【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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ちょっぴりシリアス風で現実的話があります。


攻勢

「……一睡もできなかった」

 

誕生日の翌日も今ガチの撮影現場に来たアクアは、今日が他の仕事ではなく今ガチである事に感謝していた。

寝不足は色々と状態が悪くなる。

今ガチのようなリアリティーショーには、そういう体調が悪いのもイベントとして撮れ高というプラスに変換できる可能性があるため、まだマシと言えるだろう。

 

(ルビーに、さりなちゃんに俺はどう応えるのが正解なんだろうな)

 

普通に考えれば拒否以外選択肢はないだろう。

だがアクアは彼女の境遇もその努力も知っている。

雑に返事をすることなどできるはずもなかった。

 

「アクアくん、大丈夫?」

「……あかねか。少し休めば治る」

 

悩みながらも木陰にあるベンチに座って少しでも体調を回復させようと休んでいたアクアへあかねが声を掛ける。

アクアから見てあかねという人物はとても信頼できる仲間だ。

アイの隠し子という秘密に自力で辿り着いたが内密にし、アクアが考えている『15年の嘘』計画についても知ってからはずっとフォローしてくれている。

もしこの悩みを誰かに相談するとするならばうってつけの人材だろう。

 

「なんだか今日は体調悪そうだよね?あのパーティーの後なにかあったの?」

「いや、ただ少し寝付きが悪かっただけ」

 

ただ、流石に『妹にキスされて一睡もできなかった』なんて馬鹿正直に言う勇気はいくらアクアでもない。

実際にそんな事を口走れば、どんな反応が返ってくるのか想像もできないため、アクアは誤魔化すことしかできなかった。

 

「そっか!じゃあ今日は動きの多い事はやらずに控えめな方がいいかもね」

 

あかねもその言葉が本当だとは思っていない。

あかねは改めてアクアの顔色を見る。寝不足というのは本当なようでうっすらクマができているのが確認できた。

あかねはアクアの悩みの理由を考察する。

 

(私たちが帰る前のアクアくんは、普通に楽しそうで悩み事なんてなさそうに見えた。その後は家に帰ったはずだから、悩みの種となるのはアイさんかルビーちゃんの二択かな。アイさんはちょっと親バカの傾向はあるけど、あの日は珍しくお酒に酔っていて眠そうに見えたからルビーちゃんの可能性が高そう。アイさんもルビーちゃんもTwitterさっき更新してたし、何か二人に悪い事があった可能性も低い。誕生日特別な日……もしかして告白した?なんで16歳で?……もし告白だとしたら計画を変更する必要があるかな)

 

自分が思っているより時間的余裕がないかもしれない可能性に気が付いたあかねは、予定にない攻めの姿勢を見せる事を決める。

悩んだ様子を見せた後、彼女はアクアの座っている横にそっと腰掛けた。

 

「あかね?」

「えっとねアクアくん……その……」

 

少し歯切れが悪そうなあかねを不思議そうにアクアは見る。

ここは定点カメラの範囲内。マイクも仕込んであり、使われる可能性があるやり取りだ。

何かしら今ガチの番組で使えそうなことをやるつもりなのだろうとアクアは見当をつけてあかねの言葉を待つ。

少し時間が経ち、勇気が出たあかねは言葉を続ける。

 

「折角だし少し……寝る?今なら……私のここ空いてるんだけど」

 

そんな事を言いながらそっと自分の太ももをぽんぽんと軽く叩くあかね。

アクアはそれを見て少し考える仕草を見せる。

たとえ今生の妹とはいえ、女の子に告白されて何も応えていない男が、そのまま別の女の子とそんなイベントをこなしていいものかと悩むアクアは、あかねに意思確認を行なった。

 

「……なるほどな。でもカップル成立してない男女にしては攻めてないか?」

「いいんだよ。だって私たちは……幼馴染なんだから。それくらい普通だよ」

 

そうは言いつつもあかねの顔は少し赤い。

あかね自身もいつもより攻めているのが分かっているからだろう。

アクアも自分なりにリスクとリターンを考えた結果、あかねの提案をありがたく受けることにした。

イメージされるカップル定番のイベントであり、距離感を間違えている幼馴染というアクアとあかねの設定には実に適した展開。

視聴者数を稼ぐのに効果的なのは間違いないのだから。

 

