毎週の仕送りがどう考えても実家から来ていない件 作:カンピロバクター卍
『拝啓、田妻 悠 様。どうやら最近は盗みに手を出し、まともな社会の一員から外れかけているようですね。盗みはいけませんよ、盗みは。そのようなことをしなくとも、お金で買えばよいのです。でも田妻様はアルバイトがお嫌いなご様子ですので、老婆心から一つ仕送りをいたします。我らが祖国、アニューパの輸出産業の根幹を担う大事な作物の種です。これを地に蒔き、育て、売りましょう。売れば売るだけ確実に売れることをこの私が保証します。まっとうに商売して健全な社会生活を! ユンパウ婆より』
上記の文とともに、謎の種が届いた。そう、また仕送りだね。
大きなお世話だ!
そう私は思ったのだが、読者の皆さんはどう思うだろうか?
確かにちょっと盗みを働いたり野外露出をしてみたり不法侵入をしてみたりと、最近の私はいささか反社的行動が目立っていたかもしれない。しかし私には完全犯罪ストラップがあるのだから、そんなのはノーカンだ。私はまだ堅気だクソッタレ!それに、バイトだってその気になればいつでもやる気はあるんだから。今がその時じゃないってだけだから。
そもそも私が盗みを働くのは、お前らが送ってきたストラップのせいだろうが!お前らに咎められる筋合いはないんじゃい!
おっと失礼、荒ぶってしまった。
大きなお世話ではあるが、それはそれこれはこれ。送られてきたものはありがたく使わせてもらおうではないか。
というわけでベランダに放置されていた、前入居者の物と思われるプランターに種を蒔く。この種は送り主であるユンパウによるとルコプコと呼ばれる植物の物らしい。例に漏れずそんな植物は地球上に存在しないが、最早その程度は些細なことだ。
ルコプコは一晩で急成長を遂げた。
青みがかった黄金の葉を蓄えた1m50cm程のシダ植物に見えるそれは、間違いなく昨日ルコプコの種を蒔いたプランターから生えていた。だから多分これはルコプコなのだろう。
驚くべき成長速度だ。
私が昨日蒔いてから24時間程度でこれだから、悪名高い竹の成長速度を軽く凌駕している。化け物じみた生命力である。
それで、これをどうすればいいのだろうか?見たところ実をつけている様子もないし、地下茎を収穫するタイプとも思って掘り出してみたが普通にひげ根があるだけであったが。まさかこの形で葉物野菜ということもあるまいし、うーん。どう売り物にするというのか。
気は進まなかったが、試しに葉を少し食べてみることにした。
あ。
私はルコプコの葉を売ることで万引きをしなくてもいいようになった。私が体育館裏に立てば勝手に客はやってくるし、私の言い値で勝手に品物が捌けていく。
とはいえあんまり法外な値段をつけては顧客に刺されかねないから、グラム100円で妥協かな。あ、このグラムって1グラムのことね。それでも十分効果あるから。
え?効果ってなんだって?ダイジョブダッテ!安全な葉っぱだからさ!完全にオーガニックで健康!何も怖くない!
私は完全犯罪ストラップを握りしめながら、新規顧客獲得のためにセールストークを仕掛けていた。相手は私の通う大学の同級生で、名前は
だって、友達に売るのはねぇ…?流石にって思うわけ。
「いや、そ、それってどう考えてもヤク」
「おっと手が滑ったァ!」
余計なことを口走りかけた中恵ちゃんのお行儀の悪いお口にルコプコの葉をシュゥゥゥーッ!!超☆エキサイティン!
するとどうだろうか、中恵ちゃんはふらついて地面にへたり込んでしまった!
ちなみに現在大学体育館裏からお送りしております。
中栄ちゃん、瞳孔かっぴろげて空見て喘いじゃってるよ。カワイイね。これからは君も私の顧客だ!ゼッタイ逃さないぞ☆
ユンパウ婆さんありがとう!フラッシュ!
●
追記
ルコプコの株分けに成功したので、商品の供給に困ることはなさそう。今や我が201号室のベランダは、天然のグリーンカーテンと化していた。とってもエコだと思います。
ただ、コレってホントにまっとうな商売なの?答えてよユンパウ婆さん。