【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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当初の想定より小学生編が長かったのと中学生編は章分けが細かいので章変更します。
感想、評価、お気に入り、ここすき全て大変励みになっています。
また、誤字修正については非常に助かっております。
まだ長くなりますが、お付き合いいただけると嬉しいです。


自分探し編
進学


「いいよ〜四人ともいい感じ!撮るよ〜」

 

伊達メガネに艶やかな黒髪。

目立たない服を着てもなお、その言動と溢れ出るオーラで周囲に注目される小柄な女性。

そんな彼女は今、自前の高性能カメラで最高の瞬間を逃さないとばかりに四人の少年少女を撮影している。

 

「アイ、お願いだからちょっとくらい自重して?小学校入った頃よりあなたは有名なのだから周りの人もめちゃくちゃこっち見てるわよ」

「大丈夫大丈夫。もし注目されても平気だよね、別に悪い事してるわけじゃないし」

「騒ぎになって人様の迷惑になるでしょ、ダメよ」

 

ミヤコはそんなアイを必死に止める。気分はすっかり娘の暴走を止める母親だった。

全員が練習と称して撮影などを行なっている関係で、写真映りなどは各々が意識して調整できる。

アイの指示で横一列に並んだアクアたちはそんな光景を見ながら自分がよく見える姿勢を取って、写真を撮られていた。

そんなアクアたちは先月までとは違う制服に身を包んでいる。

ついに中学校へと進学したのだ。

今日はその初日ということで、以前のようにアイのテンションが高くなっている。

 

「アイはあれだけ仕事入ってても、時間作ってくるのは流石だよな」

「マ……お姉ちゃん仕事溜めないように立ち回ってたもんね。でも楽しそうで私も嬉しい!」

 

アイはもうすぐ30歳になるが、まるでその容姿が衰える様子はない。

それどころか大人の色気ともいうべきオーラが出てきた事で、以前より更に人気となっていた。

今一番人気の女優は誰かと聞かれるとほとんどの人がアイと答えるだろう。

そんな人物が一学校の入学式に変装はしているものの、溢れ出るオーラで貫通して注目されている。

 

「民度いいわね。アイさん変装はしてるけどバレバレだし。その割にみんな見るだけで済ませてるし」

「せやねぇ。ルビーの写真も未だに出回ってないんやろ?ええ学校やわ」

「いや〜ほんとありがたいよね。折角デビューでビックリさせようと思ってるのに写真で回っちゃったら勿体ないもん」

 

精々アイ本人がTwitterの通りアクア追っかけをしている情報が流れるだけで済まされるだろう。

余計な事をされない不思議な治安の良さがそこにはあった。

 

「マリンは今回も新入生代表挨拶だよね。頑張って?」

「正直挨拶の内容が少し濃くなるくらいで前と代わり映えしないけどな」

 

もう六年も前にアクアは新入生挨拶を行なっている。

今考えると小学一年生がやるようなことではないよなとアクアは考える。

 

「うちは見たことあらへんから楽しみよ?」

「みなみちゃん楽しみにしててね!お兄ちゃんキリッとしながらやるからカッコいいんだよ!後でお姉ちゃんが撮ってくれた写真分けてもらわないと」

「謎にハードル上げんな」

 

みなみは今年からアクアたちと同じ学校に通う。

一ファンとしてはどんな挨拶をするのか興味があった。

ルビーはいつも通り兄のカッコいいところが見られればそれで満足だと思っていたりする。

 

「とりあえず私とアイは保護者席に座ってるわね。行くわよアイ」

「あぁ〜まだ撮り足りないのに。でもしょうがないか、またねみんな〜」

 

ズルズルと音を立てそうな格好でアイを連れていくミヤコ。

そんな姿を見てフリルはボソッと思ったことを口にした。

 

「稼ぎ頭でも容赦なく引き摺っていくよね」

「お母さんはお姉ちゃんのママみたいなものだから」

 

ここでルビーのいうお母さんはミヤコ、お姉ちゃんはアイのことである。

ミヤコからすればこの親子三人組など全員まとめて自分の子供のような認識となっているため、あながち間違っていない。

まだアイによる騒ぎが収まらない中、アクアたちは自身のクラスを確認するために移動を始めた。

 

