【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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精算

「よっアクア、ドライブ行こうぜ」

「野球に誘う中島君かよ」

 

新生星野家を訪ねてきた大輝にアクアは思わずツッコミを入れる。

確かに本読みの時に新しい住所は教えていたのだが、仮にもスターなはずの大輝がまさかこんな軽い調子で訪ねてくるとは思っておらず、突然の来訪にアクアは驚かされていた。

 

「あっ!アクア君おはよー」

 

流石に外で放置もできないかと玄関の扉を開けて外を見れば、左ハンドルな車が路肩に停められており、助手席に乗っているゆらが出てきたアクアに向けて小さく手を振っている。

大輝とゆらがそれなりにプライベートで親交があると聞いていたアクアは、この二人が一緒にいる事には納得しつつも、なんでアクアを誘う流れになったのかが分からず困惑していた。

そんなアクアの思考を読んだのか大輝は口を開く。

 

「ゆらさんに車買ったって自慢したら乗せろって言われたんだよ。流石に二人だとバレた時面倒だろ?付き合え」

「二人ってサシ飲みとかしてるだろ?今更そんなことで騒がれるか?」

 

アクアの認識だと大輝とゆらは二人だけで飲みなどにも行く程度には仲がいい。

そのこと自体は共演も多く違和感はないのだが、これまで週刊誌などで騒ぎ立てられているのも見たことがないため、特に問題ない組み合わせだとアクアは思っていた。

そんなアクアの疑問に対してゆらが口を開く。

 

「嘘だよ、大輝君が誰でもいいから新車に乗せたかっただけ。昨日納車されたんだって」

「なるほどな、それなら納得」

 

確かにゆらは酒を飲んでいる時は絡みがちだが、今回は大輝が自分から声を掛けた方がイメージ通りだとアクアは彼女の言い分が正しいんだろうなと察する。

実際、大輝はゆらの言葉を聞いて微妙な表情を浮かべながら自白する。

 

「おい、バラすなよ。珍しくアクアが空いてるって聞いてこのメンバーが空いてるなんて珍しいしもうすぐ俺らの撮影も始まる。あとは不知火でも誘えば懇親会としてもちょうどいいかと思ってだな」

「言い訳なげぇよ。……悪いが今日は先約が」

 

もしアクアになんの予定もなければ、大輝の誘いに乗って適当にドライブしてもいいと思っていたが、今日はとある予定が入っている。

アクアが否定しようとしたその時、アクアの後ろに人の気配が増えた。

 

「やほー姫ちゃん。ダメだよ、マリンは私とデートする約束があるから」

「は?不知火?……なんでアクアの家から出てきたんだ」

 

ひょこっとアクアの後ろから顔を出したフリルは、これから出掛けますと言いたげにバチバチに服装を決めていた。

ただ、まだ朝早いこの時間にフリルが星野家にいること自体がおかしいと大輝は首を傾げる。

 

「最近忙しいからね。少しでも長くいたいってマリンに言ったらお家デートでオッケー貰えた」

「……なるほどな、まぁ深くは聞かないが今度教えろよ」

「気が向いたらな」

 

大輝はもしかしたらアクアとフリルが付き合っているのかもしれないという発想に至ったが、ここでは言及せずに一旦飲み込む。

実際にはフリルとも付き合っている上、同じ家に住んでいるのでニアピンと言ったところか。

アクアとしては大輝やゆらに隠す必要はないと思ってはいるが、今言う必要はないだろうということでフリルの発言に乗っておく。

 

「不知火も一緒にどうだ?どのみち誘うつもりだったんだが、出掛けるにしても普段ドライブなんてやらないだろうから新鮮だろ」

 

流石に先約があるなら難しいよなと大輝は残念に思いながらもダメ元でフリルの方を説得しようと試みる。

大輝の言葉にフリルは少し悩んだ様子を見せた後、アクアの顔を見てから納得したように頷いて返事をする。

 

「うーん……まぁいいよ?」

「いいのかよ!?言ってみるもんだな」

 

大輝としてはまさかOKが出るとは思わず自分から聞いたのに少し慌てながら声を上げる。

フリルの返事はアクアとしても予想外で、アクアは思わずフリルに確認した。

 

