毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
今や魔大樹ニワトコの内部に封印されたキク江に人権札を届けてやったのも、もう随分と昔のことのように思える。結局キク江は私の善意を踏み躙り、更には自らの人権概念を燃やし尽くすという暴挙を行ったわけだが……まあそんなことはどうでもいい。
問題はそのキク江に人権を届けに行ったときに使った、私のかっちょいいロードバイクについてだ。
「ワシはこいつを“フォックステイル号”と名付けるのじゃ」
腋丸出しのノースリーブファッションをキメたエル・カルカ超銀河王国が王女、イプレム・コンキスターはドヤ顔でそう言った。
彼女が跨るそのロードバイクは間違いなく私のモノであるし、『フォックステイル号』などという珍妙な名前も付けた覚えはない。しかもなんだそのサドル後部に増設された仰々しいメカの塊は。妙にゴテゴテしていてスピーカーのようなものが見えるが。
あ?ふぉっくす音頭発生器?何意味の分からねぇモン付けてんだ殺すぞ。
『ふぉっくすふぉっくすコンコンコン♪』
おい、無言でふぉっくす音頭を流すんじゃない。なんなんだよこの絶妙なパクリ感は。ふざけるんじゃないよ。
は?エル・カルカの伝統的民謡だって?キショイ伝統だな。思わず身震いしちまったよ。
「テメェこのクソボケカスが!!!!何がフォックステイル号じゃ潰すぞ!!!!」
おっと、思わず声と手が出てしまった。具体的にはフォックステイル号を担ぎ上げ、近場の河川敷に投棄した。
スターちゃんは泣いた。
●
気が付いたら日英関係が急速に冷え込んでいた。
英首相の『日英包括的経済連携協定破棄宣言』*1に始まり、ロンドンでのアジア系に対するヘイトクライムの激化など末法もいいところだ。
何故こうなったって、イギリスから日本に貸与されたネッシーのネスオくんが突如として失踪した事件以降イギリス国民の対日感情が悪化したのが原因だろう。
ネスオくんはイギリスが国家の威信をかけて進めていた『ネッシー繁殖プロジェクト』から誕生したネッシーの三代目に当たり、彼が誕生するまでには多額の金銭が費やされたことは想像に難くなく……それが日本に預けた途端に行方不明になってはそうもなろうと理解できなくもない。ただ、理解できたとてそれだけで日英関係が悪化するだなんて馬鹿げた話ではある。もともと向こうの人間が日本を小馬鹿にしていて、そういう下地があっただけのことなのかもしれないが。
ともあれネスオくんを盗んだ人がいるならば今すぐ『あやしばら水族館』に返却してあげて欲しい。
まったく、最近は物騒なことが多すぎると私は思うよ。
ユビキタス・バースト以降、何故か放火事件やら人が急に瞬間移動する珍事が多発しているとSNSで噂になっているし、つい先ほどなんかは福井県の
身近なところでいえば、怪人の素材集めがてら潰した鮫島組とかいうヤクザの事務所地下にガキが拉致監禁されてたりもしたな。私的には拳銃やら手りゅう弾が欲しかっただけなのだが、まあ貰えるものは貰っておくのが私の主義だ。ガキどもも有難く頂戴したさ。
5~8歳ほどの女児男児が計13人監禁されていたわけだが、そのどれもが精神崩壊して会話も出来ねえんで怪人の材料にさせてもらった。なあに、「死んじゃった、杏子死んじゃった……」「おまた嫌……ママ……」って呟くばかりのガキが社会復帰できるわけねぇし、怪人になってさ、パーッと再誕したほうが幸せだと思うわけよ、私は。
「ね、ネスくんもそう思うでしょ?」
私はアパートの駐車場に設置された大型ビニールプールの中で優雅に泳ぐ彼、『長頸怪人・ビッグネスダー』(通称ネスくん)にそう問いかけた。ネスくんは首長龍っぽいフォルムの爬虫類型怪人で、水上水中問わず泳ぐ能力を持った怪人だ。逆に言えばそれ以外の特徴は何一つなく、発声能力はないし、知能も犬並みだからこちらの言葉を理解しているわけがないのだが。
ネスくんは私の言葉を意にも介さず、ただ「きゅー」とだけ鳴いて無心に泳ぎ続けるばかりだ。まったく話甲斐のないやつめ。
「ねーねー、スターちゃん遊ぼうよー」
ネスくんが駄目ならばと、相変わらずアパートの軒下で謎特訓をしていたスターちゃんにそう声をかけても「忙しいのが見てわからんのか?所詮はふぉっくす音頭の素晴らしさを理解できない原始人よな」と冷たくあしらわれてしまった。まだ根に持ってたのかよ、フォックステイル号を捨てた件。百歳越えのババアがねちっこいったらありゃしないよ。
というか、そこの小学生はなんで私を睨んでいるワケ?