「不安やなぁ同じクラスになれるやろか」

「小学校と同じなら一緒だとは思うが、中学生だとどうだろうな」

 

去年まで居なかったみなみは自分の心配をする。クラス分けは小学校までとは異なり、毎年行われる。今年を乗り越えても来年どうなるかは不明だ。

だが、アクアたちはそこまで心配していなかった。

移動しながら人波にいる顔ぶれを見渡すとそこそこ知らない顔がいる事に気が付いた。

 

「マリンの影響で受験者数増えたって情報もあるから外部生も多いわね」

「確かに!……お兄ちゃん狙いの人とかいそうだなぁ、よく警戒しとかないと」

 

もう中学生は恋愛についてかなり考える年齢だ。

アクア達の元クラスメイトも付き合っただの別れただのといった会話が聞こえるようになっている。

ルビーは自分が血縁という恋愛関係になるにしては、大きなハンデを背負っていることを自覚しているため、長期戦を考えている。

その隙を突かれないように、色々と警戒しながら立ち回る必要があった。

こう見えてルビーは計算高い一面があるのである。

そんな会話をしながらクラス分けの紙の前へと移動した一行は、自分たちのクラスを確認する。

 

「あっよかったぁ。ウチらみんな同じやね」

 

自分の名前と一緒に三人の名前を見つけたみなみはほっと一息をつく。

エスカレーターで交友関係が完成されている中にいきなり飛び込むのは勇気があったのだ。

 

「外部だと最初のハードル高いからコミュ力高いルビーと同じクラスなのはいいと思う」

 

男友達と呼べる相手が少ないアクアがそんな事を口にする。

実のところ、そこそこ仲が良く野球に誘ってくれた同級生も同じクラスで内心ちょっと安心した。

四人はそのまま揃ってクラスへと移動する。

教室に行くと外部生と内部生がそれぞれのグループで話をしている姿が見受けられた。

まだ一部のコミュニケーション能力が高い人以外は交友が狭そうである。

ガラリと扉が開かれて、アクア達の姿が見えた時、教室の中で外部生の方は一瞬静まり返る。

その昔、小学校に入学した時のことを思い出してアクアは懐かしい気持ちになった。

そんな感傷に浸っていたアクアへ声がかけられる。

 

「よっ星野!また同じクラスだな」

「こっちこそよろしく」

 

おそらくクラス男子だともっとも仲の良かった相手がクラスに入ってきたアクアを歓迎する。

外部生の方は今更になって動揺から回復し、アクアの存在にザワザワとし始めたものの、内部生の方が割合的に多いおかげかそこまで気にならない。

 

「おにいちゃ〜ん、私たちも話してくるね」

「ああ、迷惑かけるなよ」

「しないよ!もう子供じゃないんだから」

 

アクアの会話を邪魔しないようにとルビーは気遣ってフリルとみなみを連れてその場を離れる。

そこで初めてみなみの存在に気が付いた少年はアクアに肩を組んできてから小さい声で話しかけた。

 

「あれ?あっちの胸大きい可愛い子誰?去年まで居なかったし外部生だよな、どんな関係?」

「苺プロの関係者だよ。あとでかい声出すな向こうに聞こえるだろ」

 

まだ妹のいるアイドルグループの子ですとは言えないため濁した言い方をアクアはする。

その反応を見た少年もニヤニヤしながらアクアに言葉を続けた。

 

「新しい女の子と連んでるのか?テレビに出てた時からかなちゃんとあかねちゃんを誑かしてるって言われているだけはあるなぁ」

「なんでなのか分からないんだよな。有馬たちもだけど皆ただの同僚だぞ」

 

口ではそう言いつつも、実のところ最近アクアは自身の心境の変化に驚いていたりする。

身近に過ごしてきた彼女たちのふとした仕草に、心拍数が上がったりする事が起きるようになった。

雨宮吾郎として考えると彼女たちはそういった対象になり得ない年齢である。

自分のヤバい性癖が目覚めたのかと最初は心配になったほどだった。

 