「そうだな……悪い。少しだけ仮眠させてくれ」

「どうぞ」

 

そう言ってアクアはあかねの膝にそっと頭を下ろす。

アイドルをやってそれなりに鍛えているあかねだが、頭を下ろせば柔らかな感触がアクアには伝わってきた。

想像よりずっと心地がいい。

 

「重くないか?」

「全然……むしろアクアくんこそ寝心地悪くない?」

 

膝枕などやったことがないあかねは、自分から提案したもののもし硬いとか言われたらどうしようとか今更心配をしていたりする。

 

「いや、膝枕とか初めてしてもらったけど、思っていたよりその……いい感じ……だと思う」

「そっか、よかったぁ」

 

アクアの返事にホッとしたようなあかねの声。

そこで一度会話が止まる。

当たり前だが、この光景が後日全世界に配信されると思えば、恥ずかしさは捨てきれない。

お互い視線を合わせて照れ隠しに笑みを浮かべ合ってから口を開いた。

 

「演技だと色々やるのにどうして恋リアだと恥ずかしいんだろうな」

「やっぱり素だからじゃないかな」

 

実際には二人とも演技の自分を混ぜている。

だが、恋愛リアリティーショーということで本当の自分に近い。

普段の演技と比べて、より意識してしまうのも仕方がない事だろう。

それから二人は普段の感じを取り戻し、とりとめのない話をしていく。

ただやはり原始的な欲求には勝てないのか、横になって心地いい状態が続いたことで、アクアは一気に睡魔に襲われ目を閉じた。

 

「すぅ……すぅ……」

「ふふっ……アクアくんこうやってみると可愛いよね。普段はあんなにカッコいいのに」

 

普段は凛々しさが勝るアクアだが、こうして無防備な時などはアイ譲りの可愛らしさが表に出る。

 

「……おやすみアクアくん。起きたらまたお話しようね」

 

ゆっくりと彼の頭に手を伸ばし、起こさないように慎重に頭を撫でる。

眠るアクアを眺めるあかねは、誰が見ても分かるような恋する乙女の表情を浮かべていた。

 

一方その頃、そんな二人から少し離れたところから4人の集団が揃ってアクアとあかねの動向に注目していた。

 

「どうしよ、出るタイミング逃した感じするよね」

「まぁあんだけイチャつかれたらな」

「どっかで揶揄うつもりだったんだけど」

 

昨日の焼肉会でそれなりに仲良くなった彼らは、アクアとあかねに昨日あったという誕生会の話を聞くつもりだったのだが、出鼻を挫かれ今に至る。

ミミも会話にこそ参加していないが、ソワソワした様子で二人を見守っていた。

 

「アレで付き合ってないって言うんだから世の中分かんないよね~」

「ホントそれ!俺らあの二人交えながら恋愛するんだからハードル高いわ」

 

ゆきの言葉に同意するノブユキ。

あかねに対してだけでなく、アクアは基本女性陣に優しいので全体的なハードルが上がっているという事情もあったりする。

 

「あっ……ヤバ」

「ミミ、どうした?」

 

ミミが小さく怯えたような声を出したのを聞いて、ケンゴが何があったのかを尋ねる。

 

「あかねが……ミミ達の方を見てる」

「「「え!?」」」

 

気付かれていないと思っていた三人が、みみの言葉に驚きの声を出してあかねの方へ向き直る。

先程までアクアの方を向いており、慈愛に満ちた表情を浮かべていたあかねが、いつのまにか四人の方を見てニッコリとしている。

整った顔立ちからの笑顔のはずなのに、何人かはブルリと震えた。

 

「アクア起こしたくないだろうし俺たちもリアリティーショー頑張るか」

 

ノブユキはグッと身体を伸ばしてあかね達と反対方向を向きながらそんな事を言い始める。

 

「そうだね〜アクアは寝てるけど一番いい仕事してるわけだし、私らがサボってるわけにもいかないよ。今が一番目立てるチャンスだし。ノブくんちょっとあっちでお話ししようよ」

 

アクアが起きていれば、手を替え品を替えアクアは自分が目立ちやすいように立ち振る舞う。

アクアも最低限他のメンバーも目立てるように動いているが、ゆきのように作品の中で爪痕を残したいメンバーにはチャンスだった。

 