なんだっけ君、入間 祥子だっけ?君とスターちゃんってどういう関係なワケ?魔法少女がどうたらとかこの前言ってなかったっけ?睨んでないでさぁ、答えてほしいなって私思っちゃうよ!
あ、顔逸らしたね。なんで逸らすの?ねぇねぇ。
そんな風に小学生相手にダルがらみしたのがいけなかったのだろうか、祥子ちゃんは私に対してこう吐き捨てた。
「気持ち悪いので消えてください。不愉快です」
最近の小学生は語彙が豊富だなあとか、普通にムカついちゃったなとか、そんな思いが頭の中をぐるぐる駆け巡る。端的に言えば私は顔真っ赤だった。
「そうじゃそうじゃ、もっと言ってやれい祥子!」
あーうるさいうるさい。
駄狐は今夜寝かさねぇから覚悟せぇよマジで。尻尾吸引で済むと思うなよ。
仕方ない、ここは退散するに限る。
●
祥子ちゃんにフラれた私は、アパート地下に増設された秘密基地に向かうことにした。
そう、言葉通りに地下秘密基地である。
今や総数1万を超える怪人たち*2を収容するため、または危険な仕送りの産物を封印するため、或いは新技術の研究開発のための実験場としてスターちゃんが建造したものだ。怪人化したガキどもも、ここに収容して経過観察中である。
暇つぶしがてら、そのガキ怪人たちの様子を見に行ってやろうと思ったわけだ。あわよくば話し相手になってほしい……その期待が叶うかは怪しいが。中恵が海外の別荘に家族でバカンスに行っちまってから暇でしょうがないんだよ。
我がアパートの101号室に設置された大型エレベーターの上に乗れば、ゴウンと音を立てて私を地下基地へと誘う。
地下4000メートルに建設されたこの地下基地は名を『コンキスタベース』という。
その管理維持は『スペース・コンキスタ』なる謎の企業に委託されており、消耗品の補充や設備の更新などを一手に引き受けている。何故そんな事がわかるのかって、前に『スペース・コンキスタ』の社章をつけて元気に働く怪人を見かけたからだ。間違いなくスターちゃん絡みの企業であろうが、何が目的なのだ。
というか、いつの間にか我がアパートのオーナーまでもがその『スペース・コンキスタ』とやらになっていた。確かにそうでもなけりゃアパートの地下に秘密基地なんざ作れやしないだろうが……完全犯罪ストラップが量産可能な現状、その手続きにどれ程の必要性があるのかは疑問だ。まあ家賃光熱費もろもろタダにしてくれるって言うし、私はうれしいけどさ。
エレベーターはガラス張りになったチューブ状の空間を軽やかに降りていく。眼下に見える煌々とたかれた明かりが街並みのように振舞っている。地下基地と言うよりかは、地下帝国といった様相であった。まったくSFじみた光景である。
5分ほどそうして地上(地下だが)を眺めていると、かすかな振動と共にポーンと軽快な音が鳴った。どうやらコンキスタ・ベースのエントランスに到着したらしかった。
エレベーターのドアを抜けると、白衣に身を包んだ巨頭の小男『頭脳怪人・ブレインマン』率いる研究系怪人たちが私を出迎える。
ブレインマンは世界中に保存された著名な科学者の遺骸の一部を沢山と、スーパーコンピューター100万台とを合成することで誕生した頭脳労働怪人である。人類の1億倍のスペックを誇る彼の脳容積は100ℓを超え、その影響で頭部が異様に巨大化している。歩き難そうだなあと作った当初は思ったものだったが、自前で専用の強化外骨格を用意し着用することで、そこまで日常生活に支障はないらしい。
「ようこそマイロード。子供たちの件と察しますが」
「うん、せっかくの小児怪人初期ロットなんだから、様子をみたくてさ」
流石はブレインマン。話してもいないのに私が怪人化した子供……小児怪人たちに用があることを察してここに現れたらしい。強化しすぎた知能で予知能力めいた芸当が出来るのだとかこの前話していたが、あながち間違いでもないらしい。
