暖かくなり始めた3月。季節は春を迎えている。
いよいよ来週から『15年の嘘』の撮影がスタートするという状況で、学校でも一つの区切りを迎えていた。
「かな先輩、あかねちゃん!卒業おめでとー!!」
元気な声と共にルビーは卒業証書を持っている二人に近付いて声を掛ける。その後ろにはフリルとみなみの姿もあり、B小町Rのメンバーが勢揃いしていた。
先程までも二人だけにカメラを向けていた報道陣は、ルビー達も含め五人にフォーカスを当て、会話を聞き逃さないようにと注意を払い始める。
普通の学校ならばともかく、ここ陽東高校は芸能科もある知名度の高い学校だ。
更に今年は国民的アイドルB小町Rの有馬かな、黒川あかねの二人が卒業をするという事で各局カメラを持ち寄っており、例年にない空気感を漂わせている。
「あら、ルビーは泣いてくれないのかしら?」
かなも別に泣いて欲しいわけではないのだが、あまりにも軽いルビーに対して揶揄い混じりに問いかける。
するとルビーは少し考える素振りを見せた後、笑顔でその質問に回答した。
「ちょこっとは寂しいけど……同じアイドルグループ続けるんだからそんなにだよね。これからも何度も会うわけだし」
「アンタねぇ。ほんっと昔から年上に対する敬意ってものがないわよね」
「かな先輩だけだから大丈夫!」
「あとで覚えときなさいよ?」
全然寂しがる事がなさそうなルビーにかなは呆れたような声を出す。
とはいえもうすぐ学校に通っていた時よりも会う頻度は増える事になるため、かなも気持ちは分かる。
散々な事を言われたかなは、後でルビーに仕置きしてやろうと心に決める。
「あかね、卒業おめでとう。声に自信を乗せての答辞良かった。あかねらしさを残しつつも学校の代表としての威厳を感じさせたよね」
「ほんま流石やなぁって感じやったよね。あれ聞いたら大学行かへんのやっぱり勿体ないと思うけど、女優業とアイドル業の事考えたらそうも言ってられんもんなぁ」
「二人ともありがとう。大学は私もかなり悩んだかなぁ。でもこれ以上ステップアップしようと思ったらアイドルと女優だけでも大変だから専念したいなって」
ルビーとかなが戯れている中、フリルとみなみはあかねに声を掛ける。
かなはそれなりに早い段階で高卒でいる覚悟を決めていたが、あかねはかなり悩んでいた。
彼女は偏差値78というとても芸能人として活動しているとは思えない賢さを誇る。
この情報はかなり芸能界でも有名であり、クイズ番組なども呼ばれると上位どころか優勝する事もある知識の豊富さも相まって、今後あかねが進路をどうするのかという情報は芸能界でも注目されていた。
実のところ大学に入らない選択をした理由は仕事だけではないのだが、そこはこの場で話す物でもない。
「……なんで俺に取材が多いんだ」
「あ、お疲れ~おにいちゃん」
五人が和気あいあいと話をしていると、別の報道陣に捕まっていたアクアが、疲れた表情を浮かべながら苺プロメンバーに合流する。
卒業式では生徒会長や先生から押し付けられた送辞を行い、その分余計に注目が集まっていたのも大きい。
二人が卒業する感想やアクアの行った送辞に込めた想い、自分自身の学校生活についての話といった常識的なものから、かなとあかねに対して責任は取るのですか?といった攻めたものまで幅広く問われていた。
そんなアクアだが、流石にかなとあかねの二人と合流したということで真っ先に言うべき言葉を口にする。
「かな、あかね。卒業おめでとう」
「あら、随分素直じゃない。ありがと」
「ありがとうアクアくん」
分かりきっていた内容でも二人とも嬉しそうに微笑む。
そんな二人の制服姿もこれで見納めかと思うとアクアとしても少し寂しい気持ちがあった。
二年間は同じ学校で過ごしていた事もあり、すっかりアクアとしても二人のこの姿は馴染んでいる。
可愛い事で有名な制服だけあって改めて見ても整った容姿によくマッチしていた。
「……アクアくんが望むなら卒業しても着てもいいよ?」
「何も言ってないだろ。カメラ回ってんのに誤解を招く事を言うなっつの」
