「いらっしゃーい!ようこそ高千穂へ〜」
MEMちょとゆらが待ち人と合流するまでアクア達は看板や神様の銅像などと一緒に写真を撮って過ごしていた。
そんな彼らに一人の女性が苺プロ一行へ声を掛けてくる。
アクアは知らない相手だなと思いつつも、誰だか大体察しは付いていたため、その姿を見守った。
「アネモネ〜」
「やっほーアネモネ」
「MEMちょにゆらちゃんおひさ〜」
MEMちょとゆらが彼女にハイタッチを交わす。
やはりと言うべきかアクアの予想通りの人物だったらしい。
映像ディレクターのアネモネ、今回MEMちょとゆらが待っていた人物だ。
「アネモネさん、MEM達の事よろしくお願いします」
「こちらこそ、MEM達にはお世話になりっぱなしで……私の評判が上がったのもC式部のおかげですから……ってその子愛瑠ちゃんですか?」
「める2さい!」
ミヤコとアネモネが仕事人として丁寧な挨拶をしたところで、ミヤコの足元にいる小さな子どもに気が付く。
愛瑠は全くと言っていいほど人見知りをしないため、アネモネに元気よく挨拶をしていた。
「前会った時はまだ1歳だったけど大きくなりましたね」
「えぇ……子供の成長は早いですよね」
そう言いながらミヤコはチラリと愛瑠だけでなく、アクア達にも視線を向ける。
彼女にとってはアイもアクアもルビーも皆自分の子供のようなものだという意味が込められていた。
それを理解してアクアは少し恥ずかしくなったものの、それ以上に嬉しく思った。
「みんなは観光だっけ?ここ高千穂は芸能の神様が祀られている事でも有名だから苺プロの人達にはちょうどいいかもね……なんて言ったっけなぁ、日本神話に出てくる……」
アネモネは観光するのにいい場所を紹介しようと高千穂の強みを話そうとするが、ちょうどど忘れしてしまい、神様の名前が出てこないで言葉に詰まった。
そんな彼女を見て、アクアは助け舟を出す。
「天鈿女命……荒立神社に祀られている女神ですよね」
「あっ知ってる?」
「ええ」
(よく……知っている)
雨宮吾郎は大学に行った期間を除けば、ほとんど宮崎で過ごしていたのだ。
歴史あるものに関しては、アネモネよりも詳しくなるのは当然だった。
「歌や芸能の女神でね、芸能界の人もしょっちゅう東京から参拝に来るのよ。ライブの必勝祈願ってことだしシメには持ってこいの場所だと思うわ」
「アネモネ〜そろそろ時間だよ?」
それからもアネモネは何箇所か地域の見所をアクア達に話してくれたが、どうやら時間が訪れたらしい。
MEMちょに指摘されて時計を見て、彼女は少し慌てた様子を見せる。
「あっ確かにそろそろ始めないと間に合わないわね……他にも神話に縁深い場所、神話の町なんて呼ばれる土地だから楽しんでいってね」
「またね皆、また夜に〜」
「ばいばーい」
最後にそう言ってMEMちょとゆらを連れてアネモネは車に乗って去っていった。
B小町R、アイ、ミヤコと愛瑠、アクアとそれなりの大所帯。これからどこを回るか各々相談する。
「あかねのしおり見てたけど、アネモネさんが言っていた荒立神社は最終日に行くのが一番それっぽいし、このルートでいいんじゃないかしら」
そう言ってかなはあかねが作った冊子を取り出してルートDと書かれたものを指差す。
あかねは当日みんなの気分に応じてまわり方を変えられるように複数ルートを検討していた。
「天岩戸いいよね〜私行ってみたかったんだ!」
ルビーにとっても高千穂は大切な場所だった。
自分が育って死んだ場所、そして生まれた場所でもある不思議な土地。
ただ当時は自由に歩くなどできるはずもなかったため、殆ど伝聞でしか知らない。
生まれ変わりなんて奇跡を起こしたのが神様なのだとしたら、ルビーは一度お礼を言いたいと思っていた。
「アマテラスが引き篭もって神様達が宴会して外に出した奴だね。ちょっと面白そう」
「確かアマテラス様が引き篭もったら太陽が消えたんやっけ?やっぱ大きいんやろか」