「いいのか?ここ最近忙しかったから出掛けられてなかったろ」

「私はマリンと一緒なら割とどこでもいいよ。それに……マリンも姫ちゃんと出掛けたいでしょ?顔に書いてあるし」

「……なんか俺の思考見透かされてるのか?」

「あかねほどじゃないけど、まぁこのくらいなら分かるよ。マリン私生活では自分が思ってるより分かりやすいから」

 

フリルがこの選択をしたのは、同じ家に住んでいるから余裕があるのも大きな理由の一つではあるのだが、アクアが結構大輝と出掛けたい気がすると直感的に感じたのが一番の理由だ。

そんな彼女の気遣いにアクアは苦笑する。ただ内心ではフリルに感謝をしていた。

何処かで時間を使って埋め合わせはしようと心に決める。

結局本日のアクアとフリルのデートは、大輝の車に乗って四人でドライブというデートらしくないものになることになった。

 

 

アクア達が車に乗り込んだところで、大輝は楽しそうに運転を始める。

席順としては大輝、ゆらが前で後ろはアクアとフリルといった並びだ。

 

「そういやフリルって姫川のこといつから姫ちゃんって呼ぶようになったんだ?」

「姫ちゃんとは最近ドラマで共演したからね。……嫉妬してくれていいよ?」

「いや、それくらいじゃしねぇっつの」

 

アクアは先程車に乗る前のフリルが、大輝の事を姫ちゃんと呼んでいたのを思い出して尋ねると、いつもの真顔から楽しそうな表情に変わったフリル。

そんな二人のやり取りを見たゆらは、ケラケラと楽しそうに笑いながら運転している大輝に話しかける。

 

「いやー若いっていいね。大輝君もそろそろいい相手見つかった?」

「俺は癒しとして女の人を求めてるのであって別に付き合いたいとかはねえな……今んとこ」

「さいてーだね〜。恋愛は多分若いうちにしといた方がいいよ?私も未だに恋愛関係のドラマだと少しキャラに迷うし」

 

ケラケラと笑うゆら。まだ25歳と若い彼女だが、一般的な人たちに比べると恋愛が遅く初恋すらまだ。

むしろ弟妹のように思っていたアクアやフリルがこうして青春している姿は少し先を越されたようで複雑な気持ちもあったりする。

そんなゆらに、なんとかフリルの追求を躱したアクアが話題をパスする。

 

「仲いいと言えばゆらと姫川もいいだろ」

「まぁね~私のファーストキスをあげた相手でもあるし揶揄い甲斐があって楽しいからね」

「げほっげほっ……ゆらさん運転中に動揺させないでくれ」

 

相変わらず大輝を揶揄うのが楽しいらしいゆらはコロコロと楽しそうな笑みを見せる。

そんな笑顔な彼女を見て、アクアは隣のフリルに話しかける。

 

「実はこの二人っていい感じなのか」

「マリン、その聞き方少しおじさんっぽいよ。多分脈はあるんじゃないかな?二人が自覚してるかは知らないけど」

「……久しぶりに言われたなそれ、結構精神に来るからやめろ」

 

アクアとしては前世の影響か、これまで苦労してきた大輝にはいい相手を見つけて欲しいなんて親戚のおじさんのような思考があったりする。

それをフリルに指摘され、アクアはこっそりショックを受けるのだった。

 

 

ある程度車で移動した距離が伸びてきた頃。

恋愛トークも程々に、アクアは一つ大輝に気になった事を質問する事にした。

 

「姫川、この車高いやつだろ?」

「CM3本分」

 

アクアが先程から少し気になっていた車の値段を遠回しに尋ねると、大輝はざっくりどのくらい掛かったかを仕事換算で口にする。

その口調には自信が多分に含まれており、運転する大輝の表情は誇らしげであった。

 

「だから自慢したかったんだ……」

 

ゆらは仕方がないなぁと言いたげな目で隣の大輝を見る。

こういう子供っぽいところがゆらは嫌いではなかった。

 

「マリンもそのうちいい感じの車買って乗せてね」

「別に高い車だからっていいものでもないけどな。家庭によって合う車は違うし、よく行く行き先によっても変わってくる」

「それもそっか」

 

