【推しの子】ヤケクソハッピーハーレムルート   作:ただの暇神

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プライベート編
旅前


舞台『東京ブレイド』の千秋楽が終わり、苺プロにとって次の大きなイベントはB小町Rの東京ドームライブ。

皆かなり練習に打ち込んでおり、前回行われたライブと比較しても別格の完成度になってきていた。

その成長速度は日進月歩であり、アクアは彼女たちを見るたびに元気をもらっている。

今週末にはドームライブ成功祈願をするため、社員旅行がある事も決まっており、アクア達は充実した日々を送っていた。

 

「おにいちゃ~ん!今日は放課後暇だよね?」

 

ホームルームが終わり、鞄に筆記用具を収めるなどの帰り支度をしていたアクアに向かって飛び込むルビー。

アクアも作業を止めて、ルビーを抱きしめるように受け止めた。

そんなシスコンブラコンコンビの様子にもクラスメイトは動揺した様子すら見せる事はない。

1年間同じクラスで過ごした事もあり、彼らはすっかりアクア周りの事情に慣れており、またルビーが甘えているなぁと生暖かい視線を送っていた。

クラスメイトがこの二人の絡みを大人しく見ているのは、一説にはフリルがイケメン美少女を見るのは健康にいいと内外問わずに言い続けた結果、顔レベルの高い双子カプを見逃すまいとしているとか。

アクアは仕方がないと言いたげな表情をしながらルビーの言葉に返事をする。

 

「確かに今日は仕事がないが、よく知ってたな」

「苺プロの予定表見てバッチリチェック済みだったからね〜」

「いつの間に……人の予定なんてそんな気にしても仕方がないだろ」

 

胸元でニコニコ笑顔を向けるルビーを見て、アクアもほんのりと微笑む。

すぐ隣からパシャパシャと音が鳴る音が聞こえてくるが、兄妹揃って気にした素振りも見せない。

犯人が誰か分かっている上、悪用されないので特に指摘する必要をアクアは感じていなかったが故のスルーである。

この辺りはアクアが彼女に慣らされたと言えるだろう。

 

「それで休みだから何かしたいとかそんな話か?」

「うん!去年撮影してたおにいちゃんとフリルちゃんとみなみちゃんが出てる映画あるでしょ?アレが近くの映画館で上映されてるから一緒に見よ!」

 

アクアはその言葉に確かにと思い出す。

ここ最近のアクアはカロリーの高い舞台『東京ブレイド』に参加しながら他の仕事もこなしていたため、あまり自由な時間が取れていなかった。

この束の間の休息と言っていい状態を有効活用しない理由もないだろう。

 

「あっルビーちゃん、ウチらも行ってもええ?」

 

アクアが行こうと決めたタイミングで、横から柔らかい声が掛けられる。

無言でアクア達を撮影し続けているフリルを隣に置いて、みなみは言葉を続けた。

 

「試写会では一度見たからどんな出来かは知っとるんやけどね……折角やしルビーちゃんの意見も聞きたいなって」

「勿論いいよ!みなみちゃんの演技の感想いっぱい言ってあげるね!」

 

ルビーとしては勿論アクアと二人で過ごすのも楽しいのだが、こういう娯楽を皆で楽しむのも大好きだった。

前世にはなかった仲も良く遊ぶことが出来る友人関係が心地よいのだろう。

元々二人から一緒に行きたいと言われる可能性も考えていたルビーはすぐに承認する。

 

「先輩たちにも聞いとこうかな〜何も声掛けないとあかねちゃんはともかく先輩めんどくさいから」

 

そう言ってメッセージを送るルビー、今日は彼女たちも仕事が入っていないはずなので、校内にいると踏んでの連絡だった。

そんな彼女の連絡に対してそう待つことなく返信がやってくる。

 

「あっ来た来た。え!?先輩とあかねちゃんはライブの練習したいからパス?」

 

あのかながこういう皆で出掛けるチャンスをふいにするなんてとルビーは驚いた表情を浮かべることになった。

ただアクアはその理由を察して簡単に説明する。

 

