8月、今年もJIFの日がやってきた。
アクアとB小町Rは朝から事務所に集合し、ミヤコの車に乗って会場へと移動している。
愛瑠も連れられているが、まだ朝早いためスヤスヤとチャイルドシートで眠りについていた。
もう三回目ということもあって皆慣れた様子でワイワイと楽しそうに車内で会話をしている。
そんな中、ルビーがアクアへ気になった事を質問した。
「おにいちゃん、ほんと〜にナンパじゃないんだよね?」
「ちげぇよ、俺にだって友人付き合いくらいある」
「お、おにいちゃんが外で会う友達!?いつできたの!?」
朝からやたらと追求されたアクアは、ゲンナリしながらルビーの質問に答える。
ただ兄が学校以外で友人と会うという状況がこれまでなかったルビーとしては疑いを持ってしまうのも仕方がないことだろう。
日頃の行いが反映された結果と言える。
アクアはそんな妹の反応に呆れた表情を浮かべた。
「ルビー、お前かなの口の悪さ移ってきたんじゃないか?」
「私のせいにすんじゃないわよ、コイツの口が悪いのなんて元からでしょ!」
かなからの反論にそんな訳ないだろと返そうとしたアクアだが、少し積み重ねた思い出を振り返る。
「……確かに」
アクアとしてはもうルビーとして一緒に過ごした期間が長いはずなのだが、やはり人間は初めて会った時の印象が強い。
アクアにとってルビーとは前世からの繋がりであり、儚いさりなのイメージが濃いのだろう。
「JIFで会う友達ってことはドルオタだよね?おにいちゃんいつの間にそんな友達できたの?」
この中でもっともアクアと時間を共にしているルビーも心当たりのない言葉に首を傾げながらアクアへ尋ねた。
「去年のJIFで知り合ったんだよ。結構連絡取ってるしたまに時間ができた時に会ってる。一応言っとくと男三人組な」
「あっホンマに女の人やないんや……ウチもちょっとどっちかなぁ思うてたわ」
「お前らの中で俺のイメージがどうなってるかよく分かった」
変装して雨宮吾郎として出会った三人とはこの一年の間に何度か会う機会があり、自前のショップを持っている店長からはいくつかオタグッズも購入していた。
今日もウィッグとオタグッズ完備のドルオタモードである。
アクアとしてはよくこの格好で女と遊ぶと思ったなという感想を持ったくらいだ。
「へ〜ふ〜ん。なーんだドルオタ仲間に会いたかっただけなのね。ならさっさと言いなさいよ」
かなもアクアが誰と会うか気になっていたため、会話へと乱入する。
先程までそわそわしていたところから一転満面の笑みを浮かべているかな。
そんな彼女を見てかなちゃん分かりやすいなぁと隣に座るあかねはニコニコとしていた。
「なんでかなに言わないといけないんだよ……。別に俺が誰と会おうといいだろ」
「ほら、一応アンタって苺プロの身内な訳じゃない?だからアクアが下手に女の子に唾付けたら私達のイメージまで下がる訳。だから管理が必要?みたいな」
好意こそ自覚したものの素直になれないのが有馬かなだ。
アクアに変な虫がつかないことを喜んでいるのだが、遠回しな事しか言えないあたりが実にらしいと言える。
「重ちゃん、素直にならないとチャンスなく持ってかれるよ?」
「ななな何の話よ!」
「まぁ別に重ちゃんがいいならいいけどね」
フリルとしても自分が後悔のないようにするのが一番なのだ。
いくら友人と言えども自分から動かない相手までフォローするつもりはない。
独占欲は少ないフリルだが、あくまで自分優先だった。
「……ホント刺されないように気を付けなさい?もう手遅れかもしれないけど」
「息子に対して冷たくないか」
ミヤコもそれなりに男女の関係性というものは理解しているため、そんな警告をする。
助手席のアクアにだけ聞こえるように小さくした声をアクアはしっかり聞き取った。
「気が多くて思わせぶりな男なんだから自業自得よ。愛瑠の教育にも良くないんだからもう全員貰っちゃえば?」
「そっちの方が教育に良くないだろ」
「どっちもどっちよね。まぁちゃんと答えは出すんでしょうけど、後悔はないようにね」
