異世界に転移して剣闘士落ちして二年。クラスメイトに買われた。   作:文月二三

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模擬戦

 屋敷の裏にある広場に俺は立っていた。ルールは殺さなければある程度の怪我はセーフ、即死する物以外は武器も魔法も何でもあり。何でも使用人の中に、高位の回復魔法を使える人がいるらしく、本気で殺し合えるらしい。

 

 俺が今日戦うのは、リリーとゲッツ、この屋敷で庭師をしているエルフのエルミアさんの3人だ。リリーで小さく素早い動きを行う敵への対応を、ゲッツで剣同士を、エルミアさん相手には弓と魔法を見るらしい。

 

 トリスタンさんとは現状この屋敷では凛音さんと互角、もしくは二番手なので、俺とゲッツ、エルミアさんの3人で一緒に戦い、どこまで連携を取れるか見るそうだ。

 

 今日の模擬戦を見て、今後の俺の特訓内容が決まるらしい。

 

 一戦目、俺から5メートルほど離れたあたりでリリーが立っている。片手には昨日の夜も持っていたナイフを片手に、瞳も真っ黒かと思えば子供らしい目をしていた。

 

 「どっちも頑張ってねー!」

 

 更に離れたところでは、凛音さんと他の使用人が野外用の椅子と机に座って観戦していた。

 

 「両者準備は宜しいですか?1戦目。始め」

 

 トリスタンさんの合図でリリーが俺に向かって向かってくる。俺は守りに入る。昨日の夜のあの感じだと、リリーは俺より遥かに強い。とにかく耐えて隙を窺い攻撃する。

 

 地味だし華のない戦い方かもしれないが、2年間俺を生かした実績のある戦法だ。

 

 リリーがナイフを振り被る。強い衝撃を出来るだけ逃すために剣を斜めにする。剣とナイフが当たる瞬間、想像とは違い、酷く軽い攻撃がきた。ナイフであることを加味しても、昨日感じた格上の気配からすると、遥かに弱い。

 

 俺は罠を疑いつつも、様子見の為、反撃として左腕でリリーを殴りつける。

 

 俺の予想では、リリーは容易く避けて、何かしらの方法でカウンターが来ると思っていた。だが、俺の左腕はリリーの顔面ど真ん中を撃ち抜いた。

 

 リリーは殴られた衝撃でそのまま後ろに倒れ込み動かない。

 

 審判をしていたトリスタンさんが歩いてリリーの方に向かうと、リリーの顔を覗き込む。

 

 「リリーの気絶を確認しました。ミナト様の勝利です」

 

 様子見の為の対して力のこもっていない攻撃が顔面に入っただけで、昨日一瞬で俺を壁に打ちつけたリリーが気絶した。そんなのはありえない。俺が困惑していると、回復魔法を使える使用人の人もリリーに近づいて魔法を使う。

 

 その瞬間リリーは目を開けて、体を起こす。そしてリリーは一瞬で試合を観ていた凛音さんの方へと駆けつけた。その速さで試合が始まった瞬間に俺の首を斬れたと思うのだが、あれはどう言う事だ。

 

 「すみませんリンネ様…リリーは負けちゃいました」

 

 涙に目を溜めて、凛音さんを見上げる形で抱きついた。凛音さんは聖母のような表情で優しくリリーを受け入れると、柔らかい手つきでリリーの頭を撫で始めた。凛音さんはもちろん、リリーも非常に整った顔をしているから、宗教画のような神々しさがあった。

 

 「大丈夫。リリーはまだ小さいし、湊くんは2年も剣闘士をしてたから仕方ないよ。リリーならきっと強くなれるよ」

 

 「リンネ様ぁ!」

 

 そう言ってリリーは凛音さんの胸元に思いっきり顔を埋める。そして、顔を埋めた状態で俺の方をチラリと向くと、両目を思いっきり閉じて、ベーっと舌を出した。

 

 こうしてみると、やっぱり人畜無害な小さな女の子にしか見えない。ところで、凛音さんから見て、幼気な少女に問答無用で顔面パンチする男だと思われてないだろうか…

 

 「さて、次の試合に移りましょう。ゲッツは前へ」

 

 ひとしきりリリーが凛音さんを堪能した後、トリスタンさんに言われて、俺と大剣を持ったゲッツが向き合う。使用人の人がかけてくれた回復魔法のおかげで、疲れは全く無い。

 

 「2戦目、始め!」

 

 「ミナト!お前の実力、見せてもらうぜ!」

 

 開始の合図が聞こえると同時に、ゲッツは大剣を勢いよく地面に打ち付ける。打ち付けられた地面が大きく割れて、人の頭と同じくらいの大きさの礫が俺に向かって飛んでくる。

 

 いくつかを剣で弾き落としつつ避ける。ゲッツはその隙に、俺との距離を詰めているようだ。

 

 俺はそれを見て次の行動を予測し、ゲッツが飛び出してくるであろう場所に向かって、持っている剣を振りかぶった。

 

 ガンッ!と大きな音を立てた。俺の剣は、ゲッツの義手によって防がれ、そのまま片手で大剣を俺の胴に向かって振った。

 

 俺は剣の刃をゲッツの義手から滑らせるように下へずらして、剣の腹でガードする。しかし、ゲッツの大剣は勢いを衰えさせる事なく剣ごと俺を吹き飛ばした。

 

 幸い間に剣があったお陰で切り裂かれることは無かったけど、体中が悲鳴をあげている。その上、持っていた剣は刃筋が歪んで、剣として使うには心許ない。

 

 「剣闘士ってのはそんなもんか!?もっと死に物狂いで来やがれ!」

 

 ゲッツは俺をそう挑発して、更に追撃を重ねようとしていた。

 

 俺は鉄の棒と言ったほうが良いような剣を構え直して、ゲッツを待ち構える。ゲッツは俺の目の前に来る瞬間まで、どの方向から攻撃するのか見せなかったが、俺の目の前に来た段階で、剣を上段に構えた。

 

 俺は剣を頭の上、横に構えて再度受ける体制をとる。ゲッツはそれを見てつまらなさそうな顔をしながら、そのまま一直線に振り下ろした。

 

 俺はそのまま大剣を受け…ないで当たった瞬間に剣から手を離す。

 

 受けるものがあると思って振るわれた剣は、そのままの勢いで振るわれて、必然的にゲッツは何もないところに剣を振った形になった。

 

 ゲッツも虚をつかれたようで、驚いた顔を横目に、剣の間合からさらにゲッツに身を寄せて、下から顎を殴りかかった。

 

 が、しかし、全く効いている様子がない。

 

 「使えねえ剣を捨てて殴りに行くのは悪くはねえな!けど、お前は圧倒的に訓練も才能も足りねえ」

 

 ゲッツはそう言うと、義手で俺を思い切り殴りつけた。俺は大剣で殴られた時よりも吹き飛び、何処かにめり込んだ。

 

 そして意識が暗転した。

 

 「これじゃリンネ様と一緒にいるのは難しいんじゃねえか?」

 

 ゲッツが何を言ったかは聞こえなかった。

 

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