毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件   作:カンピロバクター卍

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#9 のじゃロリ狐耳ババア

 ロリババア。

 永遠の時を生きながら年若い少女(あるいは童女)の姿を持つ者のことである。大抵そのようなキャラクターは語尾に「のじゃ」をつけがちなので『のじゃロリババア』だなんて言われることもある。

 特にその中でも狐の耳と尻尾を持つ獣人タイプは人気で、よくエロ本でネタにされているのを見かける。それをみんな思い思いに『狐耳ロリババア』だとか『のじゃロリ狐耳ババア』とか呼んで自己発電するわけだが、現実にそんなもんは居やしない。

 

 例えUMAが実在するようになっても、だ。

 

 狐耳ロリババアがUMAなわけないだろ!いい加減にしろ!

 風説証明機を以てすればのじゃロリ狐耳おばさんなどいくらでも具現化可能なわけだが、流石にこれ以上の現実改変はマズイと思うから使わない。残念だったね。

 

 というわけでのじゃロリ狐耳ババアなんぞ実在し得ない……ハズだった。

 

 

 『ネッシーが日本初上陸!』

 

 水族館のCMでそんな煽りが飛び出したのを見て、私は現代日本がいよいよ魔境と化してきたことを実感した。

 いや、そうしたのは私だけどね。

 

 ネッシーはスコットランド北部ネス湖の固有種である。

 ロンドンの外科医はマジのガチでネッシーの鮮明な写真を撮ったし、捕獲されたネッシーのDNA分析の結果は彼らが首長竜の生き残りである可能性が濃厚であることを示したし、イギリスは国家の威信をかけてネッシーの水族館展示を成し遂げて人工繁殖まで成功させた。そして今夏、繁殖したネッシーのうちの一頭が日本にやってくるらしい。

 

 ……なんだそら。

 

 とりあえずネッシーは見に行こうと心に決めて、仕送りを取りに玄関へ向かった。

 

 そう、今日は日曜日なのだ。

 

 そうして玄関口を開けて、外に出てみれば段ボール箱がうぞうぞと蠢いていた。

 

 ……まあ、そういうこともあるか。

 

 箱はズッシリと重く、40kg近くはあったがなんとか持ち上げる(芸大生を舐めるな)。段ボール越しにも伝わる生暖かさに嫌な予感を感じながら、リビングまで運び込んで勢いよく段ボールを床に下ろす。

 

「痛いのじゃ!」

 

 ドスンという衝撃とともに、そんな声が箱から聞こえた…気がした。

 喋る仕送りはこれが初めてではない(イビルゲルの干し首とか)ので、そうであっても驚きはしないが。それでも喋る仕送りは気持ち悪いので、開封するのが嫌になってきた。

 

「誰ぞはよう開けい!尻と首が痛くて死にそうじゃ!」

 

 段ボールから開封を催促されるだなんて経験、常人ではなかなかないだろうなと思いつつ、カッターの刃を段ボールに差し込む。

 

 サクッ

 

「危なっ」

 

 ……やっぱ中になんか居るよな、コレ。

 カッターで開けた穴を覗き込むと、やはりなにかが段ボールの中で動いているのが見えた。

 

 瞬間、衝撃。

 

 段ボールは弾け、私のアゴ下に何かがぶち当たったのを感じた。いや、ぶち当たったというか、殴られた。

 脳が揺れ、視界がブレる。平衡感覚が薄れ、うまく立っていられず床面にへたり込んでしまった。

 

「ワシを殺す気か貴様は!分かるじゃろ中になにか居ることぐらい!あんだけ散々喋っておったのじゃからよ!そこにカッターぶっ刺してくるとかイカれとるじゃろお主!倫理観どうなっとるんじゃ!とっさに避けたから良かったものの、怖すぎてちょっち漏らしてもうたじゃろうが!」

 

 ぐわんぐわんと揺れる視界には、少女のようなシルエットがそうがなり立てているのが見えた。

 

「その手に持ったカッターを仕舞えい!もしワシの柔肌に傷をつけてみィ!マジに殺すからの!」

 

