、顔見知りが多く、これまでの星野家のこまめな活動が、実を結んでいる結果と言えるだろう。

 

「あーこの人懐かしいなぁ、ちょっと老けたかも!」

「私こないだこのアナウンサーさんと一緒にお仕事したよ!ファンだったなら言ってくれたらサイン書いたのに!」

「……本当、想像以上にうまくいったな」

 

アクアの予定では、元々会見だけでは色々言われ、一時的にアイの人気が落ちる可能性も考えていた。

その後、映画を上手く利用して評判の挽回を目論んでいたわけだ。

ただ現実は、最低限の被害に抑える程度で考えていた初動で、殆ど作戦は成功していると言っていい。

 

「SNSとか見てるとおにいちゃんの最後の演技が大きかったみたいだよ?小さい頃から子役として見てきた『星野アクア』が見せた親を思う心みたいな感じで」

「……そう思うと子役から頑張ってきた甲斐があったな」

 

アクアは前世親がいない。

だからその辺りは計画として組み込んでおらず、全く思い浮かんでいなかった。

自分の考えていた計画でアイが仕事できなくなったらどうしようと考えていたアクアだが、今のところは大丈夫そうでほっと息を吐く。

 

「アクアは背負いすぎかなぁ……頼りになるけどもっとママを頼ってもいいんだよ?」

「そうそう、私だってもうおにいちゃんに守られるばっかりじゃないんだから」

「十分頼ってるっての。実際、会見では二人のサポートも大きかったしな」

 

アクアはもう少し硬いイメージをしていた会見だが、アイのおかげで空気が緩くなり、そのおかげもあって家族仲の良さを自然にアピールできた。

あとはどうしてもポーカーフェイスになりがちなアクアより、表情がコロコロ変わるルビーが一緒に説明に参加したことで、より会見に真実味が増したのも大きい。

 

「ふふっそうだね……家族だもん!支え合わないとね〜」

「役に立てたなら良かった〜でも私は自分がしたいことしただけだからちょっと残念かも」

「ルビーはその自然なところがいいんだから気にするな」

 

朝から仲の良い様子を見せる三人。

今日も星野家は平和である。

 

 

出席日数の関係もあって、ここ最近はまともに通っている学校でも色々と質問攻めに合い、少々疲れた様子を見せるアクアとルビー。

放課後、事務所に着いた途端、ほっと一息を吐く。

 

「想像はしてたが、クラスでもあれだけ質問されるなんてな……」

「しょうがないやろなぁ。あのアイさんの隠し子がトップスターやし。学校の周りも報道陣多くて大変やったな」

 

学校帰りを狙うかのように溢れかえるアナウンサーや記者は、普通の生徒にも普段のアクアとルビーについて質問をしていたようだ。

ただこれまでアクアとルビーは仕事で出来ない事があった時は、他の日に埋め合わせをするなど誠実に対応してきた。

結果としてインタビューは一通り好印象、これもまた日頃の行いのおかげと言っていいだろう。

 

「ホントだよ!!ママの可愛さを布教するの大変だったんだから!」

「アンタは別のとこで疲れてんじゃない!?どうせアクアに説明関連は全部丸投げしたんでしょ?」

 

ルビーがふんすと力を入れて宣言した言葉に、かなは呆れたようにツッコミを入れる。

その言葉が図星だったルビーは目を逸らしながら小さく呟く。

 

「……だっておにいちゃんの説明の方が分かりやすいしボロ出さないんだもん。それに!お家のママはテレビとはまた違う魅力があるから!もっとママがすごいってアピールしないと」

「あはは……ルビーちゃんらしいね」

 

いついかなる時もアイオタクであるルビー。幼い頃から変わらないその姿は、初めて会った頃のままだと微笑ましくなるあかねだった。

ルビーが弄られているような状態で一人だけ静かだなと思ったアクアが、フリルの方を向くと、彼女が謎の泣き真似をしているのが目に入る。

 

「およよ……」

「……フリル、どうしたんだ?」

 

アクアはジトッとした目を向けながら問いかける。

口でおよよと言ってはいるが、その泣き真似自体は仕草が真に迫っており、彼女の高い演技力を活かして無駄に高いクオリティーを発揮していた。

こういう時のフリルは大体しょうもないことを考えているとアクアは経験則で知っている。

 