ミヤコのそんな言葉がアクアの頭に残った。
B小町Rのメンバーとミヤコと別れてアクアは合流地点へと向かう。
そこには既に頭にタオルを巻いた男が待っていた。
「よう吾郎久々だな」
「久しぶり。店長、悪いな待たせて」
「いや、まだ時間になってないから気にしないでくれ。アイツらもまだだしな」
歳の差こそあれど、同じB小町Rファンとしてやり取りをしてすっかり打ち解けた二人。
アクアは苺プロのアイドル以外は情報収集の一環として調べている節があるものの、それを理解して仲良くしてくれている。
「吾郎、B小町Rのドームライブ応募したか?」
「……勿論だ。絶対見逃すわけにはいかない」
こういう時アクアは少しだけ罪悪感を感じる。
身内特権とはいえ、時間帯さえ合えば関係者席で必ず見ることができるアクアはファンとして特殊な立ち位置だ。
当然ドームライブも見逃すわけがなく、今回2日行われる予定のドームライブは両方予定が入らないようにしてもらっている。
「だよなぁ……俺も何とか行きたいよ。まだ結成して3年目のユニットだけどYouTubeの登録者も凄いことになってるし倍率すごいだろうから不安だ」
「あのB小町やC式部より早いのに凄いですよね」
「そう、本当に凄い!苺プロのマーケティング力もさる事ながら、個々のスター性が突出しているのがB小町Rの強みだよ。こないだあかねちゃんが出ていた『今ガチ』だってあの子と星野アクアの組み合わせだからこそあそこまで話題になったわけで」
店長は箱推しだが、一番の推しはルビー。アクアと同じ推し方をしており、その分話が合いやすい。
そこでふとアクアは気になった事を質問してみた。
「そう言えば……店長は星野アクアについてどう思うんだ?」
これまで聞いたことはなかったが、今一番推しているグループの側にいる男について一度聞いてみたいと思っていた。
自分だけならともかく、やはり本心では思うところがあるファンが多いのであれば今更ではあるが、立ち振る舞いを考えるべきだとアクアは考えている。
「ん?……ああ、確かに男の事好きなアイドルって異質だな。ルビちゃんもブラコン極めてるし」
「……好きって言い切るのか」
もう男友達とかそういう視点すらファンから見ても超えている扱いにアクアは少し驚く。
ただ店長はそんなアクアに逆に呆れた視線を向けていた。
「流石にオタクばっかやっててもそれくらい分かる。オタクは推しの顔に敏感だからな、例えば……」
「今アクかなの話をしたかい?」
ズッとアクア達の元へメガネを掛けた優しい顔立ちの男が近付いた。
店長の友人であり、かな推しのオタクでもある彼は目を輝かせている。
アクアは突然現れた男に面食らいつつも言葉を紡いだ。
「いや、B小町Rの男性関係の話って色々言われてるだろ?アイドルのファンだっていうのに妙に寛容だなって不思議だったんだ」
「男性関係というか星野アクア周りだよね。ふふっ瑣末な問題だよ。推しの幸せはファンの幸せだ」
力強く言い切ったメガネの男は言葉を続ける。
その目には曇りなど一切なく本心を語る男だと分かった。
「僕だって長年アイドルオタクをしてきて色々見てきた。中には道半ばで折れちゃって暗い顔をした子もいる。……それに比べてかなちゃんは『今日あま』のドラマ以降前よりずっと輝いてるからね!ガチ恋の人には申し訳ないけど、僕は今のかなちゃんがいいと思う」
アクアはこの男の言葉に感動すら覚えた。
アクアはどちらかといえば推しに恋人がいるというのは気にしてしまうタチだ。
「……凄いですね、マナーがいいというか」
「というか結成当時から言われてた話だからね。ファンが定着する前に存在を匂わせたのが上手くいってるんだろう」
これがぽっと出の男であればこの男とて今のメス顔連発するかなを許容できたかは怪しい。
あの時ルビーのした判断がこの温厚なファン層を生み出していた。
「アクかなもいいっすけど、自分はやっぱアクあかっすね。『今ガチ』ほんと最高」
またしても新たに現れた刺客の声が聞こえてくる。