アクアの少し寂しそうな気配を敏感に感じ取ったあかねによって投げられた言葉。
内心では悪くないかもしれないと思ってしまったアクアだが、この場で言われるのは少し色々と印象が悪いため、弁解する。
ただあかねの言葉に、かなはあえて悪ノリした。
「流石ね女好きのスケ三」
「冤罪過ぎる。というかスケコマシ三太夫を省略したらもうなんの話か分かんねぇだろ……」
「今の私はアンタに話してるんだから、アクアに伝わればいいのよ」
アクアを揶揄うのが心底楽しいと誰もが分かる太陽のような笑顔でそんな事を言うかなに、カメラも注目をする。
最近以前よりもアクアに対して素直になったような気がすると評判の彼女。
何かあったのではないか?実は奇跡的に告白できたのでは?という邪推がネットではされている。
芸能界の第一線で活躍している皆の普段の素顔。
ほとんど普段番組などで見せているのと変わらないが、それより少しだけ年相応な彼らの素顔は午後のニュースを大きく賑わせることになる。
その夜、黒川•有馬両家による主催で卒業祝いの簡易的なパーティーが行われる。
これにはアクア、ルビー、フリル、みなみも誘われており、それなりに賑やかな様相となっていた。
飲み物を取りに行ったアクアの許へ壮年の男がやってきて声を掛ける。
「アクアくん、飲んでいるかね」
「その言い方だとお酒に聞こえますよ、警視総監」
「あはは、これは失敬。君の雰囲気は大人のそれが混じっていると昔から思っているからつい、ね」
アクアに声を掛けた彼の名前は黒川理、あかねの父親だ。
職業は警察官。
アクアが初めて会った頃は、まだ警視だったため、『警視を軽視するな』というとんでもない親父ギャグをアクアに披露してあかねを恥ずかしがらせていた彼だが、出世に出世を重ね、現在の階級は警視総監。
警視庁のトップに君臨するエリート中のエリートである。
今日も多忙な中、流石に娘の祝いの席だけは外せないと上手く予定を組んで、代役を用意してやってきていた。
普段は温厚な人だが、あのあかねにプロファイリングの基礎を教えた人物だけあって、今の指摘をするように鋭い洞察力も持っている人物でもある。
「いやはや職場の皆も羨ましがっていたよ。あかねの父なだけでなくアクアくんと会えるなんて何を持ち得ないんだってね」
「……なんだか想像していたより楽しそうな職場ですね」
「犯罪捜査中はともかく、仕事以外はただの人だからね。君のようなスター性のある人間に興味があるのは当然だよ」
ある程度そんな雑談をしたところで理は本題を切り出した。
「娘の引っ越しだけど、今週の土曜日で良かったよね」
「はい、こちらの引越しは完了していますし、予定も空けてあるので手伝いもする予定です」
「準備がいいね、流石はもう仕事をバリバリこなしているだけはある。……とはいえまだあかねは若い。節度ある付き合いを頼むよ」
理は柔らかい笑みをしながらも目はじっとアクアの方を貫くように見ている。
そんな彼にアクアは力強く頷いた。
何故アクアと理がこのような会話をしているのかといえば、星野家が先日セキュリティーの高い一軒家を購入して引っ越しており、そちらにB小町Rのメンバーが住むことになっているからだった。
その原因はバレンタインに起きた吾郎さりな騒動から少しして2月も終わりを迎える頃まで遡る。
アクアは交際報告、そして将来的には結婚こそ出来ないが内縁関係でいさせて欲しいという話を各家の保護者にするため、交際相手達の家を順番に訪れていた。
アクアと交際関係にある五人の保護者……とは言ってもルビーの場合は自分の保護者でもあるアイで、既に許可も出ているため実質四組だが、彼らには事前に彼女達から連絡して時間を作ってもらい、娘さんをくださいという定番の挨拶をして回っていた。
―――――――
最初にアクアが訪問したのは黒川家。この順序はルビー以外の付き合い始めた順番で決まっている。
事前に連絡を取って忙しい中で時間を作って貰ったことに感謝をしてから、アクアはタイミングを見て本題を切り出した。
