【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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母親

「アイ、結局アイドルやるのは来年だけなのね」

 

苺プロに訪れていたかなが口を開く。

先日のテレビ放送を見たのだろう。

普段は苺プロ公式配信で告知するような内容だったが、アクアにサプライズを仕掛けるという一点のためだけに番組で初出し情報を見せたそうだ。

マルチタレントは続けるとはいえ、アイ=アイドルのような認識だったかなとしては、その看板を下ろすというのを少し寂しく感じていた。

 

「その辺どうなのよ、アイオタ兄妹」

 

自分よりも気にしていそうな二人に向けてのかなの問い。

 

「勿論寂しいが、ファンは最後まで応援するだけだ」

「お姉ちゃんが決めたんだもん。ファンは快く送り出さなきゃ」

「あら、ルビーにしては珍しく殊勝なこと言ってるじゃない」

 

アクアはともかくルビーは普段からアイに対してファンというよりもはや姉や母のような距離感で接しているのをかなはよく見ていた。

自分の母や父との距離感より近い彼女たちの仲を羨んだこともある。

そんなルビーがあっさりとアイのアイドル引退を認めるなんて意外だった。

かなの中ではアイにゴネるくらいはすると思っていたくらいには。

 

「それに!いざとなれば私たちがお願いすれば独占ライブくらいやってくれると思うし!」

「……確かにアイさんならやりそうだよね」

 

嬉しそうにいうルビーを見ながらあかねが苦笑する。

アイの二人に対する溺愛は常軌を逸しているとあかねは見ていた。

休止中の彼女は一部から厄介アクアファンbotと呼ばれるほどにアクアのことばかり呟いており、ルビーのことも時折匂わされている。

あの不思議な引力のある瞳を再現したいと思い、あかねは普段からアイのプロファイリングをしている。

だからこそ、その溺愛の理由を突き止めたいものの、一緒に行動していても見えてこない。

実は距離が近すぎて見えないものがあるのかもしれないが、それはあかねにも分からないことだ。

 

「今のうちにMEMちょの好感度を上げておけば私も独占ライブを?」

「MEMは今の時点でもフリルが頼めば、ライブは無理でも歌ってはくれるだろ」

「いや、今までスルーしてたけど……アンタ誰!?」

 

会話に混ざったフリルに対してかなは驚きの声を上げる。

ここ最近のかなは全盛期ほどではないにしろ、かなり忙しかった。

これは『転生探偵乱歩』の美玲役がどんどんと評価を上げていったのが大きい。

事前に情報を掴んでいた関係者からは明るい役柄で仕事が舞い込んでおり、事務所内のかなの立ち位置はある程度回復を見せていた。

そしてフリルはフリルで元々雇っていた講師の人に今年中は教わることになっており、あまり苺プロに来られていなかった。

たまたま二人が同時にいるタイミングがなかっただけが半年以上続いたことでこの邂逅が発生することになる。

 

「あっそうか!二人は初めましてだよね。こっちは不知火フリルちゃん。不知火ころもちゃんの妹でうちのアイドル部門」

「ども、不知火フリルです」

「えっアイドル部門?C式部にこんな子いなかったわよね、どう見ても小学生だし……まさかB小町の新メンバー!?」

 

かなが困惑するのももっともだった。

今活動している苺プロのアイドルグループはC式部と先日活動再開を告知したB小町の二組。

アクアが所属している事務所だけあってよく調べている彼女の頭にこの女の子はいなかった。

 

「違うよロリ先輩、実はね……」

「ストップだ。もうちょっとだけ待ってくれ」

「ちぇ〜自慢したかったのに〜」

「あーもういいわ、なんとなく分かったから」

 

アクアの発言から社外秘なのだろうと当たりをつける。

これまで散々デビューしたいと言っていたルビーのこの発言。

かなはきっとルビーがフリルと一緒にアイドルやるんだろうと察した。

 

(……不知火ころもの妹ねぇ。彼女と似てはいないけど、確かに美人に育ちそうな顔立ちしてるわ)

 

