【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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ステアラ

あの後会議室に移動したアビ子は、不満をどんどんと口にしていき、最終的には自分で脚本を書くと言ってちゃぶ台返しを決めた。

絶望の顔をしたGOAの表情はアクアにも焼き付いている。

稽古は一度休止を宣言され、アクア達も予定が空いてどうしたものかとなっている。

 

「このタイミングで休止は痛いなぁ……今回の舞台ステージアラウンドだから稽古期間長く取りたいんだけど」

「ステージアラウンド?……確か客席が稼働する舞台だったか?」

 

ただでさえスタートが上手くいっていないあかねが、不安をこぼした。

それを聞いたアクアも反応する。

あかねの前では言いづらいが、あまり演劇が好きではないアクアは、名前と大雑把な仕組みだけは知っている程度だった。

 

「アクアくん、そんなに舞台好きじゃないもんね」

「バレてたか……あかねに隠し事なんてできる気がしないな」

「そりゃ分かりますとも」

 

好きな物を共有したいとは思いつつも反応的に察して我慢していたあかねとしては、やっぱりという気持ちである。

そんな会話をしている二人にかなが声を掛けた。

 

「アクア、あかね、アンタらどうする?私は一旦事務所に戻ろうかなって思ってるんだけど」

 

かなはこの後仕事こそないものの、事務所に戻れば今日B小町Rちゃんねるの動画を撮影しているルビー達もいる。

ドームライブに向けて合わせ練習をするのも悪くないかと思っていた。

 

「あっかなちゃんちょっと待って!アクアくん、ステアラはちょっと特殊だから一回見といた方がいいよ?これから一緒に見に行かない?」

「……俺はいいけどあっちはいいのか?」

 

かなの方へアクアが視線を向けるが、あかねはすぐに自分の考えを口にした。

 

「むしろかなちゃんや皆にも連絡して一緒に見ようかな〜って、ダメかな」

 

アクアとしては正直断る理由もない。

あかねの言う通り、客席の仕組みや演出を正しく理解していなければアクアの全てを使う演技を最大限に活かせない。

どのみちどこかのタイミングで舞台を見に行く必要があると思っていた。

 

「ちょうど今日GOAさんが脚本を担当してる舞台公演があるんだけど、さっき雷田さんにお願いして関係者席のチケット人数分貰ったんだ~人気の舞台だけど確保できるなんてラッキーだよね」

 

元々は金田一やアビ子といった関係者に配る用だったが、非常事態で浮いたそれをあかねが貰ったという形である。

 

「用意周到だな……行く。チケットまでもらったのに、これで行かなかったらむしろ悪い気がしてくるし」

「かなちゃんはどうする?」

「えっ!?な、何その展開!わ、私も行く!」

 

練習も大切だが、かなにとって最近忙しい中現れたこのチャンスは逃しがたい。

結果として空いた時間は練習ではなく、皆で劇を見る時間となった。

 

 

劇場前でアクア達『東ブレ組』は軽く会話をしながら待ち人が来るのを待つ。

 

「おにいちゃ〜ん!」

「おっと、危ないだろルビー。怪我したらどうするんだ」

「ごめんね、おにいちゃん見つけたからつい……」

 

変装しているアクアを発見したルビーは一目散に勢いよく彼の胸に飛び込む。

日々鍛えているアクアはそれを難なく受け止めるが、この時期にルビーが怪我なんてしようものならドームライブに影響が出る可能性も捨てきれない。

そんな兄の心配を受けてルビーは幸せそうな顔をしながらシームレスにアクアの腕を抱き込む形に移行した。

 

「演劇って初めて見るんだよね〜楽しみだなぁ」

「ルビーは何しれっと合流したばっかなのにアクアの腕にコアラしてんのよ。それにアクアも何普通に受け入れてんの」

 

かなは自然と恋人のような姿になった兄妹へ呆れた視線をしながら言葉を吐く。

ただアクアは実に不思議そうな、何か問題でもあるのか?と言いたげな表情を浮かべていた。

 

「別に好きにさせとけば良くない?」

「ダメだこのシスコン……もう高校生なのにインモラル過ぎるでしょ」

 