アクア達のそれなりに複雑な交際事情を一通り説明した後、アクアは自分の気持ちが本気であると伝えるように心を込めてお願いをする。
『五人と同時に交際している男に娘を預けたくない気持ちがあるとは思います。それでも許してもらえないでしょうか。他の誰と結ばれるよりもあかねを幸せにします』
アクアの言葉に少しだけ考えた様子を見せたのはあかねの父、黒川理だ。
彼は父親としてあかねの今だけを考えるのではなく、今後娘の長い人生においてこの選択が本当に良いのかという観点で真剣に判断し、そして答えを出した。
『むしろテレビであれだけ一緒にいて、ほとんど公認カップルのような扱いから捨てようものなら許せないところだったよ。反対ならとっくにキープ状態の時にしているさ』
あれを許している時点で娘の選択に反対する気はないと理は宣言する。
実際は今も少し悩みはしたのだが、彼と一緒に過ごして娘がいい方にどんどんと変わっているのは、これまでの長い付き合いで把握している。
娘が本気でアクアと一緒にいたいと思っているのも事実であるし、少なくとも交際から一年その異常ともいえる状態で上手くやって来られているのだからその覚悟を尊重しようと考えたわけだ。
『法律上問題があるわけではないし、犯罪でもない。籍を入れられないというのは、思うところがないと言えば嘘になるが、これまで見てきた君ならあかねを幸せにしてくれると思っている』
『少し複雑ではあるけれど、アクアくんなら言葉通りあかねを幸せにしてくれると思うから。娘をよろしくね』
これまで娘を幸せにし続けてきた男の言葉だからこそ、多少ある言いたいことがあっても黒川家の父母は納得できた。
黒川家の両親から了承を得たアクアはほっと息を吐く。あかねは過去両親も見たことがない程に幸せそうな笑みを浮かべていた。
『はい……俺の身に代えても』
『ありがとうお父さん、お母さん!私、皆と幸せになるね』
そして改めて二人は今後も幸せになることをあかねの両親に誓いあい、最初の挨拶は問題なく終了した。
その更に翌日。今度は不知火家を訪れたアクア。
連日になっているのは偶然で、アクアもこの話し合いが終わった後はすぐに仕事とハードなスケジュールになっている。
そんなアクアを迎えたのは不知火父と何故か不知火ころもであった。
以前会った時よりも随分と大人びた彼女は、アイドル時代と変わらず整った顔立ちをしている。
フリルは綺麗系といった顔立ちに対して可愛い系の顔立ちな彼女が年齢より幼く見えるのもあるかもしれない。
アクアは予想外の人物に少し困惑しながらも、世間話などをしてから黒川家の時と同じように誠意を込めて挨拶を行った。
アクアの言葉を聞いたフリルの父は高笑いをしながら口を開く。
『あっはっは。五股とか世間で言われてたのが真実だったとは!流石は我が娘!流石は我が娘が選んだ男!面白い男を捕まえたではないか!!』
まさかの最初から肯定するような言葉にアクアは少し困惑する。
ただころも、フリルと二人の芸能人を輩出した不知火家では、多少芸能界ではそういった話があることも理解していた。
『フリルは少し変わったところがある娘だが、小学生の時から君のことをロックオンしていたようだしな。良い!欲するものを得てこそ我らが不知火よ』
『あ、別にウチの家にそんな歴史がある訳じゃないから気にしないでいいよマリン。お父さんがふざけているだけ』
『知ってる。マジで親子だよな』
フリルのコメディエンヌな性質は間違いなくこの父親からの遺伝だろう。
何度か会った中でアクアは確信していた。
『まさかフリルが私より先に結婚するなんて……。配信者も意外と制約多いから仕方がない?』
『結婚じゃないよ姉さん、事実婚。籍は一人しか入れられないからね。毎年バツ付きになるでも私はいいんだけど』
『籍など一つの体裁だけのものだ。法が阻むからと気にする必要などない』
既に話は終わったと言いたげな空気を醸し出す不知火家の面々を見ながらアクアはボソリと呟いた。