「あー……ミミはそのーちょっと向こうでTwitterを」

「みみは俺と話すか。昨日持ち歌に興味あるって言ってたよな。俺にはその辺の知識もあるけど」

「ぐっ……ひ……ひきょうな」

 

そーっと静かな場所に引き篭もろうとしたミミを見て、自分も撮れ高に貢献するため捕獲するケンゴ。

あまり積極的に恋愛に動くつもりこそないものの、最後に告白する相手は誰かしら必要だろうと考えた結果、言い方は悪いが余り物になりそうなもの同士で動いておくのもいいと考えた結果だったりする。

苦い顔をしたミミを連れてケンゴも離れたことで、アクアとあかねは二人だけこの場に残された。

 

「ふぅ……皆離れてくれた。アクアくん本当に気持ち良さそうだから起こさないようにと思ってたけど気を遣ってくれたんだなぁ」

 

実際にはあかねが彼らを見つめたことで威嚇されているかのような錯覚を覚えただけである。

そんな事は露知らず、二人きりの世界に入っている状態のあかねは、そのままアクアが起きるまでニコニコとしながら膝枕をし続ける。

結局アクアが自然と起きるまでの時間、あかねはアクアの安眠を守り続けるのだった。

 

それからしばらく時間が経ち、アクアは自然と目を覚ます。

 

「……あかね。俺何時間寝てた?」

 

視線を動かして自分の状態を確認したアクアは、優しそうなあかねの表情を見て、まず自分がどのくらい寝ていたかを確認していた。

 

「4時間くらいだから心配しないで」

「めちゃくちゃガッツリじゃねぇか……本当に悪いな」

「ううん、私がしたいからしただけだから気にしないで」

 

いくら長い付き合いとはいえ、寝不足の原因が他の女の子(妹)との関係にあるため、余計に申し訳なさをアクアは感じる。

その罪悪感を含んだ表情に、あかねは自分の分析した結果はあながち間違いではないだろうと認識を更新した。

 

「それにアクアくんが普段しない気の抜けた表情を見られたから、私は楽しかったくらい」

「……そうか」

 

アクアは気恥ずかしさからあかねの足から離れ、身体を起こす。

あかねは太ももから熱が消えたことに、寂しそうな表情を浮かべた。

 

「アクアくんが何を悩んでいるのかは今は聞かない。けどアクアくんがどんな選択をしても私は君の味方だよ」

「大袈裟だな……本当に個人的な話なんだ。心配かけて悪いな」

 

そんな会話をしたところで、ゆきとノブユキがアクア達の様子に気がついて近づいてきた。

 

「アっくん起きてんじゃん。どうよあっちゃんの膝枕!男の夢ってやつじゃね?」

 

ニヤニヤと揶揄う姿勢を見せるノブユキにアクアも軽い感じで答える。

 

「そうだな、あかねさえ良ければまたお願いしたいくらいだ」

「あ、アクアくん恥ずかしいよ……」

 

アクアが素直な感想を言えば、あかねは顔を赤くして俯きがちに呟く。

ただその後、すぐにあかねは言葉を続けた。

 

「でも……もしまた膝枕が欲しかったらいつでも言ってね?私、アクアくんになら何回だってイヤじゃないよ?」

「ひゅー!あかね大胆!」

 

ゆきとノブユキの相性はいいらしく、結局撮影が終わるまで、アクアはあかねと一緒に膝枕について揶揄われ続けることとなった。

後日このシーンが放送された結果

『あかねちゃんの貴重な雌顔いただきました!』

『やっぱアクあかしか勝たん!』

『あかねママァバブバブ』

と言ったような投稿がSNSなどでされることとなる。

 

 

今ガチの撮影が終わり、帰宅したアクアは玄関でルビーに出迎えられた。

 

「おにいちゃん!おかえり〜」

 

昨日のことなどなかったかのように軽い挨拶をするルビー。

一体何を言われるんだろうかと昨日の今日だから気にしていたアクアとしては拍子抜けだ。

朝は話すタイミングなく出てきたため、今日初のまともな会話となる。

 

「ただいま」

「今ガチの撮影どうだった?」

「……どうってのは?」

 