「昔は友達私しかいなかったマリンが皆に囲まれてるのが嬉しくて」

「いや、それ小学生も初期の話じゃねぇか!?一応、当時の奴らともまだ時間ある時とかバッセン行ったりしてるくらい仲良いし」

「あっおにいちゃんが時々動きやすいジャージで外行ってたのそういう事だったんだ」

 

やはりというべきか、しょうもない答えだった。

ルビーも着いて行きたい!と言ったのに拒否されて悲しかったが、ジャージで誰かとデートはないだろうと許可していたという経緯があったりする。

 

「へーアクアって野球やるのね」

「いってもバッセンとキャッチボールだぞ?普通のは中学生が最後だし」

 

かなは、中学以下のアクアを学校で見ていたわけではなかったため、意外そうに言う。

アクアとしてもそこまで特段野球が好きなわけではなく、友人に誘われたから程度だ。

趣味のラインには入っているものの、そこまで本格的に取り組んでいるわけではない。

 

「あっちょっと見てみたいかも……アクアくん、今度のデートでバッティングセンター行こうよ」

「……俺はいいけどデートって感じなのか?それ」

「自分の彼氏の趣味を理解するのも、一緒に過ごすなら大切な事だと思うから」

 

ただでさえ将来的に共に生活するのであれば、普通の夫婦生活とは色々異なる事になるのは間違いないのだ。

当然アクアにも自由な時間が欲しい時もあるだろうと考えた時、理解をしているとしてないでは、感情面で差が出るだろうとあかねは思っていた。

随分先のことを考えてるなとアクアは思いつつも、二股という選択肢を取った時から覚悟は決めている。

あかねの話に了承を返した。

 

そんな雑談に興じていると、コンコンと部屋の扉が叩かれる。

それと同時に引き締まる空気。

元々事務所にこのメンバーが集まっていたのは、これから話す打ち合わせのためだった。

 

「おっとこうしてみると壮観だね、アイ君やゆら君はいないけど、苺プロでもトップレベルのメンバーが一室に揃っているんだから」

「なぁ、早熟。本当に配給とか決めるのコイツでいいのか?」

「コイツとは酷くないかい五反田君」

 

やってきたのは二人。

どちらもここにいるメンバーは顔見知り、もしくは縁があった人物だ。

一人は五反田。本物を撮るという信念のもと、これまでも限られた予算でいい映画を撮影してきたアクアから見ても腕は確かな人物。

もう一人は鏑木。彼はアクアが関わってきた番組のいくつかでプロデューサーをしていた。

それだけでなく、アイとヒカル、双方と縁があった人物でもある。

 

「今日は二人とも忙しい中ありがとうございます」

「まぁ折角面白い映画に噛ませてくれるって話だしね、急な話だったけど僕はフリーだから予定の調整もできたよ」

 

例の会見の後、アクアはすぐに鏑木に連絡を取った。

初期は公開予定ではなかった『15年の嘘』にプロデューサーはなくてもそこまで問題にはならなかった。

ただ一般公開するのであれば、映画館の配給などある程度繋がりが必要になってくる。

そこはアクアでは難しい。

 

「にしてもアクア君、アイ君とヒカル君の息子だったんだね。薄々予感はあったけど、改めて聞くと驚くよ。でも昔からアイ君が君を寵愛していたのも納得かな」

 

元々ヒカルやアイに似ているところがあるなとは思っていた。

ただ年齢的に子供というのはピンときていなかった鏑木だが、改めて言われるとまぁ二人の子供だなという容姿をしているとアクアを見て思う。

 

「そしてこれだけ贅沢なメンバーを端役も含めて使えるんだ。そして内容は今なお輝く大スター『星野アイ』の人生。配給会社に要求するのは上映シアターの確保だけ……あまりにも条件がいい。僕が担当するって情報流しただけで向こうから争奪戦みたいになってるね」

 

アクア達はこの映画で金儲けをするつもりはあまりない。

当初とは異なり、アクアが全額負担ではなくなった影響もあって全く利益を求めないというわけにはいかないが、スポンサーはどちらも身内と言っていい。

当然表現の規制などもなく自由に制作が可能となっている。

 