「まぁかなとあかねは仕方がないだろ。三人より練習期間取れてないからな」

「あー舞台大変だったもんね……トラブルもあったし」

 

かなとあかねの二人は、あのカロリーが高い舞台『東京ブレイド』に参加していたのだ。

予定より稽古期間が短くなったのもあって、アイドルとしての調整をする時間がどうしても少なくなってしまったのはしょうがない事だろう。

彼女達は残り1か月程度の期間で何とか仕上げないとと大舞台に向けてラストスパートを掛けるようだ。

確かに今はほぼ完璧に仕上げ切っているルビー達と比べると少し見劣りする完成度になっているが、二人なら間に合わせられるだろうとアクアは信じている。

 

「メンバーも決まった事だし行くか。確認だけどフリルも行くんだろ?」

 

アクアは先程のみなみが、『ウチら』と複数形だったのはフリルも行くつもりだからだろうと予想している。

ただ勘違いだったら良くないだろうと念の為に尋ねた。

それに対してフリルは真顔で返事をする。

 

「今なら『国民的美少女』が一緒に映画を見てくれるよ。マリンも嬉しいよね?」

「自分の肩書を盛るなよ……お前は『黙っていれば、国民的美少女』であって『国民的美少女』じゃないぞ」

「マリンは相変わらずつれないね」

 

一度二人きりで映画に行ってハードルが下がったのか、アクアはフリルから時折一緒に行こうと誘われる事がある。

予定が空いていれば、そのたびにアクアも応じていたのだが、最近は互いに忙しく回数も減っていた。

フリルも軽く答えてはいるものの、実のところ内心ではかなり喜んでいたりする。

 

「フリルちゃんの攻め方は巧みやなぁ……ウチも見習わんとあかんかも」

「うぅ……あかねちゃんだけじゃなくてフリルちゃんやみなみちゃんまでライバルになるなんて……そんな気はしてたけど!せんせの女好き!女たらし!」

 

ルビーも殆ど告白同然の内容を吉祥寺宅でしていた二人を見ているので、この会話にそういった意図が含まれているのは理解している。

つまりルビーから見ると恋敵というわけだ。

ただ彼女は二人の事も大好きなので、不満の矛先はアクアの女たらしっぷりへと向くことになる。

アクアはそんな妹の視線から目を逸らして誤魔化す事を決めるのだった。

 

 

 

「いやぁ映画面白かったね〜……まさか最後は社長になったフリルちゃんが無職になったおにいちゃんを助ける事になるなんてビックリしちゃった!」

「ルビー、その言い方はやめろ。役名で言わないと俺がフリルに養われているみたいに聞こえる」

「私はマリンが養われたいなら養ってもいいよ?」

「少なくとも俺は自分も収入がある状態だから安心しろ」

 

映画が終わり、喫茶店で四人は注文をしてから先程の映画の感想を話していく。

ルビーは映画の内容に満足したようで実に楽しそうな笑顔を浮かべながら感想を述べていた。

最初は物語そのものの流れを踏まえた話を繰り広げる。

 

「おにいちゃんはやっぱり演技凄いよね。刺々しい感じで触れたら切れるナイフって感じの若頭さんを上手く表現してて凄かった!そんな若頭さんが少しずつマイルドな性格になっていく感じもドキドキできたし」

「アレいいよね、私もお気に入り」

 

ルビーの感想にフリルも同意を示す。

Sっ気のある若頭もお気に入りだが、そんな彼が絆されていく様こそがフリルは好きだった。

 

「あとみなみちゃんが演じてた妹ちゃん可愛かった!あと妹ちゃんを守るためとはいえ嫁に出すシーンとか泣きそうだったし」

「あのシーンええよね、ウチも初見の時はいい話やなぁって思うて感動してたわ……そういえばルビーちゃん流石に画面越しやったら嫉妬せぇへんかったな」

「ご、ごめんねみなみちゃん。あの時はちょっと余裕なかったっていうか」

 

この撮影が始まる前にルビーが嫉妬していた事を思い出したみなみの言葉に、ルビーは流石に自分が悪いと自覚しているため縮こまる。

愛瑠のように歳が離れていれば気にならないが、年齢が近く、自分が認めるほどに可愛いみなみだと兄を取られる気がしてしまったのだ。

 

