入学式
桜が舞うこの季節。
とある学校の校門付近で一つの集団が目立っていた。
「可愛い!可愛いよ〜!!二人ともこっち向いて!」
「お姉ちゃんの方がトータルで見たら可愛いけどね」
「なんの対抗意識だよ。っと、こんな感じとかどう?アイのカメラにはいい画角で映ってると思う」
「アイお願いだから目立たないで!二人も決めポーズしないで」
あの大事件から2年が経った。
最近のアイは感覚を取り戻すためのトレーニングを続けている。
腕が一度動かせない時期が続いたことで、身体のバランスがズレ、アイとしては満足できるパフォーマンスが発揮できていない。
ドームライブを少なくとも超えるレベルの動きができないと復帰できないと自分でハードルを上げている面もあり、苦戦が続いていた。
普段はパフォーマンスの調整以外の時間は子供達の世話に自身の時間を惜しみなく費やしている。
幸いトラウマなどもなく、ファンに怯えることもなければ、刃物に怯えることもない。
アイなりにあの事件は受け止め切っているということらしい。
そんなアイにとっても今日は特別だった。
「ほらほら、次はこっち!『入学式』の横に二人並んで並んで〜。テレビとかで見たことあって撮りたかったんだよね〜」
なにせ愛していると自覚した自分の愛息子、愛娘がついに小学校に入学するのだから。
成長を見守って来ただけあって、その喜びは格別だ。
すっかり慣れた様子で右手に持ったスマホを器用に操り、写真を撮り続けている。
一応アイは変装でサングラスを掛けてはいるものの、溢れ出るオーラが隠せないのかアクアがいるせいか、何人かにはバレているらしく隠し撮りをされていた。
カモフラージュである斉藤夫妻の子供という設定が、今は煙幕として正しく機能している。
それにすっかり安心したアイはアイドル休止をいいことに堂々と入学式についてきていた。
「はぁ、元から親バカの気はあったけど完っ全に振り切れたわね」
ミヤコはこめかみに手を当てて溜息を吐いた。
アクアもそれには同意するが、アイが楽しいなら奴隷として子供としてそれでいいと思う。
あの事件以降、アイは愛に目覚めたらしい。
本人が皆の前で宣言していたから間違いない。
アクアは当時のことを思い出す。
リハビリをある程度終えて家へ帰ってきたアイ。
その日から毎朝一つ決まったことをするようになった。
『アクア!ルビー!愛してるよ』
『ママ!私も愛してる!もっとぎゅーってして!』
一日に一回は儀式のように宣言して子供たちを抱きしめるアイ。
それに大喜びでもっと強くと強請るルビー。
『俺もだけど……母さんなんか毎日言ってない?』
嬉しいけど恥ずかしいという気持ちがなくなるわけではないアクアはさり気なく嗜めるつもりでアイに質問した。
『ふふ、アクアもルビーも聞いて。私はね〜あの日愛に目覚めたの』
(ドヤ顔可愛い)
アイの持つ可愛さの暴力にやられてアクアはこの日課を受け入れることを決めて今に至る。
所詮はアイの奴隷、彼女の願いには勝てなかった。
この愛してる宣言はしっかりと続いており、最初は少し恥ずかしかったアクアもすっかり慣れきって毎日家族へと愛を告げるようになっている。
「ほらアイ、そろそろ時間よ。二人は一度生徒達で集まるんじゃないかしら」
ミヤコの言葉にアクアは手持ちのスマホを確認する。
確かにそろそろ移動しないと初日から遅刻してしまう可能性があった。
「本当だ。行くぞルビー」
「はーい、お母さん、お姉ちゃん行って来ます」
一時間近く前から学校に来ているのに遅刻なんて流石にしたくなかったアクアはショックを受けているアイに申し訳なさを感じつつもルビーを連れてその場を後にする。
「うぅ……いってらっしゃい。入場もちゃんと撮るからね!」
「ふふっ頑張っていらっしゃい。応援しているわ」
アクアとルビーがアイの実子というのはまだ秘密とされている。
最初、アイはいい機会だし仕事もないんだから公開しちゃおう!と言って発表配信を企画していた。