『……これでいいのか?ここまであっさりしていると俺が不安になるな』
『気にしないでいいよマリン。私たちがやるべきは幸せ家族計画を考えるだけ』
『気が早すぎだろ』
不知火家での挨拶は、アクアの予想よりずっと軽くあっさりと完了することになる。
三家目になった寿家を訪れたのはその翌週。
一番普通の家庭という言葉が近い寿家では、流石にアクアの交際事情を聞いた直後、難色を示していた。
寿父は渋い顔をしながら口を開く。
『むっ……五人と交際!?流石にそれはどうなんだ。アクア君が仕事もかなり頑張っているし人間として基本的に出来た子なのは知っているが……』
付き合いの長いアクアだからこれくらいで済んでいるが、もし知らない男をみなみが連れてきて、男が同じ事を言っていたら、寿父は怒髪天を衝いていただろう。
比較的冷静に対応できているのは、それまで積み重ねた信頼のおかげで合った。
アクアも娘を持つ父親にはなったことがないが、将来愛瑠が似たようなこと言ってきたら、間違いなく反対するため、みなみの父が言いたいことはよくわかる。
これまでの親達がむしろ比較的あっさりと承認してくれた方が異質だった。
『お願い!うちアクアさんと一緒にいたいんよ』
そんな寿家の大黒柱の言葉に、みなみは目を潤ませながら父にお願いをする。
娘がずっとアクアに恋焦がれていた事を知っている父は、そんな娘の表情にうっとたじろぐ様子を見せていた。
『みなみの覚悟が凄いわね……。まさかお母さんがあの時手に入れた観覧権がここまで繋がるなんて思わなかったわ』
みなみの母は、アクアにずっと憧れていたみなみを知っているので見守る姿勢でいる。
彼女は、自分がそもそもアクアの出る番組観覧に連れて行ったことでルビーと出会い、今日の挨拶へと繋がっているという不思議な繋がりを一つの運命として受け入れていた。
みなみの必死な言葉を後押しに、自分ももっと納得してもらえるように行動しなくてはと、アクアは自分の考えを嘘偽りなく口にする。
『確かに誠実とは言えないです。みなみを一番に考えるとも言えません。でも、他のどんな男よりみなみも大切にします。お願いします』
頭を下げるアクアを見て、再び苦い顔をした寿父だが、これまでのアクアの行いを思い出す。
自分が忙しい中でも仕事のフォローを怠らない、自分より周りが大切というスタンスを崩さないアクアだからこそ、全員を幸せにしようという考えになったのだろうと当たりをつける。
それからふぅと一息吐いてからゆっくりと頷き、重い口を開いた。
『男親としては声を大にしてまだまだ反対したいところなんだが、君が真摯に娘のことを考えてくれていたことは知っている。……絶対に悲しませるなよ。その時は意地でも返させてもらおう』
『ありがとうございます。今後行動で示していきます』
『あっありがとうなお父さん!大好き!』
苦渋の決断なのが表情からもよく分かるが、娘の想いの強さも含めて諦め交じりに承認してくれた寿父。
そんな相手にアクアは感謝と今後の誓いを口にした。
そしてみなみの家に行った翌日。
最後の訪問先である有馬家をアクアは訪ねた。
アクアも覚悟こそ当初のままだが、流石に少し精神的に鍛えられて動揺は少なくなっていた。
その分、かなの方が本当に大丈夫だろうか、自分だけ認められなかったらどうしようとビクビクしながら話の展開を待つ。
アクアの言葉を聞いた有馬母は、熟考してからアクアに問い掛ける。
『娘は私が押し付けてしまった女優の夢を、自分のモノにして追い掛けているわ……アクアさん、どれだけ忙しくなろうとも、他の子だけじゃなく、かなも幸せに出来るって誓えますか?』
どんな答えが返ってくるのか理解しつつも有馬母はアクアに尋ねる。
とうの昔に行動で、かながどれだけ大切かを示されている彼女としては、アクアと付き合うのであれば娘は幸せになれると確信していた。
自分の元夫のように別の相手がいても、かなの事を蔑ろにする事がないことも、これまでの彼を通じて理解しており、そこまでその部分を心配はしていない。