小学2年生とは青田買いにも程があるが、確かに将来性が高そうな少女を見て、苺プロも攻めるなと考えたりする。

将来を考えると彼女自身も不安に襲われる。

今年でかなも3年生。

彼女の所属する事務所は子役専門で営業を行っている。

乱歩で一山当てたことで人気が回復したと言ってももうすぐ高学年になるかなはお払い箱。

乱歩の第二第三シーズンという大きな収入源を確保した事務所は今高くなっているかなの売り先を探している最中らしい。

自分の今後を思い出しているかなにあかねが話しかけてくる。

 

「かなちゃん、なんだか顔色悪いよ?大丈夫?」

 

最近までずっと機嫌が悪かった母とそんな母に呆れて家から出て行った父。

去年の末、ついに二人は離婚してしまった。

最後に一山当ててくれたから売り時だとかなをモノとしか見ていない事務所。

そして急激に忙しくなり、友人たちと会えなくなった状況。

全てが今のかなにストレスを与えていた。

以前はもっと忙しくても何とかなったと自分を鼓舞していても影響は隠しきれない。

 

「……あら?黒川あかね、どうしたのいつもの性格の悪さをどこに置いて来たのかしら。今日はお優しいことね」

「茶化しても誤魔化せないから」

 

有馬かな厄介オタクであるあかねには一目で分かる。

そう言いたげな圧力をあかねから感じる。

そんな二人のやりとりを見て小声でフリルとルビーは話をしていた。

 

「私は初対面だから分からないけど……ルビーは分かる?」

「うーん……いつも通りだと思うんだけど。でもあかねちゃんが言うなら間違いないと思う。おにいちゃんは?」

 

こと分析力において苺プロの誰よりも優れたあかねの目を疑うものなど誰もいない。

念のため、前世的にそういうのが詳しそうな兄へとルビーは話を振る。

 

「寝不足、あとは栄養バランスが悪いか?何か強いストレスも抱えてはいると思う。前回会った時よりは顔色悪そうだな」

「あんたら怖いわ!医者かなんかなのアンタたち!」

 

あかねはともかくアクアについては元ではあるが当たっている。

二人へ声を出して突っ込んだところでふらりと足元が揺らぐ感覚をかなは覚えた。

 

(あれ?)

 

近づいてくる地面、その手前で何かに抱き止められる。

その感覚に安心しながら彼女は眠りについた。

 

 

かなをベッドに寝かせた後、アクアは自分の失敗に頭を抱えていた。

 

「……有馬ならもっとやれる、まだ大丈夫って思い過ぎていた。準備だけして動いていなかった俺の問題だな」

 

結局星野アクアになっても雨宮吾郎であった時も肝心な時に助けられないのかとアクアは気分が沈んでいる。

かな本人から助けが来るまではと思ってはいても、彼女は強い。

もし問題があっても我慢できてしまう。いつか助けを求めてくれるなんて考えは甘えだった。

 

「おにいちゃん」

「どうしたルビー抜けてきたのか?」

 

そんなアクアのところにルビーが現れた。

合同練習という空気でもなくなってはいたが、一応先にやっていてくれと言ってアクアだけかなを連れて抜けていたので、予想していない来客と言える。

 

「ちょっと深刻そうな顔してたからね。まるで全部自分が悪いんだって言いたそうなさ」

「……僕が悪いだろ。前世からそうだった、まだ大丈夫なんて幻想を押し付けて本人を見られていなかった。君の時も結局最後の瞬間まで僕は気付けなかった!」

 

ここまで不安定になるのは珍しかった。

基本的にルビーとしてさりなが生きていると分かってからずっとアクアの精神は安定していた。

久しぶりに身内が倒れたという状況が、罪悪感すらも演技として活用できるようになった今だからこそフラッシュバックのような状態を引き起こしている。

 

「そんなことないよ。せんせは私の時も私のことを思って色々してくれた。隠れてこっそり何とかしよう自分だけで何とかしようってするのはせんせの可愛いとこだけどさ。"かな先輩"にも相談してあげて」

 

アクアが何をしているかルビーは知らない。

だが妙に悪ぶったり回りくどかったりするのをルビーは誰よりも知っている。

 