そこをやめろと壱護に釘を刺されていたのだ。
『アクアの仕事に影響が出るかもしれないぞ。それに……もし復帰した時にアイドル名乗るなら辞めとけ。アイドル好きってのは情熱もすごいが面倒くさいんだ。お前だってよくわかってるだろ。……それともやっぱり引退するのか?』
この時の壱護は寂しそうではあったものの、引退について全否定する気はなかった。
以前は引き止めたりしていたが、あんな事件があったのだ。
ファンのことなど嫌いになっていてもおかしくはない。
少なくとも壱護はそう思っていた。
だからこそアイドルを続けない方がアイのためなんじゃないかという思いもあり、確認をしようと思ったわけだが。
その言葉を聞いてアイはきょとんとした後、笑って告げた。
『アイドルに復帰して最後にもう一度どうしてもファンの皆の前でやりたいことがあるんだ。だからその……二人とも本当にごめんね』
『母さんがそのつもりなら応援するよ』
『私も!世間に知られなくても私たち親子だもん!』
だが、彼女はアイドルをまだ続けようとしていて、その子供達も応援している。
彼女はファンに今の自分を見せたい。その時、アイドル『アイ』は完成する。そんな予感が彼女にはある。
最後のライブはまだまだ先の話だが、アクア達もアイが復活する日を信じて楽しみにしていた。
一度アクアたちは二人の母親から別れて、入学式の準備のため、教室へと向かう。
歩いている途中、ふと気になったルビーは疑問に思っていたことを口にした。
「それにしてもお兄ちゃん良かったの?芸能科のある学校じゃなくて」
「今更だな……。心配しなくていい。小中学校は義務教育だから単位不足で卒業できないなんてことはない」
もし単位が不足していたら進級できないのならばアクアも流石にもうちょっと考えただろう。
だが彼にとっては妹と同じ学校に通うことの方が大切だった。
何せ前世から通してルビーは学校に行くのが初めて。
流石に仕事もあるのでずっとは付いていられないものの、ある程度アクアがフォローできる環境にしたいと思った結果がそれと言うわけである。
「それにこの範囲で躓くことはないしな」
「あっ……そっか。そうだよね」
前世が医者のアクアにとって、この程度の内容はフリーパス。
少なくとも高校生までは全く障害になりようがない。
忘れかけている部分も一度見れば、しっかり思い出せるので、問題にはならなかった。
この2年、アクアはテレビで出番を減らすどころかむしろ人気が更に増しており、アイがいない今の苺プロにとって稼ぎ頭となっている。
全盛期のかなと比べると少し低いものの、天使のようと友人に称される外見や安定感ある演技で実力派子役として信頼を勝ち取っていた。
子役部門ではあかねがテレビに映る機会が増えたほか、本人が望んでいた舞台の方に参戦することが増えており、順調にステップアップを続けている。
他にも数十万人、多い人では百万人の登録者を持つ配信者が揃っている辺り、苺プロそのものはうまくいっていた。
「それよりルビーこそ、これから大変だぞ。本当にやるのか、アイドル」
「もちろん!前も言ったでしょ。夢だって」
問題はアイドル部門だ。
B小町は今年でほとんどのメンバーがアイドルを辞めることになっている。
事実上の解散に近い活動休止を予定していた。
絶対的エースがいない状態でアイドル運営は厳しいようだ。
また、やはり一度は人気絶頂を経験している分、メンバーとしても辛いものがあるらしい。
まだ普通の人気アイドルグループとして成立する程度には残されたメンバーも頑張っているのだが、もしアイが復帰してもまたアイの引き立て役をやるだけ、そう思ってしまえば折れる者も多かった。
今年が終われば、正式に所属しているのは今のところ療養中のアイを除けば、最古参のニノと2期生のきゅんぱんのみが残ることになるという。