「いやーそんなこと言って!本当は内心ドギマギなんじゃないの?あんな可愛い子達と一緒に過ごすんだぜ?」

「それでドキドキしてたら仕事にならないだろ……可愛いのは認めるけど」

 

だが、医者としての知識を使い、冷静に考える事で思春期が訪れているからこそだと分析できた。

少しずつ肉体に精神が適応していくのは以前から感じていたが、なかなか厄介だなとも感じている。

特に周囲への警戒が強まっているのをヒシヒシと感じており、仲のいい相手に苛立って当たったりしないよう精神のコントロールが必要になっていた。

 

(これはこれで演技の経験値になるかもな)

 

思春期特有の現象を切り分けて自覚できるのは、転生者ならではの体験だ。

少しずつ変わる自分を俯瞰的に追う事で、学生を無理なく演じる事ができるようになる。

そこまで考えて休業中にも関わらず、演技のことに思考が傾いた自分に気が付いてアクアは内心苦笑する。

 

「可愛いといえばさ!最近の不知火さん綺麗すぎじゃね?」

(こんな時にも俺は演技のこと考えているのか。……そういえば元々僕、雨宮吾郎はそこまで演技に興味があった人間じゃなかった。実際最初の頃はそこまで本気で演技をやるつもりじゃなかったはずだ。いつの間にか本気で楽しんでいて。……僕は本当に雨宮吾郎なのか?それとも星野アクアなのか)

 

これまで転生という摩訶不思議な事象を何となくで受け入れていたが、自分の変化を如実に感じて少し疑問が生じていた。

そのまま深い思考に入りそうなアクアの耳元で声が聞こえる。

 

「星野〜星野!」

「悪い、考え事をしてた。それでなんだっけ」

 

アクアに話しかけた少年が少し心配そうにアクアの方を見ていた。

アクアは自分の思考に入りすぎて全く話を聞いていなかった相手に話の内容を確認する。

少年も呆れたような表情をしながらも答えてくれた。

 

「いや、聞いとけよな!可愛いといえば、最近の不知火さんまじで美人じゃねって話をだな」

「本当思春期男子って感じだな」

 

ここ一年くらいで同級生から急速に異性に関する話をしてくる割合が増えた。

アクアとしても年齢的にはそうだろうなと納得しながら話を聞いている。

 

「そりゃそうよ!中学生だぜ?あんな美人いたら気になるだろ、星野は気にならないのかよ」

「友達だぞ?そんな視点でばかりは見ないだろ」

 

精神だけとはいえ大人であるアクアが、中学生にそんな思考を向けるはずがないのだからと世間一般の考えに合わせた答えを口にする。

そこからもアクアは思春期男児トークを程々のところで受け流し続けていたが、先ほどの疑問がどうしても引っかかり続けていた。

 

放課後、ルビー達は慣れたようにアクアの席へとやってくる。

 

「おにいちゃーん、帰ろ!」

「ん?ああ、そうだな」

 

少し元気のなさそうな兄に首を傾げるルビーだが、理由が思い付かない。

今日はレッスンこそないが、途中まで帰路が同じためフリルとみなみも一緒に帰ることになった。

レッスンの話や今後の話を話しながら帰っている帰り道。

 

「それで?私が美人って話についてマリンはどう思う?」

「……聞いてたのか」

 

フリルがアクアへ突然関係のない話を切り出した。

どうやら朝の会話が彼女にまで聞こえていたらしい。

表情の変化は乏しいが、きっと楽しんでいるのだろうというのは長い付き合いでわかっている。

アクアは改めてフリルを見る。

フリルもそれに応じるようにアクアの目を見つめ返す。

 

「客観的に見てフリルは美人だからそういう話に出てくることもある」

「ちぇーつまらない答えをするねマリン」

 

