客席が暗くなり、辺りは静まり返る。
細かな注意喚起が行われてから物語の導入であるナレーションが始まった。
『この物語はある男が一振りの太刀を手にする所から始まる』
モニターと化した現代風の幕が左右へと開き、中のセットが姿を現す。
キャラクター紹介のために構成された専用セットは、左右に分かれたモニターで原作絵としっかりメイクをしてキャラへ成った演者を表示しながら、その役者へスポットライトを当て、どんな衣装を着ているかを一度観客へと見せていく。
この辺りは後ろの客には表情などは見えないため、どのキャラがどんな衣装か認識させ、後で分からなくならない配慮なのかもしれない。
一通りの主要キャラクター紹介が終わったところで再び幕が閉まり、スクリーンには『東京ブレイド』のロゴを映像で表示された。
客席は回転し次のセットが正面に見えるよう移動していく。
「旅のものだ〜!水を分けてくれ〜!!」
大輝演じるブレイドが、辺りを見渡しながら声を出す。
普段より声質が乾いて聞こえるように調整するという伝わり辛そうな演技も混ぜているが、理解はできなくともそれだけでリアルさを深くし、劇への没入感を高めていく。
ここからが『東京ブレイド』最初の見せ場。
物語の始まりにして、最初の出会い。
このシーンはまだ客もこの舞台のレベルがどんなものか手探りだ。
つまり観客は少し油断している状態と言えるだろう。
大輝とかなはそれを利用するつもりだった。
「なんだこれ……光って」
「おい!何者だ、貴様!」
村に落ちていた一振りの刀、ソレはブレイドが近付いたのに合わせて主が現れたと言いたげに輝く。
それに魅せられ惹かれたブレイドが、刀に向かって手を伸ばし始めた時、頭上から声が掛かった。
ブレイドが顔を上げてみれば、そこには1人の鬼族の少女がニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。
「まずは自分が名乗れよな」
「ウチは剣主の一人、つるぎ様だ!」
かなは、つるぎとして自信と強者感を漂わせつつも、ほんの僅かに虚勢を混ぜ込んで名乗りを上げた。
それに合わせて会場では声が出ない程度に笑みがこぼれる。
ここに来ている観客のほとんどは原作である『東京ブレイド』を読んでいる。
この後つるぎがどうなるかを想像できるキャラクター性に思わず笑顔となったのだ。
「その盟刀を捨てて逃げるか、私と戦うか選びな!」
「コイツは俺の刀だ」
ブレイドにとってこの場から逃げるという選択肢などない。
強い相手と戦うことそのものに喜びを見出している彼からすれば、自分の相棒となる刀とそれに相応しい相手がいるこの状況はむしろ褒美と言っていい。
ブレイドは刺さっていた刀を抜き取り、荒削りだが得物を扱い慣れている動きで構えを取る。
そんな闘志を湧き上がらせるブレイドを見て、つるぎは嘲笑いながら突撃した。
「バカなやつ地獄で後悔しな!」
アイドルとして体幹を鍛えているかなにとって、激しい動きであってもキレ良く問題なくこなせる。
それに今回練習したワイヤーアクションを組み合わせて派手なアクションシーンを構成していた。
(事前に聞いてはいたけど、いきなり飛ばしてんな有馬)
舞台が始まる前、ここで勝負を掛けると台本を見せながら言ってきたかなに対抗するように、大輝は演技の楽しさをそのまま戦いの楽しさに見立てて感情を観客に届ける。
ただ想像以上に良い演技をしたかなに対してそんな感想を抱いていた。
(は!アンタなら余裕で合わせられるでしょ?それとも無理かしら?アクアならできるけど)
(……面白れぇもっとやろうぜ)
演技を通じて互いの意思を汲み取る一流の役者二人。
かなの挑発を受けてあくまで目標のできる前のブレイドのイメージを壊さない範囲で演技を強める。
立体的な駆動、戦いの迫力をメインにしているこの舞台において、初戦は観客の印象に残りやすく、その分だけ大切な戦いになる。