その二人もアイドルとしてのパフォーマンスを落とさない程度に練習は続けるものの、メインはモデルや役者をやることに決まっていた。
彼女たちが残るのはきっとやりたいことがあるからだけだろう。
ルビーのアイドル計画のため、幼少期からずっと用意していた企画がそう遠くない内に動き出す予定だが、どの程度効果があるかは未知数。不安要素が多いのが現状だ。
「まったく、おにいちゃんは心配しすぎなんだよ。最初から無理って決めつけちゃったら0%になっちゃうけど、信じて続けたら可能性は残るんだから」
「……そうだな、ルビーがこれまで頑張ってきた努力が実を結ぶって信じないとな」
ルビーのレッスンも順調に進んでおり、実力自体は十分ある段階まで成長していた。
最近はきゅんぱんが時間に余裕があるからとアイドルとしての歌い方を彼女へ教えている。
その甲斐もあって音程だけでなく、可愛らしく見える歌い方やかっこよく見える歌い方なども学びつつあった。
『本当可愛く育ったね!前にあったの赤ちゃんの時だけど覚えてるかな?』
『やば!生きゅんぱんじゃん!覚えてます!私がサイリウム振ってたライブでお姉ちゃんと一緒にいましたよね!歌本当上手で実はB小町の曲作ったこともありましたよね!』
『うわっ凄い熱量……この可愛さで育ってアイドルになったら私なんて目じゃないほど売れそう』
初めて担当してくれた時はこんなやりとりがあったとか。
あとは肉体の成長とメンバーさえ揃えば、活動を開始できるだろう。
そのおかげか今はグループ集め待ちのため、少しだけ時間にゆとりがある。
それならこの期間に少しでも一般教養をつけてほしいと思うのが保護者の考えだった。
「最初ママがあかねちゃんのところをおすすめしてきた時はどうしようかと思ったよ」
「これに懲りたらコツコツ勉強しておけよ?」
「分かってる分かってるって!」
アイは自分がアイドルでそれなりに苦労したからこそ、二人には色々な選択肢があった方がいいと思っている。
色々と融通を効かせる目的もあって私立の小学校に入りたいと伝えた時のアイの反応はといえば。
『私立に入れるくらい平気だよ〜。もし習い事とかもしたかったら言ってね!世の中お金でなんとかなるから!』
『アイの有言実行ね。まぁアクアの場合は自分の稼ぎで養えちゃうかもしれないけど』
『うぐっ……アクア、どんどん羽ばたいていいけどママの威厳は残してね?』
『無茶振りが過ぎる』
昔二人をいい学校に通わせたり習い事をさせて将来の選択肢を増やすためにバシバシ稼ぐなんて言っていたが、本当にアクアとルビーが可能な限り習い事を受けても成立させてしまうだけ稼ぎ切ってしまったのはアイの凄いところだろう。
時間になり、スマホをばっちり構えてオーラで目立ちまくるアイを尻目にアクアたちは入場する。
式は順調に進んでいき、アクアの小学生生活最初の仕事が訪れた。
「新入生代表『星野愛久愛海』」
「「「ぶふぅ!!」」」
「こほん前へ」
「……俺、前世の記憶があって良かったと心から思う」
「私はまだ可愛いの範疇だけどお兄ちゃんはね~。頑張ってね!」
「ああ、行ってくる」
既に芸能界で活躍しながらも成績もトップでの入学。学校のレベル自体は程々とはいえ、セールスポイントには十分だった。
最初は断るつもりだったアクアだったが、アイの「アクアの代表挨拶見たいな〜ダメ?」にあっさり屈して今に至る。
ただアクアからすればこの程度の観衆の元で話すなど慣れたものだ。
『それが始まり』で演技をして以来、演技の楽しさを感じていたアクアはプレッシャーも楽しめるようになっており、このくらいの人数であれば少し物足りないくらいだなとすら思っていた。
そこからは意識して聞きやすい声色で事前に考えていた文章を諳んじる。
壇上から見えるルビーのキラキラした期待の眼が、アイが自然と出せるようになった満開の笑みが、ミヤコの呆れたような嬉しそうな顔がアクアに元気をくれるようだった。
「これからの6年間、よろしくお願いいたします。新入生代表。星野愛久愛海」