「動きが早いですね」

「折角これだけの企画が動くんだ、しかも宣伝は君が昨日やってくれたおかげで第一段階は完璧。流石に1年空くから多少熱は治まるだろうけど、それでも君たちが活躍し続けるだけで宣伝効果が持続する。正直これほど楽な仕事はないよ」

 

配給会社としてはシアターの確保をするだけで売上のある程度をマージンとしてもらえるのだ。リスクも少なくリターンが大きい実に旨みのある仕事というわけである。

 

「それで、早熟。結局この台本で行くのか?」

 

鏑木とアクアの話が止まったところで、五反田はアクアが書いた『15年の嘘』の台本をひらひらとさせる。

尺としては2時間を予定しており、流れもシンプル。

五反田から見ても話がしっかりメリハリを利かしている。

 

「何かおかしなところがあるのか?」

「物語としては良く出来てる。アイがどうしてカミキと結ばれたか、どうして別れたか。悲恋というべきいいストーリーだ。事実に基づいているだけあって、感情の矛盾もなく本物を基本的には撮れる構造になっていると思う」

 

細かい表現などは流石に五反田の方で口を出したが、母親として接しているだけあって、アイの解像度が高い。

また、五反田にはどんな情報筋かは分からないが、赤の他人に対する接し方もかなり高い解像度を持っている。

まるで自分が他人としてアイに接したことがあるかのような表現が随所に見られた。

総じて完成度が高い台本と言っていいだろう。

まだ未完成な部分もあるようだが、少なくとも撮影を開始する上では問題がない。

 

「ただ……芸能界の闇。それらしいものが見当たらない。……アイがDVDで話してた内容と矛盾する」

「え?それなら上原夫妻の心中があるんじゃ?」

 

かなもアクアから台本は見せてもらっていた。

アイとヒカル、二人に起きた出来事とアイの決意、そして離別。

話の流れからしておかしいと感じなかったため、五反田に質問する。

 

「アレは現代社会の闇ではあるかもしれねぇが、芸能界の闇じゃねぇだろ」

 

五反田は今回の映画を監督するにあたってアクアから一通り情報をもらっている。

だからそこがどうしても引っ掛かっていた。

 

『彼はもう限界だったの。芸能界の闇ってやつに侵されて私に依存するみたいな感じになっちゃって。命の重さに押し潰されそうになっちゃって……もう壊れる寸前だった』

 

これが実際にアイが言っていた言葉である。

五反田は命の重みについては分かるのだが、芸能界の闇という部分があまりピンと来なかった。

 

「金田一さんから聞いた話から考えてもおかしな点はないんだ……一旦これで行かせてくれないか?最悪芸能界の闇の部分は、公開前までに別だと分かれば差し替える」

「少なくとも時系列的にはおかしくねぇから構わないが……あんまり時間残ってねぇぞ」

 

五反田も実際は何が起きたのかこそ分からない。

ただどうしてもこの部分だけは納得しかねているようだ。

アクアは少し悩んでから、もう一人の大人に問いかける。

 

「ちなみに鏑木さんは何か知っていたりしますか?」

「うーん……僕は確かにララライにいた頃からヒカル君を知っている。清十郎君や愛梨君がヒカル君の面倒を見ていたのは確かだし、そこまで違和感は……」

 

少し考えた素振りを見せた後、少しだけ気になったことを口にした。

 

「強いていうなら清十郎君の方が気になるかな。彼、結構子煩悩だったんだよね。嫁自慢も結構してたし……それはもう鬱陶しいくらい」

「……そういえば」

 

鏑木はそこまで清十郎と付き合いがあったわけではないが、その少ない機会でも会話の中でそう言った内容が頻発していたことくらいは覚えていた。

その言葉を聞いて、アクアは大輝と一緒に金田一から話を聞いた時のことを思い出す。

 

『ああ、元々ヒカルは養護施設出身だった。少し常識に疎い部分が多かったアイツの保護を二人でやっていた感じだな。清十郎の女遊びが大人しくなっていったのもその辺りが関係しているのかもな』

 

これが正しいならば心中した頃には女遊びは控えていたということになる。

金田一や鏑木に見えないところで遊んでいただけと言われたらそれまでだが、子供を作る前には誰の目から見ても浮気性だった男が大人しくなっていたわけだ。

それから数年は何も起きておらず、突然心中というのは少しだけ違和感がある。

同じ時、あかねも頭の中でこれまでの情報を整理していた。

 