吾郎として考えた時には守備範囲から遥か下の幼さだが、目もぱっちりとしており、鼻筋も通っている。

可愛らしいというより確かに同級生が言うように綺麗が近いだろう。

朝にそんな話をしたからか少しドキリとさせられた。

ただバカ正直に言っても碌なことはないので、アクアは無難な答えを返す。

フリルはつまらなさそうな表情を浮かべた後、これ以上追求しないと決めたのか言葉は続けない。

だが代わりにみなみが話を続けた。

 

「アクアさんでもそういう話することあるんやね」

「一応思春期男子だからな。俺でも年相応に女子に興味くらいある」

 

これもごく一般的な回答だ。

アクアは肉体による精神の変化を日々感じている。

そんなままならない感情の制御は大変だなと思いつつも、一度は経験のあることだと御しきれていた。

 

「お、お兄ちゃん!?お兄ちゃんにはまだそういうの早いよ!具体的にはあと三年と数ヶ月くらい!」

「なんでそんな妙にピンポイントなんだ?」

(だって私が16歳になるもん)

 

ルビーはよくアクアのことを分かっている。

たとえ余命幾許もない子供との約束であっても自分の言葉に責任を感じてくれるはずだと認識している。

そこから攻勢に転じればワンチャンあるかもしれない、それが彼女の考えた作戦だ。

だがそれまでに他に大切な相手ができてしまえば厳しい戦いになるだろう。

そう考えて今はアクアに大人しくして欲しかった。

 

(アクアはせんせだったんだからどう考えても女好きだし、今世を見る感じでも女たらしだから多少の寄り道はしょうがない!けど最後に私のところへ戻ってきてくれないと)

 

前世でさりなとして会話した内容を思い出す。

あのチケットをもらった日。どこかに消えてしまったと思ったところで帰ってきた吾郎に尋ねたのだ。

 

『恋愛絡みの修羅場って……。俺、そんなに遊んでいるように見える?』

『うん。わりと。二股三股くらい余裕でかけてそう』

 

そんな今思い出せば失礼なさりなの質問に心当たりのありそうな苦笑を浮かべていた。

B小町Rのみんなへの対応を見るにそこまで今世でも変わっていないだろう。

そんなダメな部分まで好きになってしまっているのは如何なものかと思われるかもしれないが、本人は至って真面目だった。

 

「というかさ、お兄ちゃん今日ずっと何か悩んでない?」

 

ルビーはそんな会話の中、やはりいつもよりアクアが暗い気がして尋ねることにした。

その言葉にアクアは誤魔化すように声を出す。

 

「……そうか?」

(悩み……そうだな。俺は一体、僕は一体誰なんだ?)

 

ずっとアクアは自分を雨宮吾郎の延長だと思って過ごしていた。

確かにアクアは前世に区切りもついたからと早い段階で元の自分とは話し方を変えたりした。

だが考え方などは変えたつもりはなかった。

だけど最近少しずつ年齢による物以外にもアクアは変わりつつある。

この転生という奇跡がいつか終わる泡沫の夢だとして、アクアは、吾郎はそれでいい。だけどルビーは、さりなは?

それだけは許容したくなかった。

 

「もし……もしせんせが不安なら私を頼ってよ?きっと今度は私が力になるから」

 

そんなアクアを心配そうに見ながら言うルビー。

その真剣な表情は昔から変わっていなくて、ずっと昔に吾郎の人生に彩りを与えた時の綺麗な目をしていた。

アクアは一度自分の頭をかいた後、ルビーの頭を軽く撫でながら考えを口にした。

 

「最初は僕一人に考えさせて欲しい。それでもし僕がどうしても答えを出せなかったら……その時は相談させてくれないかさりなちゃん」

 

このままアクアだけで抱えていても解決しない可能性がある。

それならば同じ体験をしている相手の知識を借りるのも悪くない。自分だけの問題じゃないのだから。

こんな思考もまさにアクアになってからの変化だ。

以前の吾郎であれば、どんなリスクがあっても自分だけで対処しようとしていただろう。

アクアとルビーは立ち止まって互いに見つめ合う。

永遠にも感じる時間を何もせず過ごしていく。

そんな時、横から声が聞こえてきた。

 

「みなみ今の見た?何かの映画のワンシーンかな……マリンの優しい声本当にドキドキした。ルビーもいつもより儚いというかいつ消えるかわからない透明感があって良かったよね」