躍動感あるつるぎの動き、それに応えるブレイドの鍔迫り合い。
それは観客を魅了した。
「『盟刀』ってなんなんだ!」
「貴様何も知らないのか?冥土の土産に教えてやる!盟刀はただの刀ではない。手にした持ち主に様々な力が与えられる!」
ブレイドとつるぎの演技によって観客はこの舞台は期待していいと期待値を引き上げられ、それに合わせて予想以上の演技を見せられた観客は情報収集能力を活性化させる。
こうすることで、会話に織り込まれた説明台詞をしっかり観客が汲み取り、この後の話で設定が常に頭に残る。
原作のファン達がほとんどとはいえ、物語の根幹に関わる設定は、印象を強くしておいて損はない。
この辺りはアクアが知識として提案し、かなが意識して演技を強める事で狙って実現していた。
「すべての盟刀から最強と認められたものは国家を手にする。國盗の力を得ることができる!」
そしてここからが『東京ブレイド』の最終目標の開示。
今回の舞台どころか原作でも到達していない目標だが、何故争うのかという部分が明確なのがこの作品の良いところだ。
「この日本を治めるほどの力を得るね……いいじゃん」
つるぎの話に興味を持つブレイド。
それまでただ戦うのが好きだっただけの彼が目標を持つシーン。
ただ漠然と生きてきた男が人生の価値を高めて変わる事を観客に伝える必要がある。
表情の見えない舞台演技では難しい表現だが、大輝からすればやりごたえのあるいい場面だ。
「王様になってみたかったんだよね、俺!俺が最強になって……この國の王になる」
宣言しながら刀を天に向ける。
舞台後ろの観客にも変わったのが伝わるように、声の張りと姿勢といった部分でキャラの柱が立った事を表現する。
大輝が元々ララライの出身であり、演劇というメディアに慣れているからこそのアプローチ。
(凄い!凄い!ブレイドだ!)
声は出さずとも原作者が喜ぶほどにキャラの輪郭がくっきりとする。
どこかパッとしなかった男が主人公らしい目的に向かって全力を出す人物へ変貌する様を観客は見た気がした。
そんな彼に対してつるぎが取る反応はと言えば動揺。
「ふざけるなぁ!」
その迫力に気圧された自分を恥じるようにつるぎは声を張り上げる。
ただその声に先程までの自信はなく、困惑と恐怖が混じった張りぼてだった。
(感情演技……あの日、天使みたいな容姿をした子供にへし折られた私の誇り、使わせて貰うわよ)
実際に昔抱いた感情を使うアクアが得意な感情演技をかなはこの場で披露する。
目の前の脅威に追い詰められているつるぎに子役時代、アクアの演技を見た時の自分に当てはめる事で、演技に真実味を増加させた。
つるぎはブレイドへと喰らいつくが、決着はそれからすぐに訪れる。
ブレイドの手にした盟刀が持ち主の意識の変化に呼応するよう覚醒し、雷の力を所有者へと与え、その力はつるぎの警戒を搔い潜ってこの決戦の幕切れとなる一撃を繰り出した。
「ふぎゃっ」
つるぎは観客に分からない程度にバックステップをしてからコミカルに吹き飛ばされたような演技を行う。
これからつるぎは主人公の仲間になるのだから、それまでの敵キャラとしての尖った部分を忘れるほどの愛嬌が必要になる。そのとっかかりとなるような演技をかなはし始めた。
「ふぇっ!?止めてけれ!オラ、まだ死にたくねぇだ」
強者感など虚勢であったと証明するように道化になるつるぎ。
声色も一変して、弱々しいだけでなく、どこか無理をした声の張り方が消え、こちらが本物のつるぎなのだなという説得力を与えている。
「なら、俺の方が強いと認めるか?」
「認めるだぁ!アンタの方が強いだぁ!」
勢いよくペコペコと頭を下げて謝罪の意を示すつるぎ、その姿には戦っていた時の強そうな印象は全くなかった。
こうしてブレイドは最初の仲間、つるぎがパーティーに加わった。
一度幕が閉じ、スクリーンには稲穂が映される。