神話を積極的に調べている人間でなくとも天岩戸という名前とエピソードは聞き齧ったことがある。
フリルとみなみも神話の町と聞いてから少しワクワクした様子を見せていた。
「アマテラス……か」
「どうしたのアクアくん」
アクアは懐かしいフレーズに思わず反応する。
それを不思議そうにあかねが尋ねた。
「いや、昔ルビーがごっこ遊びでアマテラスを名乗った事があったなって思い出してた」
「えっ!なにそれ可愛いね……ちょっと見てみたかったかも」
あかねが想像したのは厨二病を患ったルビーが神様のポーズをする姿である。
そのため自分もタイミングさえ合えば見られたのではないか?と彼女は少し寂しく思った。
ただ現実に起きたのは突然赤ん坊が机の上に座り、威厳ある態度で淡々と言葉を告げる姿だ。
アクアはその勘違いを正すつもりはないが、もし実物を見ていたら今を遥かに超える驚きだろうなと想像して僅かに笑みを浮かべる。
「おにいちゃんも天岩戸神社がいいよね?」
「どこでもいい、好きにしろ」
そんなアクアにルビーが声をかける。
ただ前世で何度か来た事あるアクアは特に特別行きたい場所がある訳ではない。
そう思いながら返事をしたが、ルビーは不満らしい。
少し膨れた様子でアクアに苦言する。
「もう!折角の旅行なのに雑な返事はよくないよ〜まぁいいや!好きにしろっていうならホントに好きにするよ?」
それから改めて確認したところ天岩戸神社に肯定的な意見が複数出た事で、旅行最初の行き先は天岩戸神社に決まる事になる。
それから数時間後、参拝も終わり、本日宿泊予定の旅館へ向けて移動する一行。
ミヤコの運転するレンタカーに乗り込んだ面々は、楽しい観光ができて笑顔を浮かべている。
途中から疲れてスヤスヤとアクアの背中で眠っていた愛瑠も、チャイルドシートの上でどことなく幸せそうだ。
「天岩戸も天安河原も凄かったねー」
そんな中、アイは楽しそうに天岩戸神社についての感想を口にしていた。
語彙力こそないものの、言葉にしっかりと感情が乗っており、適当に言っている訳ではない事が聞き手に伝わってくる。
そんな彼女に応答するようにルビーも自分の感じたことを口にした。
「だよね!私は天安河原であのずらっと並んだ積み石がお気に入りなんだよね〜アレ全部みんなの願いが詰まってるってすごくない?」
今日あった中でも特に印象に残っているものについて語るルビー。
その目はキラキラと輝いており、人によっては眩しいほどに純粋な笑顔を浮かべている。
「確かに凄かったんだけど……最初はなんか大量に積まれてる石を見ると不安になったわよ?何も知らなかったら何の儀式!?ってなるでしょ普通」
天安河原では、祈願の念を込めて石を積むことで願いが叶うとされている。
勿論アクア達も各々の願いを込めて石を積んだが、多くの観光客が石の上に石を積む作業をする事で、大量に石が積まれた状態で並ぶという状況が完成する事になる。
それはかなの言う通り少し不気味な光景に見えてもおかしくない。
みなみもかなの意見に同意する。
「ウチもかなさんの意見ちょっと分かるわ。最初何も知らんかったから声出そうやったもん。アクアさんが解説してくれたから安心したけど」
アクアがどうして石が積まれているのか解説したおかげで、みなみはポジディブに思えるようになったが、知らないで見たら少し不気味だと感じても何らおかしくはない。
「解説ねぇ、アクア妙に詳しかったわね。……アンタもしかして」
かながアクアに訝しげな視線を向ける。
後ろの席から感じる視線を受けて、アクアは何か失言したか?と不安になっていた。
隠し事がいくつかあるが、その中でも特大の案件に関わる内容のため、少し緊張してかなの言葉を待つ。
ほんの一部が張り詰めた空気になっている中、彼女は続きを口にした。
「あんな興味なさそうに『どこでもいい、好きにしろ』なーんて言ってたのに誰よりもこの旅行楽しみにしてたの?」
ニマニマと面白いおもちゃを見つけたような顔をしながらアクアを見るかな。