アクアがそちらに視線を移せば、C式部ではMEMちょ推しである少し歯に特徴がある金髪の男がやってきた。
店長の友人であるメンバーはこれで揃ったわけだが、話は続いていく。
「確かに『今ガチ』のあかねちゃんの本物の気持ちを見せられた時とか感動したなぁ。アレ振ったアクアは男じゃないよ」
「あかねちゃんは振り向かせる気満々で今度デートするらしいのもいいっすね。恋する乙女の可愛さをB小町Rファンになって知ったっすよ」
こんな身内の集まりですら愚痴がないほどにはファンの間で共通認識なんだなとアクアは話を振っておきながら驚く。
本当にアイドルと一人の人間として考えてくれているんだなと一ファンとして、そして彼女達の友人としてアクアは嬉しく思った。
「まぁそれはそれとしてアクアには嫉妬するしムカつくけど」
「え?」
突然突き込まれた話題にアクアは言葉に詰まる。
メガネの男はそのまま言葉を続けた。
「かなちゃんに慕われているなんて羨ましいに決まってるだろ!それでパフォーマンスを引き上げているから許せるけどイケメン有罪だよ」
流れが変わったのをアクアは肌で感じた。
先程までは確かにあくまで彼女達アイドルが恋をすることの是非だった。
アクア本人に対する感想などなかったなと今更ながらに気が付く。
「あんな可愛い子達の好き好きアピールを受けても躱しているとかもう犯罪っすよ。吾郎君もそう思うっすよね」
「……そうだな。優柔不断は良くないと思う」
それに合わせて間違っても正体がバレないようにしようと思うのだった。
会話も程々に色々なアイドルのライブを見ていくアクア達。
知識豊富なドルオタである三人はアクアの知らないアイドルにも詳しい。
以前からマネージャー目線で彼女達のパフォーマンスを見て、B小町Rに取り込めないかなどは考えていた。
ただ今回は実際に個々のライブに行った時の話などを合わせて聞かせてくれる三人のおかげで、アクアは以前より楽しく見ることができて満足度も高い。
「いよいよB小町Rの出番だな、さっきからどんどん会場に人が来てる」
「今年トリに持ってこられたのも彼女達の成長を感じるね」
彼らのいう通り、B小町Rが今年の目玉として設定されている。
早めにメインステージに移動してからそこを中心に見て良かったと思う四人だった。
「JIF参加してくれるのは今年が最後だろうし全力で応援しないと」
去年まで参加していたグループもいくつか見当たらない。
例えばまなのいるグループは今年不参加となっている。
ルビーが本人から聞いた話によると本人は自分が跳ねるきっかけになったから参加したかったそうだが、有名になり過ぎた結果許されなかったとか。
「夏に人口密度にで地獄だな。俺たちは吾郎が結構意識してくれていたから全然平気だが、人倒れたりしないだろうか」
「……もう夜だから多少マシにはなった……と思う」
体調管理はプロとして意識しているポイントだ。
それにもうブランク16年になるとはいえ、アクアは元々医者だ。
自分だけでなく三人の体調も意識するくらいの余裕はあった。
「さて、それではお待たせいたしました!本日のJIF最後『B小町R』の皆さんです!どうぞ!」
司会者の声が響き、各々のメンバーカラーを基調としたアイドル衣装に身を包んだ五人の少女が現れる。
全員が全員他グループならばセンターだと確信できるほど整った容姿。
それを生かして基本は赤センターでスタートする事が多いものの、センター曲を全員が持っており、見劣りしないバランスの良さ。
個々のキャラクター性も圧倒的であり、活躍の幅を加速度的に広げている今一番勢いのあるユニット。
割れるような歓声が場内へ響き渡った。
「ルビちゃん!ルビちゃん!」
「かなちゃん!かなちゃん!」
「あかねちゃん!あかねちゃん!」
「……フリル、みなみ、頑張れ」
隣の三人は推しがそれなりに偏っている。店長は箱推しではあるものの、ルビーが一番の推しだ。
アクアは箱推しではあるが、この場においてはいつもよりフリルとみなみの色を強く見せることを決めた。
「皆〜!JIF楽しかったー!?」
