毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
量産型偵察怪人を用いた魔界探索は順調である。
『自動車怪人・トラックマン*1』に多数の偵察怪人を載せ、悪魔と魔物をブッ殺しながら魔界川崎の全容把握に勤しんでいるところだ。
今のところは悪魔が蔓延りまくっている以外は特筆するべきことがないのだが、川崎の中央に聳え立つ魔大樹ニワトコに近づくにつれ、悪魔の数と強度が上がってきている気はしないでもない。
今まで飛行型悪魔相手に無双していた『散弾怪人・マスケットーン*2』が今朝方、飛行型悪魔の1体、『ジャージー・タコアシ・デビルマン*3』にぶち殺されたりしたのでそう思っただけなのかもしれないが。なお既に『マスケットーン改修型*4』を配備しているので、もう生半な悪魔に殺られる心配はない。もしものことがあっても、『弾頭怪人・リトルマーズ*5』による特攻攻撃によって相手もろとも川崎の一部を吹き飛ばすことが出来るはずだ。
そうしてぶち殺した悪魔の一部はトラックマンの荷台に載せて回収され、新たな怪人、悪魔怪人シリーズの材料となるのである。
まさに無限ループ!
悪魔共もそのまま死ぬよりかは、怪人として新生した方が嬉しかろう。私も怪人を作れて楽しい。まったくハッピーハッピーやんけ何の問題ですか?(レ)
一方スターちゃんは最早謎の小学生の存在を隠したいんだか隠したくないんだか、我がアパートの軒下で一緒に摩訶不思議な稽古をしているのを頻繁に見かけるようになった。昨日はスターちゃん謹製『側近怪人・バトラーワン*6』も混ざってやっていたが、あれは一体何の稽古なのか。虚空にウンウン唸って何か念じているようだったが。
「これッ!雑念が混じっとるぞ!真面目にやらんか!」
「はい師匠!」
「立派な魔法少女になりたいんじゃろ!」
「なりたいです師匠!」
201号室の窓から下を覗けば、今日も今日とてそんな会話をしながら稽古をするスターちゃんと女子小学生の姿が。
まったく暑かろうによくやるよと思いながら眺めていると、不意にスターちゃんと目が合った。
ニチャア……。
そんな擬音が似合う笑顔を私に見せると、スターちゃんは何事もなかったかのように再び小学生に檄を飛ばし始めた。
「魔界の結界がいずれ崩壊したとき、戦える者はワシら以外おらんのだぞ!分かっているのか
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バトラーワンに腕を噛まれた。
モフモフの毛皮を触りたかっただけなのに、触った瞬間「キャインッ」となかなか切羽詰まった泣き声をあげられてガチ噛みされたのである。バトラーワンの犬歯は最大2センチあり、私の腕に深々とした噛み跡を残していった。血がドクドク溢れて止まらなかったが、ここで役に立ったのが今回の仕送りである。
その名も“瞬間修復スプレー”。
医療用ナノマシンと未知の液体の混合液からなる(スターちゃん談)そのスプレーは、怪我をした箇所に噴霧すればその怪我の度合いによらず、損傷部位をたちまち修復してくれる優れものなのだ。
そう、たとえ腕が千切れていようとも!
頭がもげていようとも!
脳がミンチになっていても!
瞬間修復スプレーならば瞬間的に回復可能である!
ああ、これがもっと早くにあれば、キク江をサイボーグにせずに済んだのに……。そんなことを思ったりしなかったりだが、面白かったので結果オーライだ。
ほぅら、その実力は伊達ではない。
バトラーワンの噛み跡に瞬間修復スプレーをかければあら不思議!噛み跡がキレイさっぱり消え去ったではないか!
ちなみにこのスプレーは非生物にも応用可能で、割れた茶碗だろうが五寸釘まみれの藁人形だろうが、尽くをまるっと修復可能だったりする。
私はこれを使って、幼少の頃踏んで壊したコレクタブルフィギュアを修復した。普通に嬉しかった。
しかし難点が一つあって、それはこのスプレーには限りがあるということだった。送られてきたスプレーはこの400ml缶一本だけで、それを使い切ったら終わりなわけである。
……というか、もう終わる。
調子に乗って部屋中いたるところの要修繕箇所(壁紙の破れ、床板の痛み、まな板の傷etc…)に吹きかけまくっていたせいで、もう体感100mlも残っていない感じなのである。
あーあって感じ!
「こ、このッ、ワシが目を離しているうちにバカスカ使いおって……!」
不意に背後からそんな声が聞こえた。
振り返ってみれば、女子小学生(入間 祥子というらしい)との謎稽古を終えて部屋に戻ってきたスターちゃんが、スプレー缶の有様を怒りとも呆れともつかない表情で見つめているではないか!
ごめんねスターちゃん、でも使いたかったから……。
あ、こら何をする!
最後くらいワシにも使わせんかと、私の手からスプレーを強奪すべくスターちゃんが襲い掛かってきた。
なんだよそんなに使いたかったなら先に言えよ!興味なさげにしてたじゃんお前!
私も負けじと足腰に力を入れて踏ん張るが、如何せん相手は全身をナノマシンで強化した化け物だ。普通に力負けをして、私は瞬間修復スプレーを手から滑らせてしまった。
そしてそれはスターちゃんの手からも転げ落ちて、怪人培養ポッドの中に落ちて行った。
「あ」
そんな間の抜けた声を出したのは、言うまでもなくスターちゃんであった。
●
怪人培養ポッドの中に落ちた瞬間修復スプレーは、『ポーション怪人・エリキシルン』となって帰ってきた。
エリキシルンは1日に1回、瞬間修復スプレーと同質の気体を口から噴霧する能力を持つ。
ハッキリ言って、微妙であった。