アクアは思わず質問に質問で返してしまう。

先日告白をした相手が恋愛リアリティーショーに出ているというのは、きっとルビーにとって面白くないだろうなとアクアは考えた。

ただルビーはそんなアクアに笑って答える。

 

「いやーおにいちゃんにも気になる相手とかできたかなーって」

「別に。計画通りあかねと良さげな空気を出してカップル不成立狙いだから心配するなよ」

「そうなんだ……良かったぁ」

 

その言葉の意味をアクアが追求することはない。

お互い昨日のことは触れずに、だが際どいラインの会話がされていく。

ただ、アクアとしてもいつまでもはぐらかすわけにはいかない。

一呼吸おいて、勇気を出して昨日の話題を振ることにした。

 

「ルビー……」

「っ!?なっなに?」

 

これからアクアがしようとしている話題を察してかぴくりと震えるルビー。

彼女は続きを聞きたいような聞きたくないようなフクザツな表情を浮かべる。

そんな彼女を見てアクアは

 

「とりあえずリビングで話をしよう」

「あっ!?う、うん……ごめんね、おにいちゃん」

 

一度話を止めてリビングに移動することにした。

 

いつも生活している変わらないリビング。

ただ普段とは異なる空気が満ちていると二人には感じられた。

 

「ルビー、昨日の話だが」

「うん……」

 

アクアは冷静に話を切り出す。

自分の気持ちを少しずつ整理するように、どういう方向に話を持っていきたいのか自分の中で決めながら。

 

「ルビーの告白自体は色々複雑ではあったけど……正直嬉しかった。あの日、君を助けられなかった俺が、雨宮吾郎の無力感や後悔が許された気がした。少しでも君の力になれていたんだとようやく実感できた」

 

アクアは自分の思いを語る。

吾郎としての自分もアクアとしての自分も肯定してもらえたようなそんな気持ちと言ったらいいだろうか。

あの気持ちを否定させないと言い切った強い眼差しが、アクアの心の一部を溶かしていた。

 

「当たり前だよ。せんせが居たから私はアイドルを目指そうなんて本気で思えた。今の私を形作った根幹がせんせなんだよ?そもそも私の病気はせんせ何にも悪くないのに。変なところまで背負おうとしちゃってぶきよーだね」

 

そんなアクアに対して気にし過ぎだとルビーは笑う。

ルビーが輝いているとしたらその全ては吾郎との出会いのおかげだと彼女は思っている。

だというのに肝心の本人は妙なところを気にしているなとルビーはアクアに対して微笑ましさすら感じていた。

 

「告白内容も……まぁ色々言いたいことはあったが、俺に兄妹だからと言い訳せずに、一人の女の子として考えて欲しいと言いたい事も分かった」

「うん……せんせがもし16歳になった私に告白されたと思って答えて欲しい」

 

そこまで確認した上で、元医者としての視点から大切な点も釘を刺しておく。

 

「どう取り繕っても生物学上俺とルビーは今世で兄妹だ。だからこれだけは忠告しておく。仮に俺とルビーが結ばれたとしても普通の子とリスクが同じにならない限り、子供を作るつもりはない。……それでも気持ちは変わらないか?」

 

ルビーは以前かなとの口喧嘩で一世代なら大差ないと口にしていたが、甘く見ていい問題ではないとアクアは考えている。

この先を話す上で絶対にしておかなければならない話題だった。

アクアの言葉を聞いてルビーは頷く。

 

「……うん。分かってる。その辺はほら、養子って選択も悪くないと思うんだよね〜。愛瑠ちゃん見てたら分かるけど、血の繋がりなんてなくても子供って可愛いし!それにもしかしたら私たちが若いうちにその辺全部解決するような事もあるかもしれないよ?」

「本当に……いや、分かってるならいい」

 

転生前に産婦人科医だったアクアが、このリスクを軽視するはずがない事も本当はルビーだって理解していた。

それでも彼女はアクアがいいのだ。

アクアはルビーに苦言をしようとしたが、その真剣な瞳に覚悟を感じたため、それ以上は言わなかった。

 

「分かった。じゃあ俺の考えを言わせてもらう」

 

ルビーの中では、正直なところこのままだとどのような回答が返ってくるか察しはしている。

何とか涙を堪えるように気丈にアクアの顔を見ていた。

そんな彼女の表情を見ながら、自分の答えをアクアは出していく。

 