それに対してアクアからは後ろにいるかなの表情は見ないはずだが、彼女が何を考えているのか察して、アクアは真顔になる。
「は?誰が」
「そりゃ〜アンタよアンタ。それでいてあんな澄ました態度してたの面白すぎでしょ」
冷たい声色でかなへ返したアクアだったのだが、更なる追加の煽りが飛び込んで来て閉口する。
実際彼女の煽りは勘違いではあるのだが、前世なんて理由は口にできないため、上手い反論が浮かばないアクアは口を開く事ができない。
そんなかな有利な舌戦が繰り広げられる中、特に気にした様子もなく、マイペースに感想を述べているものもいる。
「天岩戸自体も神話の代物と言われるだけあって神秘的だったね。パワースポットなのも納得。今日だけで10歳は若返ったかも」
そんなマイペースなフリルはいつものフリル節を発揮しているが、その言葉にはいつも以上に実感が込められていた。
というのも先程参拝してから妙に全身が軽いような気が彼女はしており、今ならばアイドルとしても昨日までより更に良いパフォーマンスができると確信出来るほどである。
「そんなに若返っちゃったら私たち小学生になっちゃうよ?でも気持ちはちょっと分かるかも……なんだか不思議と元気が湧いたよね……もしかしてパワースポットって本物もあるのかな」
あかねも若返りについては柔らかいツッコミをフリルに入れつつも、確かな効果を感じるため、不思議そうに首を傾げている。
彼女はオカルト的な要素も面白いとは思っていたが、ここまで分かりやすく効果があると実在を疑っていた。
「ねぇアクアくんはオカルトとか好き?」
「どうしたんだ突然」
なんとかかなの煽りを乗り切ったアクアは少し疲れた様子であかねの問いかけに返事をする。
その疑問はどこから来たんだろうかと少し不思議に思っていた。
「アクアくんさっきから色々詳しいけど、旅行のために調べたって感じじゃなくてもっと昔の記憶を頼りに話してた感じに見えたからね。趣味でオカルト関連調べた時に知ったのかなって」
相変わらずかなり鋭いあかねは、アクアの説明から色々と考察していたらしい。
確かにアクアは改めて調べ直した訳ではないため、昔の記憶を辿りながら解説をしていた。
つまりあかねの指摘は一部正しいという訳である。
アクアはその恐怖すら感じる考察力に感心しながらも程々に勘違いしてくれている部分に乗っかりながら返事をした。
「好きというかまぁ……中には真実もあると思ってる」
「うんうん!面白いよねそういう話!」
アクアの答えに対してあかねは笑顔で返す。
アクアは彼女の知的好奇心はオカルトの領域にも首を突っ込んでいるのかと知識欲の強さに驚かされた。
「今のアクアの分析といいあかねちゃんの考察は凄いよね〜。私の演技もそうだけどどうやってるの?」
それなりに話も盛り上がっているところで、アイは自分の作戦を実行するため、話題を振る。
アイという演技はもっともあかねが多用している演技と言っていい。
尊敬の対象であり、彼女が思う最強のアイドルだからこそ使われており、本人も使われる事自体は気にした様子もないが、その秘密は気になっていたためちょうど良かった。
「プロファイリングの本とか読んだりはしてるんですけど、いっぱい調べて自分なりに解釈してる感じです」
「わ〜凄いなぁ私はそういうの苦手だから……」
「大丈夫!マ……お姉ちゃんはそんなの関係なく凄いから!」
自分のことを天才と口では自称するもの、実際は自分のことをそこまで高く評価していないアイは、少し落ち込んだ表情をする。
そんなアイを慰めようと元気よく告げられた娘の言葉。
予想していた通りの言葉を聞いて、アイは一番星の笑顔を浮かべながら、この話を振った時点から予定していた通りの言葉を口にする。
「ありがとルビー!いい子に育ってくれてママ嬉しいよ〜」
「え?ママ?」
隣の席のルビーを抱きしめながら発されたアイの言葉に車内の空気が固まる。
アイによって計算された困惑の流れ。
