かゆ・・・うま・・・
〈チェ―ンガン掃射〉
「に、逃げろ!」
「退避――!」
「ぎゃあぁぁぁぁっ!」
〈チェーンガン掃射〉
「まっすぐ逃げるな!軸線から外れる様に動け!」
「そんなこと言われても・・・ぎゃっ!」
「た、たすけっ―――」
上空から降り注ぐ大口径の銃弾。
高速飛行しながら放たれる銃弾は地上を逃げ回る風紀委員を正確に撃ち抜き、並みのライフルを防ぐ盾を容易く弾き飛ばし銃弾を受け止めるはずの重装甲な装備を余裕で粉砕する。
重装兵ですら数発で戦闘不能状態へと陥るだろう。
『いやー・・・もう勝ちですね。これ。』
”えっと・・・あれは何かな?ハルガ。”
「また隊長のびっくりドッキリメカがでてきた。」
『TJ-chrysalis-6000―――通称〈クリサリス〉。AI開発の産物で生まれた・・・完全自立兵器ですね。』
対策委員会(あと便利屋)に合流したハルガ。
対空砲から避難するために、先ほど地上へと降りてきた先生も加わり、全員で目の前に広がる光景を眺めている。
”・・・完全自立兵器?”
『簡単に説明すると、
〈攻撃モード〉
突如、高速で飛び回っていたクリサリスが変形。
翼を広げた鳥の様な形を取り、滞空し始める。
動きが止まった為、ここぞとばかりに風紀委員からの対空ミサイルが飛んでくるが、ほとんど瞬間移動の様な動きであっさりと回避される。
そしてお返しとばかりに銃弾とミサイルを風紀委員に向けて放った。
「あれだけ苦戦していた相手をほとんど一撃で倒すなんて・・・すごい火力ですね☆」
『大口径のチェーンガンにミサイル、小型ドローンにレールガンまでついているからな!』
「レールガン?」
『火薬の代わりに電磁力を使って弾丸を撃ち出す兵器だ。磁界に電流を流すと力が生じるだろ?・・・フレミング左手の法則だ。中等部で習わなかったか?』
「ん、知らない。」
『よし、百聞は一見に如かず。試しに撃ち込んでみるか!』
”そんな簡単に使っていい物なの⁉”
「下部に搭載されてる奴ですよね?かなり巨大な武装に見えるんですが・・・」
端末を操作し、クリサリスへと攻撃指示を出し始めるハルガ。
慌てて止めようとする先生とアヤネをよそにハルガは攻撃目標を指定している。
〈レールガンチャージ・・・〉
『大丈夫ですよ。直撃は避けますし、たとえ当たったとしてもしばらくの病院生活ですみますし。』
「それはすんでると言えるのでしょうか・・・?」
『まぁ、当たったら運が悪い自分を恨むんだなクソッたれどもめ!!』
〈LaLaLa-LaLaLa―――!〉
”ちょ、ちょっとハルガ⁉”
『発射ァ☆』
限界までチャージされたエネルギーによってレールガンの砲弾が放たれようとした瞬間、突如飛んできた紫の光がクリサリスの側面に突き刺さり、機体は煙を吹いて大きくよろめいた。
〈・・・・ウワァ!〉
『・・・what?』
クリサリスは機体の各所から小規模な爆発が起こし、通常モードへと変形する。
そして開けた場所へとゆっくりと移動、徐々に高度を落とし、僅かな砂煙を立てて静かに着陸した。
〈オラハシンジマッタダァ・・・オラハシンジマッタダァ・・・〉
”わ、懐かしい・・・”
『何だよぉもぉぉっ!またかよぉぉぉぉぉぉっ!』
「ちょっと・・・あれ使っちゃダメだったんじゃないの?」
「もしかして隊長が整備不良?珍しいね。」
〈オラハシンジマッタダァ・・・テンゴクニイッタダァ・・・〉
『んなわけないだろ!あれを見ろ!』
全員が不時着し動かなくなったクリサリスを見ると、その大きな機体の影から小さな人影が飛び出してきた。
背中にある大きな翼に威圧的な角、重厚感のある特徴的なヘイロー・・・そして小鳥遊ホシノと同じくらいの小柄な体躯。
ゲヘナ風紀委員の委員長にして、キヴォトス最強格の一人とも言われる人物・・・空崎ヒナその人である。
『これはまずいな・・・』
銃を構えるツガミと対策委員会を止めるハルガ。
一方、ヒナはクリサリスから少し離れた場所で一度立ち止まると、アコとの通信を繋いで話を始めた。
「アコ、これはどう言う事?」
「ひ、ヒナ委員長・・・これは、えっと・・・」
「はぁ・・・もういいわ。」
ヒナは繋いだばかりの通信をブチ切り、先生たちの方へと近づいてくる。
先生を除いた全員が銃を強く握りしめ、警戒を強める。
「ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナ・・・でしょうか?」
『あぁ、間違いない。』
「どうしましょう・・・」
アヤネの問いに答えなえるハルガの声には若干の焦りが含まれていた。
「隊長、どうする?」
『どうするもこうするもあるか、
「食い止められるって・・・まさか一人で残るつもりなの⁉」
『それ以外に方法はない。・・・ツガミ、先生の護衛を頼む。』
「・・・・わかった。」
「だ、ダメですよ!風紀委員長と言えばゲヘナ・・・いえ、キヴォトスでも匹敵する人が少ない強者の中の強者ですよ⁉」
『残念ながら私がその一人なんだよなぁ。』
”・・・ハルガ、大丈夫なんだよね?”