頭を抱えてこの2人をどう矯正させようかと態度を示すかな。

そんな彼女の横をすっと黒の髪が横切る。

 

「重ちゃんは大袈裟だよね、羨ましいなら羨ましいって言えばいいのに」

「は?誰が……ってなんでフリルは反対の腕取ってるのよ!?」

 

するっと現れたフリルが空いていたアクアの反対の腕を取る。

反応するかなの言葉には羨ましいという感情が滲み出ている。素直に甘えられないかなの一人負けだった。

全員が変装しているとはいえ、芸能人特有のオーラがあるメンバーに囲まれた特に気配のない男の組み合わせ。

周囲の舞台を見にきた客は何が起こっているのか注目を集めている。

 

「え?だって私の指定席だよ?」

「ズル……じゃなくてなんの話よ!適当な事言ってんでしょ!?」

 

フリルがこてりとかなに何が不満なのかと言いたげなポーズを取ると彼女がまたしっかりと反応する。

フリルの場合はかなの反応も楽しみつつアクアの腕を取れるという事で役得でしかないと考えていた。

 

「あはは……これ変装してなかったら大騒ぎやろなぁ。というよりぎょうさん写真撮られてるし大丈夫なんかなぁ?」

 

みなみはこれだけ注目を集めてバレないのかなと不安になってくる。

幸い事務所から来たメンバーはガチガチの変装をしており、アクアも常日頃持ち歩いているウィッグを被っているため、まずバレはしない。

ただバレたらネットのおもちゃは避けられないだろう。

 

「ふふっ……フリルちゃんも実は結構積極的だもんね〜。みなみちゃんも行かなくていいの?」

「ひぇっウっウチも交ざりたくないって言うたら嘘やけど流石にこの注目の中で行くのは勇気あるというか。というかあかねさんはええの?」

 

この中で唯一告白した経験のあるあかねこそ、もっと積極的でもいいのではないかと考えたみなみは遠慮がちに尋ねる。

それに対してあかねは笑顔で返した。

 

「いいんだよ、まだ今は攻め時じゃないかなって思ってるから。勿論アプローチもするけど今日は皆の番かなって」

「なんか難しい事考えてるんやね……やっぱウチだけ出遅れてそうやし今度の共演でなんとかせなあかんかなぁ」

 

あかねがそのまま一人でアプローチを続ければ、恐らく既に告白しているだろうルビーとの一騎打ちになる。

普通に幸せをつかむだけならそれでなんら問題はないが、あかねの願う結末ではない。

周りから見ればおかしなあかねだが、彼女は至って真剣だった。

 

 

劇場の中に入れば、普段は劇場を訪れることがあまりない面々は目を輝かせる。

アクアも視線を動かしてどういった構造になっているんだろうかと考えながら観察をしていた。

 

「にしても『スマッシュヘブン』ね〜。いいチョイスじゃない。もう何シリーズ目?大人気よねこれ」

「今回で4つ目だったかな?リピーターも多いみたいだし2.5次元と言えばってところはあるかもね」

 

かなの質問にあかねが答える。

かなも舞台についてあかねほど詳しいわけではないが、2.5次元の中でも歴史が長い作品のためそれなりの知識はある。

作品としても人気があり、2.5入門編として適した作品だ。

 

「この舞台は2.5らしく顔がいい役者が揃ってるよね。いい目の保養になりそう」

「そういえば2.5次元って顔がいい役者ばかり揃えるって言うよね。ファンの人も顔がいい事をまず第一に望むみたいだし……演技で選ばないの?」

 

フリルは単純に演者の顔が良いということでしっかり知識を持っていた。偶に癒されるためにこの手の演劇を閲覧する趣味があるのかもしれない。

最近激務になってきたアイドル業の息抜き的な意味合いも込められているだろう。

そんなフリルの言葉に少し気になるところがあったのか、ルビーが少し不思議そうな質問をした。

 

「元がイケメン美少女しかいない漫画の世界を3次元に落とし込むのがコンセプトだからまず需要的に顔が第一になる。顔が整ってない奴がやると没入感が減るとかもあるだろうな」