『はい、確かに世間的に見なくても、私は浮気性というか気が多い人と思います。それでも、俺はかなを幸せにする。してみせる』
『あーくん……カッコいい』
有馬母の予想通り、いやそれ以上の決意を持って答えるアクア。
そんなアクアの隣に座っていたかなは、顔を真っ赤にして惚けた様子を見せる。
最近それなりに見られるデレた様子だが、間近で見たのは母も初めてだ。むしろその姿に少し不安になる。
『チョロすぎないかしら私の娘。……こほん、私はこの子を幸せに出来ていなかったと思います。その分まで幸せにしてあげてください』
有馬母は、今でこそかなと普通の親子を出来ているが、ずっと彼女に対して負い目があった。
これは生涯に渡って消えることはないだろう。
娘と一緒に暮らす生活はとても幸せだったが、娘が幸せを求めるのであれば許可を出すべきだという感覚を持っている。
『そんなことないわよ』
『かな?』
かなは幸せに出来なかったという母の言葉を否定する。
かなとしても確かに母がヒステリーを起こし始めていた頃は辛かった。
『私は自分の人生を犠牲にしてアンタを産んだのに』
当時落ちぶれ始めた小学生のかなに掛けられた言葉。
『転生探偵乱歩』なんていう大当たりを引いて機嫌こそ持ち直していたが、その直前は酷いものだった。
対抗となるアクアやあかねが勢力を伸ばしていたのもあって有馬かなは完全にオワコンなんて言われていた時期、有馬母はかなにネグレクトと言ってもいいくらいには当たっていた。
それでもかなは、母によくやったわねと言われたかった。どこにでもいる普通の親子のように愛して欲しかった。
『ママはアイドルの私も、役者の私も、バラエティーに出てる私も追いかけてくれて褒めてくれているのを知っているわ。だから私の夢は叶ってる……私は十分幸せだったわ』
太陽にも例えられる笑みを見せるかなを見て有馬母は、その顔に見惚れるように固まる。
大きく育った娘の姿に成長を感じながら微笑んで、それからアクアに再度念を押すようにお願いする。
『アクアさん……この子のこと、よろしくお願いします』
『はい、絶対に大切にします』
そんな彼女の願いに、アクアは役者として培った表現力で、あくまで演技なしの決意をのせて答えた。
―――――――
こうして四家の保護者から交際とその先の許可を取ることに成功させたアクアだが、この話には続きがある。
挨拶が行われた後も、各家とアクアはメッセージアプリなどを通じて話し合いを重ね、一度全員で生活してみて問題が出ないのかを見る一年の試験期間が設けられることとなったのだ。
全家アクアとの付き合いを承認こそしたものの、果たしてこのような家族形態が上手くいくのか未知数だ。
感触を確かめておくのは大切なことである。
その結果が予定よりかなり早い段階で同棲をさせようとなるあたり、親達もこの子供達を育ててきただけあって少し変わっているのかもしれない。
ちなみに今回住む家はあくまで仮であり、この生活で問題ない、間違いなくやっていけるとなったところで、改めて自分たちの家を建てるという流れが予定されている。
これは数名から自分たちがずっと住む家ならリクエストしたいところがあるとの声を聞いているからだとか。
『私でしょ?もしかしたらヒカルでしょ?アクア達でしょ?それに皆が子供産んだらその分更にお部屋いるしすっごい大豪邸になりそうだね!』
賑やかな家族が欲しいと願っていたアイなどさっさとアクア達が一緒に住んで欲しいと思っていたのでウキウキで準備を進めている。
新しい家の設計図とやらを自作している姿をアクアは時折家で見かけているくらいに。
「引っ越しのお話してるわね。かな、同棲してるからってハメ外しちゃダメよ?」
「しないから!?私のことなんだと思ってんのよ」
少し離れた場所からはそんな声も聞こえてくる。
それからの卒業パーティーは引っ越し後の話がメインで進むことになる。
大きく生活が変わる節目の日。
そして始まる『15年の嘘』の撮影。
アクアの世界は大きく動き出そうとしていた。