「……有馬のプライドを傷つけるかもしれない」

「倒れたかな先輩が悪いよ、おにいちゃんがゴリ押せばヨユーヨユー。基本的に先輩チョロいから。たまにはエゴでも押し付けたっていいんだよせんせ」

「そうか……君には色々教えられてばかりだなさりなちゃん」

 

今世アクアは人に頼ることを覚えたつもりだった。

実際かなのために考えていたプランは壱護も噛んでいる。

だが根のところはそう簡単に変わらないということだろう。それをルビーに再認識させられた。

 

「ありがとうルビー。……覚悟を決める」

「うんうん!いい顔になったねおにいちゃん!」

(はわわわわわ私のおにいちゃんかっこよすぎ!誰かこのシーン撮影してくれないかな)

 

先ほどまでの空気はどこへやら部屋には、まったりした空気が漂い始める。

 

「……それで私はいつまで寝たふりしとけばいいのかしら」

「うわっロリ先輩起きてたの!?言ってよ〜」

「うっさい!起きたばっかよ、話もよくわかんなかったし」

 

さりなって誰のこと?ルビーのあだ名?と不思議な感想くらいしかこの時のかなは持っていなかった。

そんな彼女にアクアは目線を合わせる。

その真剣な目に何となくかなは恥ずかしくなって目を逸らしたくなった。

 

「有馬……苺プロに入らないか?」

「あんた何言ってるか分かってんの?引き抜きよそれ」

 

かなはそれなりに大きくなって事務所の移籍などの問題がごたつくくらいは分かっている。

いくらアクアたちが同じ事務所で羨ましいからといって、乱歩も当たった今、そう簡単に事務所を移籍などできるものではない。

あと数年して子役としてはお払い箱になってからの話になるだろう。

 

「今年の契約更新。このタイミングで向こうの事務所からこっちに移籍する。そういう契約を有馬の事務所とする根回しは実は終わっている」

「はぁ!?私何も知らないんだけど」

「そりゃあくまで事務所同士で話をつけただけで選択権は有馬にあるからな」

 

タレント本人どころかその親もそんな話は知らないだろう。

あくまで密約のような話で有馬かな本人の意思で最終決定がされることになっている。

 

「社長が交渉したのは俺が一年の頃だ。あの頃は有馬の仕事量が減っていたのもあって交渉しやすかった」

「うっさいわね!悪かったわね暇で!……でも売り先探してるみたいな話聞いたことがあったけど」

 

かなは直接聞かされたわけではないが、それらしい話をしているのは聞いたことがあった。

それもストレス要因になっていたため、よく覚えている。

 

「まぁもしかしたら有馬が最後にもう一ハネしそうだから惜しくなったのかもな」

「え〜約束破ろうとしてるってこと?そんなのずるいじゃん!」

 

あくまで交渉は裏で行われている。多少の釣り上げくらいはあるかもしれない。

 

「裏でコソコソそんなことしてたんだ。私のために?」

「いや、別にお前のためじゃない。なんだかんだルビーとあかねも有馬に懐いてる。同じ事務所の方が今日みたいに話の制約もないし都合が良かっただけだ」

 

そんな言い訳じみた言葉に思わずかなは笑ってしまう。

 

「ふふっ……そっ。ならそういうことにしといてあげるわ」

「んふふ〜おにいちゃんは回りくどいけど根はバカ優しいからね〜」

「暑くないの?このブラコン」

 

ルビーはそんな兄にニコニコしながら抱きついている。

それを見て呆れたような声を出すのだった。

 

「私はアンタがそこまで言うなら苺プロに移ってあげてもいいわ。……ただママがなんて言うかしら」

「それについてはこの後交渉する。さっきお前の母親に連絡したからもうすぐ来るはずだ」

 

かなを迎えにきてもらうための連絡だったが、この際ちょうどいいとアクアは思っていた。

 

「ごめんなさいね、かなが倒れちゃったみたいで」

「いえ、疲れてたみたいですから仕方がないと思います」

 

ルビーはあかねとフリルの元へと返してアクアはこの日空いていた壱護とかなの母と対峙する。

 