特に波乱もなくスピーチは終わる。
今度は笑いが起こらず、むしろ大きな拍手が会場へと響き渡る。
小学1年生に求められていたスピーチでは明らかになかったが、芸能人としての『星野アクア』というキャラを考えればこれくらいはして当然だろうとそれなりの挨拶をしたわけだ。
後日、アクアの本名である星野愛久愛海がネットで話題となってしまうのだが、それはまた別の話。
「へぇ、あんたらあそこ受験したの?アクアはともかくルビーはよく受かったわね」
「酷いよロリ先輩!?」
「いい加減その呼び名辞めろやコラ。あんたの方が小さいくせに。というかもっと早く教えなさいよ」
入学式が終わり、小学生記念祝いと称して子役組勢揃いの打ち上げが行われていた。
このメンバーで集まるということで、いつもの苺プロ事務所である。
かなは最近仕事もさらに減ってきて、今やアクアと露出度は完全に逆転した。
主戦場も演技より音楽番組になっており、まだまだ仕事は十分にあるが、ピークのように数か月会うことすらできない程多忙になることはしばらくないだろう。
かな自身も今は気楽そうにしているが、内心ではもう自分が売れないんじゃないかとかなり不安に思っている。
「かなちゃんは知らなかったんだ〜。私は知ってたけど。あっアクアくん飲み物無くなってるね。コーラでいい?」
「ありがとうあかね」
あかねの観察眼によってアクアのコップに追加の飲み物が注がれる。
好きな飲み物を苺プロ全員分把握している彼女に死角はない。
あかねのセリフとやたらアクアへの甲斐甲斐しい様子が気に障ったかながいつものやり取りをする。
「なにマウント取ってんのよ黒川あかね。同じ事務所なだけで学校違うんだから先に知ってても意味ないじゃない」
「え?マウントなんて取ってないよ。ただ知ってたよって事実を言っただけで」
「ほんといい性格してるわね、あんた。私をいじめる時イキイキとしてるでしょ」
そしてかなと入れ替わるように伸びているのがあかねだ。
かなとは異なる憑依型と呼ばれる演技の使い手であり、タイプが大きく異なるが、その分使える幅も広い。
あかねの場合はモブでも問題なく起用できる演技の幅こそが一番の強みだろう。
かながモブをやるとその輝く個性を殺さないといけなくなり、彼女である意味が薄れてしまうのだ。
一度は天下を取った圧巻の演技力でなんとかなるものの、それにしてはコスパが悪いと思われているようだった。
「あっルビーちゃんこのDVDありがとね」
そんなかなの言葉をスルーして、あかねは自分の鞄から取り出したDVDをルビーへと返す。
側面にはマジックで『B小町全国ライブin宮崎』と書かれていた。
吾郎が見に行ったライブであり、B小町が初の全国ライブツアーを行った時のものでもある。
「良いよ良いよ。やっぱり推しを布教するのってファンの義務だしね。どうだった?」
「本当良かった!アイさん前ライブ見た時からアイドルの時は雰囲気違うなーって思ってたんだけど、初期の頃は色々試行錯誤しててね。映像資料も少ないから貴重なもの見られたよ」
あの東京ドームライブ以降、あかねは正式にアイのファンとなっていた。
推し活として給与の一部でアイグッズを購入しており、定期的に星野家兄妹とライブ映像鑑賞会を楽しんでいる。
今のあかね本人は絶対に認めないが、かなが一番の推しというのは変わっていない。
次いでアクア、更に次いでアイという状態。俗にいう推し増しという奴だ。
それでも各々への熱量を落とさない辺りは要領がいいのだろう。
「本当は二人とも私の後輩になってくれたらもっと嬉しかったけど、少し遠いもんね」
「……というよりあの学校はレベルが高くてな。俺はともかくルビーが入れない可能性が高い」
「お兄ちゃん……言ってはならないことを」
「いや、お前が自己申告したんだろ」
あかねの学校は私立のいいところであり、毎年海外旅行をする太い実家の子らしい選択だ。