「ほんまな。アクアさんも表情もいつもより柔らかくて顔赤くなってもうたわ。ルビーなんて心の底から愛してるって感じが漏れ出てて……あかん、まだ胸キュンキュンする。あんなの少女漫画やん」

「「あっ」」

 

アクアは自問自答の結果、前世の認識が強くなり、ルビーもその雰囲気に影響されて思わずやってしまったと冷や汗を流す。

そんな不思議な空気を纏う二人を見てフリル達は頭に疑問符を浮かべる。

そこからフリルは二人を交互に見ながら少し悩んだ仕草をするも、首を縦に振って自分に何かを言い聞かせてから話す。

 

「……何か秘密がありそうだけど、聞いたら何となく銀河の果てまで見えるようになりそうだから今はお預けにしとくね」

「そうしてくれ。役に入り込み過ぎたようなものだ」

「役ね……まぁいいけれど」

 

役、アクアは自分で口にしながらもしかしたら自分は何か思い違いをしているのかもしれないなと考える。

ただ時間はまだあるのだから焦る必要はないかと思考を後回しにした。

 

「アクアさんでもそんな事あるんやな。演技は役に入り込んでなんぼって聞くけど」

「俺は割と切り替えるの得意な方だけどな。その辺りは個性出るぞ」

 

なんとか前世関連の話が流れてアクアはほっとする。

どちらにせよ今すぐには結論が出ないということだけは変わらなかったが、少しだけ気持ちは楽になった気がした。

 

 

アレからは特に変な話もなく、日常会話をしながら道が別れるまでフリル達と行動を共にした。

特筆する問題もなく家に着いた二人は扉を開けて中に向かって声を掛ける。

 

「ただいまー!」

「ただいま」

 

そんな声が聞こえたところでパタパタと中で人が動く気配がして、玄関への扉が開かれた。

 

「おかえり〜二人とも。今日もさいっこうに可愛かったよ〜」

「うぐっ苦しい」

「あはは、ママあったかいね」

 

その勢いのまま抱きしめられた二人はそれぞれ抱擁の感想を口にする。

そんな双子を見てアイは万人を魅了する笑みを浮かべた。

 

「いやぁ今日はご馳走だから。こういう料理バシバシ作れるようになったのがあの休業リハビリ期間のおかげだと思ったら悪くないかも」

「縁起でもないことはやめてくれ」

 

確かにアイはあの期間で家事全般が得意になった。

それだけではなく、色々と交友関係も深まって本人にとってはいいこと尽くしだろうが、アクア達からすれば2度と御免だった。

 

「ごめんね、色々楽しい思い出があったからつい!アクアたちのために栄養バランス考えて作ったんだよ。特にアクアでも食べられるピーマン料理とか」

「えっ」

「あはは、おにいちゃん顔青ざめちゃってる」

 

アクアの珍しい表情にルビーは思わず笑う。

そんな彼女に反論したいアクアは思いの丈を口にした。

 

「いやピーマンが苦手なのは事実だけど食えないわけじゃないし。確かに栄養素的にもピーマンは高いけど、全部がピーマン味になるのに食べる必要ある?他の食材で補えばよくない?ってなるだけで」

「めっちゃ喋るじゃん」

「ごめんねアクア冗談だからね。ピーマン入ってないから安心して」

 

ここでアイがネタバラシをする。

アクアをドッキリさせようと思って用意した話だったのだが、ここまで嫌がるのは予想外だった。

 

「……冗談かよ」

「露骨にほっとしてる。可愛いなぁアクアは」

 

大人しく頭を撫でられるアクア。

自分が何者かそんなものはどうでも良い気がしてくるほどの圧倒的幸福がそこにはあった。

 

「おにいちゃん?私もやってあげよっか?」

「いや、いいよ。なんか恥ずかしいし」

「きゅん!おにいちゃん可愛い〜」

 

馬鹿馬鹿しいほどに穏やかな日常。

それを守るため、アクアは早いうちに自分が変わっていく理由を見つけようと決意するのだった。

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