歓声が収まったところでルビーがマイクを持って全員に声掛けをする。
ルビーの持つアイとヒカルから受け継いだカリスマ性とさりなの持っている輝き。
ずっと大切にしていた想いを告げて覚醒をしたルビーに誰もが目を奪われる。
「「「楽しかった!!!」」」
当然全員が声を返し、再び会場が揺れる。
トリだからこそ、尺が多少自由が利く。
それを生かしてまとめながら空気を作っていく。
「全く……ホント随分な数が見に来てるじゃない。見てるだけで暑苦しくなりそうね」
「ダメだよかなちゃん。折角見に来てくれた人にそんなこと言っちゃ」
口の悪い妹としっかりものの姉のようなやり取り。
こういう細かい描写もファンを気ぶらせる。
覚醒したルビーに劣らないようメンバー全員が努力を重ねた。
彼女がいつかのアイのように孤独にならないように。
そして自分たちにあるルビーの持っていない長所をそれぞれ生かして輝くことで五人グループの誰もが主役を維持している。
それがこのグループ最大の強みであり、アクアが嬉しく思うポイントだった。
「今度私とみなみがマリンと共演する映画があるから見てね」
「フリルちゃん今宣伝したらあかんって!そういうのは終わった後せなライブの興奮で忘れてまうかもしれんやん!」
「確かに……みなみも自信家な事言うようになったね可愛い」
フリルの気の抜けるような番宣に対して突っ込むみなみ。
会場でもくすくすと思わず漏れてしまったと言った笑い声が聞こえる。
以前ならばもっと遠慮していただろう場面でもみなみは少しずつ自分を出せるようになってきた。
そしてそれを皆にアピールするために今の小芝居を入れたのがフリルらしいところだろう。
彼女はああ見えて意外と気遣いするのだ。
「B小町Rの東京ドームライブも決まって私たちもこれからもっともっと頑張るけど、今日は今日!全力で応援お願い!じゃあ一曲目!『トワイライト』!!」
一通り皆が会話したあと、ルビーが曲名を告げて音楽がスタートする。
そこからは彼女達の独壇場だ。
キレキレのダンスとずっと磨き続けた歌唱力はただでさえ高かった会場のボルテージを更に引き上げる。
B小町から引き継いだ曲、B小町Rになってから作られた新曲を交互に歌う彼女達。
そのどちらもが彼女達の魅力を引き出すエッセンスとして機能し、五人はトリに相応しい大盛況でJIFでのラストライブを終えることとなった。
「ふー疲れたぁ〜!ってあれ?おにいちゃんもう戻ってたんだ!お友達は良かったの?」
「どっかの誰かさんが打ち上げ参加しろって送ってきたから早めに戻ってきたんだよ」
「ぶい」
アクアは送られたメッセージをルビーへと見せる。
そのすぐ後ろにいたフリルがほんのり笑顔でピースサインをしていた。
「はいはい、アナタ達さっさと乗り込みなさい。全員乗ったら車出すわよ」
「愛瑠ちゃんはどう?私達のパフォーマンス見てくれた?」
「さっきまで大興奮だったわね。その反動で疲れ果ててスヤスヤだけどね」
チャイルドシートには涎を垂らして幸せそうに眠る愛瑠の姿にB小町Rは揃って目を奪われる。
彼女たちが戻る数分前までは起きていた愛瑠。
そんな彼女は戻ってきたばかりのアクアに積極的に話しかけていた。
『にぃ、聞いて!かーちゃとあーちゃのタッチがワーってなってねぇがくるりんぱでふーちゃとみーちゃがぐるんぐるん!』
目をキラキラと輝かせて話しかける愛瑠に対してアクアは微笑みながら返した。
『よく見てたな愛瑠。五人の一番良かったパフォーマンスをちゃんと言えるなんて才能あるぞ。将来はアイドルになれるかもな』
『ほんと!?』
『あんまりハードル上げないであげてね?あの子達みたいな奇跡の世代が揃う事はまずないんだから』
微笑ましいやり取りだが、母としてはいくら可愛いと言ってもB小町Rに憧れるのだけは勘弁してほしいと思っていたりする。
そんな風に楽しく話していた愛瑠だが、時間的にももうお休みの時間なのは仕方がない事だ。
「さっき嬉しそうに話してたとこは録画しといたから今度送ってやる」
「わーい!ありがとおにいちゃん」
