【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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資質

アクアたちは3年生まで成長した。

アクア、ルビー、フリルはクラス替えの試練を乗り越え、再びクラスメイトとなった。

幸運ではなく、おそらく何かしらの忖度が働いた結果なのだろう。

有馬かなの円満移籍も完了し、一部から『名誉苺プロ』と呼ばれていた彼女も正式に苺プロのメンバーになって良かったなんて祝いの声も届いている。

そんなある日、苺プロのとある一室では二人の少女が肩を並べて作業をしている。

 

「いや〜贅沢だよね〜。アクたん達を自分のチャンネルにまとめて呼べるなんてさ」

「こどもの日用の動画だからってよくスケジュール確保したよね。本当苺プロに入って良かった〜」

 

本日撮影予定の動画の準備をしながらMEMちょとゆらの二人は手を動かしつつも雑談をしていた。

もうC式部として活動を開始してから一年以上が経つ。

お互いに持っているもの持っていないものを認識しているからこそ、以前のB小町よりはずっと良好な関係を築けていた。

 

「ゆらちゃん最初あんなこと言ってたのに意外とアイドルも頑張ってくれてるから私も嬉しいよ」

「いや、それは言わないでよ。まぁ今思えば舐めたこと言ってたなぁとは思うけど中学二年生なんてそんなものでしょ?」

 

アイドルは女優の足がかりにと宣言していたゆらは黒歴史を掘り返された気分になる。

今でも女優になることが一番だが、アイドルでしか得られない経験もあると理解してからは楽しく、上を目指して活動することができていた。

 

「ただ……アイドルってホント儲からないのね。アクア君のバーターで出たドラマの収入の方が大きかったんだけど」

「そだね〜。私もそこそこ売れたしお母さんもう働かなくてもいいよって言えるかな〜と思ったけど全然足りなかった」

 

アイドルという職業はイメージの割に儲からない。それが彼女達の出した結論だった。

C式部のメンバーはYouTubeでの収益もあるが、やはり五等分されるのは大変だった。

 

「まっそういう意味だとゆらちゃんは当初の予定通り女優に転身した後の方が稼ぎはいいんじゃない?最近そこそこ仕事入ってるでしょ?」

「そうね、思ったより仕事は入って来ていてお金は順調に稼げてるって言っていいと思う」

 

MEMちょは妙に何か言いたげなゆらの言葉に意図を確認してみることにする。

メンバーのストレスは緩和できるならした方がいいと彼女なりの気遣いだった。

 

「現状に何か思うところがありそうな言い方だねぇ」

「お金だけなら今のままでもいいんだけど……夢が『100年後も残る名作の主演』な私としては思うところがあるわけよ」

 

ため息を吐きながらゆらは言葉を続ける。

 

「ミキさん、あっアクア君の演技の師匠らしいんだけど、こないだアクア君と一緒に彼と共演した時、アクア君のついでに演技教えてもらったんだ。そこで私まだまだだなって思い知らされちゃった」

 

幸いなことにゆらには才能があったらしく、演技力は上がって来ている。

だが、ただでさえ苺プロには小学生のくせに異様に演技できる子供三人組がいて焦っているところに、ヒカルの演技を見せられたゆらは少し自信を失っていた。

 

「アクたんの師匠か〜そりゃ演技上手いよね。あっ身近だとアイさんに教えてもらうのもいいんじゃないかな」

 

MEMちょは自分の推しであるアイの話を振る。

ファン視点を除いても不思議な惹きつけられる演技はゆらの今後を思えば少しでも教わった方が良さそうに感じられた。

それはゆらも分かっていたようでそうだよね〜と言って続ける。

 

「本当は頼みたいところだけど、今は流石にお願いできないかな。ライブツアーの準備でバタバタしてるし。それが終わったら考えてみる」

「もうすぐ始まるもんね〜。いや〜実は憧れのB小町の皆さんのためにバックダンサーできるかな?ってワクワクしてたけど三人だけでやるって言ってたからちょっと悲しみ」

「やらせてください!って言ったら一回くらいできるんじゃない?」

 

ファンとして一度くらい同じステージに立ちたいと思うMEMちょの気持ちは分かる。

自分も憧れの俳優や女優と同じ場所で演技できた時は気分が上がったものだ。

そんなゆらからの提案にMEMちょは首を振った。

 