「そう言われると身も蓋もないよね〜まぁ芸能界らしいんだけど」

「顔も一つの才能だ。これをきっかけに演技を磨いて跳ねる役者もいるだろうしな」

 

バッサリ言い切るアクアに、ルビーも前世アイを見てこの顔になりたいと思ったことを思い出す。

吾郎はさりなの事をかわいいとは言っていたが、客観的に見てルビーとなった今の方が自分は可愛いとルビーは思っている。

究極美少女たるアイの遺伝子を継いでいるのだから当然だと思っているし、この容姿が仕事上プラスに働いているなという場面も少なくない。

芸能界は実力だけで考えない世界なのだなと自分の生まれを改めてありがたく思った。

 

(そういえば前世のお母さん達はどうしているんだろ)

 

生まれ変わりのことを考えたからかふとそんなことを思うルビー。

今のルビーにとって母といえばアイだ。

最初こそ前世の母の代替としてアイに母を求めていた節もあったが、ルビーとしての自分を確立しているからこそ、今の彼女にとっては過去のこと。

たださりなとしては、彼女達が結局さりなをどう思っていたのか少し気になってしまう。

実のところ確認する手段がないわけではない。

前世の母はそれなりに名の馳せたスケート選手だった。テレビの仕事が今でもある程度には有名の人。

それでも調べようとしないのは、やはり少し怖いのかもしれない。

 

「ルビー大丈夫?ちょっと顔色悪うない?」

「全然大丈夫!ほら!もう舞台始まるし楽しも!」

 

隣にいたみなみがルビーの様子を心配したが、ちょうど舞台が始まるタイミングだったため大丈夫だと誤魔化す。

結局みなみもそれ以上は追及せず、ルビーの不安も舞台によって多少紛れるのであった。

 

 

舞台が終わり、6人は近くにあるコラボカフェへと移動する。

折角だからと『スマッシュヘブン』のコラボドリンクを注文してから感想を話していくことにした。

 

「いやーなんていうか凄いね!」

「アンタってほんと語彙力ないわね、もう少しアイドルの動画とか見てる時間を使って本とか読んだらどう?アクアは頭いいのにどうしてこんなに違うのかしら」

「先輩酷くない!?一応おにいちゃんが教えてくれているおかげで平均点くらいはあるんだから。とにかく、舞台凄かった!初めて見たからあんな感じなんだってビックリしたかも」

 

ルビーが想像していた舞台というものとは大きくかけ離れたソレに興奮してテンションが高い。

 

「ウチもびっくりしたわ。まさかステージが回るなんて思ってなかったもん。大掛かり過ぎやない?」

「アレなら場面転換をシームレスに行える。舞台のセットを交換したりするのにテンポが悪くなる演劇の課題を解決するのにはいい手段だろうな」

 

アクアは正直なところ舞台を映像と比較して舐めていたところがある。

ただこれまでのアクアの認識を一変させるだけのインパクトがこの劇場にはあった。

 

「あとは幕が画面なのも良かったよね。セットを映像で肩代わりしたりとか応用も出来ていたし」

 

ジュースを飲みながらもフリルは真剣な表情で振り返っている。

目の保養といった舞台はどれも今回の劇場ではなかったため、従来の物と比較してかなり違うんだなと認識を改めた。

 

「映像と比べて演出が使えなかったりと構造的欠陥が多いから映像の方が好きだったんだが……想像の50倍良かった」

 

アクアも構造自体は知っていたので、以前の舞台よりは見やすいものになるだろうとは思っていた。

ただその予想を更に超えてきたのが実物だった。もし何も確認せず本番をやっていたらアクアの演技に支障が出ていただろうなと思うくらいに。

 

「でしょ~!皆ならこの良さ分かってくれると思ってた!」

 

あかねは、演劇という自分の好きな物を好きな人たちに褒められて破顔する。その表情は演技などではなく、心の底から喜んでいるのが良くわかるものだった。

 