いやとは言わないがこういう車は乗れる人数が限られているので、アクア達の家庭事情には合わない。

おそらく家族用のワンボックスのようなあまり見た目を重視していないタイプの車になるだろうなとアクアは考えながら返事をする。

そんな自分の言葉で、アクアはここに来て大切なことを確認していない事に気が付いた。

 

「そういえば……今回のドライブ、目的地どこなんだ?」

「正直決めてねぇ。……でも折角だし海とかどうだ」

 

大輝も誰か乗せて新車を乗り回したいだけであり、別に目的などないとばかりにきっぱり口にする。

軽い調子でそんな事を口にした大輝にアクアは呆れた視線を向けた。

ただ同行者たちはその一言にノリノリらしい。

 

「海!いいね~ゴーゴー大輝君」

「海ね、そういえばプライベートでは当分行ってないかも。姫ちゃんがんば」

「まぁ二人がいいならいいか。海でいいんじゃないか?」

 

ゆらとフリルは二人揃って楽しそうに声を上げる。

他のメンバーが行きたいなら特にアクアは否定する必要もないかとアクアも肯定の意思を口にする。

 

「じゃあ逗子まで行って海でも拝むか。……ちんたら走ってても仕方がねぇ。掴まってろ、ちと飛ばすぜ」

 

同行者達から同意を得られた事で目的地を設定した大輝は、気分が良くなりアクセルを踏み込んで速度を出し始める。

流石に高い車なだけあって、ぐんぐんと車は加速していった。

 

 

 

「……」

 

壊れた新車を悲しい目で見る大輝。

加速してしばらくは順調な運転だったのだが、目的地も後少しというところで大輝がハンドル操作を誤った結果、電柱に向かって大輝の車が思い切り衝突。車は破損して廃車となって今に至る。

まだ人を巻き込まなくて良かったというべきだろう。

アクア達も誰一人として怪我らしい怪我をしていないのも不幸中の幸いか。

フリルは事故現場を一通り見回して少し考える仕草をした後、手荷物を持って口を開く。

 

「これニュースになるやつかな。とりあえず私達だけでも逃げる?まだデート出来るよ」

「薄情が過ぎる。物損事故だからちゃんと警察呼べば大丈夫だろ。対人だったら明日のニュースだったな」

 

結構酷いことを真顔で口にするフリルに対して、アクアはツッコミながら今回の事故なら問題ないだろうと口にする。

他に全くネタがなければ取り上げられる可能性もなくはないが、今回の場合はまず問題ないだろうというのがアクアの見解だった。

 

「……」

 

横でそんな話をしている年少組の言葉にも反応を示さず、事故のショックで無言の大輝。

その辛そうな後ろ姿に居た堪れなくなってきたゆらは、彼の傍に行って声を掛ける。

 

「ど、どんまい大輝くん。……ほらお姉さんも一緒に謝ってあげるから元気出して。とりあえず警察に連絡もしたし、ね?立ち直ろう?」

「俺もう車運転するのやめるわ、怖い」

「そ、そんなこと言わないでさ!また新しい車買ったら乗せて!」

 

哀愁漂う大輝の背中をぽんぽんと叩きながら励ますゆらの姿は、確かに本人が言うようにお姉さんしていた。

 

 

連れていかれた車、警察への処理も終わり解放されたアクア達は、残りの距離を徒歩で移動して海までやってきた。

事故した場所が目的地の近くだったのが幸いだろう。

 

「いやーこうして海を見るとさわやかな気分になるよ。心が洗われない?」

「俺の車……」

「ダメだ、全然効果ないかも」

 

大輝をどうにか励まそうとゆらも色々試しているが、完全に凹んでいる大輝には効果がなく焼け石に水と言った様子を見せている。

砂浜に体操座りをしている大輝の姿は、傍から見ればとても大スターには見えないだろう。

 

「まだ気にしてんのかよ」

「打たれ弱いね。マリンも大概だし流石兄弟」

「兄弟といえば……本当驚かされたよね、アクア君と大輝君が兄弟なんてさ」

 

フリルの言葉にゆらが反応する。

ゆらは『15年の嘘』の台本で明かされていた衝撃の事実について未だに実感が持てないでいた。

 