「俺にとってさりなちゃんは……ルビーは……なんて言ったらいいんだろうな。推しであり、患者であり、妹であり、大切な人であり。まぁ複雑なんだよ」

 

口に出している内に整理できるかと思ったアクアだったが、まるでまとまらない自分の考えに苛立ちすら感じてしまう。

だからこそ、本当は選びたくない選択をアクアは選択した。

 

「だからここまで色々言わせておいて不義理だとは思うんだが……あと少しだけ待って欲しい。俺が自分の感情を整理するまで」

 

アクアは改めて考えてもルビーに対してはさまざまな感情のラインが自分でも整理できていない。

一体この大切に思う気持ちはどう言った種別の感情なのか正しくグループ分けできていないのだ。

今すぐ結論を出せと言われたら出せなくはない。妹の幸せを祈るだけなら今傷ついても正しい選択をするべきだ。

倫理的に考えても常識的に考えてもこれは絶対間違いではない。

ただこの答えはルビーの望むものではないだろう。

 

「そもそも俺が当時なんで16歳になったら真面目に考えるって言ったか覚えてるか?」

「え?どうしてだっけ?」

 

アクアが突然話を変えたように見えて、ルビーは少し困惑しながらも尋ね返す。

それに対してアクアは自分でも言い訳がましいと思っている言葉を口にした。

 

「さりなちゃんが僕に言ったセリフが『せんせ好き!結婚して!』だったからだ。今は法律改正で女性も18歳からしか結婚できない。だからあの時の会話の答えを俺は今することはできない」

 

ルビーは一瞬固まったあと、くすくすと笑う。

彼女はしばらく笑ったあと、落ち着いたのか一息吐いてからルビーはアクアに問いかける。

 

「ふーん、つまりおにいちゃんは18歳になったら、今度こそ真面目に考えてくれるって言ってる……ってことでいいのかな?」

「さぁな。ただ……俺の結論はそれまで待って欲しい」

「そっか〜うーん……」

 

ルビーは頭の中で冷静に考える。

そもそもあそこまでやるのはルビーとしても計算外というか、内なるさりなが暴走した結果だ。まさに16歳になるまで我慢し続けた反動といっていい。

もしかな辺りにアクアに対してイチャイチャするのを我慢していたなんてルビーが言おうものならば

 

『いや、何処がよ!?毎日毎日ベタベタイチャイチャ恋人顔負けのやつしてたでしょうが!』

 

こんなことを言われることは間違いないが、ルビー的には我慢していたのだ。

今の時点で勝算があるとは、実のところルビーも思っていない。

アクアの心に楔を打つことで、ルビーを患者や妹ではなく、女として意識させる事が一番の目的。

ここで振られてしまえば、以後可能性は潰えてしまう。

 

(おにいちゃんがここでキッパリ断らないで、考えてくれるだけでも昨日の告白は効果あったわけだし、頑張ったよね。これでまだチャンスはある!)

 

ルビーは自身の戦果を正しく認識していた。

強かな彼女はその辺りをしっかりと把握し、ここが引き側だと判断してアクアに返事をする。

 

「分かった!18歳までだからね!本当にちゃんと考えてよ?」

「分かってる」

 

本当はこんな選択良くないのは、アクアだって分かっている。

世間体や将来を考えてもここで終わらせてしまう方が正しい選択だと。

結局ルビーを悲しませるだけの選択をする可能性の方が高い。

だが、アクアにはその選択が選べなかった。

 

「でもおにいちゃん、忘れないでね」

「ん?」

 

いつものようにアクアの膝の上に座って抱きつく姿勢をとったルビー。

アクアも慣れたもので彼女が落ちないようにそっと背中に手を添える。

そんな兄の優しさに内心喜びながらもルビーは言葉を続ける。

楔をより深くするために。

 

「あの時も言ったけど、私キスしたの前世から通して初めてだから。その事をよーく覚えといてね!」

「……」

 

ニコリと満面の笑みを向けるルビーに対してアクアはふいっと目を背ける。

18歳に結論を出すということは、18歳になるまではいくら攻めても大丈夫と解釈したルビー。

この日から彼女はこれまで以上に攻勢を強めていくことになるのだった。

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