 少女に言われた通りにカッターをテーブルに置いて、ようやく彼女の頭部に大きな一対の耳がついていることに気がついた。

 狐耳だ。

 しかも尻尾も生えていた。

 少女はもう間違いなく、のじゃロリ狐耳娘だった。

 

「全く、契約と違うではないか。エル・カルカの至宝であるワシを差し置いて他に宝などあるはずもないというのに、なぜ天国に連れて行かんのじゃ!しかもこんなイカれた人間の部屋なんぞにワシを送って!」

 

 納得いかんのじゃ〜、と少女が頭を抱えだす頃には、脳の揺れも収まって現状をしっかりと認識できるようになっていた。

 

 へぇ、今回の仕送りはのじゃロリ狐耳娘か。エッチだね。

 いやいや、そうではなくて。

 とうとうこの仕送り、生き物を送り込んでくるようになりやがった。しかも知的生命体をだ。

 どうせいっちゅうねん。

 

 

 彼女は自らをエル・カルカ超銀河王国(馬鹿みたいな国名だ)の至宝『イプレム・コンキスター』であると称した。コンキスターは『狐の一番星』を意味し、王族だけが名乗ることを許されるだとかなんとか。つまり彼女は異世界の王族なわけである。

 

「スターちゃんと呼ぶのじゃ」

 

 だとか言っているが、コイツの実年齢は「ちゃん」が似合うようなもんじゃない。

 

 在りし日のエル・カルカは総人口の8割以上がロリコンの救いがたい変態国家であり、王族はそのことを逆手にとって民心を集めようと画策した。

 具体的には遺伝子を弄って女児ばかりが産まれるようにし、さらに13歳になると成長不活性化ホルモンを投与する。そうすることで、王族は国民好みのガチロリ集団へと進化したのだ。また、ロリの老いた姿を国民に見せるべからずという思想から、王族は定期的に体細胞を全て入れ替え若さを保つ。こうすることで王族たちは一万年近い寿命と、寿命の間一切老化することのないパーフェクトロリボディを手に入れて、ロリコンばかりのエル・カルカを導いてきたのだ。

 

 そんなエル・カルカの135代目女王が娘、イプレム・コンキスターは御年540歳。

 

 つまり、スターちゃんはババアだった。

 

 のじゃロリ狐耳ババアだったのだ。

 

 ……確かに、言われてみればちょっと加齢臭がするかもしれない。獣っぽいというか、なんというか。

 

「無礼者めが、王族的には2000歳までは子供よ。つまりワシはまだぴちぴちのロリガキじゃ。あと臭くはない」

 

 自分でロリガキとか言うのかコイツ。ちょっと引くわ。 

 

「してここは何処じゃ、エル・カルカではなかろう」

 

 エル・カルカは総じて狐耳の生えた獣人種で構成されたケモノ国家らしく、私のような猿耳(異世界にも猿っているんだ)のような人種は見たことがないのだとか。

 私は親切で慈悲深い神的にイイ人だから、スターちゃんにここが地球という惑星で、さらにその中の日本という国の山間にあるボロアパートの一室であると懇切丁寧に説明してやった。ついでに私の名前も教えてやる。

 

 私の言葉を聞くと、スターちゃんはうーむと唸って「やはり天国ではないか」と呟く。

 天国ってなんだよ。この前の仕送りでも天国とかいうワードが手紙に入っていたし、どうにもきな臭い。そのことについてスターちゃんに尋ねると、「天国は天国じゃ、それ以上は知らぬ」と返されてしまった。意味ワカンネ。

 じゃあなんで天国に行きたかったのかと聞けば、「日々に飽いたから、刺激を求めて」だそうな。

 「自分の持つ一番の宝物を対価に天国へと連れて行ってやる」と突然現れた怪人に言われ、丁度いいからと「うむ連れて行ってくれ、代価はワシ自身じゃ。なんせこの世にワシ以上の宝はない故」と返し、気が付いたら段ボールに詰められてここに来ていたと。

 怪人……この前の仕送りさんと同一人物だろうか。何者なんだよ一体。

 

「まあ、天国ではなくとも刺激さえあればワシはいいのじゃ」

 

 スターちゃんはニヤリと笑うと、完全犯罪ストラップを持ち上げて言った。

 

「だから悠、お主の部屋に居候させてもらうことにするのじゃ」

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