「俺も台本書いてる段階だと予想もしてなかったな。実際この部分はギリギリまで勘違いしてたワケだし」

「どうしてアクア君はあの台本で行こうって決めたの?結構センシティブな話だな〜と思ったけど」

 

彼女はどうしてもここが不思議だった。

あの映画はアイの人生を描写した映画だ。

正直な話をすれば上原夫妻はアイにとって物語を進めるピースでしかなく、真実を描く必要性をゆらはあまり感じられていなかった。

アクアの性格を考えれば、ここは明言せず濁した方が自然だと考えていたワケである。

 

「俺が頼んだんだよ」

「あっ復活した」

 

ゆらの疑問に対してアクアではなく、いつの間にか復活した大輝が返事をする。

兄として頼んだ側として自分が話すべきだと思っての行動だろう。

フリルの一言はスルーして大輝は言葉を続けた。

 

「アクアはこの真実を知った後も元の台本で通そうと考えていた。ただそれだと俺が前に進めないからな。俺は自分の手で親がやった事を精算しなきゃいけない……そういう事だよ」

 

先程まで情けなく凹んでいた大輝の姿はそこにはなく、覚悟を決めた男の表情をしていた。

そんな彼の姿にいつもと違う感情がゆらには小さく動く。

 

「男の子だね、大輝君」

 

ゆらは大輝の隣に移動してから彼の頭の上に手を置いて、ゆっくり動かし始めた。

そんな彼女に今度は大輝が困惑する。

 

「……なんで俺、今ゆらさんに撫でられてんの?」

「さあな、母性本能でもくすぐられたんじゃないか」

「流石兄弟、女の子のツボを刺激するのが上手い」

 

不思議そうにする男二人に、ボソリとフリルが小さく呟く。

その言葉は他の三人に届くことはなかった。

 

 

 

それからしばらく海を眺めながら雑談をして普段溜まった疲れを癒していたアクア達だが、そろそろ帰宅を考え始める時間になった。

ここに来てようやくアクアはある心配をし始める。

 

「にしてもこれどうやって帰るんだ?」

「タクシーでいいんじゃないかな」

「……確かに。俺も姫川に釣られて動揺してたか?」

 

ゆらの冷静な言葉にアクアはそれもそうかと納得する。

コスト的には高く付くだろうが、ここにいるメンバーは今更そのくらいの出費を気にするような人はいないだろう。

ただこの状況を作り出した元凶である大輝は、予想外の言葉を口にした。

 

「それなら迎えに来てくれって声は掛けてあるから安心しろ」

「は?いったい誰が」

 

大輝の返事にアクアが少し困惑した様子を見せる。

確かに先程何処かに電話をしている様子は見せていたが、盗み聞きするつもりもなく、それが迎えの連絡なのは気付いていなかった。

ただその言葉の意味をアクアはすぐに理解する事になる。

 

「やぁアクア、大輝」

 

アクアとお揃いの金色の髪が良く似合う俳優と言われたら納得する美男。

何処か陰のある気配はアクアとはまた違う魅力を引き出している。

聞き覚えのある声に海から視線を移したアクアは、その正体を確認してから動揺を露わにした。

 

「……マジか」

 

アクアと大輝の父、神木輝がそこにいた。

仕事帰りなのかスーツ姿はよく似合っており、茜色に染まった世界で存在感を存分に発揮している。

 

「ミキさんが来るのは予想外だったなぁ。これは父子感動の再会……でいいの?」

「予想外過ぎてマリンが珍しくショートしちゃってるね。うん、こういう姿もいい」

「いつの間にそのスマホ取り出したの……」

 

少なからず驚いているゆらと全く動揺を見せないマイペースなフリル。

パシャリとアクアの珍しい表情をコレクションするフリルにゆらはツッコミを入れる。

普段はこういうツッコミはかなやMEMちょの役割だが、このツッコミ不在の現場では

ゆらは臨機応変に立ち回らないと謎の決意を固めさせられていた。

 

「アクアのそういう表情はカメラ越しだとみる事もないから新鮮でいいね」

 

ヒカルもアクアの反応に満足したのか久方ぶりの再会に笑みを溢す。

混乱していたアクアだが、どうにか立ち直ってヒカルに気になっていた事を質問した。

 