座席の回転に合わせてブレイドとつるぎはその前を歩きながら会話をしていく。
これはGOAの提案によるもので、スクリーン前を歩く方が旅感出るはずという判断の下、脚本に組み込まれた演出だ。
その予定通り、ブレイドとつるぎの二人旅という要素が強調され、物語へ没入していた観客により臨場感を与える。
「この先に新宿があるのか?」
「ああ、地下ダンジョンはまさに群雄割拠!その中でも頭ひとつ抜けているキザミを負かせば、新宿はお前の物だ」
これからブレイドの持つ『王様になる』という目標を達成するためにどうしていく必要があるか小目標を話していく二人。
旅の雑談で話す事で、二人があの戦いを通じて仲良くなった事を短い尺で表現する意味合いも含まれている。
「ふーん……お前も王になりたかったんじゃないのか?」
「仕方がない、剣主同士の決闘で敗れたものは命を差し出すか、相手の配下になるしかないんだ」
観客に盟刀同士の戦いという基本設定をしっかり伝えていた事で、こんな何気ないやり取りで設定を開示しても客は貪欲に情報を繋いでくれる。
可能な限り削られた説明台詞を短く、確実に伝える良い手法だろう。
「……それに、アンタが王様になった際にゃ、私を大臣にしてくれりゃいい!そしたらこのつるぎが王道を切り開いてやるさ!」
物語に没頭した観客にとってそれからの時間はあっという間だった。
そしていよいよブレイドとつるぎが二人で地下ダンジョンにいた鬼、キザミと戦闘をする前半戦クライマックスシーンに突入する。
キザミを演じるのはメルト。彼はこの場面で冷静だった。
元々この舞台で一番演技が下手なのは自分という自覚があるからだろうか、しっかりとブレイドの演技が引き立つように立ち振る舞う。
キザミの仲間である鬼の少女二人はララライの演者だけあって上手い。
表現のフォローなども頭を下げてお願いしていた。
「どりゃあああああああああ!!」
感情と気合だけでも負けないように、強い気持ちを込めて刀を振るう。
ここのキザミは事前に強いという前評判があったため、強敵である必要がある。
実力では今のメルトでは表現しきれないが、演技に勢いをつけて、躍動感を纏わせた。
「終わりだ!」
「お前がな!」
ここまでの話で強いブレイドを大輝が表現していたのも、キザミに強者感を植え付ける。
これほど強いブレイドが苦戦をするのだから強いに違いないという説得力。
そしてその説得力を損なわない大輝の演技。
(……ああ、アクアがライバル心を抱くのも納得だわ)
自分の師匠であり、友人であるアクアが数少ない対抗心を燃やす相手。
19という若さで最優秀男優賞を獲得したその実力をゲネの時以上に感じるメルトは、演技の奥深さに楽しくなっていた。
「ヤター!ブレイド!」
「「キザミ!!」」
ぴょんぴょんと跳ねるように喜ぶつるぎ。
ブレイドがキザミに勝利したのを見てお調子者な一面を見せる彼女。
ここもキザミが楽に勝てる相手ではなかったという事を表現する要素の一つだ。
そして座り込んだキザミに鬼の少女二人が側に寄る。ただ暴れ者という訳ではなく、部下に慕われている一面を見せた。
そんなキザミが一息つき、顔を上げてブレイドを見る。
「アンタら強ェな」
キザミより強いブレイドと自分より演技の上手い大輝を重ねて感情を乗せるメルト。
その言葉には悔しさと認める感情両方がしっかりと乗っている。
大輝も内心で成長しているなと感心しながら、強気の目標を口にする。
「こんなとこで躓いてたら……王になんてなれないだろ?」
自分も刀を持つ身である。負けたならば選べる選択肢は二つだ。
ブレイドという男に可能性を感じたキザミは高笑いをしながら願い出た。
「あはははははは!なぁ、俺達も仲間にしてくれよ」
勝者であるブレイドに選択権がある。
だが剣を合わせた事で既にキザミを認めていたブレイドはその言葉を待っていた。
すぐにキザミへ手を伸ばす。
「お前が王になった時、俺のポジションは将軍な!」
