毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
そもそも何故、イプレム・コンキスターなる珍妙な生物が我が部屋に居候することになっているのか。
それはやはり完全犯罪ストラップを使われてしまったせいであり、私は彼女がここに居着くことに対して何も疑問を覚えることが出来ないでいたからだ。拒否しようだとか、追い出そうだとかそんな気持ちが全くわかないのである。
完全犯罪ストラップがいかに強力に人の認知を破壊するのか、身を以て思い知ったわけだった。
スターちゃんはそんな完全犯罪ストラップをいとも容易く複製し(オリジナルは私に返された)、今日も気ままに外を出歩き遊んでいる。何をしているのかは教えてくれないが、嫌な予感しかしない。
さて、今回はそんな完全犯罪ストラップに続いて人の認知に作用する物品が届いた話だ。
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スターちゃんは今日も今日とて外に出かけて留守にしている。どうもブレインチューナーをあげてから何やら忙しそうに動き回っていて実に怪しい。
今すぐにでもブレインチューナーを取り上げたいところだったが、完全犯罪ストラップの効力は完全犯罪ストラップを所持する者には及ばないという原則(しかし、すでに効力を発揮したものについてはその限りではない)のせいで、彼女から安全にブレインチューナーを盗み出すことは困難を極めると予想出来た。スターちゃんは複製した完全犯罪ストラップを常に肌身離さず持ち歩いている故に隙がない。
その身一つで地球を征服できると豪語する化け物から完全犯罪ストラップによる認知破壊なしに物を盗むなど、到底無理な話だった。
それはともあれ日曜日である。
日曜であるならば当然、仕送りが来ている。
今朝、新聞を取りに行くついでに仕送りの箱も取ってきたのだが……スターちゃんが何をしでかすかと思うと、なかなか開けられずにいた。
そしてつい先程、いつまでも箱を開けようとしない私に痺れを切らしたスターちゃんは「遊びに行ってくるのじゃ」とブレインチューナーを片手に(何をするつもりだ!)外へと出かけていったので、これでやっと一人きりになれたのだった。
まったく、ようやく開けられる。一時間も粘りやがって。
そして開封して出てきたのは……ピン付きリボンにくっついたメダル……何だこれ?
ピンが付いているならばこれは身につけるものなのだろう。
というわけで、服の胸辺りに着けてみたわけだが、これってもしかして褒章とかいうやつなのではないだろうか。テレビで褒章授与式とかやってて見たことがある気がする。
まあ、手紙を見ればハッキリするだろう。
『拝啓、田妻 悠 殿。
見ず知らずの者からこうして荷物をもらうのは奇妙かもしれませんが……しかしどうか受け取っていただきたい。
同梱したそれは見てわかる通り褒章ですが、しかし単なる褒章ではありません。装着者に絶対なる栄誉を与え、見るものにその栄誉を強制的に認知させることの出来る褒章なのです。コレが開発されたのは褒章の偽造が横行し、栄誉を軽んじる輩が多かったからなのですが……それは異なる場所に住む貴方にはあまり関係のない話でしょう。
その褒賞に付与されたのは“研究者として新薬を開発した栄誉”です。まあ、死にかけの老科学者の一番の宝物といえばこんなものです。 カキス・エイロクより』
ははぁ、また認知に作用するタイプのアレかよ。
しかしだ、これは使えるかもしれないぞ。完全犯罪ストラップは最早スターちゃんには通用しないが、この褒賞ならば効くはずだ。
あの生意気なロリババアに私の(違う)栄誉を見せつけて、崇めさせてやるのだ!
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「効くわけなかろう、そんなもの」
玄関で待ち伏せていた私に対し、呆れた顔つきでスターちゃんはそう言った。
馬鹿な。
この褒章は見たものに装着者の栄誉を強制認知させるのではなかったのか!?
「ワシは王族じゃぞ?平民風情の栄誉にひれ伏すわけがなかろうよ」
愕然としてワナワナと手を震わせる私の胸から褒章を奪い取ると、スターちゃんはケケケと怪しげに笑って言う。
「まぁ、確かに面白いのは認めよう。というわけで、これはワシのじゃ」
あー!返してよ!私の褒章だぞ!
クソ、栄誉の威光に平伏してしまうだろうが!