毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
アパート地下のコンキスタベース建設に伴い、私も負けじと我がアパートの要塞化を始めることにした。
だってさ、スターちゃんはコンキスタベースを作るとき、私を誘わずにエル・カルカの超技術でサクッと終わらせちゃったんだもんな。しかも私がぐっすり寝ている深夜二時にやる徹底ぶりだもの。私もやりたかったなというリビドーを存分にぶつけさせてもらった。
その結果がこれである。
ブレインチューナーのリバースエンジニアリングから作られた『コンパクトレーサー』*1がアパートの四方を囲み、敷地に侵入した人物の思考危険度を測定。侵入者が
『コンパクトレーサー』はスターちゃんが片手間に作ったものだったが、『ですとろ』くんは私の抱える『超常工学研究所』の怪人たちが頑張って作ってくれた、正真正銘地球科学の産物である。
試作小型縮退炉*2が二基搭載された全長50メートルの有機的形状のボディから放たれる
なお、『ですとろ』くんを宇宙に打ち上げる際には『スペース・コンキスタ』の完全子会社*3と化したJA×A(今は改名して
ISSが最近機械トラブルに見舞われる事象が頻発しているらしいが、はて何のことやら。
……現時点でちょっぴりやりすぎ感が否めないが、まだまだ要塞化は始まったばかりである。
今後の機能追加案として、MDRレーザーで滅却できない相手が現れた場合の防衛機能としてアパートとコンキスタベースが合体変形して『超弩級ヒトガタ決戦兵器・コンキスタリオン』になるだとか、毒電波放射機やらシュレティンガー的事象歪曲ミサイルやら自決用マイクロブラックホール爆弾
この程度ではコンキスタベースに張り合えないからね、しょうがないね。
なので『超常進化研究所』と『超常工学研究所』には、キリキリ働かないとフォイゾン喰らわせるぞと脅しをかけておいた。
ほらほら頑張れ♡頑張れ♡雑魚過ぎな結果を出したらフォイゾンの刑どころか物質転換炉*4送りにしちゃうぞ♡……そう言ったらブレインマンに「戯れが過ぎますぞ」と顔を顰められた。解せぬ。
ともあれ、そんなこんなで我がアパートは物理的攻撃手段を搭載した要塞基地の第一歩を踏み出したわけで、そのついでで全室に監視カメラ……という名の『カメラ怪人・キャメラットfix』を導入したのだ。
当然我が201号室にもキャメラットfixが在中しており、その網膜に映る景色をmp4で私のデスクトップに送信してくれる仕組みになっている。まあ、キャメラットの名のつく通り、ヤクウールに忍ばせたキャメラットと、アパートに潜む無数のキャメラットfixに大きな違いはない。ただ、頭部を切り離して箱に詰めて固定カメラにしたものをfixと呼称しているだけなのだから。
キャメラットの情報に嘘はないし、誤認もしない。私が彼らを重宝する理由はそこにある。
だから、私の今見ている映像も確かに起こった事実というわけである。
深夜、私の眠る姿がそこにはあった。
ただ眠っているだけならばいつもの光景であるが、私の隣に敷かれた布団にスターちゃんの姿はなく、さらに私の頭部には無数の電極を貼り付けられていたのだから異様である。
頭部に張られた電極から伸びたコードは、部屋の隅にある心電図モニターのような機械に繋がっていて、その脇にはスターちゃんが背を向けて立っていた。
どうやら彼女はそのモニターを観察しながらうんうんと唸ってみたり、「やはり正常値ではない」と呟いてみたりとお忙しい様子だ。
一体何をしてるんですかね。
しかも『スペース・コンキスタ』の社章付き怪人が数人、スターちゃんの補助をして何やら蠢いている。
えっと、何事なの?
私の体、何かヤバいの?
最終的に、私の左腕に謎の注射器が刺されたところで映像は終了していた。
というのも、キャメラットfixの存在に気が付いたスペース・コンキスタの怪人が、キャメラットめがけて胸部から弾丸を発射して破壊したのである。映像はここで途切れているってやつだ。
にしても、最後の注射は一体……?