笑顔でブレイドの手を取るキザミ。
少しずつブレイドの一行は大きく強大になっていく。
小目標であるキザミを倒して新宿クラスタを制したブレイド。
強敵を倒したばかりだというのに、すぐに次の目標が影をのぞかせる。
「俺たちは好き好んで地下にいたんじゃない……渋谷の鬼どもに追いやられてな。……奴らはその辺の鬼族と訳が違う」
たった今勝利したばかりの強敵キザミを生かしたままで、追いやる程の実力がある渋谷の鬼たちの存在が示唆される。
演技に魅入られていた観客たちもこのままで勝てるのかと不安が伝播していく。
ただ、そんな闇を切り払うように明るい声が響き渡った。
「次の目的が決まったな」
その声には暗い要素などなく、皆を率いる王としての威厳すら感じさせ始める覇気があった。
これまでの戦いを通じてブレイドが成長しているというのを大輝は表現する。
(舞台の密度が高い分、細かにブレイドは成長していく。……しっかりそれを見せて行かないとな)
ブレイドはスッと立ち上がる
そんな背がキザミと戦う前よりも大きく客席からは見えた。
「次は渋谷の鬼退治だ」
次なる目標をブレイドが宣言したところで幕が閉まり、クオリティの高い映像が流れ始める。
第二幕から登場するキャスト達が次々と表示され、次の登場人物、主要人物が誰かを誰もがわかるように表現する。
映像の最後は刀を持ち、覚悟を決めた表情をしたあかね演じる鞘姫の姿が全身映し出され、開始時同様に『東京ブレイド』とタイトルロゴが表示された。
それと同時に拍手が巻き起こる。
ここで幕間。しばらくの間休憩となり、トイレがかなり混むため、今のうちに行きたい人は行くようだ。
「いや~姫川さんと先輩の最初の戦いからずっと叫びそうなの我慢してた!もう映画のアクション!?って思うくらいガンガン動くし、先輩たちの感情のぶつけ合いも参考になるな~って感じ!」
語りたいことが沢山あるのだと言いたげにアイへ感想を話していくルビー。周囲の迷惑にならない程度にウキウキと声を弾ませた。
その笑顔を見ながらアイも娘に言葉を返した。
「ルビー楽しそうだね~でも気持ちわかるなぁ」
アイの目線から見ても今回の舞台はいい演技をする役者が揃っている。
彼女にとって一番見たいアクアの演技を見る前からかなり満足感を与えられていた。
また、『東京ブレイド』はアクア達の演技練習の内容しか知らなかったため、話としても新鮮で楽しめている。
「にしてもかなちゃん伸びたねぇ……前から才能はあるな〜って思ってたけど、この舞台で新しい演技を掴んでるみたい」
「新しい演技?」
アイの言葉にルビーは首を傾げる。確かに上手いとは思ったが、新しい演技に心当たりがなかった。
ルビーはアクア達と演技の練習もしっかり積んでいるが、この舞台の稽古が始まってからは一緒にできていないのも思い至らなかった原因だろう。
「まだ最終戦に向けて抑えめにしているみたいだけどね~。アクア達と戦うシーンまで温存してメリハリをつけてる感じかな?うん、楽しみ。アクアはあの演技にどう対抗するつもりなんだろう」
今までのかなであれば、自分が輝くか周りをサポートするかの二択を使い分ける演技だったが、そこから一皮むけたとアイは認識している。
これからアクアがこの演技にどう対応していくのかアイは息子の演技を楽しみにするのだった。
幕間中、劇場の休憩スペースに抜け出したフリル、みなみ、ミミの三人は劇の内容について会話をしている。
同い年なだけあって、ミミの人見知りが最小限で済んでいるのが、しっかり話ができるポイントだろう。
「姫川さんも重ちゃんもいい顔して演技してたね。楽しそうだった」
「アレだけ遠くて良く見えたなぁ、ウチは動きだけ見る感じやったわ」
ただその分演技で表情が見えなくても感情の表現をする方法の参考にはなったなとみなみは考えている。
そんな彼女にフリルはアドバイスを送った。
