毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件   作:カンピロバクター卍

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#3 不死の妙薬

 不老不死。

 それは有史以前より人類が求めて止まぬもの。その魅力故に、時の権力者は様々な方法でソレを得ようとし、その結果命を落としてきた。

 今回はそんな全人類垂涎の一品、不老不死の不死だけが届いた話をしよう。

 

 

 告白すると、あれから4回は万引きをしました。欲しいゲームがあったから盗ったし、持ち合わせがなかったから金も払わずコンビニ弁当を食ったこともありました。私は犯罪者です。

 まぁ、今はしてないから。ダイジョブダイジョブ!私悪くない!

 でも時々、完全犯罪ストラップを持ってきてもないのに万引きしそうになる自分がいます。ヤバい。

 

 さて、今回は自称皇帝のアンベールさんからのお荷物。手紙の内容を要約すると、「俺はもうすぐ死ぬから、お前に俺の一番の宝を仕送りとしてやる。ありがたく思うのだな」とのこと。

 うーん、死にかけなら何でこの秘薬を使わなかったのだろうか。私は同梱されていた、瓶入りの液体を眺めてそう思うのであった。

 

 皇帝曰く、それは不死の妙薬なのだという。

 

 飲めばたちまち死の概念から解き放たれ、どんな状態になっても死なないのだとか。

 普通なら胡散臭いが、毎週の仕送りなら別だろう。まず間違いなく本物だ。ならば何故皇帝はコレを飲まず、あまつさえ私に下賜したのだろうか。コレさえ飲めば、迫りくる死とやらにも打ち勝てたはずであろうに。全く謎だ。

 ではお前なら使うのかと言われると、答えに窮する。だって効果が分かりきっている筈なのに最後まで不死の妙薬を飲まなかった皇帝のことを思うと、どうしても使用を躊躇われた。何か飲まなかった理由が、いうなればデメリットがこの妙薬にあるからなのではないか…そんな考えが、脳裏から離れようとしない。

 

 よって動物実験を行うことにした。

 

 やはり最終的には私が使うことを考えると、小動物ではなく同じ人間を用いるのが相応しいだろう。それも皇帝と条件を揃えるため、死にかけの人間を使うのが良いだろうと思う。

 

 偶然にも先週届いた完全犯罪ストラップが早くも活躍する時が来たらしい。これを身に着けていると犯罪に対する心理的ハードルが著しく下がる気がするのだが、それはこの際考えないものとする。

 私は完全犯罪ストラップを鞄に括り付けると、颯爽と夜の病院へ駆け出した。当然不死の妙薬も持って、だ。

 

 ここまで読んでお気づきの方もいるであろうが、私は病院に不法侵入をして、死にかけの人間に妙薬を流し込んでやるつもりなのだ。うーん、我ながら倫理観が何処か飛んでいっている気がする。

 

 そうしてやってきた病院の集中治療室で死にかけていた85歳の岩永キク江お婆さんにほんの少し妙薬をお裾分け。

 岩永お婆さんは交通事故で全身骨折の重傷を負い、更には車両火災で全身に3度熱傷を負った生粋の死にかけで、この実験にはもってこいの逸材であった。盗み見た医者のカルテによると、今夜が峠でおそらく助からない旨が記されていたのでソコもポイントが高い。

 

 私は事前にプラ容器に小分けにしてあった不死の妙薬をお婆さんの口に突っ込んでやった。ほーらしっかり飲めよ?飲んでちゃんと不死になってね。

 

 翌日、『ゾンビ誕生!岩永キク江、心停止のまま動き回る』などという倫理観を疑うタイトルのニュースがテレビから流れてきた。テレビ局の放送倫理がガバガバなのは置いておいて、どうやら実験は成功したらしい。ニュース映像には肌を土気色にしたキク江が元気よく動き回っている姿が映されていた。どうやら死後硬直で顔面の筋肉が硬直したらしく、言葉を発するのに手間取っているようであった。あと鼻から液状化した脳みそが流れ出ているのが確認できた。流しちゃダメだろこんな映像!

 

 しかしまぁ、なるほどなぁ。

 

 つまり不死の妙薬で不死になることはできても、肉体の劣化は避けられないということなんですね、皇帝さん。

 真なる不死のためには、不死の妙薬だけでは不完全なのだ。肉体の老化を止め不変のものとする妙薬もなければ、いずれ肉体が朽ち果て塵と化しても意識が有り続ける地獄めいた経験をすることになるのだろう。

 皇帝さんが最期まで妙薬を使わなかった理由がよくわかったよ。

 

 いやぁ、岩永キク江の行く末に希望があらんことをお祈りするね。

 

 というわけで不死の妙薬は完全犯罪ストラップと共に衣装棚の奥に押し込んでおくことにした。下手に処分もできないし、間違って飲んだりしてはいけないし。

 

 でもなぁ、作れなかったのか…不老の妙薬。夢がないなぁ。

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