(カミキさんが感じた命の重み。子供が出来たのをきっかけにカミキさんから離れたアイさん。子供が出来たとあえて伝えてから離れたのは子供に責任を負わないでいいと伝えるため?上原清十郎は愛妻家で子煩悩。大人しくなっていた遊び癖、夫妻のみで起きた無理心中。子供への愛情がある行動?……二人の子供は大"輝")

 

一つの可能性に辿り着いたあかねは、あえて明るい声でアクアに話しかけた。

 

「……アクアくん。そこはそんなに気にしなくていいんじゃないかな」

 

アクアがその声の主、あかねへと目を向ける。

あかねは表面上はなんてことのないと言った様子を見せているが、長い付き合いのアクアから見た時、その表情には違和感が感じられた。

 

「今回はあくまでアイさんとカミキさんのお話だよね。二人の死因については関係ない。二人のお話自体が出るのは仕方がないにしても、死者の墓を掘り起こすような話はするべきじゃないと思う」

「……そうかもな。カントク、台本はさっき言った通りの形で行くよ」

「そうか。まぁ話の大筋が変わるようなことは今更ねぇだろうから問題ない」

 

それからは台本の未完成部分の方針や、いつから撮影を始めるかと言った細かな部分の相談を行う。

話は順調に進み、4月には全員の予定を押さえて撮影を始める事で仮決めとなった。

 

 

この日できる打ち合わせを一通り終えて解散した後、アクアはメッセージを送り、あかねと二人になる。

 

「悪いなあかね、忙しい時に呼び止めて」

「ううん、全然気にしないで。アクアくんとなら時間無理にでも作るから」

「流石に無理はしなくていい……単刀直入に聞く、さっきの話し合いで何に気付いたんだ?」

 

あかねも台本を考えている時に手伝っていた事もあり、これまでヒカルが感じた命の重みについて、今の形で納得していた。

ただ五反田の指摘、そして鏑木からの話を聞いて別の可能性に気が付いてしまった。

 

「……これから私が話すのはすっごく最低な事。見当違いだったら姫川さんに謝罪だけじゃ済まないと思う」

 

あかねはそうは言いながらも、この予想が外れて欲しいと言いたそうな、悲痛な表情を浮かべていた。

自分への自己嫌悪があり、こんなことを考えてしまう自分がアクアに嫌われてしまうのではないかという自己保身的な思考もあり、なかなか口が動かない。

 

「それでも……アクアくんは聞きたい?」

「あかねが根拠もなく、人を貶めるようなことを考えるのはありえない。だからどれだけ世間的に最低なことを考えたとしても、俺はそれを否定しない」

 

不安を表に出すようなあかねの声に、アクアは自分の考えを口にする。

あかねの推理力はこれまで自分たちの親子関係だったり、前世関連に気付いたりと普通ではない。

そんな彼女が考えるならば、それにはそれなりの理由があるということだ。

アクアの言葉に勇気をもらったあかねは、重い口を開く。

 

「アクアくんはどうして上原清十郎さん達が姫川さんが生まれて少ししてから無理心中で死んじゃったと思う?姫川さんを残して」

「……上原清十郎の浮気が原因って考えていたが、よく考えると時系列がおかしいよな」

 

アクアもさっき思い至った話だ。

仮にバレていなかっただけだとしても、以前の浮気は許容されていた。

それが我慢できなくなった理由が何かあるはずだとアクアも考えていた。

 

「私たちはこれまで無理心中って話を聞いて、上原清十郎さんの浮気が原因だって思い込んでたけど……逆の可能性があるんじゃないかな」

「……姫川愛梨が浮気したって話か?」

「うん、それなら愛妻家って話とも辻褄が合うよね」

 

一切の女遊びを止めるくらいに好きな相手が浮気をしていたと知ったならば、かなりの衝撃が襲う事だろう。

 

「確かにこれまで思い付きはしなかったが、その可能性はゼロじゃないと思う。ただ仮にそうだとして、正直二人が亡くなった理由はあまり映画に関係ないんじゃないか?」

 