「は~好きな物を共有したいオタク思考よね。こういうとこ」

「かなちゃんは結構演劇好きになってくれたもんね」

「お前が成功体験与えてんじゃねーか」

 

アクアのツッコミにかなはそっと視線を逸らす。

そんな風にワイワイと話している6人に一人の影が近づいてきた。

 

「やあやあ皆さん」

「雷田さん、どうしてここに?」

 

アクアはその人物の名を呼ぶ。

ルビー達今回の関係者ではない組は誰?という顔をしていたが、変装をしていても組み合わせで芸能人だとは推測されているだろうなとアクアは思った。

 

「ごめんねお忍び中に。でもチケット上げたんだから感想くらいは聞きたいな~と思ってね」

「だから変装しているのに特定できたんですね」

 

あかねは直接チケットを貰った人間だ。流石にどんな格好をして行くのかを伝えていたのだろう。

 

「あっこの人がチケットくれた人なんだ!えっと初めまして!私、舞台って初めて見たんですけど臨場感あってお話も面白くて楽しかったです!」

 

満面の笑みで答えるルビーに、雷田は思わず感動する。ここまで素直に喜びを伝えられる事も珍しかった。

 

「先に妹がお礼を言ってしまいましたが、改めてありがとうございました。いいものを見させていただきました」

 

アクアは珍しく素で表情が変化する。それ程にいい舞台だったということだろう。

 

「なるほどぉあの子が妹さんなんだ。二人揃って感想話す時にいい顔してくれてオジサン嬉しいよ」

「え?どんな顔してたの?もっかいしてよ」

「いやだ」

 

あかねもアクアのしていた表情が気になったらしいが、アクアはわざわざ見せたいとは思えないので拒否をする。

 

「あかね、バッチリ撮ったから後で送ってあげるね」

「おま、いつの間に」

 

雷田の後ろにいつの間にか回っていたフリルが、アクアの表情をカメラに収めた事を報告する。

油断ならないなと呆れたような視線を彼女へ送った。

 

「フリルちゃんウチも送ってな〜」

「任せて、グループにあげとく」

 

こめかみを押さえるアクアを見て、雷田は彼らの関係性を大凡察した。

 

(こういう何股もしている噂って大体妬みとかで作られた妄言な事がほとんどだけど、これはガチっぽいなぁ首突っ込まないでおこ~っと)

 

雷田がそんな事を考えているなどアクアは気付く余地もない。

だからこそ、現実逃避も兼ねて全く関係のない話を彼に振ることになる。

 

「ところで雷田さん」

「はい!?な、なにかな」

「脚本どうなりそうですか」

 

たった一言で折角上がっていたテンションから一転現実に戻される雷田。

ただ演者として参加している彼の不安も分かるのだ。

 

「あはは〜厳しいよーGOAくんは今日の舞台見てもらっても分かるように優秀なんだ。本当は降ろしたくない……でも大手出版社相手にどうこう出来る程、僕らは強くないからね」

 

寂しそうに言う雷田。もうどうしようもないと思って諦めているようにアクアには見えた。

 

「でも……どうにか出来るのは雷田さんだけですよ」

「……それはそうなんだけどね」

 

今回の舞台は本当に良かったというのがアクアの感想だ。

そのお礼として少しでも雷田の役に立てたらと思い、少し動くことを決める。

 

「雷田さん、すみません。次回の公演ペアチケット貰えませんか?」

「どうしたんだいアクアくん。まさかデートとか……いや何でもないよ」

 

正面の数名が鋭い視線を向けてきたことで雷田は言い淀む。

それに対してアクアはため息を吐いてから答えた。

 

「ここで言うと笑えない冗談になるので止めてください。ちょっと使い道がありまして」

「……まぁ君は転売とかに使ったりしないだろうし、いいよ。はいこれ」

 

決して視線の圧にビビったわけではないと自分に言い聞かせながら雷田はチケットが入っている封筒をアクアに渡した。

それを最後に去っていった雷田を見送った後、興味津々といった様子のかながアクアへ話しかける。

 

「それで?そのチケット何に使うのよ……まさか本当に」

「とりあえず違うぞ。これはアビ子先生に渡そうと思って……」

 