「全然ええよ、ウチもルビーちゃんの気持ちちょっとは分かるし。やっぱアクアさんの妹はルビーちゃんじゃないとあかんよって思うもん」

「マリンはどちらかといえば妹萌えじゃなくてルビー萌えって感じだから安心していいんじゃない?」

「え!?そっそうかなぁ〜参っちゃうな〜おにいちゃん私のこと大好きだから仕方がないよね〜」

 

友人二人からの謎の言葉にニマニマしながら上機嫌になるルビーを見て、アクアは将来変な奴に騙されないように注意させないとなと思うのだった。

 

映画の話は盛り上がり続け、そろそろ注文したものが食べ終わる時間になって来る。

楽しい放課後ももうすぐ終わりと言ったところだろう。

そんなアクアの許へ一本の電話がかかってきた。

画面の着信相手を見ると『カントク』と表示されており、『15年の嘘』に関係している話の場合は、その場で出られない可能性があると考え、席を立つ。

 

「どしたん?アクアさん」

「噂をすればカントクから電話だ。少し話してくる」

 

アクアが席を立ったのを見て、正面のみなみは彼へ尋ねる。

アクアもわざわざ隠す必要性を感じなかったので誤魔化すことなく返事をした。

ひらひらと手元で可愛らしく手を振る仕草は実に年頃の少女らしい。

 

「もしもし、どうしたカントク」

『早熟、今いいか?』

「少しの間なら大丈夫だ。今ちょっと喫茶店でルビー達といるからあまり長くはしたくない」

『妹とデートかよこのシスコンが。……分かった、5分で済ませる』

 

映画の約束をしてからアクアと五反田は定期的に情報交換をするようにしている。

並行して書いているアクアの台本をチェックしてもらったり、演出について相談したりと売れっ子監督の割に親身に対応してくれていた。

 

『先に結論を言っておくと今日はいつもの件じゃなくて、新しい仕事の話をお前にしようと思ってな』

「新しい仕事……事務所通さないって事は急な話か?」

 

アクアに直接電話をかけて来るパターンは、基本的に五反田が自分だけではスケジュールを確保できないと疑っている時だ。

先日の舞台でアクアの評価は更に上がり、元の知名度も合わさって仕事が急増している。

それを考えて直接連絡をする事で隙間時間にでもねじ込むコネがあるのが、五反田の強みだろう。

アクアの質問に対して五反田は返事をし始めた。

 

『ああ、まぁどうしても難しかったらいいんだが、お前と……不知火フリルにとっては大きなチャンスになるはずだと思ってな』

「……どういう話なんだ」

 

アクアは自分だけでなくフリルにも仕事を持ってきたという話を聞いて少し真剣に話を聞く気になる。

フリルは将来的にはアイドルからマルチタレントへ転身したいと考えているのは知っている。

先程も役者として今後成功するためにはどういった部分を磨く必要があるか自己分析をしていた。

今後の役者としての成功を考えるのであれば、役者仕事を増やすのはいい事だとアクアも考えている。

 

『実は今年の7月から始まる月9で俺が監督を務める事になってな。俺にキャスティング権を一任されている。そして俺は、お前と不知火を主演で使いたい……4月から撮影予定だが、日程をある程度空けられるか?』

「月9?俺とフリルが……ありがたい話だけど、4月はかなり急だな。……そもそもなんで俺達なんだ?」

 

アクアは五反田からの思わぬ提案に驚いて質問に質問を返してしまう。

アクアとしては役者復帰から1年でそんな依頼が来るとは思っていなかったためだ。

そんなアクアの反応を聞いて、五反田は監督としての自分の意図を説明する。

 

『別に早くはねぇだろ。早熟の場合は知名度も実力もある。早く採用させて欲しいと思われていたくらいだ。不知火だって大人気アイドルグループのメンバーだし、演技も個性的でテクニックがあり目を惹く物がある……それを考えて俺がお前と不知火の組み合わせを使いたいと思った結果がこのキャスティングなわけだ』

 