「ゆらちゃんがさっき演技指導を遠慮したのと同じ理由だよ。今は三人が過去最高のパフォーマンスを出そうと頑張ってるし、私たちみたいなノイズは入れられないよ……。まっ代わりにそのうち落ち着いたらYouTubeでコラボ動画撮らせてもらおっかなと思ってるけど!」

「いいじゃん!私も演技教えてもらう動画とか撮ろうかな〜」

 

雑談は続いていき、結局アクア達が来るまで二人は夢や希望、愚痴や不満を口にし合っていた。

 

 

「さて、よく来たねアクたん、かなちゃん、あかねちゃん!」

「あれ、今日はMEMとゆらさんの二人だけなのか?」

 

C式部とYouTube用の動画を撮影してくれと言われていたアクアはかなとあかねと一緒に撮影部屋へと訪れていた。

ただC式部のメンバー五人のうち二人だけしかいないのが気になって確認した形だ。

アクアはMEMちょに対して崩した口調を使うようにしている。

これは元々は年上に対してなのでそれなりの言葉遣いをしていたのだが、MEMちょ本人がアクたんはやっぱりその口調の方がキャラ立ってて好きなんだよね!と言って今の形にさせた経緯がある。

 

「そそ、企画の内容的にね〜。動画にはみんな揃う予定だから安心してね」

「なるほどな、ワイプで何か話す感じか」

「そんな感じ、やっぱり場数踏んでるだけはあるねぇ」

 

アクアはこれまでの経験から彼女達二人と子役組三人の様子をあとで見て他メンバーが何か話す形式を取るのだろうと察する。

 

「この事務所に移籍してから思うけどYouTubeってバカにならないのね。ネットマーケティングがどんどん大事になっているのは知ってたけどまだ舐めてたわ」

「お前最初にぴえヨンに会った時変態呼ばわりしてたもんな」

「あはは……あの時のぴえヨンさん可哀想だったね」

 

その時のぴえヨンの姿を思い出してあかねは苦笑する。

かなが移籍したことの告知は苺プロ公式配信……ではなく、ぴえヨンの筋トレ動画だった。

 

【電撃移籍!?】超有名子役がまさかの苺プロに!?30分間付いてこられなかったら顔出しなし!

 

ちなみにコメント欄では視聴する前から有馬かなの名前が複数書かれており、それを見たかなはご立腹だった。

 

『そりゃそうでしょうよ!苺プロに関わり深くて有名子役なんて言われたらみんな私だと思うわよ!なによ!顔出した時の『知ってた』『解散』みたいなコメントの嵐!』

『んふふ〜怒ってるかなちゃんも可愛いなぁ。撫で撫でするからおいで〜』

『あんたは態度変えすぎ!大体同じ家に住んでるからって姉名乗る不審者になってんじゃないわよ』

 

こんな会話をしていたのは記憶に新しい。

 

「私たちも動画編集頑張ってはいるんだけどやっぱMEMちょが一番うまいわ。確かアクア君も結構勉強してるよね」

「個人的には演技をする上でどう編集されるかって意識しているといい演技がしやすくなりますから」

 

アクアの場合はそれを意識することで役の強弱を操るのを得意としている。

主演以外なら意識して見え方を地味にしたりするのに便利だと考えていた。

 

「それあんただけじゃない?私はその辺まで含めたら考えること多すぎて演技に集中できなくなっちゃうわ」

「うーん私もどちらかといえば役にだけ向き合うタイプかな」

 

残念ながらあまり共感は得られていないらしい。

人によってアプローチは違うから仕方がないことなのだろう。

ゆらは少し考えた様子を見せた後に言葉を返した。

 

「そうね。私ももうちょっとMEMに教わろうかな。もしかしたら何かのきっかけになるかもしれないし」

 

ゆらはアクアに対して尊敬に近い感情を持っている。

自分より幼いのに原作付きとはいえきっと100年後も語られる名作ドラマの主演を務めた少年。

自分の夢を自分より若い年齢で先にいく彼のアドバイスは年齢差があっても素直に受け入れることにしていた。

結果的にそれが自分に合わなければやらなければいいだけの話で、それが時間の無駄などとは考えないのである。

 

「よーし準備完了!じゃっみんな配置について〜」

「あっごめんMEMちょ最後全部任せちゃって」

「いいってことよ〜、今度からゆらちゃんも覚えてくれるみたいだし?」

 

にししと笑いながら言うMEMちょにゆらは苦笑しながらもそうねと返事をしておいた。

 