アクアはそこまで口にして、しまったと後悔する。

案の定かなはピキリとした様子を見せてから口を開いて言葉を紡いでいく。

 

「は?やっぱ女じゃない!はーこれだから八岐スケコマシは!酒じゃなくて女に釣られるムッツリ大蛇め」

「ちげーよ。そういう目的じゃない。ペアチケットなのは吉祥寺先生と一緒にでも行ってもらえたらって意味だ」

「先に言いなさいよ!」

 

早とちりして申し訳なさと恥ずかしさでかなは軽くアクアの頭を叩く。

流石に理不尽だろと思いつつも、こういうところも慣れているからか全く嫌いにはなれないアクアだった。

 

「でもマリンが普通に言ってアビ子先生は受け取ってくれるの?『東京ブレイド』の作者だし相当忙しいと思うけど」

「まず無理だろうな。だからこそ吉祥寺先生を経由する。あの人はアビ子先生の師匠みたいなものみたいだからな。昔カントクが言ってたが、成功した人はどうしても増長していく。そんな相手が聞く耳を持つのは師匠とか先生とかだってな」

 

吉祥寺も暇というわけではないが、月刊で比較的時間があると本人も言っていた。

月刊の締め切りはまだかなり先のため、この時期であれば捕まえやすいと考えている。

 

「確かに吉祥寺先生の言葉ならアビ子先生にも響くかも……でもどこで渡したらいいのかな」

 

あかねはアクアの案を聞いて可能性を感じるが、直接会う機会がないとタイミングを悩む。

ただこれに関してアクアは適した答えを持っていた。

 

「そこは先生の家に直接お邪魔してチャンスを伺う。幸い連絡先も貰ったしリップサービスとはいえ是非遊びに来てほしいなんて『今日あま』組として言われてるからな」

 

『今日あま』の打ち上げでもらったが、これまで使っていなかった連絡先。

何も用がないのに送るのは流石にこれまでできなかったため、宝の持ち腐れ状態だったが、ついに使うタイミングが来たとアクアは考えていた。

 

「じゃあ早速これからお邪魔しようよ!」

「え?ルビー本気なん?漫画家さんやし予定とか色々あるんやない?なぁアクアさんもそう思わん?」

 

みなみは突然のルビーの提案に驚いてアクアへ確認を取る。

アクアも呆れた表情を浮かべながらルビーへ言葉を返した。

 

「みなみの言う通りそんな急には無理だろ。アポも取ってないし向こうの事情も……聞くだけだぞ」

「マジでシスコン過ぎるわコイツ」

 

ルビーへの説得を始めたところで漫画家の家という未知の空間に興味があったルビー。

今日でなければ同行できる可能性は低いため、兄へ期待を込めた視線を向ける。

とにかく彼女に弱いアクアはそんなルビーの表情を見て、悩んだ末に確認するだけしようという結論を出し、かなをドン引きさせた。

 

「にしてもおにいちゃん妙に首突っ込むね。普段なら大人の仕事にはそこまで干渉しないようにしてるイメージだったけど」

「どうせ演じるならガタガタな脚本よりいい脚本で俺が演じたいだけだ。それに折角いい舞台を見せてもらったんだ。感動代で動いてもバチは当たらないだろ」

「もうおにいちゃん根がバカ優しいのに変に悪ぶって答えちゃって~かわいいなぁ」

 

ニマニマする妹にうっとうしそうな視線は向けるが、特に拒絶しない辺りがこのシスコンっぷりを物語っているだろう。

そこからまさかの許可が出て、6人はそのままの足で吉祥寺宅へと向かうことになった。

 

 

 

 

「「「「「「おじゃまします」」」」」」

「いらっしゃーい!アシスタントもいる中でゴメンね?」

 

出迎えにきたのは吉祥寺で、彼女もラフなパーカーを着て出迎える。

言葉通りならどうやら仕事を少し前までしていたらしい。

 

「ホントすみません……無理言ってしまって」

 

少し日も暮れたタイミングだが、快く受け入れてくれた相手に感謝を示す。

 