「というかよく時間取れたな。ヒカルさんってかなり忙しかったろ」

「まぁ流石に息子たちがこのまま海に置き去りよりはいいだろう?それに……この後に鏑木さんから食事でもどうって声を掛けられててね。仕事はどのみち切り上げだったんだ」

 

普段は一人でなんとかしようとする大輝に頼られて、ヒカルは実のところ結構嬉しかったりする。

時間的には結構厳しかったのだが、鏑木に一言少し遅れるかもしれないと連絡をしてアクア達を迎えにやってきていた。

 

 

会話もそこそこにヒカルの車に乗った一行は、車内でヒカルも交えて会話をする。

 

「ゆらさんも久しぶりだね」

「ミキさんこそ元気そうだね!突然引退してからろくに連絡とってくれなかったし」

「悪いね。でも時々質問には答えていただろう?」

「まーそうだけど。でもアクア君とミキさんの事情を考えたら仕方がないよね」

 

まだ演技を始めた初期の頃にかなり世話になっていたゆらは、ヒカルに懐いていた。

その分会えなくなって寂しがってはいたが、事情を知った今となっては仕方がなかったと理解はしている。

彼に教わった演技の技術は今のゆらを支えており、彼女がトップクラスの女優になれた要因の一つだった。

 

「カミキさん、マリンにはお世話になっています。不知火フリルです。今後ともよろしくお願いします」

「アクアのガールフレンドの一人だよね。『鷹研ぎ』の演技、とてもよかったよ。アクアの演技をより深く引き出して比翼連理って感じで強い絆を感じられた」

 

ヒカルは基本的に星野家が出ている番組は時間を作って目を通すようにしている。

当然アレだけ話題になった『鷹研ぎ』も欠かさず見ており、次回作が決まったと聞いた時はスポンサーに立候補したくらいには気に入っていた。

改めてヒカルはここにいるメンバーを確認する。

この組み合わせを見てヒカルはどういう組み合わせなんだろうと少し考えた。

 

「うーん、この状況はアレかな?ダブルデートって奴かい?」

「違うからな!?アクアの奴はともかく俺とゆらさんはそういう感じじゃない」

 

アクアは実のところ恋愛周りは既にヒカルには話しているのでメインターゲットは大輝だろう。

見事に反応している大輝にヒカルは楽しそうに表情を変えている。

 

「前から少し思ってたけど、ヒカルさんってそこそこ親バカの気ありそうだな」

「あのアイさんが自分と似てるって評してたらしいけど、さもありなんだね」

 

アイの親バカは身内にはあまりにも有名な話だ。

なんなら今やTwitterなどでの暴走具合から世界中に知られている。

それと似ているというのだから多少親バカなのは自然だった。

 

「ミキさんってクールなイメージだったんだけどなぁ。よく考えたらアクア君や大輝君のお父さんだもんね」

「……複雑だなその言い方」

 

父であると知る前から憧れの人に似ていると言われてアクアは喜ぶべきなのか大輝も含めて少しポンコツな部分が似ていると言われていることに嘆くべきなのか、アクアは悩む。

ただヒカルが運転しながらも楽しそうな表情をしているのを見て、アクアはアイの願いを思い出す。

 

『彼が今も迷ってるなら、彼を救ってあげて欲しいんだ……私と一緒に』

 

元々この願いを叶えるために映画を作ろうと決めたアクアだが、色々あって既にそれに近い状況は叶えられているのかもしれないなと考え始めていた。

当初の予定では親子関係の暴露などはその段階で想定しておらず、ここまでアクアとヒカルの関係が大っぴらになる予定でもなかった。

ただ、今の状況の方がずっと不都合なく進んでいるとアクアは感じている。これも皆の協力あってこそだ。

 

「ヒカルさん」

「なんだいアクア」

「映画、楽しみにしててくれ」

「……勿論。アクアとルビーが僕とアイをどう演じるのか、本当に楽しみだよ」

 

もうすぐ『15年の嘘』の撮影は中盤を迎える。

ララライで起きた嘘と愛の物語、それをアクアは完璧に演じ切ろうと決意を新たにしたのだった。

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