事前にこの旅行で暴露すると聞いていたミヤコも、なんでこのタイミングなのよ!?と頭を抱えたい気分にさせられた。
なお運転中のため、実際には抱えることすらできない。
「ねぇアクア。今アイさん自分のことママって呼んだ?」
かなは努めて冷静に今起きた事を当事者であるルビーの兄、アクアへと確認する。
ルビーの母ということはアクアの母でもあるという事だから的確な質問先と言える。
「言い間違えじゃないか?学校で先生をママって言うみたいなもんだ。ルビーとアイの付き合いも長いし、アイが母親のような感情を持っていても不思議じゃない」
アクアは少し冷や汗を流しながらどうにか言い訳を考えて口にする。
ここまで突発的にピンチになると考えておらず、アクアにしては杜撰な説明を口にした。
焦っているからか普段よりも口数も多い。
「……アンタ珍しく動揺してるわね。言い間違えとしても自称する時に普通ママにはならないでしょ」
少なくともそんな呼び方を自分にする人物など、本当に母親をやっている人くらいだろう、かなはそう思う。
そしてアイは公式では当然子供はいない。
仮にルビーが娘じゃなかったとしても、アイには隠し子がいるという衝撃には変わりがないのだ。
もう誤魔化すこともできないという張り詰めた空気の中、気が抜けそうな声が響き渡る。
「あちゃーバレちゃったか〜ごめんねアクア、ルビー。今まで頑張って隠してもらってたのに……」
声の主、アイは実に軽い調子で自分の秘密を認める発言を口にする。
それは長く続いた嘘の終焉を意味していた。
最初はアイが本当にただ口を滑らせたかと慌てたアクアも、少し時間が経って落ち着きを取り戻せば、アイがどうしてママと自分を呼んだのかという意図を汲み取れてくる。
(……これ、アイが自分のことママって呼んだのはわざとだろうな。母さんは最初からこのタイミングで俺たちの秘密を暴露する気だったと考えた方がいい)
アクアは冷静になった頭の中でこのアイによる秘密の露呈が意図したものだろうと考え始めていた。
アイはこの秘密に関して誰よりも守るつもりだった。
テレビ復帰直後は、『ウチの子が……ウチの子猫がね』など不穏な言葉を口にしていた事もあったが、かなり早い段階でその傾向は落ち着きを見せており、嘘のベールは流石の強固さ。
だからこそアクアは、もしアイの隠し子についての情報が漏れるとすれば、ルビーがうっかり口を滑らせるか、アイが話してもいいと判断した時だろうと思っていた。
きっと今がその話してもいいと判断した時ということなのだろうとアクアは認識する。
「え?ホンマに?さっきの神社での感動とか全部吹き飛んだくらいの衝撃なんやけど」
みなみは余韻全てが上書きされた混乱から完全には抜け出せず、まだ話が飲み込めていないらしい。
少しずつ情報を咀嚼できてきた所で、なんとか声を絞り出していた。
秘密の主であるアイが終わりだと言うのならば暴露するのが正解だろう。
そう判断してアクアは真実を口にする。
「今更誤魔化す必要もないか。……事実だ。俺たちの母さんはアイ、星野アイだよ」
まだ誤魔化す事ができなくはない。
ただアイの意図を汲むならば、ここは否定するのではなく肯定するのが正解だろうとアクアは判断した。
どのみちB小町Rの面々を信頼できずに秘密を口にできなかったというより、アクア達がアイの秘密だからと自分から暴露するのは気が引けていただけというのが長引いていた根本の原因である。
身内に隠している申し訳なさもあったアクアは、アイの目論見こそ読みきれないがこの話の流れに乗る事に決めた。
「あ、やっぱりそうだったんだ」
「アレ?フリルちゃん気付いてたの?」
フリルの言葉にルビーはもうバレているならいいかと否定はしないが、バレるような機会あったかなとルビーは首を傾げていた。
それに対してフリル自身はなんて事ないと言いたげに言葉を返す。