「日頃から『今日あま』や『今ガチ』見て視力を鍛えてるからね。みなみ達にもオススメするよ?」
「視力良くなったって本当だったんだ!?」
「うん、0.5くらい良くなった」
ミミは天性のコメディアンに敗北感を感じながらツッコミを入れる。
どんな表情が良かったか他にも語るあたり本当に視力は良さそうだった。
最近視力が落ちてきた事を気にしていたミミは、帰ったらフリル式視力トレーニングを試そうかなと血迷ったことを考える。
そして後日、実際に試している所を兄に見られてやっぱりアクアに気があるんじゃないか?と誤解される羽目になったのはまた別の話。
「話は戻るけど、あのスクリーン前を歩いてるとことか凄かったなぁ。ギミックに合うように歩幅も調整しとったし……ウチが同じようにやろうと思ってもすぐにはできひんもん」
視力トークが終わり、話の内容は舞台へ戻すみなみ。
彼女は演出の部分に注目して自分なりのポイントを口にした。
「あの旅感出る演出良かったよね。演出家さんか脚本家さんの考えたアイディアだと思うけどプロだなって感じ」
「わぁ……こうやって横で言葉聞いてるとこの二人も芸能人なんだってなる……ミミ浮いてるよね大丈夫かな」
自分だけ格下だとネガティブになっているミミを見てフリルとみなみはすぐに否定する。
ミミはYouTubeでかなり人気になっているだけあってタレント力は高い方だと二人は考えていた。
「心配せんでもミミちゃんもかわええし、コスプレアカウントも大人気やろ?もしかしたらそこからテレビに呼ばれたりするかもしれへんよ?」
「そうだね、コスプレ業界から芸能人デビューもある話だし……最近少しコスプレモデルの仕事も受けてるからもう少しじゃないかな」
「うぅ……私にはハードル高いよ、加工凄いし……あと恥ずかしい」
ミミは以前鍵アカウントにしていたコスプレアカウントを一部際どすぎるものを除いて公開しており、現在は配信者兼コスプレイヤーが職業と言って良かった。
元々は配信で際どいコスをするからと止められていたが、今は下手に鍵アカウントでコスプレされるよりそっちの方がいいと兄から進言があった結果だとか。
そんなコスプレ写真が評価されるようになって、ミミなりに調子に乗った結果、苺プロで冗談交じりにそういう仕事してもいいかもと言った結果、人見知りでもできる仕事を取ってこられるようになっている。
元からコアなファンにはコスプレ趣味の存在がバレていたようであっさり受け入れられたとか。
「コスプレか……いいね。マリンの好みの衣装とか着てドキッとさせて揶揄おうかな」
「……ナース服とか好きそう」
「流石に偏見やない!?」
一般客視点とは少し違うが、演劇の話や仕事の話で休憩時間を盛り上がる三人だった。
舞台裏、アクアとあかねはモニターでどんな芝居を大輝達がしていたかを見ていた。
「姫川の演技、前より本物らしくなってるな」
以前共演した時より、大輝は感情演技も細かいテクニックも成長していたのが画面越しにも伝わってくる。
舞台用の演技をしているため、生で見たらそれ以上だろう事はアクアにも想像が付いた。
「かなちゃん、アレだけ存在感発揮してるのに周りもしっかり目立たせてたね」
かなも『今日あま』の時から更に殻を破ったのがあかねへ伝わってくる。
技術面だけでなく、演技のアプローチが新しくなったにも関わらず従来の良さが損なわれていなかった。
まだ全開にはしていないようだが、現時点で以前のかなと同じ存在感を発揮している。
ライバル達のそんな演技を見て、二人は揃って笑みを浮かべていた。
「ふふっアクアくん笑ってるね」
「あかねこそ」
目を合わせれば、長い付き合い故に、これくらいであれば互いの考えている事は伝わる。
ただあえて口にして決意を強固にする。
「勝つぞ、アイツらに」
「うん、私たちの演技が最高だって二人にも観客の人たちにも見せつけよう」
アクアとあかねの意見が一致する。
決戦となる第二幕が間もなく始まろうとしていた。