毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件   作:カンピロバクター卍

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#1 アクリョフの肉

 大学に進学し、地方から都会へと出てきた私は、現在アパートを借りて一人暮らしの最中にあった。家賃は毎月親が収めてくれているし、大学の授業料は祖父母が出してくれている。しかも“毎週”のように仕送りが我が201号室にやって来るのだから、傍目から見れば恵まれた大学生活だと言えよう。

 

 そう、傍目から見ればだが。

 

 よく考えなくても、親の名義で送られてくる仕送りは毎月1日の一便だけ。それ以外に毎週送られてくる仕送りと称した荷物は一体何なのか。どれもこれも送り主の名前がバラバラで、発送地も出鱈目。『魔界八番地』だったこともあれば『第6銀河安雲系16惑星2番地』だったこともあるそれには、毎度これが仕送りであることを強調する手紙が同封されてくるから確かに仕送りなのだろう……その中身に目をつぶれば。

 

 試しに今朝方届いた仕送りを開封してみよう。

 

 発送地はムガル共和国のサシュ県。そんな国は存在しないし聞いたこともないが、確かにそう書かれている。まあいつものことと思って段ボールを剥いてみればあら不思議、謎の肉とお手紙の登場だ。

 

『拝啓、田妻(たづま) (ゆう) 様。

大学に進学されて1月が経つと思いますが、いかがお過ごしでしょうか?こちらサシュはまだまだ寒く、春まであと100万年はかかろうと学者様は仰っています。それに比べれば地球の気候などアシュビのケーンのようなものですから、季節の変わり目で体を壊すことなどあってはなりません。そのための手助けとして、我が家で採れたアクリョフの肉を仕送りとして同梱します。食べればたちまち精がつき、活力が湧いて万病に効くとされるものです。鍋でじっくり煮込んでお好みの味付けで召し上がれ。 ウリュシュツフリャカより愛をこめて。』

 

 手紙には上記のようなことが書いてあった。どう考えても日本語ではない言語で記されたそれを何故私がスラスラ読めている(“アシュビのケーン”のような理解しがたいものもあるが)のかは謎だし、何故私の近況が把握されているのかも謎だ。ストーカーを疑って玄関口に監視カメラを設置してみたものの、配達者やストーカーの姿はなくいつの間にか仕送りのみがその場に出現しているのが確認できた。一応親に聞けばそんな荷物は送っていないと言う。

 

 正直恐怖だ。下手な心霊現象より怖い。

 

 同梱されていた肉は奇妙な青色をしており、尋常な生物のモノではないと一目でわかった。毎回このようにして、手紙とそれに関する凡そ地球のモノとは思えない物品が仕送りとして送り付けられているのが現状だ。しかも毎週日曜日の朝六時きっかりにだ!

 

 それにしてもこの肉、いい匂いがするな……いやいや、こんな怪しい青い肉を食うだなんてそんな馬鹿な。差出人不明の不審物だぞ、そもそも。アクリョフという調べても出てこぬ謎の動物の肉で、さらに不審物。食べてもいい理由など一つも……

 

……食べてしまった。

 

 頭の中でアクリョフ肉の危険性を考えているうちに、私の体は勝手にその肉を鍋で煮込んでいたのだ。味付けは主に赤ワインと味噌を用いた気がする。そして気づいた時には出来上がったそれを私は食べてしまっていた。それの旨いのなんのって…いや駄目駄目駄目!何食べちゃってんだよ、アクリョフを!

 

 思わずちゃぶ台をひっくり返すと、本能的に後退る。

 

 アクリョフの赤ワイン味噌煮込みが盛大に床にぶちまけられたのを見て、私はああ、もったいない…って違う違う。どうやらあの肉には生物の本能に直接作用する何らかがあるらしい。私の体が意志と反してアクリョフ肉を食べようと動いたことがその証左だろう。ほら、今も床に散らばった肉が食べたくて仕方ない!

 

 もうこれは処分する他ないと思い立った私は、鍋に残った肉と床にぶちまけた肉をゴミ袋に詰めてアパートのゴミ捨て場に捨てた。

 

 そのあと狂ったようにオナニーをした。

 

 確かに精はついたようだった。

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