「気付いていたというより、ルビーとアイさんってかなり顔が似てるからね。かなり近い親戚だろうなと予想はしてたよ。……ルビーの髪色で確信はできなかったけどね」
どうやらフリルは普段からイケメンや美少女を見るのが好きと公言するだけあって、ルビーとアイの顔の造形が近い事に気付いていたらしい。
それでも確信しきれなかったあたり、地毛が金という要素がかなりの目眩しになっているようだ。
「……言われてみたら確かに似てるわぁ。ウチ全く気づかんかったんやけど」
「こっちもバレないように気を付けてたからな。苺プロを揺るがしかねない秘密だから隠していたが、悪かった」
「いや、ウチが教えられていても力にはなれんかったやろうし気にせんといて?」
みなみは特に気にした様子もなく答える。
アイの隠し子という情報がどれだけ重要かは、苺プロで過ごしていれば嫌でも体感するのだから、隠していて正解としか思わない。
むしろ今後何かの拍子で口を滑らせないようにしないとと普段以上に言葉を意識するように自分に忠告していた。
「なんか悔しいわね……。今思えばルビーがよくアイさんの事『マ……お姉ちゃん』って呼んでたのもママって呼びかけて誤魔化してたわけ?」
「あはは、ちょっといつもの勢いで呼びそうになっちゃって」
かなもルビーの言い淀みについては気付いていたらしい。
指摘されたルビーも図星を突かれて目を逸らしていた。
「本当気を付けなさいよ?私は気付いてなくても、あかねみたいに勘のいい人は気付いたでしょうし。……どうせアンタは気付いてたでしょ」
かなは視線を隣の席のあかねへと向ける。
その台詞はこの中で誰よりも早くアクア達の秘密に辿り着いているとしたらあかねだろうという、自分のライバルが持つ異能のような調査力を信頼しての言葉。
それに対してあかねも今後を考えて観念したように白状した。
「あはは……そうだね。うん、気付いてたよ。可能性に気付いてからアクアくんに確認しちゃってたし」
「めちゃくちゃ攻めたわね!?」
あかねとしては、そろそろ他の人より自分だけ情報アドバンテージがあるのはどうだろう?と思っていたところもあり、今回の暴露はタイミング的にも少しありがたいところがあった。
流石にあかねから皆に隠し子だとバラしたら?と提案する勇気はないので、待ちの姿勢になってしまうのも仕方がないだろう。
一通り皆がアイとアクアとルビーの関係性を理解したところでフリルが気になった事を質問する。
「これって私達はマリン達の秘密を知れて嬉しいけど……世間にはずっと親子関係隠さないといけないんだよね?」
それはアクア達にとってどうなのかと心配しての言葉。
ただアクアは既にそれに対しての回答を用意している。
「それに関しては今計画してることがある」
そこからアクアは自分たちが準備している計画の説明をB小町Rのメンバー達へしていく。
少し長い話にはなったものの、一通り計画について教えられた面々の反応は様々だが、否定的なものはない。
「へぇ……面白いこと考えてるわね。私も協力させてもらうわ」
かなはこれから起こるだろう展開を想像して、笑みを浮かべている。
アクア達の作戦はもし上手くいけば、アイとアクア達の親子関係の公開をリスク少なく行うことができるだろうと感じてのものだ。
「ウチらも出来ることあるみたいやし良かったわ」
「悪いな、これまで秘密にしていたのに」
「気にしないでいい。マリンが色々助けてくれたのに比べたら大した労力じゃないし」
情けは人の為ならずと言うが、アクアがやってきた事は秘密を黙っていたと言う点を含めても信頼を損なうようなことはなかったらしい。
というより秘密が大きすぎて、これは隠しておくのも仕方がないといった納得が得られたと言った方が近いかもしれないが。
こうして車の中という閉ざされた空間で、ひっそりと星野家最大のタブーがB小町Rメンバー全員へと共有されることとなった。
ただ、これほど大きな事すらこの旅行で起こる出来事の一つに過ぎないなどとはこの時の彼らは知るはずもなかった。