「全然良いわよ!むしろうちのアシスタントがフリルちゃんとみなみちゃんのファンで私こそチャンスと思っちゃったくらい」

 

吉祥寺のその言葉に嘘はないらしく、B小町Rのメンバーが仕事部屋に入ると中から歓声が聞こえる。

一緒にいるからアクアとしては感覚がずれがちだが、彼女達はもうすぐトップアイドルの一員になろうとしている人気ユニットなのだ。

 

「むしろ皆もこんな時間に来て大丈夫?」

「そこは全員親に連絡済みなので。後で順に近くまで送ることになりそうですが」

「へぇ〜リアルにこんな子いるんだね。すっご……あの子も参考にするって言ってたけど、アリよね題材として」

 

楽しそうに会話するあかね以外のB小町R四人と吉祥寺のアシスタント二人。

それを少し離れたところから見守る残った保護者メンバーといった構図が形成された。

そして女子会状態のメンバーはコソコソと秘密の話をする。

 

「やっぱり皆アクア君の事が好きなの!好きなの!?」

「誰がアイツのことなんて……」

「私はマリンの事好きだよ。告白シチュエーションを調整中」

「は!?」

「フリルちゃんもうそんな計画立ててるんや。ウチもそろそろ告白せなあかんなぁ」

「はぁぁ!?」

「おにいちゃんはカッコいいから好きになっちゃうのはしょうがないよね〜」

 

こんな会話が繰り広げられている間に、保護者組は真面目な会話をする。

アビ子がどうしてあのような対応をしたのかといった見解を吉祥寺の予想を交えて話していく。

 

「今……脚本のGOAさんが降ろされそうになってて……先生からアビ子先生を説得する事は出来ませんか?」

 

話が進んで行き、あかねが直球に切り出した。

吉祥寺はアビ子に言いたいことがいくつかある。

最近彼女の持ち味が上手く発揮できていないような感じられているのもその一つだ。

ただそれと同時にアビ子の言いたいこともよく分かるのだ。

 

「原作をいじられる事に不満を持つ気持ちも私は分かっちゃうのよね。特にキャラは自分の子供みたいなもの」

 

もし……もしあの時メルトが本気になってくれなければ、『今日あま』のドラマはどうなっていただろうか。

もし最初の状態のまま最後まで進んだ『今日あま』があったとして吉祥寺が許せるかと言われたら……許せないだろう。

元々脚本の都合で原作からはかなり変更が加えられている。

たまたまメルトという人間の本質が負けず嫌いなだけでなく根がまっすぐだった。

だから星野アクアと有馬かなの演技を見て、悔しいと思い奮起できた。

もしどれかのピースが欠けていればと考えるとゾッとしてしまう。

 

「でも……そうね、私にできるかは分からないけれど、説得に挑戦してみるわ。あの日、アクア君達に希望をもらったから」

 

どれだけ絶望的な状況でもこの人が居ればなんとかしてしまう。アクアにはそう思わせる不思議な魅力がある。

だからこそ、そんな彼が味方についているあかねの言葉を聞く気になった。

前向きな吉祥寺を見てアクアが言葉を引き継いで会話を続ける。

 

「……もし説得できたらこれをアビ子先生と二人で見てみませんか?クリエイターとしてきっといい刺激になると思います」

 

前向きな意見をくれた吉祥寺へ、アクアは雷田から貰ったチケットを渡した。

 

「これは……」

「GOAさんが脚本をした演劇です。割と近い公演なのでもし合わなければ別のを手に入れますけど」

「私は大丈夫だけどアビ子先生がどうかしら。……でも分かったわ。ありがとうアクア君」

 

当初の目的を果たせて少し気が楽になるアクアとあかね。

あとは結果を待つことだけしかできない。

ただ吉祥寺であればやってくれるだろうと二人とも信じて結果を待つしかない。

 

「だからね!アイツは誰にでも思わせぶりであの顔でボコジャカ女落として〜!」

「アクア君ってそんなやばいんだ」

 

そんな真面目な話をしている横で、まだまともに会話すらしていない相手にドン引きされる事になっていることをアクアはまだ知らない。

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