私は左腕の該当箇所をさするも、特にこれといった違和感は感じない。洗脳チップとか、そういう類のものが埋め込まれたわけではなさそうだった。
何をしたのかはご本人に聞くのが手っ取り早そうではあったが、どうせまた答えてはくれないんだろうという、そういう確信めいた予感があった。
まったく、怖いなぁもう。
●
はじめに神は冒涜を行われた。
地は血に、虚しさには快楽、闇の淵に破断された旧支配者の歪曲球体、それらを還元されし御霊が覆っていた。
神は「失せよ」と言った。すると遍く冒涜の結果は消え失せて、後にはただ虚無だけが残った。
神はその虚無を見て、良しとされた。神はその虚無を
神は虚を
以上の文は、『Codex Viblia』と題された一冊の写本に基づく。
発狂した、そうとしか言えないような文の羅列の中から、理解できる文を探してこれである。まあ、さっぱりだ。
ただ、どうしてか使われている文字の名前だけは分かった。
この文字は■■▬■だ。本当に正しい、唯一の言語……人も、物も、宇宙さえも最初にこの言語で記された。精神汚染によって
何故知っているのだろうか、何時から知っているのだろうか。
まあ、考えてもわからないことは考えないに限る。
そして案の定というか、この気違いが書いたとしか思えない写本は仕送りから出てきたものであった。
同封されていた手紙曰く「神聖にして真実」の記された写本なのだそうだが、正直理解できないね。
前述の文は写本のほんの序文にしか過ぎず、その後は段々と筆跡と内容が乱れ「イプルム・ブブク・シタム」という言葉が文章の脈絡と関係なく頻出するようになる。
また読み取れる部分から推測するに本文には
「神による冒涜の軌跡」
「冒涜によって齎されたもの」
「神との接続方法」
「神の眷属」
「超空洞に潜む悍ましき生物について」
「目覚めについて」
が記されていると思われるが、文字の崩壊が激しく■■▬■ではない本能的曲線に変化している箇所が多くて解読不可能である。私の得体の知れない翻訳能力も、文字ではないものに対してはお手上げであった。(当然、全言語対応文字起こしソフトも歯が立たなかった)
そんなちょっと度し難くて理解しがたい内容が4万ページ連なった大型の写本こそが『Codex Viblia』なのである。
なお、紙厚が0.1ミリメートルであるのに対して、本の厚みが8センチメートルしかないのがちょっとした恐怖体験ね。
この写本、何らかの法則を捻じ曲げて4万ページを無理やり広辞苑厚に収めていやがるのだ。
過去を捻じ曲げたり人の認知を捻じ曲げる仕送りには慣れていたが、法則を捻じ曲げるタイプは何気に見慣れず少し慄いてしまう。
いや、うん、多分そこが問題の仕送りではないんだろうけども。
魔界と接続して一部地域の法則が乱れているのは……正直現地に行ったことないから実感湧いていなかったわけだけど、実際こうして目の前で法則を乱されるとちょっとこう、不気味だ。
しかも中身まで不気味だというのだから救えない。
本文も不気味だったが、何より挿絵が不気味だ。
恐らく章の切り替えに用いられているのだと思うのだが……何やら抽象的で子供の描いた地獄といった様相の挿絵で、不自由な線の重なりと世界に対する認識の祖語による不気味さが不快感を誘うのである。
あんまりにも気持ち悪いから、アクリル絵の具で塗りつぶして幽霊も裸足で逃げ出すエッチ絵に描き換えておいた。全部の挿絵は流石にやっていられないので、4枚ほどで止めてしまったが。
にしても我ながら良い出来だ。
ダイナミックに腰を振って竿役から種を絞り出そうと腰を振る萌え萌えネコ娘の大迫力。おっぱいぷるんぷるん!デカい尻!デカい耳!あと快楽にくねる尻尾がキュートだと思います。射精!びゅびゅ!
……いや、射精は脳内でね。実際はない。
げへへスターちゃんの裸体もガッツリ描いちゃうもんね、貧相なロリ狐ガールが無理やり喉奥に珍棒突っ込まれて嘔吐いて睨んでる絵にしちゃうもんね!!!!
……あとでスターちゃんに殺されないかな。
一応留守の間にこっそり描いているわけだが、勝手に仕送りを改造したことにキレそうだし、王女侮辱罪で死刑とか言いそう。
あー、エチ絵描いたら満足しちゃったな。うん、二度寝しようそうしよう。
私は疑問も不気味さもキレイさっぱり忘れ去って、微睡の中に落ちて行った。
イプレム・コンキスターの広げた豪奢な装丁の書籍の内容が、ざりざりと悲鳴的ノイズを出しながら書き換わっていく。
凄惨な地獄めいた図画が、しょうもないポルノイラストへと……だ。
「……あの馬鹿者めが」
自らに酷似したそのポルノイラストを見、彼女は細長い瞳を更に細めて言った。
「尻尾吸引はお預けじゃな」