「なに、所詮は統計からの予測に過ぎませんのう」
そう彼は笑うし、実際スターちゃんも「それは超能力ではないな」と断言していたので、本当に高度な演算から導いているだけの様ではあるが……それでもなお驚異的な能力である。
その驚異的頭脳を見込んで、ブレインマンは私がスターちゃんに対抗するために量産した『研究怪人シリーズ』のトップに据えている。彼には私の手足として存分に働いてもらいたい。
「子供たちはどう?発狂してない?」
「ええ、ええ、メンタルグラフは常にフラット。気味が悪いぐらいに平常ですじゃ」
「そっかー」
それは発狂しているのと変わらないのではないか。
少し混ぜる材料をミスったのかなぁと思いつつ、促されるままに白塗りのバンに乗り込む。
「まあでも、そのぐらいだったら人間社会に溶け込めそうかな?」
「そうですのう、馴染めなくはないでしょうが……」
「うーん」
まあ駄目そうなら潰して別の怪人の材料にでもすればいいさ。トライ&エラーこそ私の真骨頂!
「そこは直接確認して判断してもらいたいですのう……おっと、そろそろですかな」
ブレインマンが言うや否や、白亜地の巨大建築がバンの窓からお目見えだ。
早い早い、さすがは超常工学研究所の試作バンである。ここまで45キロの道のりも、たったの二分でガタつきなく走破可能だ。なおこんな芸当は自動車の走っていない地下限定である。地上で走ろうものなら事故待ったなしだ。
まあ、仮に事故を起こしたとしても、死ぬのは相手だけになるだろうがね。
研究怪人たちがスペース・コンキスタ社員を拉致して脳から吸い上げた情報を元に作ったバンが、車両事故ごときで壊れてたまるかってんだ。
『超常進化研究所第三支部』
そんな看板が掲げられたその巨大な豆腐建築こそ、私の今回の目的地、小児怪人の収容されている研究所である。
バンから降りて見上げた超常進化研究所はあまりに巨大(見上げても果てが見えないくらいに)であったが、コンキスタ・ベースの空間占有率では0.005%もないのだから驚きである。真面目にアガルタか何かだろ。
「ん?ねえブレちゃん、あれ何やってんの?」
私の視線の先には、超常進化研究所の職員と見られる怪人たちが防護服に身を包んで大型コンテナをトラックの荷台に積み込んでいた。
やけに厳重な感じで、職員たちは試作ビームガンを携行している。試作ビームガンは試作とは言っても一般的な怪人を秒で蒸発させることが出来る強力な兵器ではあるのだ。そんなものが必要だとはいったい……?
「ああ、あれは……封印指定怪人をセントラリウムに輸送するのですよ」
「封印指定!もう出来ちゃったの?」
セントラリウムは超脅威度物品・生物を収容、封印するためにスターちゃんが建設した地下封印施設である。
コンキスタ・ベースの中央に建設されたソレは、地下4000メートルに位置するここよりも更に最奥の15000メートルに存在し、これから出現するであろう数多の仕送りに対する対策として用意されたものである。当然ながら、仕送り以外にも封印するに値する危険物をぶち込む用途にも使用できる。
なおセントラリウムの現在の物品収容数はゼロであり、派遣された看守怪人が暇すぎて文句を垂れる有様であった。
なので使用はもっと先になるかと思ったのだが……。
どうやら出来てしまったらしい。封印に値する怪人が。
「封印指定って、ニワトコちゃんクラスを想定してるんだけど……ホントに?」
そもそも怪人は怪人培養ポッドによる強制停止コマンドが存在するため、そこまでの脅威にはならないはずだ。それこそニワトコちゃんのようにコマンドを受け付けない、ポッドから独立した怪人でもない限りは。
「いえね、コマンドは効くんですけど能力が少し厄介すぎて手が付けられんのです」
「へぇ、能力がね。その怪人の名前は?」
「……『
「は?」
今なんて言った?