B小町Rメンバーの知名度や人気は現在ほぼ全員横並びとなっている。

ただ役者としての面だけ考えるとやはりかなとあかねの二強だと考えている人も多い。

五反田は何度かフリルを役者として使った経験から、今回のドラマでは適任だと考えたらしい。

以前からフリルのいるだけで人の目を惹く才能はどこかで輝くとアクアも思っていた。

今回の採用はそう考えればそこまで変わったキャスティングというわけではないだろう。

 

「俺は来期のドラマ撮影は今のところないから時間作れると思う。一応仮スケジュールを送ってくれたらある程度は調整する。フリルについては本人に確認してからミヤコさんと相談だな」

『とりあえずそれでいい。じゃあ家族サービス楽しんでくれ。またな』

 

五反田なりに気遣って用件を伝え終えるとすぐに電話を切ったらしい。

結局ルビーと二人だと思われたままだったが、別に結果は変わらないよなとアクアは思いながら三人がいた場所へと戻った。

 

「おにいちゃんおかえり~どうだった?新しいお仕事とか?」

 

帰ってきたアクアに対してルビーは笑顔で尋ねる。

どうやら誰から電話があったかは察していたらしい。

身内に隠す必要もない内容だったので、アクアは口を開いた。

 

「当たりだ。俺とフリルにカントクから仕事を依頼したいんだと」

「私?それどんなお仕事?」

 

話の流れから自分には関係ないだろうなと思いつつ、追加で頼んだらしいパフェを食べていたフリルが、珍しく分かりやすいくらいに目を丸くして声を出す。

そんな彼女が更に驚くだろう言葉をアクアは続けることにした。

 

「流石にここだと声を大にして言えないが、地上波ドラマの主演だ」

 

その言葉にB小町Rの下級生組三人娘は各々に合った驚きのリアクションを浮かべる。

本来ドームライブより先に地上波のドラマ仕事が来そうなものだが、その辺りは彼女達の圧倒的成長曲線によってこの歪な状態が形成されることになっていた。

 

「ええ!?凄いやんフリルちゃん!」

「すごいすごい!!先輩たちもまだ地上波で主演級はほとんどないし……大出世じゃん!」

 

詳細は隠されたものの、ドラマの主演と聞いてみなみとルビーは驚きの声を上げる。

今後他のメンバーにも主演級の仕事が増えていくだろうが、今はまだ珍しかった。

知名度と人気の上昇に対して現場の採用が間に合っていない結果だったりする。

ルビーも我が事のように嬉しそうに笑顔を浮かべながらフリルに声を掛けていた。

 

「……ホント?マリンが揶揄っているとかじゃなくて」

「そんな悪質な嘘つくはずないだろ」

 

地上波ドラマの主演ともなればかなり大きな仕事だ。

フリルは以前月9に出たいと言っていたのもあり、これが月9だと知った時どんな反応をするのかアクアとしては内心楽しみだったりする。

ただその秘密を知るまでもなく、フリルは顔を綻ばせて喜んでいた。

 

「嬉しい……正直な話をすると少し緊張するけど、マリンが共演って事だから一安心。サポートよろしくね」

「それは当たり前だろ。……それに俺としても勝負の年だし失敗するわけにもいかないからな」

 

元々身内に限らず共演者はフォローするようにしているアクアだが、この月9は特に失敗できない。

ルビー達B小町Rは今度のドームライブで成功者として認識されるだろう。

アクアは復帰後、地上波では大きな役が来ていなかった。

だからこそ、ここで名を上げて名実共に立派な役者となる必要があると考えている。

 

「うぅ……フリルちゃんが羨ましい。みなみちゃんもそう思うよね!」

「ルビーの言う羨ましいはドラマやなくてアクアさんと一緒だからやろ……。ウチももっと頑張らなあかんな」

 

ルビーの事をよく理解しているみなみが苦笑しながら返事をする。

とはいえ自分から見ても二重の意味で羨ましい事は変わりない。

ただみなみは欲しがるだけではなく、いつか同じ規模の仕事を貰いたいとやる気を更に燃やす。

それから四人はしばらく互いの仕事の話をして、互いの今後を応援し合うのだった。

 

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