その会話を聞いていた他メンバーも動画を所望する。
皆を虜にするアイドルグループだが、たった一人の幼女には魅了されているようだった。
「それにしてもアクア流石に暑苦しそうだったわね」
車が動き始めたところで、かながそう言ってくすりと笑顔を見せる。
店長たちと一緒にいるアクアがしっかり馴染んでいる姿がかな的には面白かったらしい。
「そりゃそうだろ、あの人口密度だ。夜だから何とかなったがお前らの集客力に対してキャパが足りてなかった。無理やり客をねじ込まれた感じだったな」
去年までもヲタ芸するスペースすらない人気っぷりだったが、今回はもはやほとんど動ける状態じゃなかった。
軽い満員電車のような環境。それだけB小町Rが飛躍したと言えるだろう。
「本当凄い熱気だったね。これまでやったライブと来場者は同じくらいのはずなんだけど立ち見だから密度がすごかったかな」
「2万人近いだろうな。ドームはこの倍以上客入りがあるが、もっと場所も広い。ある意味これより酷い空間になる事はないから予行演習には良かったんじゃないか。」
あかねの言葉にアクアは補足を入れる。
本来は1万人がキャパの会場でそれだけいればあの鮨詰め環境にもなろうと振り返った。
屋外だから上限も事実上ないが、ライブが見える位置に皆が集まろうとした結果、地獄が誕生していた形である。
「来年は流石に参加できないわねこれじゃ。代わりに全国ツアーでも組みましょうか」
「ホント!?私実はライブしたい場所があるんだよね〜」
これまでB小町Rは東京での箱でしかライブをしたことがなかった。
県外ライブとなれば幅も広がる。グループリーダーのやりたい場所という言葉に注目が集まった。
急に集まった視線に対してルビーは少し照れくさそうにしながら話を続ける。
「えへへ、マ……お姉ちゃんが言ってたんだけど、B小町が初めてツアーするってなった時に宮崎ライブがあって凄い思い入れがあるんだって!だからそこでやりたいなーって!」
「そういえば星が綺麗でいい場所だったからアイも気に入っていたとか壱護も言ってたわね」
ルビーにとって果たせなかった宮崎ライブを見るという目標。
それの代替行為として宮崎でライブをする。それを未練への区切りにしたいと言う気持ちが彼女にはあった。
「へぇ、宮崎といえば芸能界的にも荒立神社が有名だしルビーにしてはいいチョイスだと思うわよ」
「あっ聞いたことあるわぁ、芸能の神様が祀られているんやっけ?」
かなも荒立神社には一度行ってみたいと思っており、その提案に乗る。
みなみも聞き覚えがある名前が出てきて反応した。
確証がないみなみにフリルは補足をする。
「そうだね。他にも日本神話とかに関するお話が多いみたい。あの有名な天岩戸もあったりするし神秘的な場所だね。ただ……どちらかと言うとライブ前に行きたい気がするかな」
「確かにそうだよね。……そうだ!2月くらいにドームライブ成功を祈りに皆で行かない?来年のライブ下見も兼ねて。神頼みするのもたまにはいいと思うんだけど、どうかな?」
フリルの言葉にあかねは賛同しながら一つの提案をする。
実のところこのライブはただ成功させるだけでは物足りない。
あのB小町に並ぶ可能性を見せたいライブだ。神頼みもする価値があるとあかねは思っている。
運転をしながらミヤコも頭で予定を確認する。
「そうね……今のところは皆予定を作れるだろうし2泊3日くらいで初ドームライブ成功祈願旅行にでも行きましょうか」
「わーい!ミヤコさん大好き!」
ルビーのちょっとした希望から派生して決まった宮崎旅行。
少し先の予定だが、アクアは思うところがあって黙っていた。
(宮崎……僕が生まれ、さりなちゃんが死に、僕が死に、俺達が生まれた場所。……本当に神様的な何かあるのかもな)
昔は神秘的なものなど信じていなかったアクアだが、今自分とルビーの現状を考えれば中には真実もあるということだろう。
少し先の予定ではあるが、アクアもこの旅行を楽しみにする。
そしてこの旅行がアクアの人生において一つの転換点となる事になるとはまだアクアも思っていなかった。