デカマラ?チンポメラニアン?なんだそのバカみたいな名前は!
「いえですからね、チンポメラニアンと言う怪人なんですって」
それはわかったって!いったい何なんだよソイツは!
「マイロードが拾ってきた、淫語しか呟かないキモオタと発情期のポメラニアンを合成してみたのですじゃ」
そういえばそんなもん拾った気がするけど……。
「どうも性欲が強すぎてですね、脳勃起の奇形を抱えている程度なら良かったんですが性欲が異常でして……穴という穴にチ●ポを挿入したがるんですのう」
やめろやめろやめろ悍ましい!何の話をしているんだ貴様!
「貞操帯をつけて挿入を止めさせようと思ったのですが、全身の骨格を海綿体に置き換えたような身体構造のせいか肉体を自在に伸縮できるようでして、貞操帯をすぐ脱いでしまうんで困りものなのですじゃ。しかもその身体構造のおかげであらゆる隙間や穴に潜り込んでは頻繁に脱走するしで厄介極まりない汚物!そうして抜け出しては別フロアに収容された子供たちの匂いを嗅ぎつけて『新鮮な穴!新鮮な穴の匂いがするぞ!』と叫ぶのです。
……これはもう手に負えんとなってセントラリウム送りになった次第ですじゃ」
やめろよマジで鳥肌立っちまったよ。
いいよもうそいつ、私が殺処分しといてやるから置いといてくれ。こんな化け物にセントラリウムの貴重な収容房を使うことは許さない。
「ではここで見張らせておくのでお早めに処分してくだされ」
儂もあの汚物から早く解放されたいのですじゃ。
そうぼやくブレインマンに私は同意見だよ。気持ち悪いことこの上ない。
『臭うゾ!!!!穴の匂いだ!!!!分かるぞ、俺のマラの前に隠し事は出来ぬゥ!!!!』
不意にコンテナの中からそんな声がし、同時にガンガンと金属を叩く音が聞こえた。非常に猥褻な声色であった。
「おッ、お早目に願いますぞ!麻酔が切れ申した!」
『ここから出せェ!穴孔ANAあななななななななんあななななあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!』
うわッ。
私は怪人培養ポッドの携帯型ターミナル(スターちゃん作)*3をポケットから取り出し、チン……ポメラニアンに対して強制停止コマンドを適用させる。
『あなあああああああああああああああああああああああああああああびゅびゅbyjぶjghぶjkmj』
パンッ
発狂したチンポメラニアンの声が途中で途切れ、軽い爆発音とともに辺りには静寂が戻った。
処理終了である。
●
チンポメラニアンを処理した私たちは、超常進化研究所第三支部にようやく足を踏み入れた。
全く、わけわからん汚物に無駄な時間を使ってしまったよ。
研究所内部は薄暗く、薄緑色の明かりで辛うじて照らされている状態であった。
「前来たときはもう少し明るくなかった?」
「今は節電中なので……」
世知辛いな。
理由は単純明快で、コンキスタ・ベースの消費電力が電力会社との契約上限に達し電力供給が逼迫、現在基地全体が強制節電モードになっているのだ。
今コンキスタ・ベースで急ピッチで建造中の大型核融合炉が完成すれば基地内の電力不足も解消されるハズだが……それがいつになるのかは未定である。スターちゃんも「まあそう急ぐことでもないからのう」とエル・カルカの超技術を出し惜しみしているから本当に未定だ。スターちゃんがその気になれば数日で解決できる話だと思うんだけどね。
「あ、あそこですじゃ、あそこ」
ブレインマンが指さす先にはガラス張りの収容房があって、その中だけはしっかりと白いLEDの照明が輝いていた。
「眩しい……」
「眩しいって、小児怪人の収容房ですじゃ」
ああ、ガキどもの。
収容房の中には13人の子供に見える怪人、小児怪人たちが虚空を見上げて座り込んでいるのが見える。彼ら彼女らは呻き声一つ上げず、ただただ、ぼうっと、死蝋のような色合いの顔を無表情にして身動き一つ取ることがない。まさしくメンタルフラット、異常なほどに平常。
彼らこそ私が鮫島組から没収した子供たちの成れの果てである。
「相変わらず不気味だねぇ。これ、生きてるの?」