「まっ今回はただみんなでババ抜きして敗者に罰ゲームをするだけの簡単な企画なんだけど〜、その様子をギャラリー達に別室で見てもらっていい感じにガヤにしてもらおうかな〜って」

「罰ゲームの内容次第では結構地獄だな」

「んふふ〜期待しててよアクたん」

 

そして始まった本編の撮影。

最初は和気藹々とした空気で始まったババ抜きだったが。

 

「なぁ……」

「何も言わないでアクたん!」

「役者四人に素人一人だとそりゃこうなるわよね」

 

かなが呆れたように言う通り、MEMちょ以外は役者としての心得がある。

気を抜いている時はともかく本気でやれば素人のMEMちょにブラフを張るなんて難しくない。

結果として5ゲームやって全てがMEMちょ最下位となっていた。

 

「これはこれで面白いけどMEMちょファン以外は納得しないかもね」

「フリルは間違いなく喜ぶぞ」

「あの子MEMちょにだけはガチよね……こないだアイツの部屋行ったら部屋の一角にMEMちょサインだけで祭壇組んであったわよ」

 

MEMちょに会うたびにフリルは日付入りのサインを貰っていたが、まさかそんなことになっているとは思わなかったアクア。

実物を見たいという気持ちが出たので、今度フリルに聞いてみることにした。

 

「あれ凄かったよね。私も『ピーマン体操』や『さわやかサテライト』で祭壇組もうかな」

「アンタは私を虐めるの好き過ぎでしょ!こないだまで姉とか名乗ってたのなんだったのよ」

 

アクアの記憶でも先週くらいまではアイがアクアやルビーにするくらい甘やかしていた記憶があったためどうしたのかと疑問に思う。

 

「反動は治るものなの!かなちゃん性格が基本的にトゲトゲしてるからこれくらい強気で行かないとって」

 

どうやら共同生活が長くなると落ち着いてまたかなとじゃれあい方を変えたらしい。

 

「確かに有馬に対してはその方がいいかもな」

「だよね!やっぱりかなちゃんに負けないくらいガンガンにしておかないとかなちゃん天狗になっちゃうから」

「うっさいわね!私の厄介オタのくせに〜面倒くさすぎるでしょ!」

「もおぉぉぉぉぉ話が逸れてるから!まだ撮影終わってないから!」

 

MEMちょが完全に脇道に逸れた話を引き戻す。

とはいえこの部分はカット予定だからそこまで問題にはならない。

 

「もういっそこのままでいいんじゃないか?」

「アクたん!?」

「そうよね、このままでも私たちは別に困んないわけで」

「かなちゃん!?」

 

薄情な二人に見捨てられそうだと慌てるMEMちょは苦楽を共にしてきた仲間の方へと視線を向ける。

 

「うん、このままでいこっか」

「うわーん、みんないじめるよぉ〜!助けてあかねちゃん」

「その、すみませんMEMちょさん」

 

オチもこの会話で成立しているのに無理にやるほうがバランスが悪くなる。

MEMちょもがっくりしながら認めることになった。

 

 

そしてやってきたこどもの日。

星野家の三人は揃ってパソコンの前に待機していた。

 

「ふふっ楽しみだな〜」

「俺の出演企画なんて何度も見ただろ」

「んふふ、子供の出る企画なんて何種類見ても楽しいものだよ〜。アクアも子供を持つようになったらわかる!」

 

アイはアクアを膝の上に座らせて捕獲した状態でそんなことを言う。

普段はルビーの指定席なのだが、今日はアクアを乗せたいと言われ、恥ずかしさを押し殺してアクアは捕獲されていた。

来月から始まるB小町の各地方ライブ。

最終日のドーム公演までかなりのスケジュールで詰め込まれており、その準備で忙しい。

だが彼女にとって子供に時間を作るのはもう当たり前となっている。

そして始まるプレミアム動画。

楽しそうに企画説明をするMEM、アクア達も知らなかったC式部の残りメンバーによるリアクション。

とにかくMEM尽くしの短め動画が繰り広げられる。

 

「MEMちょちゃんボッコボコだね〜これはヤラセなしかな」

「おにいちゃん達が皆本気で隠そうとしてたのが伝わってきて良かったぁ〜やっぱり企画はガチじゃないと!」

 

嘘は愛というアイ、嘘のない物を見せたいルビー。

正反対な親子だがどちらも企画を楽しんでくれたようだ。

 