正直これだけならそこまで最低とは思わない。

いくら元々清十郎が浮気気質だったからと言って、完全に決め付けするのは良くないとアクアも思うくらいである。

ただ今回の映画で大切なのは、二人が亡くなってしまったと言うポイントだ。

アクア達は警察ではない。だからそれにあまり首を突っ込むべきではないのでは?という考えである。

先程あかねも同じことを言っていたため、その意見は共通だと思っていたため、あえて言及したのは意外だった。

 

「……そうだね。ただ、もしその件にカミキさんが関わってあるとしたら?」

「は?……いや、どう関わるって言うんだ」

「アクアくん……不倫には相手がいるんだよ」

 

ここでようやくあかねが言いたいことが分かった。

姫川愛梨の不倫相手がヒカルだったのではないか?というのが彼女の伝えたい話だったということだろう。

努めて冷静にアクアはあかねに意図を確認する。

 

「……あかねが考えたって事は何か理由があるんだろ?」

「前から不思議に思ってた事はない?アイさんがどうして姫川さんにあんなに甘いんだろうって。アクアくんやルビーちゃんに近いくらいだよね」

「そうだな、姫川本人も理由が分からずに戸惑ってたくらいだし」

 

ここはアクアも気になっていたポイントだった。

ワークショップではヒカルがアイに演技を教えていた。上原夫妻との繋がりなど、精々ヒカルを通じた程度のものだろう。

それなのに当時愛情をよく知らなかったアイが、今大輝をあそこまで可愛がる理由、それがアクアにはまるで分からなかった。

 

「もし……本当は姫川さんのお父さんがヒカルさんだったとしたら?一緒にいたいと思っていた相手の子供だとしたらアイさんの行動に説明がつくと思わない?」

「あかねは……ただの浮気じゃなくて托卵の可能性を考えてるのか」

「……言ったよね、最低なこと考えてるって」

 

悲しそうなあかねに対してアクアはその話を聞いた時、思ったより冷静だった。

確かにあかねの考えならば、不可解だった部分が埋まってしまう。

そして大輝本人も不思議がっていたどうしてヒカルが大輝の世話を請け負っているのかも説得力が出てくる。

感情的に否定する事も出来るが、アクアには、あかねの考えは綺麗に筋が通って見えた。

 

「もしそうだとしたら姫川が生まれた時、ヒカルさんの年齢は11歳か。……芸能界の闇ってやつにぴったりだな」

 

児童の性的搾取。これほど芸能界の闇なんて言葉が似合う話もそうないだろう。

そしてこれを証明する方法はそんなに難しいことではない。

ただ……これが真実だとしたら問題がある。

 

「もしこれが本当だとしたら……この話は世に出せない」

 

アクアは死者の尊厳を貶めるような事をしたいわけじゃない。

そして姫川大輝という役者にも少なからず影響が出る可能性がある。

 

「アクアくんはアイさんとカミキさんの二人に真実を見せる映画を作りたいんだよね。……もしこれが本当ならどうするの?」

 

そう、これまでは特に世に出しても問題がないから一般公開も視野に入れていたのだ。

これが真実ならば、一般公開は事実上不可能である。

 

「裏取りが必要だ。もしこれが杞憂ならなんの問題もないからな」

「そう……だね」

 

あかねも自分が酷い想像をしただけであって欲しいと願う。

そしてアクアにとってこの確認はそう難しいことではない。大輝の髪の毛1本あれば可能な事だった。

 

「俺と姫川でDNA鑑定をする。もし赤の他人なら杞憂だ。幸い機会はもうすぐあるし」

 

姫川と会う機会は幸いそう遠くない。

年始の特番、その撮影がもうすぐ行われるのだが、そこでアクアは大輝と共演が決まっていた。

DNA鑑定のために髪の毛くらいなら採取は難しくない。

 

「うーん出来れば合法的にやりたいところだよね」

「流石に姫川にこんな話できないだろ。裏でやるしかない」

 

アイやヒカルに確認するという手がある。

だが違った場合、ヒカルとしてはショックだろうし、アクアがこっそり確認するのが一番誰も傷つかない。

 

「分かった。でもアクアくんだけじゃなくて私も協力するよ。私の発言が原因だし、あの番組私たちも出るからね」

「……ありがとう。ただこれは、他のメンバーには内緒にしていてくれ」

「うん、流石に憶測だけで広められないもんね」

 

こうしてアクアとあかねは、最悪の可能性を否定するための調査に乗り出すことになるのだった。

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