相変わらずというのは、彼らを製造した時には私も立ち会っていたからだ。
産まれた時から彼らはこんな様子で、白痴よりも白痴な面を晒している。だから話し相手になるわけがないのは分かってはいたが……。
「心拍数は平常値ですし、筋肉の発達も正常、身体的には健康そのものなはずですじゃ」
「じゃあ、やっぱ問題は精神的なもの?」
「ですかのう」
ブレインマン曰く、鮫島組由来の小児怪人は外部刺激に一切の反応を示さない。常人ならば驚き、悲しみ、怒るような刺激を受けても凪の如きメンタルグラフを見せつける。おそらく素材にした子供たちが尽く精神崩壊していたのが原因だろう。
また、彼らは内部刺激にも反応を示さない。
例えば彼らは自発的摂食を行わない。脳に送られる電気信号が空腹状態を示していても、彼らは絶対に自ら食事を摂るということをしないのである。機能的に摂食が不可なわけでもないのにだ。
さらに排泄も肉体的な反射だけで行うため、トイレに行くということはなく、床面に無表情で垂れ流すのみだ。日に3度の清掃で誤魔化しているため、今もよく見ると収容房の床が濡れている。
「使えんなぁ」
この様子では、利用価値がないのが現状だ。潰して次を作ろうかなという考えが脳裏をよぎる。
「フォイゾンのテスターとしては優良ですぞ。何といったって自我がありませんし、暴れませんし、文句も言いませんから。仕事が楽にはなりますのう。」
しかし、ここでブレインマンが私の思考を遮った。
フォイゾン。
それは妖精の食べ物であり、物の持つエネルギーというか、本質のようなものを抽出することで得られるものである。それを安定的に得られると謳った機械が届いたのがこの前のことだ。
案の定というか、仕送りの産物である。
“フォイゾン抽出器”と名付けられたそれは、その名の通り物体からフォイゾンを抽出する機能を持つ。これで抽出されたフォイゾンはロイヤルゼリーめいた黄金色のペーストのようであり、成分評価では霞と同様の物体である。であるにも関わらず、フォイゾンは普通の食品のように機能し、摂取した者にエネルギーを供給する。
またフォイゾンを抽出された側の物体は例外なく色褪せたり脆くなったりと、不可逆な劣化現象を見せるのが面白い。
そんなフォイゾンだが、唯一の欠点として味がものすごく悪い。
フォイゾンの味は抽出元に色濃く影響を受けるらしく、不味いものから作られたフォイゾンは不味く、美味しいものからは美味しくといった具合に味に変化が生じる。
そして現在フォイゾンの主原料はコンキスタベースを建設する時に出た土砂であり、当然そこから抽出されたフォイゾンは土とか鉄っぽい味がするわけで……まあ、不味い。
経口投与実験に強制参加させた怪人共もその不味さには驚愕の一言であったらしく、二度とフォイゾンなど食わせてくれるなと暴動を起こす始末なのだから相当である。
文句を言うなら削除しちゃうぞ♡と思ったが、そんなことをしていてはせっかく増やした怪人が1人残らず消し飛んでしまうので自重した。
が、確かに小児怪人たちならばフォイゾンを食わせても文句は言わないであろう。
そもそも自我が極端に希薄で精神がフラットなので、文句を言えない、というのが正しいのかもしれないが。
「じゃ、そういう使い方でいいよ。そろそろ怪人たちの不満が臨界って感じだったしね」
「では、そのように」
味さえ改善できれば、フォイゾンは有用な食料資源になる。
今はまだスターちゃんのポケットマネーで怪人の食費は賄えているが、長続きはしないだろう。昨日は自分の通帳を眺めてため息をついているスターちゃんを目撃したし、これは中々にヤバい。破綻が近い。「間引くかのう……」というぼやきの意味が理解できないほど、私だって馬鹿ではないのだ。
安価で量を確保できるフォイゾンは、スターちゃんによるジェノサイドを防ぐ一助になるはずである。いざとなったら味の改善などという甘っちょろい考えは捨てて、強制的に怪人共に食わせてやる。
怪人たちのことは、私が守る!
でもまあ、それはそれとして使えないやつは間引くけどね。
この世はまさにショッギョ・ムッジョ!命の価値は私が決める!