「それで話とは?」

「実は、有馬かなさんに苺プロへ移籍してもらえないかと思いまして」

 

その言葉に彼女の母は少し欲に眩んだ目を浮かべた。

今の苺プロは規模こそ中規模程度なものの、復帰したアイ、星野アクア、黒川あかね、そして直近デビューしたC式部。どれも勢いが止まらない事務所だ。

もうすぐ子役としてはお役御免になるだろうかなの移籍先としてこれほど都合の良いところはない。

壱護から一通り移籍の話を聞いたところで、かなの母は口を開く。

 

「それはそれは。ですが今の事務所との関係もありますし、役柄の保証や移籍金なども」

「ところで質問なのですが」

 

壱護に交渉を任せていたアクアが口を挟む。

本当はここで口を挟むつもりなどなかったが、自然と動いていた。

壱護もあちゃーと言いたげな顔をしている。

 

「え?あぁ星野君。今大人の交渉中だから」

「有馬さんは有馬の……かなのことをどう思っていますか?」

 

前世でとある親の対応を見た時から母親というものに幻想を見るつもりなどなかった。

だが、今世になって初めて得た自分の母親は不器用ながらも自分を愛してくれている。

だから聞いてみたかった。かなの姿はかつてのさりなに重なる。誰かに愛されたいと必死にもがいているようにアクアには見えていた。

 

「勿論、大切に決まってるでしょ」

「それならもうちょっと彼女を労わってあげませんか?前に会った時、アイツは言っていましたよ、もっと親孝行しないとって。そんな必要ないくらい稼いでるだろうに」

 

アクアも自分が失礼なことを言っているのは分かっている。

分かっていて止められなかった。

 

「……アイツはまだ8歳になったばっかの幼子だ……親に好かれたくて愛して欲しくて無理してしまうくらいには普通の子供なんだよ。……親が子供守らなくてどうすんだよ」

「……」

 

かなの母は絶句する。

自分の娘より一つ下の子供がこれほど激情を出してそんなことを言う事態に。

アクアの瞳を見れば、その憤怒の本流に意識を呑まれそうになる。

 

「あー、アクアの奴がすみません。私からよく言って聞かせます」

 

親ということになっている壱護は普段のアクアから考えてここまで言うと思っていなかったので内心はかなり慌てていた。

交渉決裂してしまっても何らおかしくないとすら思っている。

 

(熱いところがあるとはよくアイやルビーから聞いてはいたが、これ程とはな)

 

これでよくクールキャラなんて普段やってるもんだとこの状況でなければ感心すらしていただろう。

 

「いえ……全然問題ないですよ。でも本当に星野君の言う通りかもしれませんね」

 

暗い表情をしながらかなの母親は口にした。

 

「こんな子供に言われるまで何も感じなかった自分が怖いくらいよ」

 

そう言ってからかなの母は言葉を続けた。

 

「私は昔は芸能人になりたかったの。でも夢破れてかなにその気持ちを託したわ。あの子が売れて私も芸能人になれた気分で。あの子は全力で頑張ってくれた」

 

アクアの言葉に魅せられ、まるで天へと懺悔するかのような告白に壱護もゾッとする。

人を導くカリスマのようなものがアクアにはある。アイにも似たものはあるが、彼女を光とするならば、アクアのそれは深い闇のような感覚。

引き摺り込まれるように魅せられる。

壱護はアクアが怪しい教祖ではなく役者を目指してくれて本当に良かったと心から思った。

その間もかなの母は口を開き続ける。

 

「……それなのにあの子の人気が落ちたらあの子にも当たっちゃって……少し、少しだけ距離を置いた方がいいのかもしれないわ」

「もし、かなのことを考えるなら一度冷静になってお互いの気持ちを話し合った方がいいと思います」

 

アクアの言葉に小さくそうねと答えた。彼女なりに思いを言葉にして気持ちも晴れたかもしれない。

先ほどより穏やかな表情をしている。

 

「なんというか星野君は不思議ね。目と目を合わせて話していたらあなたの言うことが"本当にその通りだ"って心から思えるもの」

「僕こそすみませんでした。失礼だとは思っていてもつい止まらなくて」

 