小学校受験くらいなら転生者ならできるだろうと思われるかもしれないが、ルビーは前世ろくに勉強できる環境で生きていない。
条件はほぼフラットと考えてよかった。
今回受けた学校もかなりギリギリで、受験対策の日々を思い出すとルビーは身体が震えるようになってしまっていた。
「私の学校は選択肢になかったわけ?」
「そっちも少し距離があるしルビーがギリギリだった。ルビーにはこれから頑張らせる」
「……今更だけどあんた当たり前のように妹のレベルに合わせて学校受けるのやばいわよね?」
「アクア君だからしょうがないよ」
かなは普通の子役よりは使われるくらいの仕事量に落ち着いて学校に通う機会も増えていた。
不満はあるが、どうせ学校に通うならば折角だしアクアが同じだとなお嬉しいというのがかなの考えであった。
ただし妹には勝てないらしい。
あかねも諦めたような言い方をしている。
「二人とも本当ごめんね〜。学校では私がお兄ちゃんを独り占めしちゃって〜」
「アホなのが幸いしただけじゃない。このブラコン。というかアクアもさっさと兄離れさせなさい、このままじゃこの子将来困るわよ」
整った顔を蕩けさせてアクアに張り付くルビーを見て、かなはドン引きしながら言った。
ルビーとしても結局いつまでも前世の初恋の気持ちがなくならない。
それどころかアクアとしての行動を見ている内にどんどん好きになっていったので、もう兄妹愛への昇華は諦めて自分の気持ちに素直になって行動することに決めていた。
兄妹になる努力はした(自己申告)んだけど、無理だったからしょうがないよね!という開き直りにより、最近は甘えが再加速している。
肉体に精神が引っ張られ、抑えられて来た想いが少しずつ解放され始めていた。
「別に好きにさせとけば良くない?」
「……こいつもシスコンだもんね。ほんっとに。というかルビー、あんた知ってる?兄妹って結婚できないのよ?」
「事実婚ならできるよ。それに子供は1世代なら普通の結婚と大差ないってネットでも見たし大丈夫だよね」
「えっガチじゃんキッモ」
「ライン超えたなロリ先輩!」
アクアはこの二人本当に仲がいいなとじゃれあうルビーとかなを見ながらあかねの入れたコーラを口に含む。
そんなアクアにあかねが話しかける。
「アクア君、ルビーちゃん最近すごいね」
あかねも元からアクアに甘えるルビーは見て来たため、耐性はあったのだが、最近のルビーは男女のそれにしか見えなくて少しドキドキしている。
ただそれに対してアクアは冷静だった。
「そうだな。……まぁ今は好きに言わせとけばいいんじゃないか。この歳の子供が身近な異性に結婚してっていうのはよくあることだ」
この年頃の子供は親族の異性に過剰に愛情を注ぐ物だ。
前世があるとはいえ、今落ち着く必要はないだろうとアクアは考えている。
アクアはルビーも成長するにつれてそのうち前世の恋に恋する状態も終わるだろうと考えていた。
実際には、既に心理的ラインを超え終わった彼女にそんな未来はない。
「やっぱりアクア君も大概だなぁ」
「黒川あかね、あんたが二人のこと甘やかしすぎなんじゃない?」
「兄妹仲がいいのは良いことだよ?」
先ほどのアクアの回答を聞いてやましい所はなさそうだと判断したあかねはそう返す。
実際、アクアとルビーでは思いの方向性が違うのでその判断は間違っていない。
普段喧嘩はしつつも、あかねの心情把握能力は信頼しているかなは、あかねが言うなら大丈夫かと納得しそうになる。
ただ先ほどまでルビーと言い合っていたかなには引っかかるポイントがあった。
「でもさっきコイツ事実婚とか子供とか口走ってたわよ?確か結婚みたいなもんでしょそれ」
「……お父さんと結婚する!みたいなモノだと思うよ……思うよ?」
「自信ない感じじゃないの!」
結局答えが出ないまま、いつの間にか再びアクアへとへばり付いたルビーを見る二人。
二人が彼女は本気で言っている事を理解するのはもう少し先の話である。