『最後の罰ゲームは……これあかねちゃんが作ったよね?』

『え〜そんなことないですよ〜』

『絶対あかねちゃんだよ!ピーマン体操通しで歌って踊れ!って』

『だから私アイツから妙にジョーカー回されてたの!?』

 

かなは先程までよりかなりジョーカーを引く可能性が高かった。

この辺りはかなを観察した結果のデータによって、彼女が引きやすい位置にジョーカーを設置していたようだ。

ワイプのC式部の少女達もそれに気づいており、あの子やってるよ!って楽しそうにMEMちょの最下位脱出を応援していた。

 

「あかねちゃんわざとジョーカー引きに行ってロリ先輩に押し付けてたんだ」

「本気ならあの子はやりそうだよね。結局MEMちょちゃんが弱すぎて負けちゃったけど。もし私が参加してたらアクアに引かせるために全力だしてたしあの子とはちょっとシンパシー感じるな〜」

 

そんな会話をしている中、あかねがわざわざ持参していたらしいピーマン体操用の被り物をMEMちょへと手渡す。

 

「あっロリ先輩鳥肌立ってる」

「あの子ピーマン嫌いなんだっけ?でも被り物見るだけで鳥肌って」

 

あかねも流石に被り物を見るだけで拒絶反応が出ると思っていなかったのか謝っていた辺り、本当に揶揄うだけのつもりだったらしい。

 

『結局ピーマン体操聞かされて鳥肌まで立たされて私が罰ゲーム受けたみたいなもんじゃない!』

『ほんとごめんねかなちゃん。私も何か罰ゲーム受けるから』

『負けてないのに流石にいいわよ、今回のも事故みたいなもんだし。それならアクアと二人で『サインはB!』でも踊ってファンサービスしてあげたら?もうすぐB小町のライブもあるでしょ』

『は?なんで俺が……分かったよ』

「あっアクアが折れた。ほんと優しいんだから〜可愛いなぁ」

 

一瞬反対しようとした様子を見せたアクアがあっさり受け入れたのをみてアイはニコニコと笑いながら言う。

 

「んふふ、悪ぶろうと思ったけど流石にロリ先輩が可哀想になったから素直になってるね」

「恥ずかしいから冷静な分析はやめろ」

 

ルビーの正確な分析に人から言われて羞恥に襲われるアクアの頭をアイは優しく撫でてあげた。

そのままエンディングとしてアクアとあかね二人とも『サインはB!』アイパートのダンスを完全に踊りきって動画は締めとなった。

エンディングテーマとして流れた『サインはB!』に合わせて完コピで踊っている二人にコメントのファンも満足そうにしている。

 

「うーんこれみてるとやっぱりあかねちゃんもアイドル誘いたくなるなぁ〜。前はアイドル興味なさそうだったけど今はママのファンだし聞いてみてもいいかも」

「凄いよね、踊りまでコピーしてるなんて本当あかねちゃんは徹底的に役を再現する。私も負けられないかなぁ」

 

踊っているあかねを見たルビーがそんなことを呟く。

アイとしても自分の役を演じることがあるのは認識しているが、そのクオリティがどんどん高くなっていくことにオリジナルとしての矜持のようなものを感じているらしい。

 

「それにロリ先輩も歌路線受けなかったけど後半結構上手くなってたよね?」

「まぁぶっちゃけ当時のルビーより歌上手かったな。ただ本人があまり歌で成功するビジョンが見えてないから嫌がるだろ」

 

歌番組に凄い勢いで出ていたかなも当然のように候補に入れられていた。

本人はあまり歌路線が好きではないようなので、アクア的にはあかねより強敵だと考えている。

 

「むぅ……ロリ先輩はあの清楚路線みたいな歌が合わなかっただけでアイドル自体はいけると思うんだよね」

「軽く聞くだけならタダだし聞いてみたらいいんじゃないか?多分断られるけど」

「うーん……ママの引退ライブ後に聞いてみようかな〜。もしかしたらママのライブで心動かされるかもしれないし。もちろんフリルちゃんに相談してからだけど」

 

苺プロのメンバーはみんな最終ライブのチケットをもらえることになっている。

自分の推しでありママであるアイならば、二人の心を動かしてアイドルをやりたいと思わせてくれるかもしれない。

そんな期待を込めて、ルビーは彼女達を誘う予定を立てるのだった。

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