アクアは心の底から反省していた。完全な暴走、身勝手なクソガキそのものだった自分を思い出すだけで恥ずかしくなる。

そんなアクアを見てくすりとかなの母は笑った。

 

「……かなはいい友達を持ったわ、あの子のこと大切にしてあげてね。……壱護社長、私はあの子の移籍に賛成します。きっとその方があの子にとっていいと思うので。他にも色々とやることがあると思いますが、細かい連絡は後日でもいいですか?」

「え、ええ。こちらは問題ありませんよ」

 

何故かいい方向に話がまとまったことに困惑しながら壱護が返事を返すとかなの母は彼女を迎えに行こうと扉を開いた。

 

「「「「うわぁ」」」」

 

そんな間抜けな声と共にバタバタと倒れ込んできたのはルビー、あかね、フリル。そしてかなの四人だ。

かなの体調が多少回復したからいるのだろうが、何やってるんだこいつらとアクアは呆れた目を向ける。

 

「いやーほら!おにいちゃんが何やらロリ先輩について交渉するって言うじゃない?だからちょーっと気になるなーって」

「内密の話を勝手に聞こうとすんな」

 

もうちょっと防音に優れた部屋を用意するべきだなと事務所に対して少し思う。

ルビーの言い訳を聞いた後、アクアはあかねへと目を向けた。

 

「それにこう言う悪ノリにあかねが付き合うなんて珍しいな」

「あっあはは。どうしてもみんなが聞きたい!って言うから勢いに負けちゃって。……でも交渉は全然聞こえなかったから安心して」

 

少し目を逸らしながらあかねはそんな答えを口にする。

聞こえなかったならいいかと一安心したアクアは次にフリルへと目を向けた。

 

「フリルは……ノリノリで煽った側だろうな」

「あら、バレた?いいもの聞けたからおかげで聴力が上がったから大正解だった」

「は?」

 

いいものを聴けた?その言葉にアクアは疑問符を浮かべる。

先ほど交渉などろくに聞こえなかったとあかねが言っていたはずなのだが。

最後にかなへと目を向けると顔を真っ赤にしてバタバタと慌て始める。

そんな挙動不審な彼女を見て怪訝な顔をするアクアへ向けてかなは言葉を発した。

 

「はっはぁ!誰が幼子よ!えらっそうに私より年下のくせに!何よ!私を守ったって感じ出しちゃって!!」

「……聞こえてんじゃねーか」

 

かなが長々と続ける言葉を聞きながらアクアはこめかみに手を当て、項垂れるのだった。

 

 

後日、子役事務所とかなの母が交渉して改めてかなの今期限りでの移籍が正式に確定する。

そして距離を置いた方がいいといった有馬母は一度田舎で芸能界とは縁のない生活を過ごすと言う。

 

「悪かったな、俺のせいで母親と離れることになって」

 

アクアはもっと違う話の進め方があったと冷静になってから思っていた。

だが、かなは穏やかな表情を浮かべている。

 

「いいのよ、ママも一回芸能界なんて忘れちゃった方がいいってのはホントだし。年に数回は会うしね……ただ」

「んふふ〜かなちゃん。ほらお姉ちゃんの元に来て。甘やかしてあげるから」

「あれ、どうにかならない?」

「諦めろ、なんでも『反動が来てる!』らしい」

 

かなの母が田舎で過ごす間、彼女のことを快く受け入れてくれたのがあかねの家だ。

あかねの説得もあり、居候として過ごしている。

とはいえ彼女の両親はかなのことを本当の娘のように扱っているとかなは恥ずかしそうながらも嬉しそうにアクアへと語っていた。

ただ家で過ごすようになって和解のような出来事があった分、反転アンチというより厄介ファンとなっていた今までを埋めるかのように構ってくるあかねが暴走しているらしい。

 

「あと……あとね、アクア」

「ん?」

 

アクアはもじもじとしながらなんとか言葉を紡ぐかなを見る。

 

「すぅ……。一度しか言わないからよく聞きなさい!……ありがと」

 

一息吸って開き直ったかなは太陽の笑みで感謝を告げた。

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