『先生たちが離脱したらすぐに逃げるつもりです。今は私を信じてください。』
”・・・わかった。ハルガを信じるよ。”
『ありがとうございます。それではまた後で・・・』
「ちょっと‼」
止めるセリカを振り切り、ハルガはヒナの前へと飛び出した。
いきなり現れたハルガにヒナは少し驚いた様子だったが、すぐに元の表情に戻る。
退却する先生たちを確認したハルガは、手に持っていたマシンガンを放り捨て腰に下げたショットガンを取り出した。
『久しぶりだな、風紀委員長。』
「シャーレと聞いていたけれど・・・そう、あなたが居たのね。」
『こちとら連邦生徒会唯一の戦力なもんでな。そっちこそ大勢引き連れて何が目的なんだ?』
威嚇するようにコッキングレバーをガチャリと鳴らす。
もちろんそんなものに怖気づく相手ではないのは分かっているが、攻撃意思があることを示すためにあえて行う。
しかし、ヒナは敵意が無いことを示すように軽く手をあげる。
「私は戦う為にここに来たわけじゃないから。」
『・・・マジか。』
「えぇ・・・この状況でシャーレやアビドスはともかく、貴方と戦う事はこちらにとって大きな不利益になる。多分、アコはあなたが居る事を見越してあれだけの戦力と装備をかき集めたのでしょうけどね。」
『ほとんど戦争用の装備品だったな。』
「・・・それだけ準備してもあなたには敵わなかったのだけれどね。」
『いや、あんたがその気なら簡単に制圧できただろう?俺もアビドスもな。』
ハルガの問いに、ヒナはため息を吐きながら首を横に振った。
「冗談言わないで。あなた個人やアビドスはともかく、あんな兵器まで相手にしてられない。」
『そうか?やってみないと分からんぞ?』
「遠慮しておくわ。」
冗談めかしてファイティングポーズをとるハルガ。
すると、遠くから機械音が聞こえ、ぐったりとしていたクリサリスが再び起動した。
砂煙を上げながら再び上昇する巨大な機体を眺めながら、ヒナは何度目かになるため息を吐く。
〈ジコシュウフクカンリョウ。〉
「あんなのを何度も相手にしてたらキリがない。」
『あぁ・・・正直、俺も頑丈に作り過ぎたと思ってはいる。』
お互いに銃口を下げて完全に話し合う体制に入る。
ヒナは腕を組み、ハルガは腕に装着している端末を操作し始める。
『ま、争う必要がないならそれに限る。』
「そうね、私たちが争っても被害が広がるだけよ。」
『まったくだ。』
完全に戦う意思が無くなった二人は、完全に話し合う体制に入った。
上空にいるクリサリスは完全に攻撃を止め、周囲にいる風紀委員も若干戸惑いつつも銃口を降ろしている。
『しかし、部下の独断専行とはな。お互い苦労する物だな。』
「えぇ、そうね。」
『それで、ただ仲間を止めに来ただけじゃねぇだろ?』
「・・・そうね。お詫びになるかは分からないけれど。少し伝えておきたいことがあるの。」
ヒナはハルガに近づくと、背伸びをするようにつま先立ちをし、出来る限り彼の耳元に口を近づけてささやいた。
「アビドスの捨てられた砂漠で、カイザーコーポレーションが何か企んでるわ。」
『・・・そうか。』
話を聞いたハルガは空を仰ぐように顔を上げた。
青空の広がる視界の端に先生たちが乗るヘリが通り過ぎる。
『まぁ、近々調査はするつもりだったからな。だが、その情報はありがたい。感謝する。』
「気にしないで。少し物お詫びよ。」
『それでもだ。』
ハルガは放り投げたマシンガンを回収。クリサリスに撤収命令を出し、先生たちに戦闘が終了したことを通信で伝えた。
風紀委員会はヒナの号令であっと言う間に撤退を始め、ヒナ本人より謝罪が行われたことでお互いに何とか丸く収まったようだった。
ちなみに、他校の自治区近くで軍隊張りの戦力を運用した
後日、行政官は山の様な反省文を書かされたらしい。
「・・・うへぇ、私が出る必要はなかったかな?」
今回はここまでです。
みんな、遅れてごめんねぇ・・・
酒のんでぶっ倒れるのと、コスプレとスランプで全然手が付かなかったの。
次回はアニメ版の多分水族館回ですわ。
それではまた次回・・・